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介護経営情報(2018年5月18日号)

2018/5/28

◆経団連、介護保険の自己負担割合は2割を基本にと提言
低所得者判定の厳格化やケアマネジメントの有料化も求める

――一般社団法人日本経済団体連合会
 日本経済団体連合会(経団連)は、5月15日に「持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて」と題した提言を公表。介護保険の自己負担割合は2割を基本とすることや、補足給付の対象となる低所得者判定の厳格化、ケアマネジメントの有料化などを求めた。

 今回公表された提言は、「骨太方針2015」の集中改革期間が今夏に一段落し、その中間評価を踏まえて新たな財政健全化計画が策定されることを見据えてのもの。社会保障分野はとりわけ歳出規模が大きいため、「より踏み込んだ改革の必要性を示した」としている。

 介護分野に関しては、2000年度に介護保険制度が創設されて以来、給付費が増え続けていることから、「より一層の効率化や適正化に向けた改革が不可欠」としている。前述した内容以外には、まず要介護認定率や介護費用の地域差に言及。要因分析を急いで適正化するべきとして、2015年5月に本格稼働したものの使っていない自治体が多いとの指摘もある「地域包括ケア『見える化』システム」の積極的な活用を求めた。

 「自立支援」「重度化防止」の推進をめぐっては、リハビリテーションのアウトカム評価をさらに促進させるべきだとしている。今年度の介護報酬改定では排泄にかかわる要介護状態の軽減を目的として新たに導入された加算もあるが、効果検証を十分に行い、適切に見直すべきだとの注文もつけた。

 ITやロボットの活用推進では、スケールメリットを発揮させてより効率的なサービス提供を求めている。それに関連し、今年度の介護報酬改定で大規模型デイサービスの報酬が引き下げられたことについて「事業者の効率化への意欲を削ぎかねない見直し」と批判。スケールメリットを重視し、小資本の事業者は切り捨てるかのような内容であり、関係団体からの反発も予想される。

全体的に財政制度等審議会での財務省の提言と重複しており、厚生労働省および介護事業者の団体に向けた“先制攻撃”とも受け取れる内容。次期介護報酬改定に向けての論点を提示したともいえる。今後、厚労省が関連審議会でどのようなアンサーを提示していくのか注目していきたい。

◆東京・豊島区の混合介護モデル事業、参加事業者が決定
申込の10社すべてが選定される 8月より事業スタート

――豊島区
 東京都豊島区は、5月16日に「選択的介護モデル事業に関する有識者会議」を開催。いわゆる混合介護のモデル事業に参加する事業者の選定結果を発表した。申込をした10社すべてが選定され、今年8月から事業がスタートすることになった。

 混合介護とは、介護保険サービスと介護保険外のサービスを同時に提供すること(東京都は「選択的介護」と呼称)。現在の制度では原則として禁止されているが、昨年2月の国家戦略特別区域会議で、東京都の小池百合子知事が国家戦略特区の仕組みを活用してモデル事業に取り組むと宣言。小池知事が衆議院議員だったときからの選挙基盤である豊島区が名乗りを挙げ、実施に向けた動きを加速させていた。

 豊島区は、昨年6月に有識者会議を立ち上げ、今年1月には公募説明会を開催し20社を集めた。実際に申込をした事業者は10社で、うち2社は共同参加という形となっている。3月に対事業者のヒアリング審査を5日間にわたって行い、結果として全申込事業者が選定された。

 参加事業者名は公表されていないが、7社は株式会社、2社は有限会社、1社は特定非営利活動法人。今回はすべて訪問介護事業者で、介護員数は10~38名となっている。各社の事業内容は「居宅内での選択的介護」「居宅外での選択的介護」「見守り等のサービス」の大きく3つに分かれている。

 「居宅内での選択的介護」のサービス内容で全社共通しているのは「電球・蛍光灯の付け替え」「本人の話し相手」「書類の確認・分別」「日用品以外の買い物」の4項目。そのほか「同居家族分の家事」「ペットの世話」「電子機器の操作確認」「宅配・ネット注文サポート」などがある。

 「居宅外での選択的介護」の項目は「日用品以外の買い物への同行」「趣味等への同行支援」「散歩」「お墓参りへの同行」「外出先への送迎」など。とりわけ特徴的なのは、介護給付では認められていない院内介助があること。その他、WebカメラやICT機器を活用しての見守りサービスに取り組む事業者も2社ある。

 提供の方法は、時間あたりの料金と対応できるサービスメニューを提示するパッケージ形式。料金がもっとも安価なのは1時間2,000円。中には「月5,000円コース」として、5分程度を10回と30分程度を2回のセット料金にしている事業者もある。

前例のない取り組みだけに、豊島区がこのモデル事業をどのように進めるかで、混合介護の先行きが変わる可能性もある。どのような成果があがり、どのような課題が浮き彫りとなるのか、8月のスタートから見守っていきたい。

◆介護DBとNDBの連結解析実施に向け有識者会議が初会合
データの利用目的や対象範囲、第三者への提供方法などを検討

――医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議
 厚生労働省は、5月16日に「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」の初会合を開いた。介護のレセプトと要介護認定情報を格納した「介護保険総合データベース(介護DB)」と医療のビッグデータが入った「レセプト情報・特定健診等情報データベース」(NDB)の連結解析を実施するにあたって、データの利用目的や対象範囲、第三者への提供方法等を精査検証する。7月に中間とりまとめを行い、秋ごろには報告書にして介護保険部会および医療保険部会に報告するスケジュールとなっている。

 NDBは、日本全国のレセプトデータ(約148億1,000万件)や特定健診・保健指導データ(約2億2,600万件)を収集したもの。現在は約9年分が格納されている。介護DBに格納されているデータは3年半分で、約5億2,000万件。いずれも、すでに医療計画や介護保険事業計画の策定や評価に活用され、研究者への提供も可能な状態となっている。

しかし、個人が特定できないよう匿名化されているため、双方を横断的に分析・活用することはできない。この状況を打破するため、昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太方針)では、それぞれを連結して医療機関など民間も活用できるようにする旨が明記された。これを実現することで、各地域で効果的・効率的で質の高い医療・介護の提供体制を整え、地域包括ケアシステムの構築に役立てるのが狙いだ。

とはいえ、クリアするべき課題は山積している。前述したデータ収集・利用目的や対象範囲を決める必要があるのはもちろん、個人情報保護法との兼ね合いを探り、セキュリティの確保といった技術面の課題も解決しなければならない。また、医療のデータとの連携でいえば、DPCデータをはじめとする他の公的データベースとの連結も大きな課題。第三者への提供を行ううえで、費用負担をどうするかも決める必要がある。

介護や医療の効率化を図ることは、人手不足問題を解決するうえでも重要となる。そのため、この有識者会議で議論される内容は、今後の介護行政の変化を見極めるうえでも随時把握する必要があるといえよう。

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