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介護経営情報(2017年5月19日号)

2017/5/24

◆水災害を受ける可能性がある介護施設、避難訓練の実施が義務付け
「改正水防法」の成立で 現状の実施率はたった2%

――厚生労働省
 5月12日の参議院本会議で「水防法等の一部を改正する法律案」(改正水防法)が全会一致で可決され、成立した。台風シーズンに入る前の6月をメドに施行される見通し。

 改正水防法立案の背景となったのは、頻発・甚大化する水災害だ。記憶に新しいところでは、2015年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川の堤防が決壊するなど死者8名、負傷者79名の被害が発生。2016年8月の台風10号では死者22名、行方不明者5名の被害が発生し、岩手県のグループホームで9名が死亡している。

これらの被害は、「逃げ遅れ」が大きな原因とされた。そこで「逃げ遅れゼロ」と「社会経済被害の最小化」を実現するため、水害リスク情報を住民に周知する制度を創設するほか、洪水や土砂災害のリスクが高い区域にある介護施設などの要配慮者利用施設では、管理者が避難確保計画の作成と避難訓練を実施することを義務付けるとした。

自ら迅速に動くことのできない利用者も多い介護施設では、避難訓練を実施することで、職員が適切に対処できるようトレーニングを積むことが必要なことは言うまでもない。しかし、従来は避難訓練の実施はあくまでも「努力義務」であったため、実施率はなんとわずか約2%に過ぎなかった(2016年3月時点。31,208施設中716施設)。

そこで、改正水防法の立案に携わった国土交通省では、2021年までの5年間で避難確保計画の作成および避難訓練の実施率100%を目指すとしている。取り組みが不十分な施設には、市町村などの地方自治体が指導を行う。改善姿勢が見られない場合は、施設名を公表できることも法制化された。

また、地方公共団体や河川管理者、水防管理者など関係者の連携体制を構築するため、「大規模氾濫減災協議会制度」も創設。「水害対応タイムライン」を同協議会で作成・点検できる仕組みを整え、住民はスマートフォンなどのICTツールを活用することで、円滑かつ迅速な避難を行えるようにする。介護施設としてもICTツールによって最新情報を入手し、利用者の避難誘導を適切に行う必要があることは言うまでもない。特に、台風が多数発生する夏季は、常に避難情報をチェックし、利用者の安全確保に役立てるべきだろう。
また、中重度の利用者が増えていくことを考えれば、職員のスキルアップも欠かせない。今後、小多機に対する政府の支援が手厚くなっていくことは間違いないが、中長期的に安定した事業所経営を行っていくのであれば、スキルアップを促しつつ職員の体制強化を図っていく必要があり、安易に小多機施設を増やしていくことでリスクが増す可能性もある。今後の議論がどのように推移していくかを見守り、どの程度の介護報酬加算が期待できるのかを見極めてから戦略を寝る必要があるのではないだろうか。

◆ミネベアミツミ、リコーと提携し30億円規模の事業展開
AI、GPSなどの活用により統合型プラットフォームの構築へ

――ミネベアアツミ株式会社
5月18日、総合精密部品メーカー大手のミネベアミツミ株式会社は、株式会社リコーと共同事業開発契約を締結したと発表。今年度中に両社の技術を活用したベッドセンサーシステムを介護市場向けに製品化し、2020年度までに30億円規模の介護事業へと成長させたい意向を示している。

製品化を目指すベッドセンサーシステムは、ミネベアミツミが2015年から千葉大学大学院医学研究院と共同開発してきた生体情報モニタリングシステムを搭載。ベッド上の人の体重や体動、呼吸状態といった生体情報を、非接触・非侵襲で高精度にモニタリングし、転倒・転落防止や呼吸状態の異常検知、体重などの計測をすることができる。そのため、記録業務にかかる負荷低減が期待できるほか、センサーは後付け設置が可能なので導入コストを抑えることもできる。今年度中に本格展開をする方針だ。

ミネベアミツミ、リコーの両社は、このベッドセンサーシステムを展開する過程で、介護記録システムやナースコールと連携させ、高齢者見守りのプラットフォームをまず構築。介護市場に橋頭堡を築いたのち、第2フェーズとしてAIなどのテクノロジーを活用して心拍に関する情報提供を行い、疾病の予知・予後サポートを手がけることで、介護のみならず医療市場への参入も視野に入れている。最終的には、介護・医療分野での統合型情報サービスプラットホームに拡張させ、育児市場にまで手を広げていきたい考えを明らかにしている。

この提携で注目したいのは、リコーのスケールメリット。世界約200の国と地域でITサービスやドキュメントマネジメントシステム、デジタルカメラや産業用製品・サービスなどを展開しており、その販路を活用できるメリットは大きい。また、保守サポートなどのノウハウも豊富なため、一気に介護市場で存在感を発揮する可能性もある。

介護市場全体にとっては、精密部品大手のミネベアミツミが参入することで、技術レベルの底上げが期待できるのも大きい。とりわけ、離床センサーは介護現場に欠かせないツールであり、その精度がアップすれば人手不足解消へとつなげられるため、今後両社の提携がどのような成果を挙げていくのか注目される。

◆「三幸福祉カレッジ」、初任者研修授業料の不当表示で処分
実績のない「通常価格」を表示し、大幅な値引きに見せかけ

――消費者庁
5月19日、消費者庁は「三幸福祉カレッジ」を運営する株式会社日本教育クリエイトに対し、景品表示表に基づく措置命令を出した。実績のない「通常価格」を表示することで、あたかも大幅に値引きした価格で講座が受けられるよう見せかけたことを改めるよう求める処分だ。

「三幸福祉カレッジ」が措置命令を受けたのは、介護職員初任者研修と実務者研修、そしてこの2つのセット講座。介護職員初任者研修については、「通常受講料120,000円」と自社ウェブサイトに記載。実際の受講料が「59,500円~(教材費込・税別)」であるため、「最大受講料半額以上もお得!」と謳っていた。

しかし、「通常受講料」とした価格は、「最近相当期間にわたって」提供された実績のないものであることが判明。つまり、実態のない価格を設定することで、あたかも格安で受講することが可能であると誘導したのである。これを消費者庁は、実際のものよりも著しく有利であるとする「有利誤認」に該当する表示とし、誤認表示を行っていたことを周知し、同様の表示を行わないよう求めた。

日本教育クリエイトは、措置命令が出される前日の5月18日付けで自社ウェブサイトに「お詫びとお知らせ」と題した文書を発表。前述の内容を明らかにするとともに、再発防止に努めるとしている。

介護資格取得をサポートする講座・スクールは乱立状況にあり、激しい価格競争が行われている。実際に各講座・スクールの価格をよく調べてみるとほぼ横並びの状態のため、それぞれ耳目を集める広告を展開し、優位に立とうとしている。しかし、日本教育クリエイトのように実態のない価格を引き合いに出すのは悪質。金額を騙し取られた形ではないとしても、受講者にとっては騙された感覚となってしまう。キャリアアップへの向上心を持つ介護人材を落胆させるばかりか、介護業界全体のイメージダウンにもつながりかねない。そうした意味では、介護施設の事業者としても、より適切にキャリアアップが図れる講座やスクールを提示するなど、職員に対する適切な情報提供が必要と言えるのではないだろうか。

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