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介護経営情報(2018年7月13日号)

2018/7/25

◆「老人福祉・介護事業」の倒産件数、年上半期の最多記録を更新 訪問介護とデイサービスが大半を占める 業界内の淘汰が加速

――東京商工リサーチ
  信用調査大手の東京商工リサーチは、7月9日に「2018年上半期『老人福祉・介護事業』の倒産状況」を公表。今年上半期(1月から6月)の倒産件数は45件に達しており、年上半期の最多記録を更新。東京商工リサーチは、介護保険法が施行された2000年以降の年間最多だった昨年の111件を上回る可能性が高まったと分析している。

 「老人福祉・介護事業」の倒産件数が年間最多だった昨年、上半期は40件だった。今年の45件は、前年同期比12.5%増となっている。しかし、負債総額は29億5,500万円で、昨年同期の53億5,000万円に比べると約24億円も減少。昨年の6割程度となっている理由は、小規模事業者の倒産が多かったことを物語っている。実際、負債10億円以上の倒産は発生しておらず、負債1億円未満が全体の77.7%を占める35件もあった。財務省の財政制度等審議会が、4月に小規模介護サービス事業者の統合を促すべきと提言しているが、小規模事業者の経営状況が不安定であることが浮き彫りになった今回のデータは、その提言の妥当性を裏付ける形となってしまっている。

 業種別に見ていくと、もっとも多かったのは「訪問介護事業」と「通所・短期入所介護事業」(デイサービスなど)で各18件。次いで有料老人ホームの7件となっている。原因は全体の半数以上となる26件が「販売不振(業績不振)」となっており、同業他社との競争が激化していることを窺わせる。また、設立5年以内の事業者が約3割の13件となっており、営業基盤を固められずに競争に敗れている構図も浮かび上がってくる。

 今年度改定された介護報酬は、2012年度以来となる引き上げで落着した。しかし、上げ幅が0.54%と小さかったこともあり、少なくとも小規模事業者にとっては経営立て直しの特効薬とはならなかったことがわかる。また、見逃せないのは事業再生に踏み切る事業者が少ないことだ。民事再生法を申請した事業者はわずか3件。それに対して、事業消滅型の破産となった事業者は41件もあり、競争力を失えば立ち直れないのが現在の介護業界であることを如実に表している。「経営体制の未整備や経営基盤の脆弱な介護事業者が『ふるい』にかけられることは避けられない見通し」と東京商工リサーチが分析しているように、今後は業界再編へと向かう可能性が高い。裏を返せば、M&Aなど再編・統合の動きが活発化するということでもある。強固な経営基盤を持つ事業者にとっては、合併や買収を視野に入れた戦略を構築するタイミングともいえるため、他社の動向に細かく目配りしていく必要があるだろう。

◆消費税引き上げ対応についての議論がスタート 介護給付費分科会臨時改定を適正に行うため介護事業経営実態調査の分析を実施

――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
 7月4日に開かれた厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会で、来年10月に予定されている消費税引き上げへの対応について、議論がスタートした。2014年に実施された消費税引き上げ時と同様、臨時の介護報酬改定が行われることが確定的で、2017年度の介護事業経営実態調査を分析して改定率を割り出す方針が示されている。

 消費税は間接税として、各事業者の売上に課税される。課税のタイミングは製造、卸、小売といった取引の段階ごととなっており、課税の重複を回避するため、仕入税額控除の仕組みが取り入れられている。

しかし、介護保険サービスは「社会政策的な配慮から課税することが適当でない」との理由から非課税取引の対象だ。そのため、介護事業者は納税義務者ではなく、仕入税額控除を行うことができない。とはいえ、福祉用具の貸与・購入や施設の改修などは課税対象となるほか、物品などを購入することで消費税を支払っているため、その分を介護報酬で手当する形をとっている。

前回、2014年に消費税率が8%へ引き上げられた際には、施設改修などの設備投資を考慮した高額投資対応は行わなかった。これは、「介護サービス施設・事業所の設備投資に関する調査」の結果を踏まえてのもの。また、基準費用額は食事・居住費の実態を調査したうえで据え置き、負担限度額も見直しはなされなかった。引き上げの対象となったのは、区分支給限度基準額。要介護度別の支給限度額と平均的な利用率を調査したうえで、過度な引き上げにつながらないとの判断からだった。結果、全体の改定率としては0.63%の引き上げとなったのである。

今回も、おおむね同様の対応となりそうな状況だ。ただし、介護事業経営実態調査は昨年度のデータを活用するものの、設備投資に関する調査は新たに行わない方針。直近の状況は関係団体のヒアリングを実施することでカバーする。11月までにヒアリングを経て論点を整理し、年末までに審議報告を行う意向だ。

◆外国人の新たな在留資格、運用開始は来年4月から 7月中に関係閣僚会議を立ち上げて受け入れ準備に着手

――総務省消防庁
 菅義偉官房長官は、7月11日の記者会見で、外国人の新たな在留資格は来年4月からの運用を目指すと表明した。この7月中に関係閣僚会議を立ち上げ、受け入れ準備を進めていく方針だ。

 菅官房長官は、「受け入れ業種の検討や在留管理体制の強化などの準備を進めるとともに、日本語教育など受け入れ環境の整備を進める必要がある」とコメントしている。これは、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太方針)を踏まえてのものだ。外国人材の受け入れ拡充は、今年の骨太方針の目玉のひとつで、介護も対象業種となっている。

 在留管理体制強化に加え、日本語教育の環境に言及したのは、日本語要件を大幅に緩和したからである。昨年9月に決まった外国人技能実習「介護」の要件は、日本語学習を240時間入国後に受講するというものだった。「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」日本語能力試験N3の取得者は80時間まで短縮できるが、いずれにしてもある程度高い日本語能力を必要としていた。

しかし、骨太方針では「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」と明記するにとどめている。しかも、骨太方針の原案では「日本語能力試験N4相当(基本的な日本語を理解することができるレベル)を原則」としていた。にもかかわらず、その部分を削除してまで要件を緩和したのは、介護業界の人手不足が相当深刻であることを示していることを示している。

実際、介護の有効求人倍率は“高止まり”の状態が続いており、昨年12月の厚労省の発表では4.22倍。全産業の有効求人倍率が1.52倍だから3倍近い数値となっている。とりわけ深刻なのは7.18倍という数値を叩き出している東京。総務省の「自治体戦略2040構想研究会」は、東京23区の介護サービス利用者の多くが近隣3県の介護施設を利用していることを明らかにするとともに、2025年には3県でもカバーしきれなくなると推計しており、介護人材の早急な確保が喫緊の課題となっている。これらの状況を踏まえると、日本語能力が水準に達していない外国人材であっても、介護の労働力として補充する必要があると政府が判断していることがわかる。そう考えれば、日本語教育機関を整備すると菅官房長官が明言したのは、教育環境を整備することで受け入れをより一層促そうとの意向とも受け取れよう。介護事業者にとっては、日本語能力が不足している外国人材をいかにマネジメントしていくかを検討するフェーズに突入したといえるかもしれない。

◆厚労省、「西日本豪雨」対応で多数の通知・事務連絡を発出 要介護者への柔軟な対応や介護報酬の取扱について要請

――厚生労働省老健局
 厚生労働省は、「平成30年7月豪雨」(いわゆる西日本豪雨)への対応で、多数の通知や事務連絡などを発出している。7月20日現在で計83本となっており、被災地の介護事業者はもちろんのこと、他地域でも災害への備えとして把握しておくべき内容が多い。

[厚生労働省 平成30年7月豪雨による被害状況等に関する情報【関係通知等】]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212490_00002.html

 7月6日には、被災した要介護高齢者への対応として、避難所など自宅以外の場所で生活している場合でも居宅サービスが受けられるよう要請。居宅サービス、施設サービスを問わず、利用者負担が困難な人に対しては、介護保険法第50条(※1)または第60条(※2)にもとづき、市町村の判断で減免可能であることを示している。ちなみに、市町村はこの利用者負担額や保険料減免額が一定以上になった場合、特別調整交付金が交付される。

 また、介護保険施設は、災害時に定員超過利用が認められるが、その場合でも特例として所定単位数の減算が行われない。被災状況によって介護職員の確保が困難な場合でも、同様に減算されないことを通知した。こうした特例措置に関しては、7月11日にも「平成30年7月豪雨に関する災害における介護報酬等の取扱いについて」と題した事務連絡を発出。新たに介護が必要となった人がいた場合は、事後報告でもかまわないとするほか、居室以外の静養室や地域交流スペースなどで処遇した場合も、従来型多床室の介護報酬が施灸できるなど、柔軟に対応する姿勢を改めて伝えている。

 「平成30年7月豪雨」とは、6月28日から7月8日頃にかけ、西日本を中心に広い範囲で記録された集中豪雨のこと。7月9日に気象庁が命名した。河川の氾濫や洪水、土砂災害などの被害が多く発生しており、7月20日現在で死者218人、行方不明者11人、負傷者364人となっている。住宅被害も数多く、2,875棟が全壊、半壊・一部損壊は1,561棟、床上浸水15,152棟、床下浸水は19,412棟。

※1 介護保険法 第50条
市町村が、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情があることにより、居宅サービス(これに相当するサービスを含む。)、地域密着型サービス(これに相当するサービスを含む。)若しくは施設サービス又は住宅改修に必要な費用を負担することが困難であると認めた要介護被保険者が受ける次の各号に掲げる介護給付について当該各号に定める規定を適用する場合においては、これらの規定中「百分の九十」とあるのは、「百分の九十を超え百分の百以下の範囲内において市町村が定めた割合」とする。

※2 介護保険法 第60条
市町村が、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情があることにより、介護予防サービス(これに相当するサービスを含む。)、地域密着型介護予防サービス(これに相当するサービスを含む。)又は住宅改修に必要な費用を負担することが困難であると認めた居宅要支援被保険者が受ける次の各号に掲げる予防給付について当該各号に定める規定を適用する場合においては、これらの規定中「百分の九十」とあるのは、「百分の九十を超え百分の百以下の範囲内において市町村が定めた割合」とする。

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