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介護経営情報(2016年10月21日号)

2016/10/26

◆介護職の再就職支援準備金、14都府県で倍増に
「介護離職防止支援助成金」も新設 第2次補正予算

――厚生労働省
10月11日、今年度の第2次補正予算が成立した。「介護人材の確保、介護離職防止の推進等」に166億円が割り当てられ、再就職準備金を倍増するなどの拡充が行われる。深刻な人手不足に悩む事業者にとっては朗報だ。

再就職準備金貸付制度は、アベノミクスの成長戦略のひとつである「介護離職ゼロ」を実現するため、2015年度の補正予算で新たに設けられた。介護職を離れた人が戻ってきやすくするための制度で、復帰を条件に最大20万円を貸付。2年間仕事を続ければ、返済が免除される仕組みだ。今回の第2次補正予算では、この制度を拡充するために10億円を用意。一部の地域を対象に、現行の20万円の倍増となる40万円を上限に貸付を行う。

対象となる地域は、「人材の確保が特に困難な地域」とされる全国14の都府県。東日本大震災および熊本地震で被災した岩手県、宮城県、福島県、熊本県の4県と、今年4月時点で介護職の有効求人倍率が3倍以上だった10都府県だ(茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、岐阜県、静岡県、愛知県、大阪府、奈良県)。

また、注目したいのは「介護離職防止支援助成金(仮称)」の新設だ。特別会計として11億円が計上され、離職防止策を実施する事業主に助成金が支給される。継続雇用を前提に、職場環境の整備や介護支援プランの導入を行う必要があり、具体的には、介護職員の円滑な介護休業取得や、介護のための時差出勤制度などが対象。
さらに、生活保護受給者などを雇用した場合の助成金や、キャリアアップ助成金の拡充、2017年4月から行われる介護職員給与の月額1万円アップのための特例的な積増しも行われる。介護事業主にとっては、今後の運営戦略を練るうえで必ず検討に加えておきたい内容と言えよう。
◆「高額介護サービス費」の上限額、引き上げへ
一般的な所得がある世帯は月額4万4000円に

――厚生労働省
厚生労働省は10月19日、社会保障審議会の介護保険部会で、介護サービスを利用した際の自己負担額を見直す案を提示した。一定の所得がある世帯を対象に、月額4万4000円まで引き上げる方向だ。

現在、介護保険を利用すると、指定の介護サービスを原則として1割負担で受けることができる。1カ月の自己負担額が一定の基準を超えた場合、超過分が払い戻される制度が「高額介護サービス費」だ。
「高額介護サービス費」の上限額は、自己負担額が重くなりすぎないようにするため、利用者の所得状況によって5段階に分かれている。生活保護受給者は、個人負担の上限額が1万5000円。世帯全員が市区町村民税を課税されておらず、前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の場合、個人負担上限額が月1万5000円で、世帯合算での負担上限額が月2万4600円。世帯の中の誰かが市区町村民税を課税されていれば、世帯合算の負担上限額は月3万7200円だった。
今年8月からは、同一世帯内に課税所得145万円以上ある65歳以上の人がいる場合、負担上限額が世帯合算で月4万4400円にまで引き上げられた。課税所得145万円の場合、おおよその年収は370万円。つまり、「現役並みの所得がある」と判断され、引き上げの対象となった。

前回の引き上げからわずか2カ月強で検討がスタートした今回の見直し案では、これまで月3万7200円が負担上限額だった世帯が、現在の最高額となる4万4000円まで引き上げられる。他の対象者に対する見直しはされていない。
介護保険部会では、「利用者の多くは年金生活者で、低所得者も多い」などといった反対意見が出され、慎重な検討を求める声もあがった。厚生労働省は今年末までに引き上げ額を調整するとしているが、決定までには関係各方面との細かい調整が必要なことが予想される。
◆経団連 介護保険の利用者負担を原則2割に引き上げと提言
総報酬割の導入には反対の意向を表明

――一般社団法人 日本経済団体連合会
経団連は10月18日、「医療・介護制度改革に対する経団連の考え方」を発表。現在、原則1割としている介護保険の利用者負担割合を、2割に引き上げる提言を行った。また、各保険者の総報酬額に応じて利用者が介護納付金を負担する「介護納付金の総報酬割」については、導入すべきではないとの考えを示した。

経団連がこの提言を行った背景には、増え続ける医療費を抑制するための取り組みが十分に進んでいないとの判断がある。社会保障制度の持続可能性を確保するため、実効性のある制度改革を早急に行うよう政府に突きつけた形だ。

提言の中では、まず医療保険・介護保険の給付の徹底した適正化、効率化を求めた。具体的な施策例として、軽度者への介護給付の給付率引き下げや外来受診の定額負担の導入、高額薬剤の薬価適正化を挙げている。

介護軽度者への給付率引き下げについては、「要支援1、2」および「要介護1、2」を対象に、生活援助サービスを自治体の事業に移行させる案も盛り込んでいる。また、福祉用具貸与、住宅リフォームなどについては全額自己負担も視野に入れた給付率引き上げを提案。重度者への給付についても、適正化・効率化を図る必要があるとした。
「高額介護サービス費」については、自己負担額を4万4000円に引き上げるとしており、厚生労働省の方針と足並みを揃えている。
介護保険の利用者負担については、低所得者に配慮すると前置きしつつ、一律2割負担を提言。現在、2割負担の対象となっているのは、単独世帯で年収280万円以上、2人以上世帯で年収346万円以上だが、所得に関係なく負担割合を公平にしようという考えだ。
また、医療保険で3割負担の対象となる「現役並み所得」(単独世帯は年収383万円以上、2人以上世帯は年収520万円以上)も見直しを提言。対象年収額を引き下げることで、3割負担の層をより厚くし、社会保障費の抑制につなげる狙いだ。

これらの提案の背景には、介護職員の給与水準が他の対人サービス業と比べて低い現状がある。政府がアベノミクスの成長戦略の中で「介護離職ゼロ」を掲げていることもあり、2017年4月から月額1万円相当のアップが検討されているが、その財源確保のための施策と言える。介護職員の処遇を改善することで、ケアマネジメントの質向上を図りたい意向だ。

一方で、2018年度をめどに厚生労働省が導入を目指している「介護納付金の総報酬割」については、反対の意向を表明。「協会けんぽに対する国庫補助削減のための負担の付け替え策にすぎない」とし、介護保険制度を持続させるのになじまないとしている。さらに、健康保険組合からの拠出金が介護保険料収入の4割以上を占めていることを挙げ、総報酬割を導入することは企業や会社員にとって負担が増えると懸念を示した。

10月12日には、厚生労働省の同諮問機関である社会保障審議会介護給付費分科会で生活援助サービスの介護保険適用は継続させる方針が示されたが、政界・財界に大きな影響力を持つ経団連から提言が出されたことにより、軌道修正を余儀なくされる可能性もある。今後の動きからも目が離せない。
◆老人福祉・介護事業所の倒産が過去最多ペース
9月時点で年間最多記録を突破

――東京商工リサーチ
今年1月から9月の間で、老人福祉・介護事業所の倒産が累計77件に達したことが、東京商工リサーチの調査でわかった。同社は2000年に介護保険法が施行されたことを機に、同調査を開始。昨年1年間で76件というのがこれまでの最多だったが、今年はすでに9月時点でそれを上回ったことになる。

小規模で事業年数の浅い事業者が大半を占めているのが特徴的で、負債額5,000万円未満の事業所は全体の7割近くとなる53件。2011年以降に設立された、事業年数5年以内の事業者は36件と、全体の半数近くとなっている。倒産した業種としては、デイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」と「訪問介護事業」を手がける事業所が各32件ともっとも多い。

倒産原因としては、販売不振によるものが51件と、こちらも全体の7割近く。前年同期に販売不振が原因で倒産した事業所は25件だったことから、業界内の競争が激化していることが読み取れる。

これらのデータから見えてくるのは、低資本・小規模で参入したものの思うように売上が上がらず、運転資金が枯渇してしまった事業者の姿だ。東京商工リサーチも「事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が想定通りに業績を上げられず経営に行き詰ったケースが多い」と指摘している。

さらに、事業消滅型の破産が75件とほとんどを占めているのも見逃せない。民事再生法の適用を申請した事業者は1件もなく、再建の意志があっても続けられない現実が明らかとなった。東京商工リサーチの調査では、全国の老人福祉・介護事業者3,889社の2016年3月期決算で増収増益だったのが30.8%、減収減益だったのも同じく30.8%と、「勝ち組・負け組」が二極化していることも判明している。深刻な人手不足を解消するために人件費を上げることも収益悪化の原因となっており、昨年4月の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられたのも大きく響いていると言えよう。
こうした現状も踏まえ、10月11日の第2次補正予算では、介護事業主を対象にした複数の助成金制度が創設・拡充されている。国の政策や自治体の支援策には常に目配りをし、助成金の交付が受けられるよう体制を整えておくことが、介護事業主に求められるのではないだろうか。

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