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医療経営情報(2016年12月15日号)

2016/12/21

◆第7次医療計画で災害時のメンタルケアを強化
「災害拠点精神科病院」の整備を進める

――厚生労働省
12月7日、厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」が開かれ、2018年度からの第7次医療計画に向けて、見直し案が取りまとめられた。その中で、災害時の医療提供体制について、「災害拠点精神科病院(仮称)」を設置するなど、精神科の整備を進めていくことを確認。災害派遣精神医療チーム(DPAT)と連携し、PTSDを始めとする精神疾患発症の予防支援を強化していく方針だ。

今回の医療計画見直し案で、災害時の対応強化に焦点が当てられたのは、今年4月14日に行った熊本地震の影響が大きい。とりわけ、精神科病院が被災して患者の受け入れが困難になったことを重く受け止め、今回の見直し案では精神科の災害医療体制を整備していくことに言及している。

中でも注目したいのは、仮称ながら「災害拠点精神科病院」との文言が盛り込まれた点だ。建物が耐震耐火構造で自家発電機も備え、近接地にヘリポートが確保できるなどの条件をクリアした「災害拠点病院」は、二次医療圏ごとに1カ所以上整備されているため、「災害拠点精神科病院」もまずは都道府県に1カ所ずつの整備を求めていく方針であることが想定される。

また、2011年の東日本大震災で被災者に対するメンタルケアが不十分だったことから生まれた災害派遣精神医療チーム(DPAT)も、見直し案に盛り込まれた。「災害拠点精神科病院」との連携も視野に入れている。

DPATは、災害発生から72時間以内に先遣隊を派遣し、精神疾患だけでなく被災者の「こころのケア」も行う医療専門チーム。精神科医と看護師を中心に、必要に応じて児童精神科医や精神保健福祉士、臨床心理技術者、保健師、薬剤師も加えて構成されている。
同検討会の11月24日の会合では、日本精神科病院協会理事の櫻木章司氏が、「DPATと災害拠点精神科病院は一体のものと考えている」と発言。DPATが被災者を災害拠点精神科病院へ移し、症状の安定化を図りたいとした。地震などの大規模災害後、やや時間が経ってから発症することの多いPTSDの予防は、大きな課題となっているため、医療体制を整えるのは急務だ。災害拠点病院の整備はもちろんだが、各医療機関としても、DPAT研修へ積極的に参加することで知見を深め、いつ訪れるかわからない大災害に備えておくことは社会貢献的な意味合いでも非常に意義深いものと言えよう。

◆来年度から指定難病に24種の疾病を追加 計330種に
「無虹彩症」や「先天異常症候群」などに医療費を助成

――厚生労働省
12月12日、厚生科学審議会の疾病対策部会指定難病検討委員会が開かれ、医療費の助成が行われる指定難病に、24種の疾病が新たに追加される方針を決めた。来年1月の疾病対策部会で了承を得たのち、3月中に指定難病の告知を終え、4月から医療費助成を開始する。

同検討委員会では、難病を「発病の機構が明らかでなく」「治療方法が確立せず」「希少な疾病で」「長期の療養を必要とする」ものと定義。そのうち、患者数が人口の0.1%未満で、診断基準が確立しているものだけが、指定難病の対象となる。

今までは、306種の疾病が指定難病となっていた。指定難病検討委員会では、関係学会などに情報提供を求め、指定難病の要件に適合すると思われる222種の疾病を検討。既存の指定難病に含まれるかどうかなどを審査し、眼球の前面にある円盤状の膜、虹彩の異常で失明することもある「無虹彩症」や「先天異常症候群」、「カナバン病」、「進行性白質脳症」、「進行性ミオクローヌスてんかん」など新たに24の疾病を追加する方針を固めた。合計で330種の疾病が、指定難病とされることとなる。

厚生労働省が発表している衛生行政報告例によると、2015年末の時点で指定難病にかかっていて医療費助成を受けている患者は、のべ約94万人にのぼる。しかし、潰瘍性大腸炎やパーキンソン病のようなよく知られた疾病は10万人以上が医療費助成を受けているのに対し、1人も助成を受けていない疾病もあり、300種以上のすべてが指定難病として認知されているかは疑問符がつく。厚生労働省では、ホームページでの発信などを通じて広報に努めてはいるが、「かかりつけ医」の医療機関も指定難病についての理解を深め、患者への周知に努める必要があるのではないだろうか。

参考:2017年4月から指定難病となる24の疾病
・カナバン病
・進行性白質脳症
・進行性ミオクローヌスてんかん
・先天異常症候群
・先天性三尖弁狭窄症
・先天性僧帽弁狭窄症
・先天性肺静脈狭窄症
・左肺動脈右肺動脈起始症
・爪膝蓋骨症候群(ネイルパテラ症候群)/LMX1B関連腎症
・カルニチン回路異常症
・三頭酵素欠損症
・シトリン欠損症
・セピアプテリン還元酵素(SR)欠損症
・先天性グルコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症
※先天性GPI欠損症から名称変更
・非ケトーシス型高グリシン血症
・β-ケトチオラーゼ欠損症
・芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素欠損症
※芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症から名称変更
・メチルグルタコン酸尿症
・遺伝性自己炎症疾患
・大理石骨病
・特発性血栓症(遺伝性血栓素因)
・前眼部形成異常
・無虹彩症
・先天性気管狭窄症

◆薬価の毎年改定、関係団体が猛烈に反発
自民党厚生労働部会長も反対の意見書を提出

――厚生労働省
12月9日、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会が開かれ、政府が提案している薬価の毎年改定について、関係団体から反対意見が続出した。12日には、自民党厚生労働部会の渡嘉敷奈緒美部会長から塩崎恭久厚生労働相に反対の意見書が出されたほか、同日に開かれた自民党および日本維新の会の有志議員による「超党派医療産業懇話会」の準備会合でも医薬品卸の負担が増えることが問題視されるなど、政界からも慎重論が相次いでいる。

9日の中医協で行われたのは、関係団体からのヒアリング。日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会は「毎年の薬価改定には断固反対」と強く反発。企業の競争力を弱体化させることになり、イノベーションの創出や医薬品の安定供給に重大な支障を及ぼし、国の成長戦略と逆方向に進むと断じた。そして、薬価改定には効果の検証と十分な議論が必要だとして、現行通り少なくとも2年の間隔が必要だとした。

医薬品卸売業連合会からは、公定価格である診療報酬と薬価は「不即不離の関係」であるとし、薬価改定は診療報酬と同時に行うべきとの意見が出された。また、改定前薬価製品の買い控えと返品が増え、欠品発生のリスクが増すことで、緊急配送が増えるため、医薬品卸に多大な負担がかかり、安定供給に支障が出ると訴えた。
さらに、毎年改定を行うことで医療機関や保険薬局からの製品回収や副作用情報などの収集・提供業務が大幅に増し、通常業務に支障を来す可能性があり、災害時やパンデミック時などの緊急時の安定供給が難しくなるとに対応できなくなるとした。

自民党厚生労働部会の渡嘉敷奈緒美部会長からの意見書には、毎年改定を行うことで製薬企業が価格を高止まりさせる傾向が高まると指摘。また、薬価が変動する薬は実質的に後発品のある先発薬と後発薬の約4割のみであるとし、毎年全面的な薬価調査を行うことに経費をかけることにも疑問を投げかけた。

こうした意見に対し、塩崎恭久厚労相は13日の大臣会見で、関係大臣と調整を深めると発言。従来通り、2年に1度の改定ペースを維持する方向にとどまる見通しだ。妥協案として、改定を行わない年でも価格変動が大きい薬の薬価を見直せるようにするため、市場価格のサンプル調査を実施する方向で調整が進められている。

◆スマホが取り出しやすく落ちにくい「スマホ白衣」
慈恵医大とクラシコが共同開発 来年1月より販売

――クラシコ株式会社
12月13日、白衣の製造・販売を手がけるクラシコ株式会社は、「スマートデバイスコート」を発表。これは、東京慈恵会医科大学と共同で開発したもので、スマートフォンが取り出しやすく落下しにくい「世界初のスマホ白衣」を謳っている。コンパクトサイズのタブレットが入れられるサイズのポケットも装備しており、急速にIT化が進む医療現場に最適化した白衣として、今後のスタンダードになっていく可能性を感じさせる。

現在、現場でのスマートフォンを導入している医療機関は急速に増えている。クラウド型の電子カルテが増えていることも相まって、医師・看護師間での患者情報の共有に活用されているほか、輸血や点滴実施の際の患者認証や輸液パック認証の際にタブレットを活用しているケースも多い。

一方で、クラシコ社の調べによれば、医師の80%以上は勤務中にスマートフォンを落としたことがあり、35%以上は故障や破損をさせてしまった経験があるという。落下を防ぐ白衣に対するニーズが高まっていたことから、スマートフォン対応の白衣を開発するに至った。

医療現場のリアルな動きを反映させるため、開発は2015年に3400台のスマートフォンを導入した東京慈恵会医科大学と共同で実施。スマートフォンを入れる胸ポケットは、角度と裏地の素材に工夫を施し、かがんだ姿勢でも落ちにくく、かつスムーズに出し入れできるよう設計。左右のどちらにも入れられるようになっているため、利き腕を問わず使えるのも見逃せない。さらに、タブレットも持ち歩けるよう脇ポケットにも工夫。約8インチのiPad miniに対応したサイズで、入れやすく取り出しやすいポケット角度を実現している。

また、脇ポケットには消毒液やカギを吊るせるようストラップも装備。オシャレなトリコロール柄で、使用しないときはポケットの内側に隠せるなど、さりげないスタイリッシュさと機能性の高さの両方を実現しているのも大きな魅力だ。一般販売は来年1月から、クラシコ社のウェブサイトで開始されるので、ぜひチェックしたい。

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