ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報 2015年7月30日号
◆病院機能評価機構、創立20周年 次世代評価アジェンダ公表
夫運営している各事業を7項目に要約、初めてロゴも制作
――日本医療機能評価機構
(公益財団法人) 日本医療機能評価機構 (井原哲夫代表理事・理事長。略称:評価機構) は7月27日、創立20周年を機に、より一層の病院機能評価事業を充実させるため、次世代の医療機能評価における方向性をビジョンとして策定し、ビジョン達成に向けた施策を「次世代医療機能評価のアジェンダ」として冊子及びデータに収載、公表した。アジェンダの意味はこのケースでは「検討課題」「行動計画」に該当する。
同機構は、1995年7月27日、「医療機関に対する第三者評価の実施と、質の高い医療を提供していくための支援」を目的として発足した。病院を始めとする医療機関の機能を学術的観点から中立的な立場で評価し、その結果明らかとなった問題点の改善を支援する第三者機関である。主要事業は病院機能評価で、それによる認定病院は現在、約2,300病院(全国の約27%)に達している。
同機構は設立以来、略称を使用せず一貫して「(公財)日本医療機能評価機構」の名称で運営してきたが、今年7月27日に創立20周年を迎えるにあたり、同機構を国民や医療関係者等に幅広く知っていただくため、略称(評価機構)およびロゴマーク(JQ)を定めた。ロゴマークはビジュアル訴求上、デザイン化してある。
7月27日、評価機構が公表した『日本医療機能評価機構の取り組み2015』で事業内容や担当部署などについてビジョンをまとめ内外へ情報発信した。各施策は、2018年度の運用開始を目指し検討を進めていく予定で、「次世代医療機能評価のアジェンダ」にビジョン達成への具体的施策がまとめられている。
公表された冊子には、同評価機構が運営している各事業を、次の7項目に分けて平易にまとめられている(カッコ内は主な事業内容の要旨)。
(1)病院機能評価(組織全体の運営管理や提供される医療に対し、国際基準「IAP」に適合した第三者評価を実施し、一定の水準に達したと認められた病院に認定証を発行)。
(2)産科医療補償制度運営(分娩に関連して発症した重度脳性まひ児と家族の経済的負担への補償や、同様の事例の再発防止に向けた情報提供)。
(3)EBM(根拠にもとづく医療)医療情報(診療ガイドラインや医療文献などの関連情報を、インターネットによる医療情報サービス「Minds」で提供)。
(4)医療事故情報収集等(医療事故の発生要因や背景を分析し、その予防・再発防止を目的とした情報を提供)。
(5)薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析(薬局で発生した事例を収集・分析し、医療事故防止を目的とする情報を提供)。
(6)認定病院患者安全推進=PSP(「認定病院患者安全推進協議会」を通じた、患者の安全を推進する活動)。
(7)国際的な活動(国際医療の質学会「ISQua」との連携や、同学会の2016年東京大会の開催準備。1000人規模の出席者見込む)。
なお同機構では本年度から「医療政策勉強会」を開催して医療政策の最新のテーマ、トピックについて専門家が講演する医療政策勉強会を開催している。
◆年金・医療の概算要求額、前年度当初予算から6,700億円増
政府、2016年度予算の概算要求基準の骨格を固める
政府は7月24日、2016年度予算の「概算要求にあたっての基本的方針」を閣議で了承した。16年度の概算要求基準は15年度とほぼ同様の仕組みで、15年度に引き続き100兆円規模の要求となる可能性が高い。概算要求基準は各省庁が予算を要求する際のルールとなるが、予算編成過程で財務省がどこまで厳格に精査できるかに健全化の焦点が移る。
16年度は予算の約3割を占める社会保障関係費は、高齢化に伴う歳出の自然増など約6700億円を前年度当初予算に加えた額を範囲内に要求を認める方針だ。人件費などの義務的経費は前年度当初予算と同額の要求にとどめる。同方針は7月23日に総理大臣官邸で開かれた政府・与党政策懇談会で取りまとめ24日に閣議で了解したもの。
概算要求の基本的方針では、2016年度予算は、骨太方針である「基本方針2015」で示された経済・財政再生計画の初年度の予算であり、手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組むと強調。公共事業など政策に充てる経費は今年度より10%削減するよう各省庁に求める一方、残る9割のうち、最大3割分を上限に経済成長につながる政策について「日本のための優先課題推進枠」を設け、別枠で最大4兆円程度の要求を認めるとした。歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取り組みを強化し、予算の中身を大胆に重点化するとしている。「骨太の方針」で示したロボット・人工知能の開発力強化やサービス産業の生産性向上、女性の活躍促進などに資する歳出を対象とする。概算要求の期限は8月末日。
最大の支出項目である年金や医療等などの「社会保障に関する経費」については、前年度(2015年度)当初予算額(30.2兆円)に高齢化増などにともなう厳しい財政事情を踏まえ、今年度の当初予算と比べ増加額の6,700億円を加算した範囲内で要求する。
また、義務的経費(前年度12.5兆円、法律で支出が定められている経費等。B型肝炎ウイルス感染者に対する給付金等の支給に係る経費など)に関しては、前年度予算額と同額。
他方、公共事業や防衛など裁量的経費(前年度14.7兆円、政策判断によって柔軟に縮減される経費)に関しては、前年度予算額の10%減の額(要望基礎額)の範囲内に各省が抑制。さらに、予算の重点化を進めるため、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」を中期的に進めることを含む「骨太方針」や「『日本再興戦略』改訂2015(成長戦略)」などの課題にあてる、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設け、各省は要望基礎額の30%の範囲内で要望し、予算編成過程で検討される。なお、年金・医療等の経費と裁量的経費・義務的経費とは性質が異なるため、両者の間で調整は行わない。
このほか、消費税率引き上げとあわせて行う充実などその他社会保障・税一体改革と一体的な経費は、消費税・地方消費税の税収や、社会保障の給付の重点化・制度の効率化の動向などをふまえて予算編成過程で検討する。
今後の検討事項として「社会保険診療報酬等に係る事業税の現状」など、次のような内容が上がった。
事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置、および医療法人に対する軽減税率について、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する
医療に係る消費税等の税制のあり方については、消費税率が10%に引き上げられることが予定される中、医療機関の仕入れ税額の負担および患者等の負担に十分に配慮し、関係者の負担の公平性、透明性を確保しつつ抜本的な解決に向けて適切な措置を講ずることができるよう、個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当額分を「見える化」することなどにより実態の正確な把握を行う。
税制上の措置については、こうした取組みを行いつつ、医療保険制度における手当のあり方の検討等とあわせて、医療関係者、保険者等の意見も踏まえ、総合的に検討し結論を得る。
◆2020年度までの社会資本整備重点計画の原案公表
国交省 生活機能集約型コンパクトシティ実現へ
――国土交通省
国土交通省は7月24日、2020年度までのインフラ整備の指針となる「社会資本整備重点計画」の原案を公表した。今回示された原案には、高齢者らが利用しやすい生活空間や移動手段を確保する方針も盛り込まれた。国民の意見募集や都道府県からの意見聴取を経て成案をまとめ、今秋の閣議決定を目指す。
具体的な例では、1日の平均利用者数が3,000人を超す空港や駅、バスターミナルなどで、段差が全く無い道が必ず設けられるように造る。こうした規模の駅では、ホームドアの設置率(2013年度15.7%)を21.9%まで上げる考えも示した。13年度には1万3978台だった福祉タクシーを20年度には約2万8000台まで増やすことも盛り込まれた。
住宅や公共施設、商業施設を中心部に集める「コンパクトシティー」推進では、100戸以上の公的賃貸住宅のうち、お年寄りや障害者、子育て世帯向けの施設を併設している割合を、現状(2013年度の19%から25%に向上させるとした。
原案の柱は、今後の少子高齢化を見据え、生活機能を集約した街づくりを進めていく方針を打ち出したことだ。今後、9月に開催する審議会で正式に決定し、来年度以降の予算への反映を目指す考えだ。
現行の「社会資本整備重点計画」は、2012年度から2016年度までを対象にしたもの。国交省はこれまで、地方の人口の減少やインフラの老朽化が進んでいることなどを考慮し、計画を前倒しで見直すことにして検討を進めてきた。
維持管理・更新については、国交省が14年度に策定したインフラ長寿命化計画(行動計画)を踏まえて、自治体を含めた各管理者が16年度までに同様の計画を策定。その上で20年度までの間に、個別施設ごとの計画の策定率を100%とする目標を設定する。これによって、点検・診断、修繕・更新、情報の記録・活用というメンテナンスの「PDCAサイクル」を構築する。
各分野の個別施設の長寿命化計画の策定率を100%とする目標時期は次の通り(カッコ内は14年度時点の策定率)。▽道路(橋梁)=20年度▽同(トンネル)=20年度▽河川=国、水資源機構は16年度(88%)、自治体は20年度(83%)▽ダム=国、水資源機構は16年度(21%)、自治体は20年度(28%)▽砂防=国は16年度(28%)、自治体は20年度(30%)▽海岸=20年度(1%)▽下水道=20年度▽港湾=17年度(97%)▽空港(空港土木施設)=20年度(100%)▽鉄道=20年度(99%)▽自動車道=20年度(0%)▽航路標識=20年度(100%)▽公園=国は16年度(94%)、自治体は20年度(77%)▽官庁施設=20年度(42%)。
◆過労死等防止のための対策―大綱を閣議決定 政府
労働時間短縮と有給休暇取得のバランスを促進
政府は7月24日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定した。「過労死等防止対策推進法」(平成26年6月成立、平成26年11月施行)では、政府は、過労死等の防止対策を効果的に推進するため、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を定めなければならないと規定されている。
これに基づき、厚生労働省では、昨年12月から今年5月にかけて5回にわたり「過労死等防止対策推進協議会」を開催し、大綱案のとりまとめ作業を行ってきた。その後、パブリックコメントの手続きを経て定められたものが、この閣議決定された大綱である。
この大綱は、「過労死等防止対策推進法」にもとづき、過労死との関連性が強いと医学的知見の得られた脳・心臓疾患や、自殺につながる場合があると考えられる精神障害などの実態を明らかにするなど、過労死などの防止対策を効果的に推進するために定められた。閣議決定を受けて、厚労省は今後、「大綱に即して、過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向けて、各対策に取り組む」としている。
大綱では、法の基本的な考え方をふまえ、(1)現状と課題、(2)過労死などの防止対策の基本的考え、(3)国が取り組む重点対策、(4)国以外の主体が取り組む重点対策――などがあげられた。(3)の国の重点対策では、(ⅰ)調査研究など、(ⅱ)啓発、(ⅲ)相談体制の整備など、(ⅳ)民間団体の活動に対する支援――の方向が示されている。
しかし、現状として過労死は増加していることに憂慮せざるを得ない。「過労死ゼロ」を目指す国としてはその課題を、大綱の中でつぎのようにまとめている。
課題~長時間労働以外の発生要因を明らかに
過労死等については、これまで主に労災補償を行う際の業務起因性について議論されてきた。しかしその効果的な防止については、未だ十分とは言えない。過労死等の防止対策には、まず長時間労働のほかにどのような発生要因等があるかを明らかにすることが必要である。
就業者の脳血管疾患、心疾患(高血圧性を除く)、大動脈瘤及び解離による死亡数は、60歳以上が全体の7割以上を占めているものの、脳・心臓疾患により死亡したとする労災請求件数と大きな差がある。また、被雇用者・勤め人の自殺者のうち勤務問題を原因・動機の一つとする自殺者数は、精神障害により死亡したとする労災請求件数と大きな差がある。
これらの差の部分について、遺族等が労災請求をためらっているという意見もあるが、詳細な統計がないこともあり、分析が十分とはいえない。一方、啓発については、一定程度は行われているものの、まだまだ十分とはいえる状況にない。特に若年者を対象とする教育活動を通じた啓発が必要である。
過労死等をもたらす一つの原因は長時間労働であるが、労働時間については、平均的な労働者ではなく、特に長時間就労する労働者に着目して、その労働時間の短縮と年次有給休暇の取得を促進するための対策が必要である。また、労働時間の把握が様々な対策の前提になることから、その把握を客観的に行うよう啓発する必要がある。
メンタルヘルスについては、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が半数を超えている中で、労働者が相談しやすい環境の整備が必要である。
対策の見直し、として法第14条では「政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする」と規定されていることから、調査研究等の結果を踏まえ、この大綱に規定されている対策について適宜見直すものとする。
大綱の見直し
社会経済情勢の変化、過労死等をめぐる諸情勢の変化、この大綱に基づく対策の推進状況等を踏まえ、また、法附則第2項に基づく検討の状況も踏まえ、おおむね3年を目途に必要があると認めるときに見直しを行う。