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医療経営情報(2015年12月3日号)

2015/12/7

◆歳出効率化優良事例の横展開へ向け中間報告案
内閣府「健康増進・予防サービス・プラットフォーム」

――内閣府
内閣府は11月30日、「歳出効率化に資する優良事例の横展開のための健康増進・予防サービス・プラットフォーム」を開催し、「中間報告案」を提示した。
中間報告案では、「健康増進・予防サービスについて、国民が受けるサービスの水準を維持・向上しつつ、歳出効率化と経済活性化の両方を実現する」、「自治体や企業、保険者が先進的に取り組んでいる優良事例の横展開を広く進めていく。その際、かかりつけ医等の医療関係者との連携を密にする」との基本的な考え方を述べたうえで、(1)優良事例の具体例、(2)ヘルスケア産業の創出・育成、(3)その他の論点――が提示された。

(1)では、(ⅰ)市町村国保(広島県呉市)、(ⅱ)協会けんぽ(広島支部、大分支部)、(ⅲ)健保組合(花王株式会社)、それぞれの優良事例が紹介され、さらに全国に横展開するため、例えば次のような取り組みが示された。
(i)保険者が民間委託する際、質の高い優良な事業者を選定しやすくするため、第三者による評価制度や事業者の実績を収集・共有する仕組みをつくる。
(ii)事業主に結果を通知する「ヘルスケア通信簿」などのツールを広く全国各支部に普及し、特に経営トップへの働きかけを行うことなどにより、企業の意識を高める。
(iii)企業と健康保険組合が一体となった「コラボヘルス」を進め、従業員の健診や面談、2次検査等の受診勧奨に事業主も医療スタッフと連携して参画する。

(2)では、「民間事業者のノウハウ、サービス等の活用」、「関連規制法令のグレーゾーン解消」などを進めるとしている。
(3)では、「健康ポイント」の導入拡大を図るなど、健康づくりのインセンティブを与える取り組みが、無関心層への働きかけとして示された。

<コラボヘルス事例>
事業主と協働で取り組む健康づくり活動 (花王健康保険組合)
▼取り組みの背景および目的―花王健康保険組合は、以前から花王株式会社と連携して被保険者の健康づくり活動を展開している。これは被保険者から見れば健保組合が行う事業も会社が行う事業も区別がなく、逆に健保組合からは事業主と一体で活動することにより、被保険者に対しての強制力が持てるというメリットがある。
一方、事業主にとっても被保険者の健康増進は健康な社員が増え、事業活動が進むというメリットが生まれる。平成 22 年からは、健保組合の常務理事が事業主の健康管理部門の責任者を兼務することで、更なる一体的運用を行っている。

▼取り組みの内容―事業主と協働してきた主な活動を○印に示す。
○健診項目、判定基準等の統一化  平成15年 健康づくり支援システム「元気くん」稼動
○問診項目も統一し、健診結果と併せてデータベース化  平成17年 中期計画「KAO 健康 2010」スタート
○「健康日本 21」を参考に健康づくり活動に数値目標を設定
○禁煙支援プログラムなどで健保組合が支援

<協働>
平成19年 花王健康マイレージプログラム開始
○「KAO 健康 2010」活動の後押しとしてのインセンティブプログラム

<健保組合>
平成20年 特定健診・保健指導開始  花王グループ健康宣言発行
○特定保健指導を事業主に委託
○社長名で社員全員にコミットメント
○会社は社員の健康づくりに積極的に関与することとその取り組み課題を明示

<協働>
平成21年 白書勉強会/花王グループ健康白書発行
○花王グループの健康状態の「見える化」活動
○事業主と健保組合のデータを集計・分析して各地区の健康相談室に提供
○データから課題発掘と対策立案を行う勉強会の実施
○白書としての年報も編集

平成22年 第2次中期計画「KAO 健康2015」策定
○数値目標の他に重点取り組み課題と、将来のあるべき姿を提示
○健保組合のテーマとしては、重症化予防のための介入の仕組みづくり

<協働:事業主と健保組合>
1.花王健康マイレージプログラム ―健保組合の事業を事業主が活用―
従来から行っていたウォーキングキャンペーンを常設化するとともに、「KAO 健康 2010」活動 の支援のために平成 19 年度からインセンティブプログラムを開始した。マイレージは、特定の健診項目の優良者と改善者に付与する「健診マイル」、事業所で展開する健康づくりイベント参加者に付与する「イベントマイル」、自ら生活習慣改善目標を掲げてその結果に付与する「生活 習慣改善マイル」、日々の歩数に付与する「ウォーキングマイル」がある。被保険者は健康づくり活動でマイルを貯め、貯まったマイルは健康グッズと交換できるポ イントプログラムが用意されている。 本事業のポイントプログラムについては、株式会社ベネフィットワン(現ベネフィ ットワン・ヘルスケア)に委託し、同社のベネフィットステーションのシステムを活用している。
ウォーキングマイルのプログラムは、事業主と協働で取り組んでいる健診前キャンペーンの ツールとしても活用しており、ほぼ 50%の被保険者が加入している。また、産業看護職の保健 指導ツールとしても活用されており、2ヵ所の事業所では全員加入を達成している。

2.「花王グループ健康宣言」の発行 ―健保組合と事業主による共同編集―
特定健診・保健指導の推進に、事業主の協力は欠かせない。花王健保組合では保健指導の実 施者である事業主の産業看護職を活用し展開したが、時には現場マネジャーの協力が得られな いなどの不都合もあった。そこで会社が社員の健康に強く支援することをコミットし、5つの取り組み方針(生活習慣病、メンタルヘルス、禁煙、がん、女性の健康)を明示した「花王グ ループ健康宣言」を発行した。

◆社会保障関連費の伸び 「高齢化の増加」範囲内を目指す
予算編成、最優先事項に高額療養費制度の見直し 諮問会議

――内閣府
内閣府は11月24日、「経済財政諮問会議」を開催し、(1)2016年度予算基本方針案、(2)財政制度等審議会の2016年度予算の編成等に関する建議―-を議論した。
(1)では、2016年度予算編成の基本的考え方として、2020年度の財政健全化目標を堅持し、計画期間の当初3年間(2016~2018年度)を「集中改革期間」と位置づけ、2018年度のPB(基礎的財政収支)赤字の対GDP比マイナス1%程度を目安にすると明記。改革工程表に沿って歳出改革を確実に進めるとした。

(2)では、麻生太郎財務大臣が、債務累増の主因は社会保障給付と負担のアンバランス構造にあり、放置すると将来世代への負担の先送りになると警鐘を鳴らした。2016年度予算編成は、「経済・財政再生計画」初年度予算であり、社会保障関係費の伸びは、改革工程表の策定や診療報酬改定・薬価改定等を通じて、確実に高齢化による増加分の範囲内の5,000億円弱にするとし、目安から逸脱するようなことがあってはならないと強調している。(次項の「予算編成ついての建議」及び別枠の建議要点 参照)

2016年度診療報酬改定では、薬価改定に加え、診療報酬本体のマイナス改定や診療報酬関連の制度改革を通じ、2016年度の社会保障関係費全体の伸びを高齢化による増加分の範囲内とすることを目指すことが基本と強調。
社会保障改革工程表に関しては、「最優先で速やかに検討・実施すべき事項」として、高齢者と現役世代の上限額の同水準化を図る「高額療養費制度・高額介護サービス費制度の見直し」、「医療・介護を通じた光熱水費相当額にかかる費用負担の公平化(全療養病床への拡大)」を打ち出した。

また、「速やかに検討・実施すべき事項」には、「病床再編や地域差是正に向けた都道府県の権限強化」、「介護納付金の総報酬割化」、「かかりつけ医以外の外来時定額負担導入」などを列挙。さらに、「できる限り早い時期に検討・具体化すべき事項」として、「後期高齢者の原則2割負担化」や「前期高齢者納付金の総報酬割化」を提案している。

◆社会保障費伸び、5千億円に抑制 診療報酬をマイナス改定に
経済財政諮問会議 麻生大臣が「予算編成ついての建議」説明

11月24日夕は「経済財政諮問会議」の席上で「2016年度予算編成に関する建議」を麻生太郎財務大臣が説明した。同日午前に、建議は財務省の財政制度等審議会(財政審=財務相の諮問機関)がまとめ同財務相に提出していた。財政審は8月から継続していた審議内容を取りまとめたもの。

麻生財務大臣は同24日、財政審の「2016年度予算の編成等に関する建議」を次のように説明した。
建議の要点は、社会保障関係費の伸びについては、今後3年間の伸びを1.5兆円程度に抑えるという「骨太の方針」の「目安」を重視し、「これを逸脱するようなことは断じてあってはならない」と主張していて、概算要求時に厚労省が要求していた6700億円の自然増分を、5千億円弱に抑えるよう提言していること。診療報酬改定本体のマイナス改定や、薬価の適正化で抑制するよう求めている。
財政健全化に向けた取り組みと2016年度予算編成に関して、(1)医療・介護提供体制の改革、(2)負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化、
(3)薬価、調剤等の診療報酬および医薬品等に係る改革―などを求めている。

(1)では、機能別の必要病床数を盛り込んだ地域医療構想や、医療費目標を盛り込んだ医療費適正化計画の早期策定を促す必要があると指摘。現行の病床機能報告は病床機能分化の進捗管理が困難であるため、遅くとも2016年10月の次期病床機能報告時までに、1日あたりの医療資源投入量などを勘案した定量的基準を設けることを提案。また、療養病床は地域差の是正に向けて高い診療報酬の対象となる「医療区分2・3」の要件の厳格化などを提案した。さらに、介護療養病床を予定通り2017年度末までに廃止し、患者・利用者像に合わせて必要な機能に絞った受け皿への転換などが必要としている。

(2)では、医療保険の高額療養費制度、介護保険の高額介護サービス費制度の高齢者の自己負担上限額を所得水準に応じて引き上げることや、介護保険の自己負担割合を原則2割負担とすることなどを求めた。

(3)では、薬価調査を踏まえた薬価引き下げは、市場実勢価格の反映に過ぎないため、薬価改定は診療報酬本体の財源とはなり得ないと強調。調剤技術料(調剤基本料・調剤料)が受付回数や投与日数・剤数で増加する現在の仕組みは、必要な薬剤を取り揃える行為などのみで、相当程度の収益を稼ぐことが可能と批判。真に効果的に、継続的・一元的な管理指導をする薬局に限って、高い点数が算定されるよう要件を厳格化するべきとした。また、【後発医薬品調剤体制加算】の減算措置導入や、【調剤料】の院外処方も院内処方と同様、投与日数、剤数にかかわらず定額にすべきとしている。

◆諮問会議 「一億総活躍社会への緊急対策」を議論
最低賃金「全国加重平均1000円」の引き上げ目標示す

――厚生労働省
11月24日の「経済財政諮問会議」では「経済・財政一体改革各論(社会保障)」を議論し、「一億総活躍社会への緊急対策」で、最低賃金「全国加重平均1000円」の引き上げ目標を示した。安倍首相が政策目標に掲げる「一億総活躍社会の実現」に向けた緊急対策を取りまとめ、「今後5年程度で名目GDP600兆円を実現」するため、消費喚起策として最低賃金について「全国加重平均1000円」を目指し引き上げを図る方針を示した。
今回の緊急対策では、GDPの6割を占める個人消費を拡大することを柱の一つに掲げ、賃上げや最低賃金引き上げへの取り組みの重要性を強調。賃上げに関しては、昨年の政労使合意を踏まえ、「過去最大の企業収益を踏まえた賃上げを期待する」ことをあらためて表明しています。また、最低賃金に関しては、年 率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ、地域別最低賃金加重平均額が1000円となることを目指し引き上げを図る方針を示した。
今年度の地域別最低賃金は全国加重平均額で前年度比18円増の798円となり、最低賃金額が時給のみで表示されるようになった02年以降最大の引き上げ幅となっている。最低賃金の引き上げは、非正規雇用労働者を含め所得底上げに寄与する一方、中小零細企業にとっては負担増に直結することから経済界では慎重なスタンスも見られ、今後の取り組み動向が注目されている。

7対1要件厳格化、療養病床は医療必要度で引き下げ
経済・財政一体改革各論(社会保障)」の議論では民間議員の伊藤元重議員(東京大学大学院教授)ら4人は、2016年度診療報酬改定等を通じたインセンティブ改革を提案した。「診療報酬本体」に関しては、前回2014年度改定で7対1病床の要件を厳格化したが、病床減少は緩やかで2025年にあるべき約13万床に対して、約3倍の水準と指摘。このため、7対1病床の要件を一層厳格化して診療報酬を引き下げるべきと提案した。
また、慢性期対応を医療から介護にシフトするとの方針を踏まえ、療養病床は医療の必要度が高い患者に限定していくべきと提案。医療の必要度が低い患者を受け入れる療養病床は医療従事者の配置基準を緩和して診療報酬を引き下げるべきと述べている。

さらに、「薬価」に関しては、先発品と比べた後発医薬品価格を半額以下にして、後発品への置き換えが進まない特許の切れた先発医薬品の価格も大胆に引き下げることを提案。また、薬剤流通適正化へ導入した未妥結減算制度の効果が不十分として、妥結せずに納品を求める調剤薬局・病院などに不払い期間の遅延金を課すべきと述べている。なお、実施可能なものは速やかに実施し、法改正事項は遅くとも2017年通常国会への提出を期限とするよう求めた。

塩崎恭久厚生労働大臣も資料提出して社会保障改革に関して説明し、次期2016年度診療報酬改定の検討事項として、【7対1入院基本料】の届出病院に関し、入院患者の「重症度、医療・看護必要度」で、「手術直後の患者」や「救急搬送後の患者」などを評価すると説明。療養病棟の入院患者の評価基準(医療区分)に関し、軽度者も含まれる「酸素療法」、「頻回の血糖検査」などの項目の見直しを検討。さらに、かかりつけ医機能の強化のため、認知症への対応を重視し、【地域包括診療料・同加算】の対象患者の要件を見直すなどと述べている。

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