介護事業の特徴と留意点

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5. 介護老人福祉施設の特徴と留意点は?

介護老人福祉施設の概要

介護老人福祉施設(特養)は、老人福祉法に基づく都道府県又は中核市の設置認可と、介護保険法に基づく事業者の指定を受けることにより設置されます。特養の施設数は2014年3月現在で7982、地域密着型サービスとして設置される定員29名以下の小規模な地域密着型特養は1246となっています。サービスの内容は、要介護1から5(2015年以降は要介護3以上)の認定を受けた65歳以上の高齢者に、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護、日常生活の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話を行うものです。

事業主体は自治体又は社会福祉法人に限られ、医療法人や営利法人が開設することはできません。居室は、多床室、従来型個室、ユニット型個室等の種別がありますが、最近はユニット型の整備がすすめられており、平成25年度の整備定員数25,111に対するユニット型の定員数は23,358で、93%を占めております。

また、平成24年末において、全特養の定員数に占めるユニット個室の割合は、32.3%となっております。サービス受給者のうち、要介護4・5の者は67.8%、平均在所期間は約4年で、他の介護保険施設よりかなり長くなっています。

特養のうち、8割近くが短期入所者生活介護(ショートステイ)を併設しており、その他訪問介護、通所介護、居宅介護支援等のサービスを併設して実施しております。

人員基準・設備基準

人員基準としては、必要数の医師、入所者3人につき1人の介護職員または看護職員、栄養士及び機能訓練指導員1人以上、ケアマネジャー1人以上の配置が必要です。

設備基準としては、居室の定員は原則1名で、入所者1人当たりの床面積は10.65㎡以上とされています。その他医療法の診療所の要件を満たす医務室、入所定員1人につき3㎡以上の食堂及び機能訓練室と、1.8m以上の廊下幅、その他浴室が必要とされています。ユニット型では、共同生活室を設置し、居室は共同生活室に近接して一体的に設置し、1つのユニットの定員は、おおむね10名以下とされています。

特養の収入

特養の報酬単価はユニット型個室で要介護5は894単位となっていますので、定員80名で2級地の場合、収入は以下のとおりとなります。

月当たり介護報酬は

80人 × 単位数(894)× 30日 × 10.72 = 2300万832円

厚生労働省の介護経営実施調査によりますと、特養(平均定員68.7人)の介護保険収入は、月当たり2287万円、それに保険外収入等を加えた総収入は2749万円、そこから介護費用2476万円を控除し、介護事業外収益費用を差引すると、月当たり利益は247万円となっています。

2015年の介護報酬改定について

特養は2015年の介護報酬の改定で、基本報酬が平均5.5%引き下げられ、また多床室は段階的にさらに引き下げられることになりました。

一方、特養のうち約7割で、入所者や家族のもとめに応じて看取りを行っていることや、年々特養における看取り件数が増えていることに鑑み、看取り介護加算が引き上げられました。また2015年より特養の入所者が原則要介護3以上になることを踏まえ、重症者の積極的な受け入れを行うことを評価する観点から、日常生活継続加算が、ユニット型施設について引き上げられました。

特養の内部留保と社会福祉法人改革

厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会において、特養の内部留保が1施設当たり3億1373万円と多額になっており、社会福祉法の軽減事業を実施していなかったり、財務諸表を公表していない法人が多くあることが報告されました。そのような特養を含む社会福祉法人への批判の高まりを受けて、経済財政運営と改革の基本方針2014(骨太の方針)において、

  • 財務諸表の開示
  • 内部留保の明確化
  • 社会貢献活動の義務化

など、社会福祉法人に改革の方向が示されました。

このような政府の方針にあわせて、厚生労働省も「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」を立ち上げ、2014年7月に改革の大筋を示しました。その後、社会保障審議会福祉部会に議論の場が移り、2015年2月12日に報告書が提出されました。報告書のなかで、ガバナンスの強化としては、理事の義務と責任を明確化し、理事を牽制する機関として評議員会の設置を必要としました。また収益が10億円以上又は負債が20億円以上の法人については、会計監査人の設置を義務付けるものとしました。

また、財務諸表のほか、役員の区分ごとの報酬の総額、親族や特別の利害関係を有する者との取引内容の公表を義務付けることにしました。社会福祉法人の本来の在り方を徹底する視点から、生活困難者に対する無料・低額な料金の福祉サービスの提供などの社会貢献活動の実施を義務付けるものとしました。

このように、特養を含む社会福祉法人の経営に関して、大きな改革が行われることになりました。