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医療経営情報(2017年2月23日号)

2017/3/3

◆日本医師会、地域包括診療加算の要件見直しを提言 1人医師体制が多い診療所では24時間対応の在宅医療がネックに

――公益社団法人日本医師会
2月15日、公益社団法人日本医師会は「かかりつけ医機能と在宅医療についての診療所調査 結果」を発表。調査結果から、地域包括診療加算および在宅医療が広がる見通しがないとし、かかりつけ医確保のため、現実的な要件に見直すべきだとの考えを明らかにした。

地域包括診療加算は「時間外対応加算1又は2を算定していること」、「常勤医師が2人以上在籍していること」、「在宅療養支援診療所であること」のいずれか1つを満たすことが要件となっており、地域包括診療料は「時間外対応加算1を算定していること」、「常勤医師が2人以上在籍していること」、「在宅療養支援診療所であること」のすべてを満たさなければならない。

しかし、多くの診療所では常勤医師1人というのが現状であり、地域包括診療加算が広がる見通しは極めて低い。昨年10月末時点での届出割合は、地域包括診療加算で6.8%、地域包括診療料で0.6%に留まっている。

ネックとなっているのは、在宅医療だ。「現在実施していて負担の大きい項目」では、「在宅患者に対する24時間対応」を挙げる医師が全体の49.8%と約半数を占めている。医師自身の体力の問題によって、在宅医療から撤退する診療所もあるという。今後、新たに在宅医療に取り組みたいと考えている診療所は、わずか6.4%。全体の51.5%は今後も実施する考えがないという結果になった。

この結果から読み取れるのは、在宅医療を行うのに十分な常勤医師の拡充ができない現状。診療所の経営方針としてというよりも、現実的にマンパワーが不足していることがわかる。今後、在宅医療のニーズは増えることは確実な情勢で、厚生労働省の「患者調査」によれば、2014年の在宅医療の患者数は過去最多の15万人以上。2011年の調査から約4割も増加しており、近々発表される2017年の調査では、さらに増えていることが予測される。しかし、現場の体制が整わない状況では、患者数のみ増えて十分なケアができない状況に陥るだろう。こうした状況が、地域包括ケアを充実させていくうえで障壁になるのは間違いないため、国がどういった打開策を打ち出していくのか、今後も注視していく必要があるだろう。

◆がん生存率がさらに上昇 10年後生存率は約6割
ステージ1は85.3%と、定期的ながん検診の重要性が改めて判明

――国立がん研究センター
2月16日、国立がん研究センターは部位別のがん5年生存率、10年生存率を発表。2000年から2003年にがんと診断された人の10年後生存率は58.5%だったと発表した。2006年から2008年にがんと診断された人の5年生存率は69.4%。また、進行度別では、ステージ1だった場合全体で85.3%だったのに対し、ステージ4は12.9%となり、早期発見・早期治療ができた場合の生存率の高さが改めて明らかとなった。

この調査は、全国がんセンター協議会(全がん協)の協力を得て、20の加盟施設でがんと診断された約4万5000人の生存率を集計したもの。男性の死因トップの肺がんは、全体の10年生存率が32.6%だが、ステージ1と診断された場合は68.3%と倍以上となる。女性の死因トップの大腸がんは、全体が69.2%であるのに対し、ステージ1で95.3%、ステージ2で81.5%。逆に、ステージ4の場合は肺がんで3.4%、大腸がんで8.3%と著しく低い数値となり、早期発見の重要性が浮き彫りとなっている。

その他、進行度合いによって大きく数値が異なる部位としては、乳房がん、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がんなどが目立つ。乳房がんの10年生存率は、ステージ1が95.0%、ステージ2が86.2%であるのに対してステージ3が54.7%、ステージ4が14.5%。子宮頸がんはステージ1が89.1%、ステージ2が65.2%、ステージ3が50.4%であるのに対し、ステージ4になると16.4%まで下がってしまう。子宮体がんも、ステージ1が93.8%、ステージ2が76.5%、ステージ3が57.1%、ステージ4が9.3%と、やはりステージ4と診断された場合は生存率が著しく下がる。前立腺がんは、ステージ3までの生存率が100%。それが、ステージ4になると40.5%まで下がる結果となっている。

がんの早期発見・早期治療の重要性は広く知られているところだが、がん検診の受診率は決して高いとは言えない状況だ。厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査」によれば、40~69歳の胃がん検診受診率は男性45.8%、女性33.8%。肺がん検診受診率は男性47.5%、女性37.4%、乳がん検診の受診率は34.2%に過ぎない。国の啓蒙が必要なことはもちろんだが、かかりつけ医としても、定期的ながん検診の必要性と、早期治療にとって生存率が高まることを患者へさらに伝えていく必要があるのではないだろうか。

◆安倍首相、「来年度の診療報酬・介護報酬同時改定は重要な分水嶺」
サービスの質を維持しつつ、効率化を図ることに意欲

2月17日、安倍晋三首相は衆議院予算委員会で、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定について言及。「非常に重要な分水嶺」と捉えていることを明らかにするとともに、超高齢化社会に突入しても国民皆保険を維持しつつ、質の高いサービスを提供するため効率化を図っていきたいとした。

この発言は、社会保障の集中審議において、自民党の豊田真由子議員の質問に対する答弁としてなされたもの。団塊の世代と定義される1947年から1949年に生まれた世代が、2025年頃までに後期高齢者に到達するいわゆる「2025年問題」について、まず安倍首相は「多くの国民が、『将来自分は現在の社会保障の給付を受けられるのだろうか』という漠然とした不安を持っていると思う」とし、国民一人ひとりが状態に応じた適切な医療や介護を受けられるように、医療と介護の提供体制をしっかりと構築していく必要がある、という認識を示した。

そうした状況を踏まえ、6年に1度となる診療報酬と介護報酬の同時改定が来年度に行われることの重要性を指摘。次回の同時改定が2024年度となるため、次回の改定が重要であり、残された時間は多くないとしている。あくまでも国民皆保険を持続させていくため、「適正化、効率化すべきことは実施しつつ、質が高い医療や介護を安心して受けてもらえるよう、同時改定に向けてしっかりと健闘していきたい」とした。また、必要な給付を切ることはせず、提供するサービスの質も維持すると明言している。

医療と介護の効率化に関しては、現在、医療ビッグデータの活用が大きなカギを握ると見られている。安倍首相は、1月20日の施政方針演説で「医療情報について、匿名化を前提に利用可能とする新しい仕組みを創設」するため、「ビッグデータを活用し、世界に先駆けた新しい創薬や治療法の開発を加速」させたいとしている。厚生労働省でも「データヘルス改革推進本部」を立ち上げ、健康・医療・介護分野を連結させたICTインフラの構築を目指している。いずれも、実現すれば社会保障費の大幅な削減が見込まれるが、これらの施策が診療報酬・介護報酬の同時改定にどのような影響を与えるのか、今後の国会での議論や首相の発言から目が離せない状況が続くと言えるだろう。

◆トリートメント・チップの使用回数制御機能を無効にした
美容医療機器「サーマクール」の違法改造に注意喚起

――厚生労働省
2月16日、厚生労働省は国内未承認の美容医療機器「サーマクール」の違法改造によって、やけどの被害が発生していると発表。改造品の使用を直ちに中止するよう注意喚起を行った。国内未承認とはいえ、美容医療のメニューとして広く使われている機器のひとつだけに、慎重な利用が求められる事態になったと言えそうだ。

「サーマクール」は、メスを使わずに肌の再生医療ができるとして、美容皮膚科を中心にさまざまな医療機関で導入されている美容医療機器。高周波を照射し、レーザーや赤外線では届かない肌の深部まで熱を加えられるため、肌のたるみやシワが解消できる仕組みだ。メスを使わないためダウンタイムが少ないアンチエイジング法として注目を集めている。

この高周波照射を行うのに欠かせないのが、トリートメント・チップだ。チップは原則として使い捨てだが、有効時間とショット数が設定されている。その分量によってコストが変わるため、治療費は数万円から数十万円と高額になる。医療機器そのものよりも、チップにかかるコストが高額になる医療機器であるとも言える。

今回、問題となった違法改造は、このトリートメント・チップに対して行われた。使用回数制御を無効とすることで、1回の治療で多数のショットが可能となり、その分効率的に肌のたるみやシワの解消ができるというわけで、取り扱う医療機関にとっては大幅なコストダウンにつながるほか、一度に広範囲の治療ができると謳うことで高額な治療費を請求できる可能性もあり、魅力的な商材に映ったと類推される。

しかし、違法の改造であるため、当然のことながら安全性は担保されない。現在、健康被害が報告されたのは1件のみだが、厚生労働省は導入している医療機関の多さを考慮して、迅速な注意喚起に踏み切ったものと思われる。一部報道では、改造したのは大阪市の販売会社とのことで、他の会社が同様の改造をしているとの情報はないが、同機器を導入している医療機関は注意しておく必要があるだろう。

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