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介護経営情報(2016年10月14日号)

2016/10/19

◆「生活援助」の介護保険適用は継続へ 

事業者への介護報酬引き下げは検討を続ける

――厚生労働省

10月12日、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、訪問介護の中でも掃除や選択、買い物、調理などを行う「生活援助」は、介護保険の対象として継続させる方針を示した。介護費用の抑制のため、介護保険の適用外として自治体の事業へ移行することを検討してきたが、当面見送られることとなる。

訪問介護のサービスは、入浴や着替え、排泄や食事の解除など利用者の体に直接触れる「身体介護」と、掃除や選択、買い物、調理、薬の受け取りなどの「生活援助」の2種類がある。要介護1~5の認定者は、原則として自己負担1割でこれらのサービスを利用可能だ。

厚生労働省が10月4日に公表した「介護保険事業状況報告(暫定)」によれば、要支援・要介護該当者の総数約611万人に対して、「要介護1」は約120万人、「要介護2」は約106万人。つまり「要介護1」「要介護2」の該当者は約226万人と、介護保険被保険者の約37%を占めている。

訪問介護の中でも「生活援助」サービスの利用率が高いのが、この比較的介護の必要度が低い「要介護1」「要介護2」の該当者であり、一部で「ヘルパーを家事代行として活用している」と指摘をされてきた。そのため、膨らみ続ける社会保障費を抑制したい財務省からは、再三にわたって「要介護1」「要介護2」を対象に「生活援助」の利用を原則として自己負担にするよう求められてきた。

これを受け、厚生労働省では「生活援助」を介護保険の給付対象から外して自治体の事業に移行することを検討してきた。しかし、社会保障審議会介護給付費分科会では「利用者の切り捨てにつながりかねない」「介護保険から外すことで重度化につながる恐れもある」などの慎重論が相次いだ。現在、「要介護1」より軽度な「要支援1」「要支援2」の訪問介護は2017年度までに3年間をかけて自治体の事業に移行しているため、まずはこれを着実に進め、結果を検証したうえで検討するべきとの判断に落ち着き、今回の見送りに至った。

一方、社会保障費の抑制を実現するため、「生活援助」を提供する事業者への介護報酬引き下げや、利用者の自己負担割合を現在の1割(一定所得のある人は2割)から引き上げることの検討は続ける。社会保障費の抑制を実現するため、財務省との協議を継続して年内に結論を出す方針で、今後の動きから目が離せない状況だ。

 

◆厚生労働省 高額な福祉用具レンタルの抑制対策案提示

価格の「見える化」を目指し公式サイトに専用ページを開設

 

――厚生労働省

厚生労働省は、10月12日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会で、高額な福祉用具の価格設定を抑制するための対策案を明らかにした。レンタル料が一般的な水準よりも高額に設定されることを防ぐのが狙いだ。

具体的には、利用者が接する福祉用具専門相談員が製品価格や特徴を説明するとともに、1つだけでなく複数の製品を提示することも義務付ける方向。また、福祉用具専門相談員が作成するサービス計画書を、利用者だけでなく介護サービス計画を作成するケアマネジャーと共有することも義務付け、利用者が適正価格で最適な福祉用具を利用できるようにする。事業者が極端に高額な価格を設定したい場合は、事前に介護保険の保険者である自治体の了解を必要とすることも提案に盛り込んでいる。

また、利用者側もレンタル価格の目安を知ることができるように、すべての福祉用具のレンタル価格情報をインターネット上で公表する予定。全国規模でレンタル料を把握・比較できるページを厚生労働省のウェブサイトに開設し、「価格の見える化」を徹底する意向だ。

車イスや電動ベッドなどの福祉用具の利用は、介護保険が適用されている。利用者の自己負担は原則1割だが、市場価格よりも格段に高額な価格設定がされているケースも多い。たとえば、電動ベッドの平均レンタル料は月額約8800円だが、10倍以上となる月額10万円で介護保険の適用を受けている例も報告されている。

福祉用具レンタルの費用額は2007年度から右肩上がりに増え続けており、2014年度には約2755億円に達している。また、特定福祉用具の購入費は2014年度で約140億円と、圧倒的にレンタル利用率が高い状況であり、介護保険給付費を膨らませている原因にもなっているため、財務省などが早急な改善を求めていた。

 

◆介護職の新たな入門研修制度を2017年度中に導入

中高年や子育てを終えた女性など幅広い人材が対象

 

――厚生労働省

厚生労働省は10月5日、介護の仕事が未経験な人を対象にした新たな入門研修制度を導入する方針を明らかにした。介護業界で働きやすい環境を整えることで、深刻化する人手不足の解消へつなげるとともに、働き場所を求めている人材の受け皿とする考えだ。

新制度の内容を検討しているのは、同省の社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会。早急に大枠を固め、2017年度中の実施を目指している。

研修は、必要最低限の知識・スキルが得られることを目標とする方針。介護保険制度の理念をはじめ、入浴や食事、着替え、排泄といった身体介助の基礎、緊急時の対応などがカリキュラムの例として挙げられている。研修の実施期間は、介護の入門資格である「介護職員初任者研修」(130時間)よりも短期間となる数十時間として、幅広い人材の参加を促す。試験は課さずに、研修を受ければ「研修修了者」として認定され、事業所で就業した際、有資格者に次ぐ待遇が受けられる制度設計を行う見通し。

主に対象としている人材は、仕事を離れた中高年世代や子育てが落ち着いて時間に余裕ができた女性など。難易度や所要時間に難色を示して資格取得に踏み切れない人にとっては、新たなスキルと働き場所を同時に得られるチャンスとも言える。

現在でも、特別養護老人ホームなどの介護施設で働くのに資格取得は義務付けられてはいない。しかし、最低限の知識と経験が求められる仕事だけに、事業者側としても未経験者を安易に雇用できないのが実情だった。今回の新制度では、研修を実施する事業所へ当該費用を助成することも検討されているため、事業者側にとっては低リスクで人材教育のノウハウを高め、人材確保へとつなげることも期待できる。

なお、厚生労働省はこのほかに、介護福祉士がより高いスキルを修得できる研修制度の創設も検討中。現場でリーダーとして活躍できる人材の育成を目的としており、介護福祉士のモチベーションアップや、魅力的なキャリアプランの提示とすることができる。今後の介護業界での人材マネジメントに役立つ制度となる可能性は十分だ。

 

◆介護職員の賃金、来年度からの1万円アップが本格検討へ

事業所の昇給実態も公表され、より法的遵守が問われることに

 

――厚生労働省

厚生労働省は、10月12日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会で、介護職員の賃金引き上げについて本格的な検討を開始した。政府が掲げる「介護離職ゼロ」を実現するための処遇改善策のひとつ。2017年4月から月額1万円相当のアップが決定する見通し。

介護職員の処遇改善については、4月に安倍晋三首相が「一億総活躍国民会議」で2017年度から賃金を引き上げる方針を表明。6月1日の記者会見でも「介護職員の処遇改善など、一億総活躍プランに関する施策については、アベノミクスの果実の活用も含め、財源を確保して優先して実施していく」と明言し、翌2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」で「月額平均1万円相当の改善を行う」方針を打ち出していた。

こうした安倍首相の強い意向を受け、社会保障審議会介護給付費分科会でも具体的な議論を開始。今までに「他の対人サービス業に比べ、介護職員の給与水準は実際に1万円低い」といった調査結果を発表。現在の介護職員の賞与込み月額給与は26万2300円(勤続6.1年)だが、宿泊業などを含めた対人サービス業の従事者(勤続7.9年)の27万3600円にそろえたいとしてきた。一方で、賃金の引き上げは介護保険の給付費引き上げにつながるなどの指摘もあり、細かい調整が求められていた。

なお、今回の会合では、定期昇給の規定自体がない介護事業所が全体の46.5%を占めていることが挙げられ、賃金引き上げの仕組みを見直すべきとの方向が示された。また、定期昇給の規定があっても、そのうち1割では実際の昇給が行われていないことや、定期昇給を行っている事業所でも、「賃金表」に基づいた昇給を行っているところが35.6%にとどまっていることが問題視された。「賃金表の定めもない事業所に公的な資金を投入すべきなのか」といった厳しい意見を述べる委員もおり、今後、介護事業所にコンプライアンス意識の徹底がより求められることも窺わせている。

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