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介護経営情報(2017年6月2日号)

2017/6/9

◆「効果ある自立支援」「ロボット・センサー活用」で介護報酬UP
2021年度以降の改定で「科学的介護」をさらに評価する方針

――未来投資会議
5月30日、首相官邸で未来投資会議が開催され、「未来投資戦略2017」の素案が発表された。素案には、効果ある自立支援や、ロボット・センサーなどの活用について、来年度の介護報酬改定で評価すると明記。また、「データ分析による科学的な効果が裏付けられた介護サービス」について、2021年度以降の介護報酬改定で評価する方針も示した。

発表された素案では、介護分野で目指すべきは「科学的介護の導入による『自立支援の促進』」としている。しかし現状は、一部で介護予防や要介護状態からの悪化を防止・改善させるための先進的な取り組みがなされているものの、国として「自立支援等の効果が科学的に裏付けられた介護」を具体的に示すには至っていない。

要介護者の自立支援を促すのは、財政的な問題も大きく影響している。2014年度の介護費は約10兆円に膨らんでおり、いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上となる2025年には約20兆円にまで達する見込み。超高齢社会を迎えているため、今後介護費を劇的に減らすのは困難であり、可能な限り抑制するのが喫緊の課題となっている。

また、介護費が膨らむのと比例し、人手不足がさらに進むのも深刻な問題だ。2025年には介護人材が約38万人も不足すると推計されており、介護業務に携わるマンパワーが減るのは避けられない状況となっている。そのため、自立支援を促すのとともに、介護の省力化も急がなければならない。

そうした現況を踏まえ、「未来投資戦略2017」の素案では、まず介護報酬の面で自立支援をバックアップすることを明記。インセンティブを付与することで、事業者の介護に対する取り組み方そのものを変えることが目的といえる。また、介護の省力化が期待できる介護ロボットや離床センサーなどの活用を促す。ロボット・センサーについては、介護報酬だけでなく、人員・設備基準の見直しも視野に入れているため、現在よりも少ない人数で施設が運営できるようになる可能性もある。

さらに、「科学的介護」については、そうした介護サービスが受けられる事業所を厚生労働省のウェブサイトなどで公表する考えも示した。利用者の施設選びにも影響するだけに、自立支援の効果が科学的に裏付けられた介護サービスを積極的に推進することが、今後の事業所運営に欠かせなくなるのではないだろうか。
◆介護保険料滞納で差押さえの高齢者、過去最多の1万3371人
2年以上の滞納で3割負担のペナルティを受けた人も1万人以上

――厚生労働省
5月30日、厚生労働省介護保険計画課は「介護保険最新情報Vol.592」で昨年度介護保険事務調査の集計結果を発表。介護保険料を滞納し、資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が過去最多となる1万3371人となったことがわかった。一昨年度、初めて1万人を突破し1万118人となったが、それよりも3000人以上増加し、2年連続で過去最多を更新したことになる。

介護保険料は、滞納すると市区町村から書面で支払いを求められる。それでも支払いがなされない場合、預貯金や生命保険などの財産が差し押さえられる。昨年度の介護保険事務調査は全国1,741市町村(1,579保険者)に対して行われ、回答率100%とそのすべてから回答を得ているが、3割以上に該当する564の市町村で差し押さえ処分を実施した。差し押さえによって滞納保険料を充当できたのは8,495人であり、4割近くは回収できていない状況となっている。

65歳以上の場合、年金から介護保険料が納められるケースも多いため、大半は滞納に至らない。しかし、年金が年18万円未満の人はその対象外となり、自分で納めなければならないため、滞納してしまうケースが多い。4割近くの人の滞納金を回収できていないのは、こうした人たちの預貯金などの資産が少ないことが原因と推測される。

また、介護保険料を2年以上滞納したうえ、さらに1年以上支払いがない場合は介護サービス利用時の自己負担額にペナルティが課される。1年以上の場合、一時的に全額自己負担となるほか、2年以上の場合は一定期間保険給付が減額され、自己負担割合が1割から3割に引き上げられてしまう。今回の調査結果によると、一時的に減額負担となったのは2,516人、3割に引き上げられた人は1万447人となっている。

介護保険料の滞納者が増えているのは、保険料が年々上がっていることと無関係ではないだろう。介護保険制度がスタートした2000年度は全国平均で月額2,911円だったが、2015年度には月額5,514円まで上がっている。人口減少と超高齢化が進む今後、この金額が減る見込みはなく、むしろさらに上がっていくことは確実。滞納者の数も増えていくことが予測される。滞納が続けば自己負担額も上がるため、介護サービスの利用を取りやめることにもつながり、必然的に介護施設の利用者が減ることにもなりかねない。高齢者にとっても、介護施設にとっても、こうした状況に対しての有効な施策が求められる状況となってきていると言えよう。
◆東京・豊島区が「混合介護」の有識者会議を開催
国家戦略特区制度を活用して来年度からモデル事業をスタート

――東京・豊島区
6月2日、東京・豊島区で「選択的介護モデル事業に関する有識者会議」が開催された。「選択的介護」とは、いわゆる「混合介護」のこと。来年度から同区で試験的に導入されることが決まっており、その基本的な方針を決めるため、専門家の意見や課題などについて同会議で協議し、内容を取りまとめる。事務局は同区と東京都が共同で運営しており、今年度中にあと4回の開催を予定している。

現行の介護保険制度では、保険内サービスと保険外サービスを同時に提供する「混合介護」は原則として禁止されている。しかし、たとえば要介護者のペットの散歩をしてあげたり、本人以外の同居者向けに食事の提供をしたりすることもできないため、円滑なサービス提供を妨げている側面があった。

また、保険外サービスは介護報酬よりも低い料金に設定しなければならないため、介護事業者にとって取り組むメリットが少ない。一方で、利用者は当然のことながら一人ひとり要望が異なるが、望むサービスを受けたくても受けられない状況があった。

しかし、政府は「利用者の負担が拡大する」「自立支援や要介護度重度化防止の取り組みを妨げる」として、「混合介護」の解禁には否定的だった。社会保障費の抑制が急務である現在、行政コストがかかる制度変更に踏み切れないという事情もあった。

そんな状況を踏まえ、東京都の小池百合子知事は変化球で事態の進展を狙った。2月に開催された国家戦略特別区域会議で、国家戦略特区制度を活用した混合介護のモデル事業を東京・豊島区で開始する意向を示したのである。地方自治体で「既成事実」を作り、国を揺さぶっていこうという狙いだろう。

料金についても、「ヘルパー指名制」(500~3,000円)を提案。高齢者や家族の不安を解消しつつ、事業者側の収益にもつなげようというわけだ。2日に豊島区で開催された有識者会議では、第1回目ということもあり、基本的な考えや論点の整理にとどまったが、今後具体的な料金設定や対象なども協議していくことが予想される。

気になるのは低所得者への対策。2日の同会議では「選択的介護を導入した結果、将来的に保険給付の枠が狭まるなどの課題が生じた場合に議論するべき」として、切り分けて検討する方向が示されており、ひとまずは「混合介護」をいかに適切に実施するかを優先するようだ。

いわゆる「2025年問題」により、介護人材不足はさらに深刻化することが確実。適切な人材を増やしていくには介護職の処遇改善が最低限必要だが、現行の介護保険制度を維持していくだけでは難しいのは明らか。そうした意味でも、料金の自由化を含めて「混合介護」の成果がある程度測定できる今回の豊島区の取り組みは重要なものとなる。次回は7月下旬から8月上旬で開催されるという有識

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