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医療経営情報(2016年9月22日号)

2016/9/28

◆ 公立病院改革 近隣病院との統合・再編で一層の経営改善を
内閣府「公立病院改革の経済・財政効果」を公

――内閣府
内閣府は、政策課題分析シリーズの「公立病院改革の経済・財政効果について」を公表した。これは近年の公立病院改革による経営改善効果を、個別病院の経営データによって検証するために行われ、今回で10回目となる。
総務省の「公立病院経営改革プラン」の取り組みがあった期間(2007~2013年度)を中心に、専門家による研究会が全632の公立病院の経営状況について分析した。内閣府は、「公立病院が自治体から財政援助を受けながらも慢性的な経営赤字に陥っている病院が少なくない」とした実態を憂慮、経営改革が喫緊の課題と指摘した。

調査結果の概略
①医業収益が改善した病院は290、悪化した病院は342、②医業損益変化の分岐となった主な要因は医業収益の変化であり、医業費用を抑制して経営改善を果たした病院は相対的に少なかった、③医業収益は大規模病院ほど増加し、規模が小さくなるにつれ減少していた、④規模に関わらず平均単価(患者1人当たりの平均診療報酬)は医業収益プラスに寄与し、特に入院患者の平均単価はプラス効果が大きかった、⑤不採算地区の病院では、患者数の減少が平均単価の上昇効果を上回り、全体の医業収益を減少させる結果となった――などの分析結果が明らかとなった。

今後について
人口減少等が一層進む中で、公立病院は地域のニーズに応じ、①大中規模の公立病院は、医療の質的向上を図り、民間病院や公的病院を意識した合理的かつ意思決定の早い経営が求められる、②近隣、距離の近い公立・公的病院との統合・再編や、地方公営企業法の全部適用で経営改善を検討することも有用である、③小規模公立病院は地域で唯一の医療機関となっている場合が多いので、医師や看護師が勤務しやすい環境づくりを進めると同時に、場合によっては再編や統合等も検討し、地域医療の維持と病院経営とのバランスを常に見直していく必要がある――などの提言を行った。

今回の分析は、総務省の「地方公営企業年鑑」における個別病院の経営データ(個票データ)を用いて、公立病院改革による経営改善効果を検証することが狙い。総務省は自治体病院の経営改善を目的に、2007年に「公立病院改革ガイドライン」を公表。その後、各自治体で、経営効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しなどの「公立病院経営改革プラン」を策定し実行。その結果、2008年度には公立病院の7割が経常赤字を計上していたのが、2013年度には赤字病院の割合は5割程度に減少した。

内閣府は、この改革プランの取り組みがあった期間を中心に、個別病院の経営データ(全632病院)に基づき、公立病院の医業収益及び費用の変化について、病床規模別・立地条件別に検証。分析では、「病院自体の経営改革努力」をより明確にするため、自治体からの繰入金は医業収益から除外したほか、過去の投資などの影響を除くために医業費用から減価償却費・消耗費を控除した。
分析にあたっては、632病院を、分類Ⅰ「不採算地区病院(200床未満で最寄りの一般病院まで15㎞以上離れている、あるいは国勢調査の人口集中地区以外の地域にある一般病院)」、分類Ⅱ「採算地区にある200床未満の病院」、分類Ⅲ「200~400床の病院」、分類Ⅳ「400床以上の病院」――に分類した。
また、分析結果をもとに大中規模病院と小規模病院に分け、それぞれについて次のように提言した。
大規模病院について――「診療単価の上昇による経営改善が中心であり、医療の質の向上を図りつつも、民間病院や公的病院を意識した合理的かつ意思決定の早い経営が求められる。また、距離の近い公立・公的病院との統合・再編や、公営企業法の全部適用を検討することも有用であると考えられるが、形式的な形態の変更のみでは、必ずしも経営改善につながらない可能性がある点には留意する必要がある」と提言した。
小規模病院について――「診療単価の上昇効果が小さく、患者数の減少によって経営の改善が厳しい状況にあり、特に一部の不採算地区病院では、病院として十分な医療供給体制を整えることが困難になっている可能性が見受けられる。小規模公立病院は地域で唯一の医療機関となっている場合も多いので、医師や看護師が勤務しやすい環境づくりを進めると同時に、場合によっては再編や統合なども検討し、地域医療の維持と病院経営とのバランスを常に見直していく必要がある。さらに、介護・福祉分野との事業連携などを進めることも重要である」ことを強調した。
◆ 「専攻医の定員、専門医機構や県の権限法制化」を検討
厚労省「医師偏在対策」、12月上旬取りまとめ

――厚生労働省
厚生労働省の「医師需給分科会」(座長=片峰茂・長崎大学学長)は9月15日、第7回会議を開催した。分科会は医療従事者の需給に関する検討会の下部組織。この日は(1)医師偏在対策の主な論点、(2)医師需給分科会の今後の進め方を中心に議論した。
この日の議論の総括として、専攻医の地域別・診療科別の定員を設定し、日本専門医機構や都道府県の専門医の偏在対策に関する役割・権限を法律上、明記するなどの「医師養成過程を通じた医師偏在対策」と、「都道府県における医師確保対策」を今年末にかけて優先的に議論する方針を了承した。
「医師養成過程を通じた医師偏在対策」では、医学部定員の「地域枠」の卒業生が地域に確実に定着する方策の検討を主に行った。

(1)医師偏在対策の主な論点に関して、2016年6月3日に公表された分科会の中間とりまとめでは、医師の地域定着につながるよう、医師が勤務地や診療科を自由に選択するという自主性を尊重しつつ、一定の規制を含めた対策を行うと提言。年末のとりまとめを目指すとしている。
また、2016年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針)」では、医師の地域偏在・診療科偏在の解消に向けて検討を進める対策の例として、「医師養成課程の見直し」と「都道府県の役割強化」が示された。このうち、今回の分科会では(ⅰ)都道府県における医師確保対策、(ⅱ)医学部(地域枠)、(ⅲ)臨床研修、(ⅳ)専門研修――について論点を示した。
(ⅲ)に関し、2015年・2016年の「臨床研修修了者アンケート調査」では、初期臨床研修を出身大学と同じ都道府県で実施した場合、臨床研修終了後に大学と同じ都道府県で勤務する割合が85%となり、初期臨床研修を出身大学と異なる都道府県で実施した場合は大学と異なる都道府県で勤務する割合が84%だった。
このため、厚労省は臨床研修に関する論点として、「臨床研修病院に同一の都道府県内の大学出身の研修医を呼び込むために、どのような方策が考えられるか」などと提示した。
(ⅳ)では、専門医育成のプログラム作成や病院群の設定などに関して、日本医師会・四病院団体協議会は都道府県などの十分な関与を要求。全国知事会は日本専門医機構や都道府県などの役割・権限を明確に法律で規定するよう求めている。
さらに、地域・診療科偏在を解消するため、専門医の診療科ごと、地域ごとの定員の設定や研修施設の認定基準の設定を求める声があがっている。
(2)分科会の今後の進め方では、都道府県における医師確保対策と、医師要請過程を通じた医師偏在対策について議論する。その後、11月に医師偏在対策の骨子を作成し、12月上旬に医師偏在対策を取りまとめる。最終的には、社会保障審議会医療部会で検討を行う、として了承された。
◆ 災害医療―熊本地震での救急医療の検証が必要
厚労省「医療計画の見直し等に関する検討会」開催

――厚生労働省
厚生労働省は、9月9日に第4回「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催、2018年度からの第7次医療計画スタートに向けて、(1)2次医療圏、(2)5疾病・5事業、(3)PDCAサイクル推進のための指標――をどのように考えるかが中心議題となった。
この日の前半は、救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療の5事業の医療の確保に必要な事業(救急医療等確保事業等)の現状と課題について議論、検討会は2018年度からの第7次医療計画の見直しの方向性について了承した。特に救急医療については、高齢者の救急搬送が全体の半数以上を占める現状にあって、適正な搬送先の選定や救急搬送受入体制の構築が課題になっている。受入体制については、消防機関と医療機関が連携し、救急の在り方等を協議するとした。

5疾病・5事業の「5事業」に関しては、前回会議で「引き続き現状の5事業について重点的に取り組む」ことが提案されていた。検討会構成員からは「災害医療について、前回の第6次医療計画で中長期の視点を加えたが、熊本地震などで十分に発揮されたか検証が必要」、「周産期医療と小児医療は二次医療圏で完結すべき。人口減少が進む医療圏では、医療圏を統合する必要があるのではないか」、「地域の特性を強調する必要があるのではないか」などの意見があった。これらの意見を踏まえ、厚労省は5事業の「現状と課題」と「見直しの方向性」を示した。

「救急医療」について
「救急医療」に関して、2004年と2014年の救急搬送人員を比べると、高齢者(65歳以上)が46.1万人増えている。また、2次救急医療機関の1施設あたりの年間救急搬送患者数は、最も多い施設で約1万人/年、最も少ない施設で0人/年と、施設によって大きな差が見られた。これらを踏まえ、厚労省は現状と課題として「救急搬送人員は増加傾向であり、特に高齢者が全体の半分以上占め、内訳として軽症・中等症が増加している」、「医療機関によって受け入れ状況に差が見られる」と現状分析結果を提示し、見直しの方向性を次のように示した。
 地域のメディカルコントロール(MC)協議会などを活用し、地域住民の救急医療への理解を深める取り組みを進めることが必要
 救急センターを含む救急医療に関する医療提供者の機能と役割を明確にし、地域包括ケアシステム構築に向け、より地域で連携したきめ細かな取り組みが必要

「災害医療」について
「災害医療」では、熊本地震について報告。10カ所の病院が避難を強いられたが、原因のほとんどはBCP(事業継続計画)の最初の条件である「耐震」などだった。これらを踏まえ、現状と課題について「災害拠点病院におけるBCP策定はまだ十分でない」、「今後想定される大規模災害時に備えるためには広域医療搬送を含めた訓練が必要」と説明し、次のように見直しの方向を示した。
 都道府県や医療チームとの連絡調整を行う災害医療コーディネート体制を整備・強化していく
 EMIS(広域災害救急医療情報システム)の導入を含むBCPの策定は、地域の一般病院においても重要であり、推進することが必要
 災害時における近隣都道府県との連携を強化する

「へき地の医療」について
「へき地の医療」では、現状と課題を「巡回診療、医師派遣、代診医派遣のいずれも実施していないへき地医療拠点が一定程度存在」、「へき地の保健医療体制の確保は、県全体の医療従事者の養成・確保策と連動することが必要」などと説明し、見直しの方向性を次のように示した。
 へき地医療対策を他の医療計画における医療従事者の確保などの取り組みと連動させ、「へき地保健医療計画」を「医療計画」に一本化して推進する
 「指定要件の見直し」などを通じてへき地拠点病院の取り組みを着実に進め、医師確保の取り組みと併せて、へき地の医療提供体制を充実させる必要がある

「周産期医療」
「周産期医療」では、現状と課題として「都道府県をまたぐ広域の母体搬送」、「災害時の小児・周産期医療ニーズへの対応や、災害医療との連携が不十分」などと指摘。見直しの方向性として、以下の3項目を提示した。
 「周産期医療体制整備計画」を「医療計画」に一本化し、ハイリスク妊産婦・新生児に関する整備を都道府県の医療体制整備と連動して推進する
 二次医療圏を原則としつつ、圏域を弾力的に設定することが必要
 災害時、小児・周産期医療について対応できる体制構築が必要

「小児医療」について
小児救急医療を含む「小児医療」では、現状と課題を「小児科のかかりつけ医機能を充実させるとともに、保護者に対して受診のあり方を説明することが必要」、「日本小児科学会は小児中核病院と地域小児医療センターのどちらも存在しない圏域に、地域振興小児科(独立型)を設置することを提言している」などと説明。見直しの方向性として次の2点を示した。
 日本小児科学会の提言も踏まえ、小児人口が少なく拠点となる医療機関が存在しない地域では、拠点となる医療機関と連携し、地域のニーズを踏まえた医療体制とすることが必要
 人材の育成、地域住民の小児医療への理解を深める取り組みを進めることが必要

5疾病は、「広範かつ継続的な医療提供が必要な疾病」として、▽がん▽脳卒中▽急性心筋梗塞▽糖尿病▽精神疾患(前回の計画から追加)――が対象となる。
◆ 平成27年人口動態統計(確定数)の概況 厚労省
調査開始以来、乳児死亡数が初めて2000人割る

――厚生労働省
厚生労働省では、9月13日、平成27年人口動態統計(確定数)の概況を取りまとめ公表した。人口動態統計(確定数)は、出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の実態を表すものとして毎年作成しており、今年5月に公表した平成27年人口動態統計月報年計(概数)に修正を加えたもの。
人口動態調査は、「戸籍法」及び「死産の届出に関する規程」により届け出られた出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数を対象及び客体としているが、この統計は日本において発生した日本人に関する事象を集計したものであり、月報年計(概数)に若干の修正を加えたものが年報確定数である。
出生数は100万5677人で、前年の100万3539人より2138人増加した。死亡数は129万444人で、前年の127万3004人より1万7440人増加した。死因順位で1位の悪性新生物(癌)については、昭和38年の調査開始以来、上昇を続けており、今回調査でも死亡総数の28.7%を占めて死因順位の第1位となった。乳児死亡数は2000人を下回った。これは調査を開始した明治13年以来、1世紀を超す「快挙」だった。

【調査結果のポイント】
○ 出生数は増加 平成27年 1,005,677人(+2,138人) ← 平成26年 1,003,539人
○ 死亡数は増加 平成27年 1,290,444人(+17,440人) ← 平成26年 1,273,004人
○ 乳児死亡数は 平成27年 1,916人(△164人) ← 平成26年 2,080人 過去最少
○ 自然増減数は 平成27年 △284,767人(△15,302人) ← 平成26年 △269,465人 9年連続減少
○ 婚姻件数は減少 平成27年 635,156組(△8,593組) ← 平成26年643,749組
○ 離婚件数は増加 平成27年 226,215組(+4,108組) ← 平成26年222,107組

調査結果の概要
① 出生数は増加
出生数は100万5677人で、前年の100万3539人より2138人増加した。母の年齢(5歳階級)別にみると、出生数は29歳以下の各階級及び50歳以上では前年より減少したが、30~49歳の各階級では増加した。出生順位別にみると、第1子は前年より増加したが、第2子及び第3子以上では減少した。母の年齢(5歳階級)別と出生順位別を併せてみると、30~44歳の各階級ではいずれの出生順位も前年より増加したが、15~24歳の各階級ではいずれの出生順位も前年より減少した。
② 死亡数は増加
死亡数は129万444人で、前年の127万3004人より1万7440人増加した。死因別にみると、悪性新生物(癌)の死亡数は37万346人で、死亡総数の28.7%を占めて死因順位の第1位となった。なお、第2位は心疾患、第3位は肺炎であった。乳児死亡数は1916人で、前年の2080人より164人減少し、調査開始(明治32年)以来、初めて2000人を下回り、過去最少であった。また、乳児死亡率(出生千対)は1.9で前年の2.1より低下し、過去最低となった。
③ 自然増減数は減少
出生数と死亡数の差である自然増減数は△28万4767人で、前年の△26万9465人より1万5302人減少し、9年連続でマイナス、減少となった。
④ 死産数は減少
死産数は2万2617胎で、前年の2万3524胎より907胎減少し、死産率(出産(出生+死産)千対)は22.0で、前年の22.9より低下した。
⑤ 婚姻件数は減少
婚姻件数は63万5156組で、前年の64万3749組より8593組減少した。
⑥ 離婚件数は増加
離婚件数は22万6215組で、前年の22万2107組より4108組増加した。

なお、今回は実数及び分母に人口を用いない人口動態諸率のみを公表し、合計特殊出生率等の分母に人口を用いる人口動態諸率については、平成27年国勢調査の年齢別人口確定後に算出・公表するとしている。

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