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介護経営情報(2017年6月16日号)

2017/6/26

◆「混合介護」、来年度上期中に通知発出を 規制改革実施計画
保険外サービスの価格設定 今年度中に課題や論点を整理

 6月9日、政府は臨時閣議で「規制改革実施計画」を閣議決定。保険内サービスと保険外サービスを組み合わせる「混合介護」を実現するため、今年度中にルールを整備して結論を出し、来年度上期中に通知を発出することを厚生労働省に求めた。保険外サービスの価格設定に関しては、今年度中に課題や論点の整理を開始する方針。

 これまで、介護保険の対象となるサービスと、利用者の10割負担となる保険対象外のサービスを同時に提供することは原則として禁止されていた。しかし、介護保険内サービスは最低限の内容にとどまらざるを得ず、より充実したサービスを受けることが難しかった。

 介護事業者にとっても、保険内サービスのみの提供では収益アップが望めない。つまり、介護職員の処遇改善を図ることも困難となってしまう。では、保険外サービスを導入して収益アップを図るべきかと言えば、そう簡単にはいかない。なぜならば、現行ルールだと保険外サービスを介護報酬よりも高額に設定することはできないからだ。労力を割いても見合った金額が得られないのでは、事業として取り組む価値は低い。

 こうした状況は、介護職に就こうとする人材を増やすことにつながるわけもなく、介護事業への新規参入者を阻む結果にもなりかねない。いわゆる「2025年問題」(2025年に団塊の世代が全員75歳以上となる)を目前に控え、介護人材不足が顕在化している現在、何らかの策を講じる必要があることは明らかであり、その打開策として政府が「混合介護」の解禁を目指しているというわけである。

そこで、昨年9月に開催された未来投資会議の初会合で「介護は保険外サービスとの組み合わせが必要」と表明。公正取引委員会も混合介護の導入やサービス価格の自由化を提言するなど、政府周辺から関連発言が続出。昨年12月には、小池百合子東京都知事が国家戦略特区制度を活用して混合介護解禁を表明し、来年度から東京・豊島区でモデル事業をスタートさせることがすでに決まっている。

これらの動きを受け、利用者の負担拡大や自立支援の妨げになるとして混合介護解禁に否定的だった厚生労働省も重い腰を上げつつある。4月に発表した「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」で混合介護を推進するべきだと表明。今回の「規制改革実施計画」の閣議決定によって、一気に解禁に向けた動きが加速している可能性が高いと言える。ただし、制度の変更に伴って行政コストが増加するほか、従来の保険内サービスが軽視される懸念もあるため、適切なルール設定が求められるのも確かだ。今後開催される規制改革推進会議でどのような議論が展開されるか、そしてそれを受けて厚生労働省がどのような政策を練っていくのか、注視していく必要があるだろう。

◆東京都、不動産オーナーと介護事業者とのマッチング事業を開始
認知症高齢者グループホームの設置促進のため 7月に説明会実施

――東京都福祉保健局
6月13日、東京都福祉保健局は、「認知症高齢者グループホーム整備に係るマッチング事業説明会」を7月8日(土)に開催すると発表。認知症高齢者グループホームの設置促進を狙い、不動産オーナーと介護事業者を結びつけるマッチング事業を開始するため。事業者の選定基準はその説明会で公表される予定。東京都内で新たに認知症高齢者グループホームの運営を手がけたい事業者にとっては、低予算でグループホームを新設できる好機と言えそうだ。

このマッチング事業は、東京都が昨年12月に策定した「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」に則ったもの。「高齢者が安心して暮らせる社会」にするため、2015年度末には9,896人分だった認知症高齢者グループホームを整備し、2025年度末までに定員2万人分を確保することを目標に掲げている。

厚生労働省の推計によれば、認知症高齢者の数は現在520万人以上(2015年時点)。団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には約700万人にまで増える見通しとなっていて、受け皿となるべき介護施設の整備が急務となっている。

東京都は、すでにグループホームを新築する不動産オーナーを対象に、工事費の助成も実施。高齢化が進むことで安定した需要が見込めるため、アパート・マンションを新築するより有効な資産運用になる可能性は十分にある。他の介護施設を運営している事業者にとっても、グループホームに参入する良いきっかけになるだろう。

また、このマッチング事業が成功すれば、他の自治体が同様の取り組みを行うモデルとなる可能性もあるため、都内以外の事業者も動きを見守っておいて損はない。ちなみに、この事業は日本認知症グループホーム協会に委託されており、同協会は専用の公式サイトも近日中に開設する予定だという。

◆記録業務が介護現場の大きな負担に
介護作業の可視化実験を実施 業務効率化のヒントに

――株式会社ウチヤマホールディングス
6月15日、全国で84の介護施設を運営する子会社を持つ株式会社ウチヤマホールディングスは、介護施設従事者の行動認識実証実験を行った結果を公表。24時間、3カ月間計測し続けた結果、「記録業務」にかかっている時間が介護、看護とも業務にかかっている時間の上位を占めていることがわかった。

この実証実験は、ウチヤマホールディングスと国立九州工業大学、ヤフー子会社でクラウドサービスなどを提供する株式会社IDCフロンティアが共同で実施。ウチヤマホールディングスの子会社、株式会社さわやか倶楽部が運営する北九州市の介護付き有料老人ホームの介護士22名、看護師5名を対象に行われた。行動センシング技術やIoTセンサー、スマートフォンを用いて約12億レコードの行動データを自動収集し、食事や入浴の介助、巡視、記録作業など作業を31種類に分類して業務行動を詳細に分析。その結果、介護士の業務行動の上位3種は食事対応(11.5%)、トイレ介助(10.5%)、記録業務(9.8%)となり、看護師は記録業務が14.1%ともっとも長い時間を割いていることが判明したという。

介護記録、看護記録は一人ひとりの入居者の体調などを細かく記す必要がある。職員間で共有する必要があるため、正確かつ適切に、しかも読みやすくまとめなければならず、どうしても時間がかかってしまう作業だ。今回の調査結果により、その実態が数値化されたことは意義深い。

こうした作業を効率化し、介護職員の負担を軽減するために音声入力などができる介護記録システムも続々登場している。しかし、導入や運用にコストがかかるため、導入に二の足を踏んでいる事業者も多い。次期介護報酬改定では、センサーやロボットで現場の負担を軽減した場合に報酬が加算されるようになる見込みだが、介助や巡視に役立つ技術のみならず、こうした記録業務の負担を軽減するITも、介護報酬で評価することを検討するべきだと言えよう。

◆認知症の行方不明者、4年連続最多を更新
前年比26.4%増の1万5432人 警察庁発表

――警察庁生活安全局生活安全企画課
6月15日、警察庁生活安全局生活安全企画課は「平成28年における行方不明者の状況」を公表。2016年の行方不明者のうち、認知症が原因とされる人は1万5432人だったことが明らかとなった。昨年の1万2208人から3,224人増えたことになる(26.4%増)。認知症は2012年の同統計から計上されているが、それ以来4年連続で過去最多を更新し続けている。

行方不明者全体で見ると、昨年届出があったのは8万4850人。昨年より2,815人増えているが、2006年以降はずっと8万人台で横ばい状態を保っている。ただし、2014年からは3年連続で増加中であり、昨年はこの10年間で見ると2007年に次ぐ2番目に多い数字となっている。認知症行方不明者の増加は、この数字の底上げに影響していると言えよう。

認知症の高齢者が行方不明になった場合、発見が遅れると生存率が著しく低下するというデータもあり、早期発見のためには官民が連携して素早い対応を行うことが求められる。問題は、自宅で認知症高齢者を介護することに対する忌避感が強まることだ。介護離職を避けるためにも、認知症高齢者グループホームなどの介護施設が果たすべき役割はますます強まっていくことが予想される。

東京都がグループホームの設置促進を図っているように、国や自治体は認知症高齢者の受け皿を確保するため、さまざまな策を講じている。しかし、最終的に入居先を選ぶ際に決め手となるのは、施設自体がどのような対策を行っているかだろう。離床センサーなどの徘徊感知機器や緊急通報装置といった「見守り支援機器」を導入しているのはもちろんのこと、どのような体制でいかにきめ細やかなケアを実施しているかもチェックされることは間違いない。そうしたニーズに対し、的確に応えられる体制や設備を整えていること、そしてそれをしっかり広報していくことが重要になってくるのではないだろうか。

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