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医療経営情報(2018年11月9日号)

2018/12/10

◆病床削減、9月末までに公立・公的医療機関の約半数が合意         インセンティブ強化で取組加速へ 来年度は「更なる重点的配分」を

――経済財政諮問会議
根本匠厚生労働相は11月20日、経済財政諮問会議で「地域医療構想」の実現に向けた取組の内容を報告。9月末までに47%の公立・公的医療機関が病床削減に合意したことに触れ、今年度末までにすべての病床で合意形成を達成させたいとした。そのために、来年度の地域医療介護総合確保基金(2018年度は934億円)の「更なる重点的配分」を検討していることも明らかにしている。

「地域医療構想」とは、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けての医療計画のひとつ。2015年の病床機能報告によれば、高度急性期・急性期病床は全体の62%を占めており、回復期および慢性期病床は38%。後期高齢者が増える2025年には急性期よりも回復期・慢性期病床が必要となることが容易に想定できるため、2025年までに大規模な病床転換を進めるという計画だ。具体的には、2017年時点よりも高度急性期・急性期を約29%縮減し、回復期を約146%増加させることとなっている(慢性期は4%縮減し、在宅医療で約30万人をカバー)。高度急性期・急性期は診療報酬も高額であるため、社会保障費の抑制も図ることができるというわけだ。

しかし、高度急性期・急性期からの病床転換は、医療機関にとって収益の減少に直結するため遅々として進んでいないのが現状。10月に財務省財政制度等審議会(財政審)が示した資料によれば、高度急性期・急性期病床のうち「具体的対応方針を合意済み」の病床割合はわずか1%程度。先に対応を進めるべき公立・公的医療機関(約1,650病院)も、進捗状況には地域差がある。財政審は、この件で「都道府県が行使できる権限は限定的であり、特に民間医療機関の病床に対する権限は事実上ごく限られたもの」と指摘。都道府県の権限を一層強化すべきと提言していた。

根本厚労相は、民間医療機関の病床削減については言及しなかったものの、地域差が生じていた公立・公的医療機関に対しては「集中的に取り組んでいる」と主張。3月末には合意済み病床がわずか6%(3.1万床)だったが、9月末までに47%(23.6万床)と増加させたことを明らかにしたうえで、調整中の病床も49%にのぼっていると順調に進捗していることを強調。今年度中に全病床の合意形成を取り付け、来年度前半に具体的対応方針を検証していく方針を明らかにしている。ひとまず、都道府県の権限の範疇である公立・公的医療機関の病床転換を終わらせ、そのプロセスから民間医療機関にとって実効性のある対策を検討する、というのが厚労省の描くプランのようだ。最終的には、地域医療介護総合確保基金をどの程度インセンティブとして配分するかが重要なポイントとなってくるのではないか。

◆費用対効果評価、対象品目は年4回の新薬収載時に選定
価格調整も同時期に実施 分析には臨床の専門家が参画

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会
費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保健医療材料専門部会合同部会
厚生労働省は、11月21日に開かれた中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保健医療材料専門部会合同部会で、費用対効果評価の対象品目を年4回の新薬収載時に選定する方針を示した。また、価格調整も同時期に実施することや、分析には臨床の専門家を参画させることも提案し、いずれも了承された。

費用対効果評価は、高額な医療技術や医薬品を保険収載するにあたり、適正な価格を設定するための指標。その性格上、速やかに対象品目を選定することが求められる。しかし、一度に多品目の分析・評価をすることは物理的に難しい。2016年度から実施されている試行的導入では、品目選定から企業分析の提出までに約9カ月から1年、再分析に約6カ月、総合的評価に約2カ月を要している。

この期間をできるだけ短縮させるため、この日の会合では「標準期間の設定」も示された。「企業分析に9カ月程度」「公的分析に3カ月程度(再分析を行う場合は6カ月)」「総合的評価および価格決定に3カ月程度」となっており、最低でも1年3カ月程度ということになる。当然、順次分析・評価を行っていかなければならないため、選定時期および価格調整の時期を分散させるべきとの考え方から、年に4回と決まっている新薬収載のタイミングがベターということになった。ただ、価格調整も同時期に行うとなれば、薬局や医療機関は年に4回、薬価の変動に対応しなければならないということになる。事務的な負担はかなり大きくなるため、システム的な視点も含め、負担軽減策が早晩必要となってくるのではないか。

分析に臨床の専門家を参画させるのは、試行的導入で専門家が検討する公的な体制が整っていなかったからだ。その結果、企業分析と第三者による再分析で結果に大きな違いが生じてしまい、本格導入を妨げる要因にもなっていた。そこで厚労省は、薬価算定組織や保険医療材料専門組織と同様にあらかじめ専門家を指名し、品目に応じて分析内容の確認を行う体制を整えることにしている。

そもそも費用対効果評価は、導入の目的を「適正な価格を設定するため」としているものの、社会保障費の削減が狙いであることは明らか。製薬企業や医療機器メーカーなどにしてみれば、自社製品が対象品目に選定されれば収益減少に直結することは間違いないためせめぎあいが続いており、検討開始から6年が経過しようとする今となっても、今回のような制度設計の部分で議論せざるを得ない状況となっている。厚労省は、年末までに本格導入に向けての足固めをしたい意向だが、残り1カ月と時間のない中で、果たしてどこまで詰めきれるのか、引き続き進捗を見守りたい。

◆「規制改革ホットライン」、医療・介護WG関連は28件     NDBの民間利用や処方箋の電子発行など 厚労省の回答も公開

――規制改革推進会議
 規制改革推進会議は、11月19日に開催された会議で、国民や企業からの提案を受け付けている「規制改革ホットライン」の運用状況を公表。2016年8月1日から今年10月31日までの2年3カ月間で1,506件を受け付けており、今期所管省庁へ検討を要請したのは353件。そのうち医療・介護WG関連は28件だった。

 提案内容と併せて、厚生労働省からの回答内容も公開されている。「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の民間利用拡大」や「処方箋の電子発行」「医療機関間における医療機器の共同利用」といった内容で、主なところを以下に紹介する。

「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の民間利用拡大」は、日本経済団体連合会(経団連)からの提案。NDBの民間利用が非常に限られている状況を指摘し、「更なる疫学研究を進めるためには民間による主体的なNDBの活用が必須」と主張している。それに対して厚労省は、NDBと介護保険総合データベースとの連結解析や、第三者提供の枠組みについて検討中として、これまでの方針と変わらない内容ながら前向きな姿勢を示している。

「処方箋の電子発行」は個人からの提案。花粉症など重篤ではない症状を挙げ、「薬だけもらいたい場合」でも医師の診療を受けて処方箋を発行してもらう手続きが必要なことの不便さを指摘。待ち時間が無駄なだけでなく、本当に受診したい人が待たされることの弊害も訴えた。これに対し、厚労省はまずオンライン診療の受診を推奨したうえで、処方箋の電子発行については「実証事業を通じてよりよい運用方法を検討していく」とした。また、オンライン服薬指導にも言及。国家戦略特区の実証を踏まえて検討していくとしており、少なくともこの回答のうえでは規制緩和の方向に舵を切る意向を示している。

「医療機関間における医療機器の共同利用」は、経団連の提案。「別経営の医療機関同士がエックス線診断装置等の医療機器を共同利用することを認めるべき」としている。たとえば医療モールなどの場合は、うまく共用することでコストやスペースの節約につながることは確かだ。ただ、診療報酬請求の問題があるため、これまで同様の事例は確認できていない。この問題に対し、厚労省は医療法上は問題なしとの見解を示している。具体的には「地域医療支援病院に勤務しない医師等の医療従事者が、当該地域医療支援病院の設備等を利用することは可能であり、現行の制度において対応可能」とした。

診療報酬請求においては、CTとMRTにおいて可能なようだ。厚労省は以下のように回答している。

「E200 コンピューター断層撮影(CT撮影)と、E202 磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)については、共同利用施設において行われる場合も算定可能とされており、

・CT撮影及びMRI撮影の施設基準の届出を行っていること
・当該撮影機器での撮影を目的とした別の保険医療機関からの依頼により撮影を行った症例数が、当該診断撮影機器の使用症例数の1割以上であること

等の施設基準を満たす医療機関を共同利用機関とし、当該医療機関での撮影を行った場合において、撮影機器を所持しない保険医療機関も算定することができます」

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