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介護経営情報(2016年8月19日号)

2016/8/24

◆“カラオケの第一興商” 音楽で高齢者の介護予防に朗報 

松本市の「退職後男性の生きがいづくり」事業を受託

――第一興商(東京都品川区)

カラオケボックスに飲食業、音楽エンターテインメントを主軸とする第一興商(東京都品川区)が、介護関連事業へ本格的進出を果たした。8月11日、長野県松本市が実施している「退職後男性の生きがいづくり」事業を受託し、同市における地域福祉の拠点である福祉ひろば5地区において、介護予防・健康増進プログラム「スポーツボイス大学院」(女性向け名称は「カレッジ」)を実施すると発表した。事業受託期間は今年9月から来年3月まで。

松本市は、「健康寿命延伸都市・松本」の実現を目指し、多分野にわたり先進的な取り組みを行っている。第一興商は、同市の健康寿命延伸都市構想を推進するための事業を行う健康産業創出に向けた産学官連携のプラットフォーム「松本地域健康産業推進協議会」の会員として、高齢者の介護予防・健康増進を支援する実証実験事業を行ってきた。

2015年度の松本地域健康産業推進協議会の実証実験事業は「スポーツボイス大学院」。スポーツボイスとは、ミュージシャン東 哲一郎氏が世界の一流アーティストたちとのセッションから開発した日本人のためのボディ&ボイストレーニング。ビートの強い音楽に乗せて体を動かしながら、声帯ストレッチや腹式呼吸に重点を置くこのトレーニングは、嚥下(えんげ)機能の向上や内臓脂肪を減らす効果などが期待できる。

15年度の実証実験事業では、閉じこもりが心配される定年退職後の男性を対象に、集団で全身運動、声帯ストレッチや腹式呼吸に重点を置くボディ&ボイストレーニングを行うプログラム「スポーツボイス大学院」を市内3地区の福祉ひろばで行った。15年10月~2016年2月の5カ月間のうち、計49回の講座と発声トレーニングの成果を披露する合同発表会に平均年齢71.1歳の男性計72名が参加、さながら合唱会のように集団で「発表の場を家族に見てもらう」ことを参加・継続の動機としてもらい、結果としての「健康づくり」や「介護予防」を目指した。

また、信州大学人文学部との共同研究では、社会心理学の観点から参加者のパーソナリティにポジティブな影響を与えたり、心理的な健康を向上させたりしたことが明らかになった。さらに、口腔機能の変化に関する測定においては、咀嚼力の改善や嚥下機能を向上させる効果が得られるなど、介護予防や健康増進に寄与することが推察される結果となった。

実証実験事業によるこれらの成果がはっきりと表れた。そして16年度においては、同市の「退職後男性の生きがいづくり」事業として正式に採用され、同社が同事業を受託することが決まった。

9月18日(日)から松本市内の福祉ひろばのうち、島内地区、里山辺地区、寿地区および今井地区の4地区では男性限定の「スポーツボイス大学院」を、鎌田地区では女性限定の「スポーツボイスカレッジ」を同事業として実施する。

同市あがたの森文化会館で行われる開校式(体験入学)を皮切りに来年3月まで、各地区において全16回、1回あたり約90分の発声・歌唱方法を学ぶ講座が行われ、各地区の高齢者が8,000円(税別/16回分)を負担することで参加できる。一般社団法人日本音楽健康協会が資格認定する音楽健康指導士と、昨年度の「スポーツボイス大学院」修了生が協力しながら講座運営にあたり、来年2月4日(土)には家族にその成果を披露する発表の場を設けることで、参加を継続してもらおうと計画している。

生活総合機能改善機器「DKエルダーシステム」が助っ人

今年10月には、高齢者の介護予防や健康増進に役立つ生活総合機能改善機器「DKエルダーシステム」に、「スポーツボイス」を新たなエルダーコンテンツとして搭載する予定。

松本市で実証した全国的にも珍しい高齢男性向けプログラム「スポーツボイス大学院」がコンテンツ化された「スポーツボイス」を活用し、全国の自治体でDKエルダーシステムを用いた介護予防教室等を展開していくことで、特に元気な男性高齢者の外出機会の創出や地域コミュニティの形成に役立てたいという

「DKエルダーシステム」は全国の高齢者施設・行政機関等で約16,000箇所以上(2015年3月末時点)において導入されている。

厚生労働省の指針である「総合的な生活向上」の中では、「運動・口腔・認知」機能向上・改善や「生活・交流・参加」の活性化を介護予防の柱としている。それらを支援する生活総合改善機器「DKエルダーシステム」は、音楽の効用を最大限に活用し健康維持とリハビリ効果を促進させ、高齢者の心身の活性や身体機能の維持、回復に大変効果的とされる。さらに現在行われている共同研究により、介護現場での有効性を検証しながらより良いプログラム作り進めていて将来、介護に頼らない生活を目指すことにつなげるシステム。

◆2025年を想定した病院の在り方報告書16年版公表 全日病

“団塊75歳”を迎える医療提供体制のあるべき姿を提言

 ――全日本病院協会(全日病)

全日本病院協会(全日病)は8月12日、2025年を想定して医療・介護のあるべき提供体制をまとめた「病院のあり方に関する報告書2015-2016年版」を公表した。

全日病では1998年以来、同報告書を定期的に作成しており、今回が7回目の報告書。全日病の医療提供に関する検討は、1998年に発足した「中小病院のあり方に関するプロジェクト委員会」にて始まり成果が報告書にまとめられた。その後、継続するケアとしての介護にまで検討は及び、2000年からほぼ隔年で「病院のあり方に関する報告書」として医療提供体制、診療報酬体系などのあるべき姿を幅広く提言してきた。

これまで「病院のあり方に関する報告書」の編集方向は、理想的な医療の提供のために①正確な疾病調査,②地域特性をふまえた一定人口ごとの医療圏の設定,③急性期から慢性期、さらには介護まで切れ目ない継続したケアの提供、④提供体制を維持するための科学的な報酬体系の確立、⑤国民の信頼を得るための質向上の取り組み、の重要性を繰り返し示してきた。2016年版も、「2025年問題」という難題なテーマに対する経緯・現状・議論・展望が整理されており、病院関係者のみならず社会科学的なアプローチを試みて関係者、研究者、学生には必読書といえよう。

本書は冒頭から政治家も医療関係者も企業経営者にも問題提起をする。「2025年における医療従事者の需給予測から労働人口は不足するという見通しの中で取るべき選択肢は限られるはずで、競争で生き残りを目指す、あるいは統合して効率化を目指すというドラスティックな取り組みも含め、各病院の理念や病院内外の顧客の要望、経営状況等も踏まえ多面的な検討が必要となろう」。日本はそれだけ深刻な課題を抱える。

2次医療圏(病院の一般病床、療養病床の整備を図る地域ブロック単位)から全体を俯瞰すると、どのように見えるか?

「2025年以降も介護需要が増大することは確実であるが、介護提供のあり方とともに今から真剣に検討しておくべき課題は、『看取りの場』の 問題である。高齢者の割合が30%を超え、病院のベッド数の不足などから死に場所に困る者が年間50万人にものぼるという深刻な事態は「2030年問題」として取り上げられている。

死亡場所は、病院・診療所が約8割と大半を占め、自宅12.8%、老人ホーム(特別養護老人ホーム、 有料老人ホーム等)5.8%、介護老人保健施設2.0% となっている(人口動態調査、2014年)。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年は、医療・介護需要の急速な増加が予測され、「2025年問題」としてクローズアップされているが、それは同時に多死社会へ本格的に足を踏み入れる時期でもある」と指摘する。近未来の日本の形がここに示されている。

 

◆介護労働安定センターの組織や運営で検討会

雇用管理改善や能力開発業務に積極的取組を

――厚生労働省

厚生労働省は8月8日、「公益財団法人介護労働安定センターの組織及び運営に係る検討会」を開催し、(1)交付金依存体質の改善、(2)2015年度の取り組み状況、(3)指定法人制度の見直し、(4)最終報告(素案)―を議題とした。同センターは、「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律」にもとづき、1992年に設立。介護労働に関する、専門性の高い人材育成や情報提供、地域の関係機関との連携などに取り組んでいる。

(4)に関し、素案では、(ⅰ)雇用管理改善事業、(ⅱ)能力開発事業、(ⅲ)交付金依存体質の改善――などについて、2012年10月の中間報告以降の取り組み状況を報告している。

(ⅰ)に関し、雇用管理相談援助の対象を、離職率の高い傾向がある小規模事業所や、設置からの年数が短い事業所などを中心に設定して取り組んだ結果、2015年度の離職率は12.6%と、全産業平均と比較して低くなった。

(ⅱ)に関し、2016年度から義務付けられる実務者研修に、再就職または職場定着に資する現場実習等を加味した介護労働講習を2013年度から実施しており、2015年度の介護労働講習修了者の講習後3カ月時点の就職率は92.7%となっている。

また、(ⅲ)については、2012年度、2013年度に介護人材の養成体系が見直され、介護福祉士資格の取得方法が変わったことなどが、同センターの自主事業の取り組みにも影響し、交付金依存率は、2013年度が68.15%、2014年度が68.13%と3分の2を上回ったが、その後の改善に向けた取り組みにより、2015年度には60.44%と3分の2を下回る結果となった。

最終報告素案では、「介護分野の労働力の需要は増大が見込まれる中、同センターは、ニーズの増大や変化を的確に捉え、介護労働者の福祉の増進を図るため、雇用管理改善および能力開発業務に積極的に取り組んでいくべき」とまとめている。

介護職員の離職理由―「家族の介護のために」(アンケート結果)

介護労働安定センターが8月5日公表したアンケート調査で、介護職に従事する人の離職理由が家族の介護によるものだったと回答した事業所がおよそ4分の1にのぼることが分かった。介護保険サービスを行う事業所17,643を対象とし、このうち51.0%にあたる9,005事業所が回答。合計21,848人が回答した。労働者の平均年齢は44.9歳で、男性が20.4%、女性が77.8%。

事業所に対し従業員数について聞くと、61.3%の事業所が足りないと回答。賃金が低いために採用が難しいことを主な理由としてあげている。また、「過去3年間に介護を理由に退職した従業員の有無」の問いには、23.5%の事業所が「いた」と回答した。

早期離職防止や定着促進のために、68.4%が「労働時間(時間帯・総労働時間)の希望を聞いている」ものの、運営上、53.8%が「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を払えない」と回答している。

労働者に介護の仕事を辞めた理由を複数回答で尋ねると、「職場の人間関係に問題があったため」と答えた人が25.4%と最も多く、不満としては50.9%が「人手が足りない」ことや、42.3%が「仕事内容のわりに賃金が低い」ことをあげている。しかし、仕事を選んだ理由を聞くと、52.2%が「働きがいのある仕事だと思ったから」と答え、「今の仕事を続けたい」人が65.5%いることが分かった。

労働者は介護の仕事についてやりがいのある仕事で働き続けたいと思っているが、人手不足や賃金に対して不満を感じている。事業者側は労働時間の面で希望を聞く努力をしているものの、今の介護報酬では十分な予算を確保できておらず、離職を防げないでいる状況が分かる。介護職で働いていながら家族の介護のために仕事を辞めざるを得ない人がいる状況から、現在の介護システムには多くの改善すべき点があると考えられる。

■介護労働者の就業実態と就業意識調査(カッコ内)■

仕事を選んだ理由 「働きがいのある仕事だと思ったから」が 52.2%(52.6%)であった。労働条件等の不満 「人手が足りない」が 50.9%(48.3%)、「仕事内容のわりに賃金が低い」が 42.3% (42.3%)、「有給休暇が取りにくい」が 34.6%(34.9%)であった。

仕事・勤務先に関する希望 (1)仕事(職種)に関する希望は「今の仕事を続けたい」が 65.5%であった。(2)勤務先に関する希望は「今の勤務先で働き続けたい」が 57.5%であった。

 

◆厚労省 年度内に高齢者配食事業者向けガイドライン策定

2025年の在宅医療・在宅介護の需要増に備える

 

――厚生労働省

独り住まいなど在宅高齢者への配食サービス事業者のうち、1割の民間企業で栄養士を配置していないとの厚生労働省の調査結果が問題視されている。栄養士や、より専門性の高い管理栄養士のいずれも置いていない事業者はNPOとボランティア団体では40%に上った。これは厚労省の配食事業に関する「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」で明らかになった。高齢化の進展で配食への需要が高まる中、栄養管理が不十分になる可能性があり、厚労省は年度内に、献立作成や情報提供のあり方などについて、事業者向けのガイドラインを策定する方針を固めた。

対象となるのは、主食や主菜・副菜がある1食分の調理済みの食品を、自宅に継続的に届けている配食事業。健康な高齢者だけでなく、病気を抱える高齢者にも対応している業者を想定している。高齢者は低栄養になる恐れがあり、それを防ぐ狙いもある。

指針では、1食分の栄養価の設定方法、利用者の健康状態の確認方法やそれに見合った献立の選び方、かんだりのみ込んだり(咀嚼、嚥下)するのが難しい人向けの食品を扱う上での注意点、などについて定める予定となっている

配食については、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)において、「配食を利用する高齢者等が適切な栄養管理を行えるよう、事業者向けのガイドラインを作成し、2017年度からそれに即した配食の普及を図る」と示した。そこで厚労省では今年7月「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」を設けた。厚労省によると、配食サービスの市場規模は2014年度までの5年間で1.8倍の1050億円に拡大している。

厚労省が「配食事業の栄養管理の在り方検討会」で示した「基本的方向性」を中心議題に進めた結果、基本的方向性が示された。

方向性は(1)配食事業における栄養管理(献立作成/利用者の栄養状態などへの個別対応/メニューのサイクルなど)、(2)配食を活用した健康管理支援、(3)配食の事業内容に関する情報発信―などを検討すると提案。

厚労省は2015年から2025年にかけて、要介護・要支援認定者数は1.2倍強増加する見込みと説明。また、低栄養傾向(BMIが20kg/平方メートル)の65歳以上の高齢者割合は17.8%で、直近10年間はほぼ横ばいだったとしている。

他方、医療機関退院後の高齢者の行き先は「家庭」が最も多く、75歳以上では約7割に及んでいる。また、介護保険施設退所後の行き先が「家庭」の人は介護老人保健施設(老健施設)で3割、介護療養型医療施設でも1割を占めている。

さらに、厚労省は2012年から2025年にかけて、在宅医療を受ける人が1.7倍、在宅介護を受ける人が1.4倍増加すると見込まれると説明。在宅で現在、居宅サービスを利用する人やその家族の約4割が「食事内容」や「食事の準備・料理」、「食事形態」などについて、心配事や困り事があると回答している、と述べた。

そこで、厚労省は団塊世代が75歳以上となる2025年をめどに、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築に向けて、医療・介護機関と自宅などを切れ目なくつなぐ、適切な栄養管理を可能とする食環境整備が必要と強調した。それだけに栄養士がいないのに、糖尿病食や腎臓病食、減塩食をうたって食事を提供している事業者の存在を問題にした。

検討会は6回を予定しており、2017年3月をめどに配食事業者向けガイドラインが策定・公表される。

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