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医療経営情報(2016年8月18日号)

2016/8/19

◆「PT・OT需給分科会」初会合 養成数増加→質低下懸念
厚労省、理学療法士・作業療法士の需給推計式を提案

――厚生労働省
厚生労働省は8月5日、医療従事者の需給に関する検討会の「理学療法士(PT)・作業療法士(OT)需給分科会」を開催し、「理学療法士・作業療法士の需給推計方法」を提案した。厚労省は将来の理学療法士・作業療法士の必要人数である需要推計方法に関して、(1)医療分野、(2)介護分野、(3)その他の分野――に分けて推計することを提案した。都道府県が2017年度中に策定する第7次医療計画(18~23年度)に具体的な医療従事者確保対策を盛り込むことができるよう、各分科会は5回の会合を経て16年内の取りまとめを目指している。
厚労省は、地域医療構想との整合性を確保した医療従事者の需給推計などを検討するため、現在「医療従事者の需給に関する検討会」を設置して議論を進めている。各職種の需給推計などは各分科会で検討しており、5日に下部組織の理学療法士・作業療法士需給分科会の会合を開催した。
今後のニーズ増加は予想されるとしても、このまま右肩上がりでPT・OTの養成数が増えていく事が問題となっている。また「リハビリの時間が過剰ではないか」(人手のかけすぎ、スタッフ増)との声も出ている。
(1)では、「入院医療(一般病床・療養病床、精神病床)、外来医療、在宅医療に分けて需要推計を行う」と基本方針を提示。推計は入院・外来・在宅いずれも「将来のリハビリ需要(算定回数)」に「リハビリ需要あたり理学療法士・作業療法士数」を乗じて算出することを提案した。一般病床・療養病床は高度急性期・急性期・回復期・慢性期ごとに算出して合算する。また、一般病床などは地域医療構想と整合性を保ち、地域医療構想で将来推計を行っていない医療需要は、現状分析などに基づく一定の仮説に基づき推計する。
(2)では、基本方針として「施設・居住系サービス、在宅サービスに分けて需要推計を行う」と示し、将来の需要推計はいずれも「将来の介護サービスの受給者数」に「介護サービス受給者あたり理学療法士・作業療法士数」を乗じた方法を用いると提案。将来の介護サービス受給者と介護サービス受給者あたりの理学療法士・作業療法士数は、近年の推移を踏まえて推計するとしている。
その他の論点として、「労働時間の縮減や年次有給休暇の取得促進などの労働時間・勤務環境改善を見込んだ推計」や「2015年度に導入された地域リハビリテーション活動支援事業に関する、先進的取り組みを参考にした推計」を示している。

厚労省は、理学療法士・作業療法士の供給人数の推計方法を提案。供給推計は「過去の名簿登録者数」に「入学定員数に国試受験率、国試合格率、名簿登録率を乗じたもの」と「入学定員数に国試受験率、国試不合格率、再受験率、国試合格率、名簿登録率を乗じたもの」を加え、就職率を乗じて算出する。なお、需要推計と比較するため、常勤換算従事者数への換算を検討する。
四病院団体協議会(四病協)の調査(今年6月―1061施設回答)によると、2025年までの見通しで理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の雇用を増やす予定と回答した病院は約4割にのぼった。2025年は団塊世代が75歳を迎える時で言語聴覚士(ST)に関しても雇用を「増やしていく」が全体の3割強で、PTやOTの「現状のまま」(22%)を上回った。理由としては高齢者のリハビリや、訪問リハビリに力を入れていく必要性があげられている。なお3職種の雇用見通しについて「未定」と回答した施設が多かった。
<今後の需要推計>
 上位の需要推計:
平成45年(2033年)頃に約32万人で医師需給が均衡し、平成52年(2040年)には医師供給が約1.8万人過剰
 中位の需要推計:
平成36年(2024年)頃に約30万人で医師需給が均衡し、平成52年(2040年)には医師供給が約3.4万人過剰
 下位の需要推計:
平成30年(2018年)頃に約28万人で医師需給が均衡し、平成52年(2040年)には医師供給が約4.1万人過剰

◆“医療事故調”、5件のセンター調査依頼 10カ月間で累計9件
今年7月実績、遺族からは3件、6月に続き医療機関からも

――日本医療安全調査機構
日本医療安全調査機構は8月9日、医療事故調査制度について、7月の1カ月間の実績を公表した。医療事故調査・支援センターへの事故調査依頼は、医療機関からが2件、遺族からは3件、合計5件に上ることが分かった。
2015年10月の制度開始から10カ月間の累計は9件、医療機関の依頼は6月の1件に続き2カ月連続。院内調査を終え、センターに調査結果が報告されたのは20件で、過去10カ月間で最も多い。先々月6月のセンター調査の内訳では、初の医療機関からの依頼が1件あり、遺族からの依頼が1件だった。

医療事故調査・支援センターの調査は医療機関の報告事案のうち、遺族または医療機関がセンターに調査を依頼した場合に行うもの。医療安全の確保と医療事故の再発防止のため、医療機関と連携した事実確認や、院内調査結果の医学的検証、当事者へのヒアリングなどを実施する。

「大学病院の医療事故対策委員会」委員の中島勧氏全国医学部長病院長会議は7月21日の定例記者会見で、医療事故調査制度の正しい理解を普及させるための「基本的考え方」を公表した。
医療事故調査制度の報告対象であるか否かの判断は、あくまで法律に基づいて医療機関の管理者が行うことが必要で、「関係当事者である医療従事者や遺族の意向及び紛争への発展の可能性により判断が左右されてはならない」など、計5項目から成る内容。全国81の医学部・医科大学のほか、広く医療関係者に配布された。
医療安全への機運が高まりを見せたのは、7月23日に都内で開催された「医療事故調査制度の手直し強化措置への対策さらなる医療安全管理の向上を目指して」のセミナーから。医療機関4施設の取り組みが紹介され、2015年10月の医療事故調査制度の開始を機に、全死亡事例を把握し、同制度の報告対象以外の事例検討も行うなど、報告事例の調査を通じた再発防止策の検討に留まらず、同制度が広く医療安全向上につながっている現状が明らかになった。

群馬大学は8月2日、群大医学部附属病院で同じ執刀医の腹腔鏡手術や開腹手術を受けた患者が相次いで術後に亡くなっていた問題で、改革状況について東京都内で会見を開いた。
学長の平塚浩士氏と病院長の田村遵一氏は、医学系研究科の教育研究組織(医学部講座)の再編では、内科と外科では大講座制に再編すると説明した。また、遺族が要望している旧第二外科の執刀医と元診療科長の説明の機会について、大学として引き続き要請していくと約束した。「群大問題」ではすでに医師ら9人が諭旨解雇などの処分を受けている。
この問題で、“事故調”は「病院全体のガバナンス(統治)に不備があった」との立場から、診療、倫理、医療安全、教育など9つの観点で提言をまとめた。男性医師が所属した2外の肝胆膵(すい)(肝臓、胆道、膵臓)担当が少人数で過重な勤務となっていたことを踏まえ、こうした院内の最小診療単位の人員体制やコミュニケーションの状況などが適切かを確認し、改善する必要があると指摘。関連病院にもつながる2外と旧第1外科(1外)の「壁」の解消、2度の症例検討会による手術適応の判断なども提案した。

群馬大医学部「腹腔鏡手術執刀医ら遺族へ直接説明」
8月15日、NHK、地元新聞社の報道によると一連の「群大問題」で、男性医師と当時の診療科長の2人は手術の経緯などを遺族に直接説明する意向を8遺族から委任を受けている被害対策弁護団に伝えたという。弁護団が明らかにしたところによると、男性医師と元診療科長は、書面で質問内容をやりとりした上で、遺族に会って説明する考えを示しているという。今後、時期などは未定で協議の機会を持つ。2014年の問題発覚以降、男性医師らが遺族に説明するのは初めてと弁護団はみている。
説明機会は遺族側が弁護団を通じ、男性医師らに求めていたが、応じられないとしていた。事故調が7月に問題に関する報告書をまとめたことを受け、説明する姿勢に転換したとみられる。

◆2025年を想定した病院の在り方報告書を公表 全日病
医療提供体制、診療報酬体系などのあるべき姿を提言

――全日本病院協会
全日本病院協会(全日病)は8月12日、2025年を想定して医療・介護のあるべき提供体制をまとめた「病院のあり方に関する報告書2015-2016年版」を公表した。
全日病では、同報告書を定期的に作成しており、今回の報告書で7回目となる。全日病の医療提供に関する検討は、1998年に発足した「中小病院のあり方に関するプロジェクト委員会」にて始まり、以降その成果が報告書にまとめられてきた。その後、検討は継続するケアとしての介護にまで及び、2000年からほぼ隔年で「病院のあり方に関する報告書」として医療提供体制、診療報酬体系などのあるべき姿を幅広く提言してきた。

これまで「病院のあり方に関する報告書」の編集方向は、理想的な医療の提供のために①正確な疾病調査、②地域特性をふまえた一定人口ごとの医療圏の設定、③急性期から慢性期、さらには介護まで切れ目ない継続したケアの提供、④提供体制を維持するための科学的な報酬体系の確立、⑤国民の信頼を得るための質向上の取り組み――の重要性を繰り返し示してきた。2016年版も、「2025年問題」という難しいテーマに対する経緯・現状・議論・展望が整理されており、病院関係者のみならず社会科学的なアプローチを試みている関係者、研究者、学生には必読書といえよう。

この報告書は、冒頭から「2025年における医療従事者の需給予測から労働人口は不足するという見通しの中で取るべき選択肢は限られるはずで、競争で生き残りを目指す、あるいは統合して効率化を目指すというドラスティックな取り組みも含め、各病院の理念や病院内外の顧客の要望、経営状況等も踏まえ多面的な検討が必要となろう」と、政治家や医療関係者、企業経営者にまで問題提起をしている。日本は、それだけ深刻な課題を抱えていると言える。

2次医療圏(病院の一般病床、療養病床の整備を図る地域ブロック単位)から全体を俯瞰すると、どのように見えるか?
「2025年以降も介護需要が増大することは確実であるが、介護提供のあり方とともに今から真剣に検討しておくべき課題は、『看取りの場』の問題である。高齢者の割合が30%を超え、病院のベッド数の不足などから死に場所に困る者が年間50万人にものぼるという深刻な事態は「2030年問題」として取り上げられている。
死亡場所は、病院・診療所が約8割と大半を占め、自宅12.8%、老人ホーム(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム等)5.8%、介護老人保健施設2.0%となっている(人口動態調査、2014年)。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年は、医療・介護需要の急速な増加が予測され、「2025年問題」としてクローズアップされているが、それは同時に多死社会へ本格的に足を踏み入れる時期でもある」と指摘する。近未来の日本の形がここに示されている。

『病院のあり方に関する報告書2015-2016年版』【目次】
第1章  「2025年の日本」を想定した報告書
第2章  医療の質と安全確保
第3章  医療費
第4章  医療圏
第5章  医療提供体制
第6章  診療報酬体系
第7章  医療従事者
第8章  病院における情報化の意義と業務革新
第9章  産業としての医療
第10章 「医療基本法」制定に向けて―医療基本法案(全日病版)提案の経緯―
巻末   2025年に向けた今後の病院経営―各施設が取るべき対応

◆16年度療養費のマイナス改定を要求 協会けんぽ・健保連
2013年度に総額4,857億円に、国民医療費の1.2%占める

――全日本健康保険協会
全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合連合会(健保連)は8月9日、2016年度の「療養費改定に当たっての意見(マイナス改定要請)」を厚生労働省に提出した。協会けんぽと健保連は、医療費が伸び続けており、特に柔道整復師・はり灸師・あんまなどの施術や治療用装具作成の療養費が2013年度に総額4,857億円に上り、国民医療費の1.2%を占めたと説明。
2016年度療養費改定に関しては、(1)療養費の引き下げ(マイナス改定)、(2)柔道整復療養費への要望、(3)はり灸・あんま・マッサージ療養費への要望、(4)治療用装具療養費への要望、(5)共通の要望――の5項目を要請として掲げている。

(1)では、「療養費は医療費(総額)の伸びを上回る勢いで増加しており、不適切な請求も後を絶たず適正化が急務」と強調。このため、「2016年度療養費は引き下げのマイナス改定とすべき」と要請している。
(2)では、支給基準に関し柔道整復療養費は負傷部位を単位として算定されるため、多部位請求が多く不適切な請求の温床と指摘。このため、施術1回あたりの料金を定額とする算定方法(定額給付化)への改正を求めた。
また、「不適切な請求が後を絶たず適正化が急務になっている」と訴え、不正請求への対応として「療養費にかかる審査体制の強化」などを要望。柔道整復審査会の機能強化と権限の拡大を実施し、将来的には第3者機関の審査体制構築の検討などを訴えた。
(3)では、支給基準に関し「はり灸の保険適用となる疾患の限定」などを求めた。具体的には、療養費支給の対象疾患を「神経痛」、「リウマチ」、「頸腕症候群」、「五十肩」等に限定。「神経痛」は医師の同意書に対象部位の記載の義務付けを要求している。さらに、事務手続きについて、患者の状態を十分熟知した医師の施術指示を徹底するため、医師が同意に至った経緯(医師による適当な治療手段がないとした理由や症状)を記入させるよう同意書の詳細化を求めた。
(4)では、支給基準の明確化のため、往療料は距離加算の廃止を含め適正化し、やむを得ず往療を行う場合、はり灸・あんまなどは「要介護度3以上の中重度者」などの具体的な基準を満たす患者のみの算定とするよう求めた。

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