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介護経営情報(2018年10月26日号)

2018/11/14

◆来年10月の処遇改善はベテラン介護職員に重点化       他職種への配分は事業所の裁量で 職種別に傾斜設定を

―厚生労働省
社会保障審議会介護給付費分科会
厚生労働省は、10月31日の社会保障審議会介護給付費分科会で、来年10月の消費税率引き上げに伴う「更なる処遇改善」は経験・技能のあるベテランの介護職員に重点化する方針を改めて明らかにした。その他の職員にも一定程度の処遇改善を行うが、その判断は事業所の裁量に委ねて、「経験・技能のある介護職員」「他の介護職員」「その他の職種」の順に配分の傾斜を設定する考えを示している。

新たな処遇改善をめぐっては、10月15日の同分科会で、介護職員以外にも適用するほか現在の処遇改善加算とは別の加算を創設して対応する方針が示された。今回の分科会で厚労省は、新加算の取得要件について「一定のキャリアパスや研修体制が構築されている」ことを最優先に、「具体的な取組の見える化等を促す」ことも検討すべきだとしている。

「経験・技能のある」がどの程度を示すかという点については、「勤続10年以上の介護福祉士を基本としつつ、一定柔軟に運用できるように」とした。これは、同一事業所・法人での勤続年数だけで切り分けては不公平だという意見に基づくものだ。また、資格の有無にかかわらず技能を幅広く評価するべきとの意見もあがっており、曖昧な基準となる可能性が高まっている。

消費税率引き上げに伴う処遇改善は、昨年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」に盛り込まれたもの。「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円程度を投じ、処遇改善を行う」と明記しており、「勤続年数10年以上の介護福祉士」を対象とすることが公費を投じる前提条件となっていた。「経験・技能のある」との文言から、ベテラン介護職員を優遇する方針であることは示しているものの、事業者の裁量に左右されることになれば、個人レベルで処遇改善がなされたか検証しにくくなる。事業者の方針によって、同程度の経験やスキルを持つ人材の待遇に格差が出てくることも考えられるだろう。それらのマネジメントを自治体に“丸投げ”した格好とも受け取れる施策であり、新たな加算の要件にはもう少し緻密な設計が求められるのではないか。

◆厚労省、40歳以上向けに介護保険制度周知のリーフレットを作成
総報酬割導入に伴う介護保険料の増加が背景に

―厚生労働省
老健局介護保険計画課
厚生労働省老健局介護保険計画課は10月26日、介護保険最新情報Vol.687を各都道府県介護保険担当課あてに発出。「介護保険の第2号非ホケ者に対する介護保険制度の周知について」と題した内容で、40~64歳に向けて介護保険制度を周知するリーフレットを作成したことを伝えた。

介護保険の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳の「第2号被保険者」に分けられる。「第2号被保険者」の介護保険料は、医療保険料と一体的に徴収される仕組みとなっており、徴収は40歳になった月から開始される(健康保険に加入している場合は、被保険者と事業主で半分ずつ負担)。リーフレットでは、これらのほか介護保険サービスの利用者が約632万人に達したことに触れつつ、財源の仕組みや40歳以上で利用できる介護サービスや利用方法についても解説している。

厚労省は、10月1日にも「第2号被保険者」に対して介護保険制度を周知させるよう依頼。短期間で再三の通知を発出している背景には、介護保険料の増加がある。9月下旬に発表された健康保険組合連合会(健保連)の「平成29年度健保組合決算見込の概要」によれば、介護納付金は8,218億円。前年度に比べて861億円と大幅に増えている(増加率は11.7%)。1人当たりの金額は9万2,808円(前年度比7,291円増)で、月額にすると1人当たりの負担は8,000円近くまで上昇。「なぜこんなに負担が増えているのか」という問いに対するエクスキューズとして、介護保険制度の現状を説明したというわけだ。

しかし、健保連の介護納付金が大幅に増加したのは、むしろ昨年8月に導入された総報酬割の影響が大きいだろう。総報酬割は、各保険者の総報酬額に応じて介護保険料を負担する仕組み。つまり、所得の多い人がより多く保険料を支払うこととなるため、大企業の社員やその家族が加入している健保連の介護納付金に如実な影響が表れたといえる。

健保連は「現役世代の負担は限界に達している」と危機感を募らせており、「2025年には全体の4分の1の組合が解散危機を迎える」としている。実際、加入者数約51万人の人材派遣健保組合や同約16万4,000人の日生協健保組合が相次いで来年4月での解散を決定しているほか、昨年4月以降12組合がすでに解散。政府は財政支援を強化する考えを明らかにしているものの、構造的な制度改革が求められる段階が来ていることは間違いない。今回通知した介護保険制度の周知徹底を「焼け石に水」に終わらせないために、厚労省がどのような施策を打つのか注目される。

◆介護医療院、未だ19都府県でゼロ     9月末時点で63施設4,583床

―厚生労働省老健局老人保険課
 厚生労働省老健局老人保険課は11月1日、9月末時点の介護医療院の開設状況を公表。63施設と6月末時点の21施設から3倍に増えたものの、東京都を含めた19都府県で未だに開設されていない実態が明らかとなった。また、すべて転換の施設であり、新設施設はまだ登場していない。

医療機能を備えた介護施設のあり方をめぐっては、長い間模索が続いている。医療保険と介護保険の範囲が重なっていることがその原因だ。もともと、医療保険を財源とする医療療養病床と、介護保険を財源とする介護療養病床があったが、2006年の調査で、医療の必要性が高い患者と低い患者が同程度混在していることが判明。医療保険と介護保険の役割分担を明確化し、適正な保険給付をめざして介護療養病床は2011年度に廃止が決まった。

しかし、転換先をめぐって迷走がはじまった。介護療養型老人保健施設を創設したほか、従来型の老人保健施設や特別養護老人ホームを受け皿に設定したものの、思うように転換が進まなかったのだ。転換期限を延長せざるを得なかったため、新たな受け皿として医療機能を備えた生活施設である介護医療院が創設されることとなった。昨年の介護保険法改正で決定し、今年4月から開設できるようになっている。ところが、蓋を開けてみればやはり転換が進んでいないというわけだ。

転換が進まない理由は、そもそも介護療養病床にも医師・看護職員が配置されていたことにある。介護医療院へ転換するには、多額の投資をして生活施設の機能を加えなければならない。それだけのリターンが期待できるとは思えない、というのが医療機関の率直な思いだろう。保険者である自治体側も、介護医療院への転換を進めれば介護費が増えてしまうため、積極的に推進できないのではないか。実際、6月末時点では、介護医療院開設に必要な条例が制定されていない自治体が9つあることも明らかとなっている。

介護費が増えると介護保険料も増やさざるを得ない。しかし、健康保険組合連合会が「現役世代の負担は限界」と声をあげていることもあり、介護保険料の増加は厚労省にとっても本意ではないはず。そうしたことも踏まえると、介護医療院は、医療保険と介護保険の役割分担を明確化するという名目を維持するためだけの施設と成り下がる可能性もあるだろう。成果が表れていないことが明らかとなりつつあるだけに、早期に抜本的な見直しを行う必要があるのではないか。

◆下水道での紙オムツ処理の実用化に向けて初の実態調査を開始       使用・廃棄の状況など 一般市民4,500名と介護関連500施設が対象

―国土交通省
下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会
 国土交通省は、10月30日の「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会」で、下水道での紙オムツ処理の実用化に向けた実態調査を行うことを明らかにした。11~12月の間に実施し、結果は来年2月の同検討会で報告する予定。

 この調査は、紙オムツの使用・廃棄の実態のほか下水道への紙オムツ受け入れに対する社会的ニーズを把握するのが目的。調査項目としては、使用している紙オムツ・パッドの種類や1人1日あたりの使用枚数、廃棄する際の区分(一般廃棄物か産業廃棄物か)、廃棄物の収集頻度のほか、「廃棄する際に困る点(保管場所、臭気等)」「紙オムツを処分する装置を利用する意向」も盛り込まれる。

 調査対象は「紙オムツを使用している一般市民」と「介護関連施設」。一般市民は、家族の介護をしている人1,500名、尿もれ・便もれの症状のある人1,500名、育児をしている1,500名の計4,500名に、介護関連施設は500施設にアンケートを行う。併せて、現在の都道府県別紙オムツ使用枚数と2030年、2040年の推計も実施する。

 下水道での紙オムツ処理をめぐっては、6月に処理機の実証実験開始が発表されている。「次世代住宅プロジェクト2018」と略称されている平成30年度サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)として、パナソニック株式会社が提案したプロジェクト、「分離型紙オムツ処理による介護負担低減」が採択された。パナソニックが製作するのは汚物と紙オムツを分離して3分の1に減量化するオムツ処理機。高齢者施設に設置して、介護にまつわる負担が介護者・要介護者の双方にとって軽減されるかどうか検証することになっている。

 とりわけ介護施設において、紙オムツ処理は大きな課題。臭気や病原菌感染の問題のほか、処理業者の回収も毎日行われているところは少ないため、保管場所の確保も必要となっている。介護者の負担だけでなく、要介護者も「心苦しい」「申し訳ない」といった精神的な負担を感じていることが多い。

廃棄コストも馬鹿にならない。多くの自治体では、介護施設から出る使用済み紙オムツは「事業系一般廃棄物」と位置づけられており、専門業者に収集・処理を委託する必要がある。自治体によっては無償のケースもあるが、多くは有償で、国交省によれば処理費用の全国平均料金は1kgあたり15~20円(東京23区の収集・運搬・処分料金は1kgあたり40円、名古屋市は50円、大阪市は27円)。一部の自治体では産業廃棄物として取り扱われているため、処理費用はさらに高くなる。

さらに、使用済み紙オムツは水分が多く発熱量が小さいため、焼却した場合の熱回収効率も低い。発電効率が低くなるため、焼却する必然性はないといえる。労力もコストもかかるうえに精神的負担も重く、ごみ処理するメリットも薄い。効率的な介護を実現させるうえでも、下水道処理の実用化に向けた期待は高く、国交省の取り組みには今後も注目する必要があるだろう。

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