ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年8月5日号)
◆ハンドル型の電動車椅子 アクセル誤操作で事故多発
平成26年までの6年間で死亡51件 消費者事故調
――消費者庁
消費者庁の消費者安全調査委員会は7月27日、ハンドル型の電動車いすに関する調査報告書を発表した。ハンドル型電動車椅子は、主に歩行補助の必要性が高い高齢者の日常的な移動手段として使用されている。
死亡・重傷事故が平成20年から平成26年までに51件発生しているとして製造メーカー含む関係省庁に改善を求める意見書を公開、警鐘を鳴らしている。
ハンドル型電動車椅子は、歩行補助が必要な高齢者にとって便利な物だが使用中の重大事故が発生しているため関係機関によって調査が進められていた。このほど調査結果の報告書と改善を求める意見書が公開された。
報告書によるとハンドル型電動車椅子は、アクセルレバーを軽く押すだけで前進する仕組みになっているため、誤作動による事故が多い。踏み切りで電車の通過を待っているときに、誤作動による意図せぬ発進で、列車に衝突するなどの大事故が起こった。このほかにも踏切横断時に段差に車輪を取られて立ち往生するケースや、道を踏み外して川などに転落する事故、下り坂でのスリップ事故、段差での事故も報告されている。
安全調査委員会は重大事故の発生リスクを低減させるために、ハンドル型電動車椅子の構造の改良、定期的な保守点検、使用者の対する技能訓練などを求めている。また、高齢の使用者は身体能力の低下が事故発生の要因になりやすいため、定期的な身体能力・運転適性の確認の重要性も強調した。
消費者安全調査委員会はハンドル型電動車椅子を使用中の死亡・重傷事故15件を公開した。
1平成24年 6月 被災者は、下り坂で曲がり角の斜面とハンドル型電動車椅子の間に挟まれて倒れている状態で発見された。 死亡 86歳
2平成24年8月 被災者は、川に転落し、ハンドル型電動車椅子の下敷きになった状態で発見された。死亡 87歳
3平成24年 9月 被災者は、ハンドル型電動車椅子とともに防波堤から海に転落して浮いた状態で発見された。死亡 92歳
4平成24年10月 被災者は、ハンドル型電動車椅子とともに川に転落した状態で発見された。 死亡 88歳
5平成24年10月 被災者は、遮断かんの下りた踏切前で列車の通過を待っていたが、前のめりになりハンドル型電動車椅子に乗ったまま踏切内に進入。通過中の列車側面に衝突した。 死亡 83歳 (以下省略)
消費者庁は今回の意見書を経済産業省、厚生労働省など4省庁トップへ送付して操作等の「改善」を求めている。その中で厚労省の担当部分を紹介する。
厚生労働大臣への意見
(1)ハンドル型電動車椅子の運用に関するリスク低減策(運転者の身体の能力及び運転適性の確認強化)の試行
ハンドル型電動車椅子の運用に関するリスク低減策(運転者の身体の能力及び運転適性の確認強化)として、以下を試行すること。
①介護保険制度を利用したレンタル利用者に対し、既に行われている身体の能力及び運転適性の確認方法に、認知機能の検査手法や運転履歴情報に基づく運転適性の確認を追加し、確認結果の経時的な変化を分析することにより身体の能力及び運転適性の低下の有無について評価すること。運転適性の確認は、経済産業省の協力を得て、有用な運転履歴情報の検討及び現在のハンドル型電動車椅子が有する運転記録機能に運転履歴情報の保存及び出力機能を付加して活用すること。
②身体の能力(感覚機能、運動機能、認知機能など)及び運転適性の低下が認められた利用者に対しては、貸与側が使用環境に留意し、経済産業省の協力を得て、ハンドル型電動車椅子の最高速度を下方変更し、その効果を検証すること。
(2)ハンドル型電動車椅子の貸与時に関するリスク低減策の実施
①ハンドル型電動車椅子貸与時の使用環境確認では、踏切のリスクの度合い(横断距離や踏切道側面の段差高さ等)を確認し、利用予定者に確実に説明することを福祉用具関係者に周知すること。
②ハンドル型電動車椅子の登降坂性能(傾斜角度10°以下)を超えた急坂での使用を防ぐための警告機能が備わっていない機種が存在する。使用環境にハンドル型電動車椅子の登降坂性能を超える急坂がないことを確認できない限りは、前述の警告機能を有するハンドル型電動車椅子を提供するように福祉用具関係者に周知すること。
③緊急事態において使用者が単独で危険を回避できない状況も予想されるため、周囲へ緊急事態を知らせる方法の検討を福祉用具関係者に促すこと。
◆「5年相対生存率」、男女計62.1% 3年前比3.5ポイント増
国立がん研究センター がん患者の治療後の推定生存率
――国立がん研究センター
国立がん研究センター(国がん)は、がん患者の命を治療によってどのくらい救えたかを示す「5年相対生存率」を最新のデータで推計したところ、男女計62.1%になると発表した。この数字は3年前と比べ3.5ポイント増になる。発表によると5年相対生存率(すべてのがん)は男性 59.1%、女性66%。
「5年相対生存率」は、特定の年齢の日本人が5年後に生存している確率を100%とした場合に、同じ年齢のがん患者が治療後に何%生存しているかという形で示す。
5年相対生存率は、がん医療を評価する重要な指標として世界的に用いられているもので、がん診療連携拠点病院の評価やがん医療均てん化の評価指標として活用が望まれている。注意する点は、生存率とは、「性別、年齢、治療方法、併存する疾患など患者背景の差が大きく影響する」ということ。したがって生存率そのものではなく、その要因分析が重要となる。
今回は、国立がん研究センターが全国21の府と県で平成20年までの3年間に、がんと診断された患者64万4000人余りのデータを基に推計した。その結果、すべてのがんでの5年相対生存率(男性59.1%、女性66%- 男女合わせ62.1%)を3年前の58.6%と比べると3.5ポイント上がっている。これは前立腺がんや乳がんなど予後のよいがんになる人が増えたことが理由として考えられるという。
がんの種類ごとに生存率の高い順で見ると、男性では、前立腺がんが最も高く97.5%、次いで皮膚がんが92.2%、甲状腺がんが89.5%、膀胱がんが78.9%、喉頭がんが78.7%などとなっている。
また、生存率の低い順に見ると、男性では、すい臓がんが最も低く7.9%、次いで胆のうがんなどが23.9%、肺がんが27%、脳腫瘍などが33%、肝臓がんなどが33.5%などとなっている。
一方、女性で見ると、生存率が最も高いがんは甲状腺がんで94.9%、次いで皮膚がんが92.5%、乳がんが91.1%、子宮体がんが81.1%、喉頭がんが78.2%などとなっている。また、生存率が低い順に見ると、すい臓がんが最も低く7.5%、次いで胆のうがんなどが21.1%、肝臓がんなどが30.5%、多発性骨髄腫が36.3%、脳腫瘍などが38.6%などとなっている。
すべてのがんについて、診断時にがんが1つの臓器の中でとどまる場合の5年相対生存率は男女合わせて90.4%だったのに対し、周囲の臓器に進行した場合は55.1%、血液などに乗って転移した場合では13.6%と、早期に発見するほど生存率が高くなっていた。
国立がん研究センターの松田智大全国がん登録室長は「今後、がんの種類ごとに詳しい分析を進め、治療法が改善されているのかなど分析をしていきたい。各都道府県は、がんの死亡のデータなどと合わせ、がんの医療体制を検証する参考にしてほしい」と話している。
既存生存率集計との比較
5年相対生存率については、都道府県が行う地域がん登録と全国がん(成人病)センター協議会による院内がん登録によるふたつが既存集計として公開されている。しかし、いずれも施設や地域が限定的で、また症例数が少ないなどの課題がある。
国がん(成人病)センター協議会
全がん協の5年生存率は、本集計と同様に院内がん登録をベースとしたもの。最新の全がんの5年相対生存率は69.0%で、同協議会に加盟するがん専門診療施設29施設の2005~2006年診断例から算定した約8万5千例を元に算出されている。 良性腫瘍・上皮内がんおよび病期0期を除き、年齢では15歳未満と95歳以上を除外した上で、自施設で初回治療を開始した例のみを集計対象としている。
地域がん登録
地域の実態把握のため都道府県が実施するもの。最新の全がんの5年相対生存率は58.6%で、登録精度の高い宮城・山形・新潟・福井・滋賀・大阪・長崎の7府県の3年分(2003~2005年)約19万例のデータを元に算出されている。対象として、上皮内がんは除かれており、他にも年齢100歳以上を除くなどに限定して算出されている。
◆特定健診で現行の腹囲基準を維持 健診項目の大筋決まる
厚労省 保険者による検診等の検討会で6項目
――厚生労働省
厚生労働省は7月29日、第23回「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」を開催した。2018~2023年度までの第三期特定健康診査等実施計画期間での特定健診・保健指導の在り方について保険者が取り組むべき6項目の指標が大筋でまとめられた。
保険者が種別に関わりなく共通的に取り組むべき6指標について、次のようにまとめられた。保険者努力支援制度と後期高齢者支援金の加算・減算制度については、この取りまとめをふまえ、保険者種別ごとに具体的な制度設計を検討していく。
予防・健康づくりに係る指標
●指標(1)
特定健診・特定保健指導の実施率、メタボリックシンドローム該当者および予備群の減少率▽特定健診・特定保健指導の実施率、▽メタボリックシンドローム該当者および予備群の減少率、▽健診未受診者・保健指導未利用者対策。
●指標(2)
特定健診・特定保健指導に加えて他の健診の実施や健診結果等に基づく受診勧奨等の取組の実施状況▽がん検診や歯科健診などの 健(検)診の実施、▽健診結果等に基づく受診勧奨や精密検査の必要な者に対する働きかけ、▽歯科のリスク保有者への保健指導等の取組の実施状況。
●指標(3)
糖尿病等の重症化予防の取組の実施状況▽糖尿病等の治療中断者への働きかけや、▽治療中の加入者に対して医療機関等と連携して重症化を予防するための保健指導等を実施する取組。
●指標(4)
広く加入者に対して行う予防・健康づくりの取組の実施状況▽具体例 ICT等を活用して本人に分かりやすく健診結果の情報提供を行うことや、ヘルスケアポイント等による予防・健康づくりへのインセンティブ付与の取組のうち、実効性のあるもの。
医療の効率的な提供への働きかけに係る指標
●指標(5)
加入者の適正受診・適正服薬を促す取組の実施状況指標▽地域のかかりつけ医師、薬剤師等との連携の下、重複頻回受診者、重複服薬・多剤投与と思われる者への訪問指導の実施や、訪問による残薬確認・指導等の取組み。
●指標(6)
後発医薬品の使用促進に関する取組の実施状況▽後発医薬品差額通知の実施や後発医薬品の希望カードの配付など、実施により加入者の後発医薬品の使用を定着・習慣化させ、その後の後発医薬品の継続使用に資するものや後発医薬品の使用割合など
現行の腹囲基準(男性85cm以上、女性90cm以上)を維持
同検討会は、現行の特定保健指導対象者の選定基準を引き続き維持し、現行の腹囲基準(男性85cm以上、女性90cm以上)を内臓脂肪の蓄積を評価する方法とすることを決めた。 内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因の数に着目した現行の特定保健指導対象者の選定基準を、引き続き維持する。
「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」では、虚血性心疾患・脳血管疾患は、腹囲にかかわらず血圧、血糖、脂質等の危険因子と関連していることから、腹囲の基準の見直しを求めている。 腹囲が基準未満でリスク要因(血圧高値、脂質異常、血糖高値)がある者は特定保健指導の対象者とはならないが、これらのリスク要因がある者への対応方法については重要な課題であり、引き続き検討を行うという。
心電図検査は血圧異常などがある人などが対象
心電図検査の対象者は、当該年の特定健診の結果において、血圧が受診勧奨判定値以上の者または問診等で不整脈が疑われる者のうち、医師が必要と認めるものを対象とする。
実施方法は、血圧測定値は特定健診当日に把握可能であるため、当該年の特定健診の結果にもとづき速やかに検査を実施する。速やかに心電図検査が行えない場合は、受診勧奨を行うことを求める。
「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」では、心電図検査の対象者は、「左室肥大や心房細動などを対象疾患とし、血圧が受診勧奨判定値以上の者や問診で不整脈が疑われる者で医師が必要と認める者に対して実施する」と整理された。
眼底検査は血圧または血糖検査の判定値にもとづく
眼底検査については、原則として特定健診の結果で、血圧または血糖検査が受診勧奨判定値以上の者のうち、医師が必要と認めるものを対象とする。
血糖検査は特定健診を実施した当日に検査結果を把握できない場合があり、健診受診者の利便性を考慮し、「眼底検査が必要な者に速やかに検査を実施するためには、前年の検査結果にもとづき対象者を選定することも引き続き可能とすべき」との意見も出された。
「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」では、対象者については「高血圧性網膜症や糖尿病性網膜症などを対象疾患とし、血圧または代謝系検査が受診勧奨判定値以上の者で医師が必要と認める者に対して実施する」とされた。
◆日本の平均寿命が過去最高を更新 厚労省発表
2015年 男性80.79歳、女性87.05歳で過去最高
――厚生労働省
厚生労働省は7月27日、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを数字に表した最新の「簡易生命表」を発表した。この「簡易生命表」は2015年の死亡状況が今後変化しないと仮定した場合に、年齢別に1年以内の死亡率や平均余命などの指標で表したもの。男女別の人口と死亡数を基にして計算されており、年齢構成の影響を受けることはなく、死亡状況のみを表すものとなっている。統計法に基づいた重要な基礎資料として、各種の政策などに役立てられている。
日本の生命表には、「完全生命表」と「簡易生命表」の2種類が存在するが、0歳の平均余命である「平均寿命」は、すべての年齢の死亡状況を集約したものとなっており、
保健福祉水準を総合的に示す指標。「完全生命表」は、国勢調査による人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による死亡数、出生数を基に5年に1度作成し、「簡易生命表」は、人口推計などによる人口と人口動態統計月報年計(概数)による死亡数、出生数を基に毎年作成している。
今回の調査結果の要旨は、
男性の平均寿命は 80.79 年となり、過去最高(平成 26 年の 80.50 年)を更新
女性の平均寿命は 87.05 年となり、過去最高(平成 26 年の 86.83 年)を更新
国別に平均寿命をみると、厚生労働省が調査した中では、日本は男性、女性とも世界のトップクラス
平均寿命は男性80.79歳、女性は87.05歳で、いずれも過去最高を更新。前年比で男性は0.29年、女性は0.22年上回り、平均寿命の男女差は6.26年で前年より0.07年減少した。厚労省は平均寿命の前年との差を死因別にみると、男女とも悪性新生物(がんや肉腫など悪性腫瘍)や心疾患(高血圧症を除く)などの死亡率の変化が平均寿命を伸ばす方向に働いていると説明している。
悪性新生物、心疾患、脳血管疾患」を合計した死亡確率(いずれかで亡くなる確率)は男性51.60%、女性46.92%。他方、「悪性新生物、心疾患、脳血管疾患」を死因として死亡することがなくなったと仮定した場合の平均余命の延びは、男性7.16年、女性5.88年と計算されている。
国別に比較してみると、男性はスイスの81.0歳に次いで世界4位、女性は香港の87.32歳に次いで世界2位であり、依然として日本人の寿命は世界最長クラスでありながら、女性は前年まで3年連続で維持していたトップの座から陥落している状況も見てとれる。