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医療経営情報(2016年8月4日号)

2016/8/10

◆高額薬 値下げへ方向 厚労省、適正投与の指針に着手
年内に基本的な考え方をまとめ新ガイドライン策定

――厚生労働省
厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は7月27日、高額な薬の相次ぐ登場を受け、薬剤費の高騰を抑えるための新ガイドライン策定の検討を始めた。これにより、厚労省は2年に1度の改定を待たずに値下げする「特例的な対応」(期中)の検討に着手する。
27日の中医協では、診療側(委員)から再算定を期中に行う場合の診療報酬本体への財源振り替えまで踏み込んだ意見が出た。高額薬をめぐる中医協の進め方には、①「薬の治療対象が拡大して患者数が大幅に増えた際の値下げ」と、②「薬の適正使用の徹底」を2本柱として議論することになる。
厚労省はこの日の中医協で、画期的な効果があるものの高額な薬剤の適正使用のためガイドライン(指針)作成の方針を示し、中医協はこれを了承した。厚労省案は、使用できる医師や施設、対象患者の制限を柱とした内容となっている。これは消費税増税先送りなどで財源確保は厳しさを増し、高額な薬剤の発売が続く中、医療保険財政への影響が懸念されているためである。厚労省は、年内に基本的な考え方をまとめ、年度末までに指針を策定する。

具体的には、1人あたり年3500万円かかるがん免疫治療薬「オプジーボ」対策が柱。抗がん剤(新型オプジーボの薬価)など、高額な画期的新薬の価格抑制に向けた本格的な議論となる。この議論は、保険を適用する病気の対象を広げる際に、薬価を値下げできる仕組みを検討するもので、年8兆円にのぼる薬剤費の抑制につなげるのが狙いだ。対象はオプジーボと高脂血症薬の「レパーサ」とその類薬。オプジーボほど高額ではないレパーサも長期間投与が必要なため、対象とした。

今回の中医協の議論では、高額薬の価格を柔軟に見直す新たな仕組みも話し合う。今の制度では価格の見直しは2年に1回しかできない。それに対し厚労省は、2016年度に導入した「特例拡大再算定」を臨時で適用することや、保険を適用する病気の対象を拡大する際に価格を引き下げる案を検討する。
しかし、期中改定は毎年薬価改定の実施へとつながる懸念もあり、製薬業界側の反発は必至だ。8月以降の中医協薬価専門部会では、診療報酬への影響などを踏まえて、実施時期や手法をめぐる議論が中心となる見込み。
中医協は、最適使用推進ガイドライン」の策定には高額薬剤への施策の柱のひとつである、医師要件、施設要件、患者要件を明確化する義務を負っている。対して価格引き下げを嫌う製薬会社は「開発コストが回収しにくくなり、技術革新を阻害する」と主張している。オプジーボは最初に保険適用した皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)では対象患者の見込みが470人と少数だった。その後、肺がん治療にも拡大したため、対象患者も増えたが、当初は開発費を回収するために薬価も高く設定された。厚労省は、対象となる薬品を使用できる医師や医療機関に条件を付け、副作用が見込まれる患者への使用を控えると説明。これに対し、出席者からは「高額薬品問題への対応は待ったなし」「評価する」として賛同する意見のほか、使用できる患者が制限されることへの懸念も出された。

◆がん患者の「5年相対生存率」 推計で男女計62.1%に
国立がん研究センター 3年前と比べ3.5ポイント増

――国立がんセンター
国立がん研究センター(国がん)は、がん患者の命を治療によってどのくらい救えたかを示す「5年相対生存率」を最新のデータで推計し、男女計62.1%になると発表した。この数字は3年前と比べ3.5ポイント増になる。発表によると5年相対生存率(すべてのがん)は男性59.1%、女性66%。

「5年相対生存率」は、特定の年齢の日本人が5年後に生存している確率を100%とした場合に、同じ年齢のがん患者が治療後に何%生存しているかという形で示す。
5年相対生存率は、がん医療を評価する重要な指標として世界的に用いられているもので、がん診療連携拠点病院の評価やがん医療均てん化の評価指標として活用が望まれている。これについて注意する点は、生存率とは、「性別、年齢、治療方法、併存する疾患など患者背景の差が大きく影響する」ということ。したがって生存率そのものではなく、その要因分析が重要となる。

今回は、国立がん研究センターが全国21の府と県で平成20年までの3年間に、がんと診断された患者64万4000人余りのデータを基に推計した。その結果、すべてのがんでの5年相対生存率(男性59.1%、女性66%- 男女合わせ62.1%)を3年前の58.6%と比べると3.5ポイント上がっている。これは前立腺がんや乳がんなど予後の良いがんになる人が増えたことが理由として考えられるという。

がんの種類ごとに生存率の高い順で見ると、男性では前立腺がんが最も高く97.5%、次いで皮膚がんが92.2%、甲状腺がんが89.5%、膀胱がんが78.9%、喉頭がんが78.7%などとなっている。
また、生存率の低い順に見ると、男性ではすい臓がんが最も低く7.9%、次いで胆のうがんなどが23.9%、肺がんが27%、脳腫瘍などが33%、肝臓がんなどが33.5%などとなっている。

一方、女性で見ると、生存率が最も高いがんは甲状腺がんで94.9%、次いで皮膚がんが92.5%、乳がんが91.1%、子宮体がんが81.1%、喉頭がんが78.2%などとなっている。また、生存率が低い順に見ると、すい臓がんが最も低く7.5%、次いで胆のうがんなどが21.1%、肝臓がんなどが30.5%、多発性骨髄腫が36.3%、脳腫瘍などが38.6%などとなっている。

すべてのがんについて、診断時にがんが1つの臓器の中でとどまる場合の5年相対生存率は男女合わせて90.4%だったのに対し、周囲の臓器に進行した場合は55.1%、血液などに乗って転移した場合では13.6%と、早期に発見するほど生存率が高くなっていた。
国立がん研究センターの松田智大全国がん登録室長は「今後、がんの種類ごとに詳しい分析を進め、治療法が改善されているのかなど分析をしていきたい。各都道府県は、がんの死亡のデータなどと合わせ、がんの医療体制を検証する参考にしてほしい」と話している。

既存生存率集計との比較
5年相対生存率については、都道府県が行う地域がん登録と全国がん(成人病)センター協議会による院内がん登録による2つが既存集計として公開されている。しかし、いずれも施設や地域が限定的で、また症例数が少ないなどの課題がある。

国がん(成人病)センター協議会
全がん協の5年生存率は、本集計と同様に院内がん登録をベースとしたもの。最新の全がんの5年相対生存率は69.0%で、同協議会に加盟するがん専門診療施設29施設の2005~2006年診断例から算定した約8万5千例を元に算出されている。良性腫瘍・上皮内がんおよび病期0期を除き、年齢では15歳未満と95歳以上を除外した上で、自施設で初回治療を開始した例のみを集計対象としている。

地域がん登録
地域の実態把握のため都道府県が実施するもの。最新の全がんの5年相対生存率は58.6%で、登録精度の高い宮城・山形・新潟・福井・滋賀・大阪・長崎の7府県の3年分(2003~2005年)約19万例のデータを元に算出されている。対象として、上皮内がんは除かれており、他にも年齢100歳以上を除くなどに限定して算出されている。

◆妊婦健診、国の推奨検査項目「全て実施」は64.8% 厚労省
「妊婦健康診査の公費負担の状況にかかる調査結果」

――厚生労働省
厚生労働省は7月29日、2015年の全国の1741自治体における「妊婦健康診査の公費負担の状況にかかる調査結果」を公表した。2015年4月現在の状況をまとめ各自治体に通知した。厳しい財政状況の中、国の求める基準を超えて健診を行う市区町村もわずかに増えており、母子保健や少子化対策に力を注いでいる姿勢がうかがわれる。公費負担額は全国平均で9万9,927円(前年比1,093円増)だった。

調査結果のポイントは次の通り。
公費負担額は全国平均で9万9,927円(前年比1,093円増)だった。(平成26年4月は、98,834円)
妊婦に対する受診券の交付方法は、1,741市区町村のうち、検査項目が示された受診券が交付される受診券方式が1,472市区町村(84.5%)、補助額のみ記載の受診券が交付される補助券方式が269市区町村(15.5%)
受診券方式の1,472市区町村のうち、国が定める検査項目を全て実施する市区町村は、954市区町村(64.8%)
(平成26年4月は、受診券方式の1,476市区町村のうち、国が定める検査項目を全て実施する市区町村は、928市区町村(62.9%))
受診券方式の1,472市区町村のうち、国が定める検査項目の中で、産婦人科診療ガイドラインにおいて推奨レベルAとされる検査項目を全て実施する市区町村は、1,411市区町村(95.9%)
(平成26年4月は、受診券方式の1,476市区町村のうち、国が定める検査項目の中で、産婦人科診療ガイドラインにおいて推奨レベルAとされる検査項目を全て実施する市区町村は、1,395市区町村(94.5%))

また健診に関する公費負担回数は、すべての市区町村で国の定める望ましい受診回数「14回」を上回っていた。公費負担回数別に見ると、14回の市区町村が1661(全体の95.4%、前回比0.3ポイント減)、15回が51(同2.9%、同0.1ポイント減)、16回が8(同0.5%、同0.2ポイント増)、17回が2(同0.1%、同0.1ポイント増)、18回が1(同0.1%、同0.1ポイント増)、回数無制限が18(同1.0%、同増減なし)となっている。

国が例示している望ましい基準の検査13項目の実施状況を見ると、「全ての項目を実施」した市区町村は全体の64.8%(954市区町村)だった。項目別では、「性器クラミジア検査」は100.0%(同増減なし)、「B群溶血性レンサ球菌検査」は98.2%(同増減なし)と高い割合を維持している。
他方、「超音波検査4回」77.6%(同0.3ポイント増)、「子宮頸がん検診」83.6%(同0.4ポイント増)の実施率は比較的低かった。
都道府県単位(各市町村の平均)で公費負担額を見ると、岐阜が11万9,447円で最も高く、次いで青森11万8,920円。公費負担額が最も低いのは神奈川の6万5,878
円、次いで東京8万1,436円だった。

◆子育て世帯、60代で深刻=消費低迷、働き方改革訴え
経済財政白書 20~30代が将来への不安から節約志向

――政府
政府は8月2日、今年度の経済財政白書を発表した。停滞が続く個人消費の実態を分析しており、20代や30代が将来への不安から節約志向を強めているとして、停滞が続く個人消費の実態について世代ごとに分析しているのが特徴となっている。また仕事と子育てを両立できる働き方の推進や、正社員と非正規労働者の賃金格差の是正などを急ぐべきだとしている。
石原伸晃経済財政担当相は2日の閣議に、2016年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。不振が続く個人消費について、39歳以下の子育て期世帯や、年金支給前の60歳代前半の無職世帯で特に節約志向が強いことを指摘した。消費を抑える要因となっている将来不安を解消するため世帯所得が増えて消費に回せるように、就業したい高齢者や女性が、働く時間や場所を柔軟に選べるような「働き方改革」を提言している。

白書はまず、個人消費について「雇用・所得環境の改善にもかかわらず力強さに欠け、所得から支出への波及が遅れている」と指摘した。勤労者世帯のうち世帯主が39歳以下の「若年子育て期世帯」は、可処分所得が緩やかに増加している中でも消費支出がほとんど伸びておらず、所得に占める消費の割合を示す平均消費性向は低下を続け、節約志向が強まっていることを示した。白書は背景として、若い世代ほど非正規雇用の割合が高いことが将来不安につながっているとみている。
世帯主が60~64歳の無職世帯でも、勤労所得がない上、年金などの安定収入も少なく、消費が抑えられていると分析。子育て期や高齢無職世帯の消費を促すため、持続的な賃上げや正規・非正規間の待遇格差の是正、多様な働き方の実現による就労促進を求めた。個人消費の低迷に関しては、リーマン・ショック後の過去の政策によって耐久消費財の需要が「先食い」された影響が長引いているとも指摘した。
白書は、15年度の企業の経常利益が過去最高となった一方、設備投資がリーマン・ショック前の水準を下回っていることを指摘。売上高見通しや国の成長予想の低迷も設備投資を抑制しているとし、新たな成長分野の創出やコーポレート・ガバナンス(企業統治)向上などの必要性を訴えた。

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