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介護経営情報(2016年12月9日号)

2016/12/16

◆小池東京都知事、特区での混合介護解禁を検討と表明
「介護職員の処遇改善にもつながる大変よいアイデア」

――国家戦略特別区域会議
 12月2日に国家戦略特別区域会議が開かれ、小池百合子東京都知事は東京都の特区で「混合介護」の展開を検討すると表明。介護保険制度の運営を担う区市町村を始め、広く関係者から意見を聴取しながら具体的な内容を調整していく意向。

 現在の介護保険制度では、介護保険が適用されるサービスと介護報酬の対象とならない保険外のサービスを同時に提供する「混合介護」は原則として禁止されている。そのため、要介護者のペットの散歩を代行することや、本人以外の同居者向けの食事の用意をすることができないなど、ケースバイケースの対応ができなかった。
 
 また、保険外の介護サービスは、介護報酬よりも低い料金設定としなければならない。そのため、介護事業者側が積極的に取り組めないのも、今まで「混合介護」解禁に至らなかった理由と言えよう。しかし、特に訪問介護の現場では柔軟な対応が求められるケースも多いため、規制緩和の必要性が議論されてきた。

 9月5日には、公正取引委員会が「介護分野に関する調査報告書」を発表し、「混合介護」の導入やサービス価格の自由化、特別養護老人ホーム(特養)の運営に関する規制緩和などを提言。翌週の9月12日には、国の成長戦略案を作成する未来投資会議の初会合で「介護は保険外サービスとの組み合わせが必要」と打ち出され、その翌日には塩崎恭久厚生労働相が「高齢者やその家族、あるいは働く方々にとってプラスになり、トータルとして前進できる政策を実行していく」と明言。「混合介護」解禁へと急速に向かっていた。

 小池都知事は、混合介護について「利用者の利便性やサービスの質の向上、さらには介護職員の処遇改善にもつながる大変よいアイデア」と発言。今後、介護保険制度の中で具体的にどのような規制が障壁となっているのかを見極めるため、実証実験という形で取り組んでいきたい意向を示した。特区での取り組みで結果が出れば、一気に「混合介護」のマーケットが生まれる可能性があり、今後の推移から目が離せない。

◆紙の帳票に手書きするだけでデータベース化が完了
コクヨのデジタルノート「CamiApp S」がクラウド型ケア記録システムと連携

――コクヨ株式会社
12月8日、文具大手のコクヨ株式会社は、福祉・医療分野向けのシステム開発を行っている株式会社ブルーオーシャンシステムとの協業を発表。デジタルノート「CamiApp S」とブルーオーシャンシステム社のクラウド型ケア記録システムを連携させた介護向けソリューションを2017年1月12日から提供開始する。

この介護向けソリューションは、紙の帳票に手書きで入力するだけで、介護記録管理システムのデータベースへ自動で転送・反映される画期的なもの。帳票を撮影したりスキャンしたりする必要もなく、ただ「CamiApp S」のページ右下にあるチェックボックスにチェックを入れるだけで、Bluetoothを介してスマートフォン経由でクラウドサービスにつながり、テキスト認識されてデータベースへ自動的に入力される。現場でタブレットやパソコンを起動させる必要もなく、作業を進めながらメモをしていけば良いので、本来の介護業務により集中することができる。

手書きで記入した原本が残るのも特徴。訪問先で控えを渡したり、押印やサインがなされた原本を残したりと、複写式の帳票のような活用が可能。最先端のデジタルソリューションでありながら、運用はあくまでアナログであるため、IT機器を苦手とする介護職員や現場のヘルパーでもすぐに使うことができる。

そして、介護記録の作成や入力作業にかかっていた時間を大幅に削減できるため、労働時間の超過を避けられるとともに、現場での作業後に事務所へ戻って入力作業を行う必要がなくなるのも魅力だ。無駄な残業代を支出する必要がなくなるため、事業所の運用コストを抑えることができる。その日の介護記録が迅速にデータ化されるため、現場の作業内容を確認する管理者側にとってもメリットは大きい。とりわけ、多数の介護職員が勤務する事業所にとっては、労務管理の省力化にもつながるため、検討に値するソリューションと言えよう。

◆「介護ロボット導入効果検証委員会」を新たに設置
収集・分析した実証データは、開発や介護報酬改定の検討材料に

――未来投資会議
12月7日、未来投資会議の構造改革徹底推進会合「医療・介護―生活者の暮らしを豊かに」が開かれ、介護ロボットの導入促進に向けた取り組み案が提示された。新たに「介護ロボット導入効果検証委員会(仮称)」を設置して実証研究を推進し、どの程度介護現場の負担が軽減できたかを分析するほか、その結果を介護報酬のインセンティブ付けの検討材料にすることも目指す。

介護ロボットには、要介護者の自立支援を促すとともに、介護現場の負担を軽減し、生産性を向上させられるとの期待が集まっている。厚生労働省および経済産業省は、開発・導入の支援を強化することに加え、実証実験で得られた改善成果を分析・検討し、現場ニーズに合った介護ロボットの開発・導入を行いたいとした。
そのために新たに設置するのが、「介護ロボット導入効果検証委員会(仮称)」。実証実験を介護現場で行ったうえで、どのくらい成果(アウトカム)が挙がったかといったデータを収集・分析することで、1台数百万円から数千万円と非常に高額なために導入スピードがなかなか上がらない介護ロボットの普及につなげる。

また、単に介護ロボットを普及させるだけでなく、収集したアウトカムデータは、介護報酬や人員配置、施設基準などの見直しの際にも活用する。すでに政府は、介護ロボットを導入する事業者に介護報酬を加算する方針を明らかにしているが、インセンティブの設定をどの程度にするかは決まっていないため、アウトカムデータをもとに基準を割り出したい考えだ。

インセンティブの付与に関して、塩崎恭久厚生労働相は11月10日の未来投資会議で「2018年度の介護報酬改定で組み込みたい」と発言。2018年度の改定に間に合わせるためには、早急な実証実験と検証が必要であり、現在以上に国からの後押しが強まることが予想される。その結果、一気に介護ロボットの開発が進めば、深刻化する介護現場の人手不足を解消する一手となり得る可能性もあるのではないだろうか。

◆全国老施協、自立支援の尺度を要介護度の軽減とすることに反発
「特養で利用者の状態が重くなるのは自然の摂理」厚労相へ意見書

――全国老人福祉施設協議会
12月8日、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人などで構成される全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は、塩崎恭久厚生労働相へ「いわゆる『自立支援介護』について」と題した意見書を提出。要介護度の軽減を自立支援介護の成果とする政府の方針に異議を唱えた。

全国老施協は、意見書の中でADL(日常生活動作)はQOL(生活の質)向上を実現するための手段に過ぎず、ADLが回復したことを自立した状態と捉えることはできないと主張。自立とは、身体機能だけでなく社会生活や個人の尊厳を含めた状態であり、「自立支援介護は『自己実現』介護であるべき」だとした。

もしADL回復だけを目指した「自立支援介護」を推進した場合、利用者の意に反して栄養を必要以上に与え、歩行器で歩かせることを強いることになりかねず、「QOL向上を伴わないADL回復の目的化」が促進されるリスクがあると指摘。特に、特養を「安心・安全の終の棲家」と考えている単身者や独居者の場合、本人が望まない自立支援介護を行うことは、虐待となる可能性すらあると警鐘を鳴らした。

また、昨年4月から中度・重度である要介護度3以上が入所対象者となった特別養護老人ホームでは、平均年齢が80歳以上の施設がほとんどであり、入所後は徐々に状態が重くなるのが大半で、機能訓練によって現状を維持できるケースは限られていると説明。「経年とともに健康状態が悪化する自然の摂理にほかならない」と訴え、要介護度の軽減のみを介護施設の適切な役割と評価するのは、「支えが必要な人に対して最適かつ必要な方法で対処すべき」である介護保険制度の歴史に逆行するとしている。

介護保険制度については、安11月10日の未来投資会議で安倍晋三首相が「介護保険制度を自立支援に軸足を置いて設計し直す」と表明。「介護が要らない状態までの回復をできる限り目指す」として、標準化された自立支援の取り組みを行っていない介護事業所に対し、2018年度の介護報酬改定でディスインセンティブ措置も盛り込むことも検討する方針を示している。
今回の全国老施協の意見書は、この方針に真っ向から反対するもの。少なくとも特別養護老人ホームの運営者にとっては、自立支援への取り組みを介護の本質部分と捉えていないことが浮き彫りになったと言える。
しかし、年々増加を続ける社会保障費の抑制は、政府にとって最重要課題のひとつ。利用者負担割合も3割に引き上げる方向で議論が進んでいる。中重度の要介護者に対する給付を安定的に持続させるための措置としているが、果たして自立支援の取り組みについても、中重度の要介護者が入所する特別養護老人ホームだけ例外とするのか、今後の厚生労働省の対応が注目される。

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