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医療経営情報(2019年4月4日号)

2019/5/20

◆ 73.6%の病院が赤字 「医業費用」は増えるも収益が追いつかず        外来患者数はここ5年間で最低 全国公私病院連盟の2018年調査

――一般社団法人全国公私病院連盟
全国公私病院連盟は2月26日、「平成30年 病院運営実態分析調査の概要」を発表。調査に対して回答した644の病院のうち、73.6%を占める474病院が赤字だったことがわかった。医業収益を100とした場合の「医業費用」(給与費、薬品費などの材料費、そのほかの経費など)は106.7であり、経費に対して収益が追いついていない実態が明らかとなっている。

全国公私病院連盟は、全国自治体病院協議会や全国公立病院連盟、全国済生会病院長会、日本私立病院協会など7団体が加盟しており、「病院運営実態分析調査」は毎年6月に実施している。今回の調査の集計対象は、回答のあった915の病院。その内訳は自治体病院が443(構成比48.4%)、公的病院215(同23.5%)、私的病院225(構成比24.6%)、国立・大学付属病院等32(同3.5%)となっている。

病院種別に見ると、赤字病院がもっとも多かったのは自治体病院。実に90.3%にあたる287病院が赤字で、黒字となったのはわずか31病院(9.7%)しかなかった(※)。公的病院の赤字割合も63.9%と高い。ちなみに、私的病院の赤字割合は48.1%であり、自治体病院および公的病院の赤字体質が際立つ結果となっている。

なぜ赤字となる病院が多いのか。前述したように、経費に対して収益が追いついていないわけだが、「医業費用」の詳細を見ていくと、前年から突出して伸びている項目は見当たらない。むしろ、収益の伸び悩みに大きな要因があると判断せざるを得ない。「医業収益」の中で、2017年よりも減少したのは「外来収入」「公衆衛生活動収入」「医療相談収入」「特別利益」。このうち、「公衆衛生活動収入」は155万5,000円(2017年は176万1,000円)、「医療相談収入」は227万7,000円(同243万2,000円)、「特別利益」は58万2,000円(同75万9,000円)のため、それほど大きく影響を与えているとは考えにくい。やはり、5,778万3,000円(2017年は5,877万6,000円)の「外来収入」に要因を求めるのが自然だろう。

実際、外来患者数の減少は顕著だ。6月の1病院あたり外来患者数は、ここ5年間で最低となる1万1,337人。昨年が1万2,266人だったため、929人も減っている。1カ月あたりの人数としては激減と表現してもおかしくない。通常の症状は中小規模病院や診療所が診療し、大病院は専門診療に特化するという「外来機能分化」の推進が順調に進んだ結果と受け取るしかないが、収益悪化によって公費負担が増えてしまっては、何のための「外来機能分化」なのかわからない。むしろ、医療の非効率化を推し進めてしまっている結果となっており、とりわけ9割以上が赤字となっている自治体病院は存在意義が問われるフェーズになってきているのではないか。もちろん、医療の地域格差を埋めるために公費を投じるのは必要なことだが、このままではダウンサイジングのみならず、統廃合を検討せざるを得ないことにもなりかねない。

一方で、こうした状況は民間病院・診療所にとってチャンスでもあるといえよう。少なくとも、総務省が2007年に公立病院改革で示したように、自治体病院・公的病院の施設・診療機能の再編を促す動きは加速しており、民間委託を進める例も増えている。従来の医業経営の常識にとらわれないビジネスセンスを活かすことで、驚異的な飛躍を実現させることも可能なのではないか。

※今回の全国公私病院連盟の調査は、地方公共団体が負担すべきものとされている負担金などを総収益から除いて仮定計算を行っているため、自治体病院の黒字・赤字は法令に基づく病院決算時点での黒字・赤字とは異なる。

◆ 要介護者に対する医療保険の維持期・生活期リハの経過措置終了
4月以降は介護保険へ移行 昨年5月時点で3万人以上が該当 

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、3月6日の中央社会保険医療協議会総会で、医療保険における要介護・要支援者に対する維持期・生活期の疾患別リハビリテーション料の経過措置を3月末で終了する意向を示し、了承された。4月以降は介護保険へ移行し、医療保険での算定ができなくなる。しかし、2018年5月時点で、医療保険の維持期・生活期リハビリテーションを受けている要介護・要支援者は3万人以上おり、スムーズな移行を実現するには相当の周知徹底が求められる状況だ。

リハビリテーションはその性質上、医療保険と介護保険の境界線が曖昧な現状がある。医療保険で「急性期」「回復期」を、介護保険で「維持期・生活期」をまかなうように役割分担をしているものの、患者にしてみれば「回復期」から「維持期・生活期」へ劇的に変わるわけではない。一方で、医療保険から介護保険へと移行するということは、リハビリテーションを受ける場所も、医療機関から介護施設へ移らなければならないことを意味している。

しかし、急な環境の変化や、リハビリテーションを提供してくれる理学療法士・作業療法士の交替を誰もがすぐに受け入れられるわけではない。以前はリハビリテーションを提供できる介護施設が少なかったこともあり、医療機関でも一定の要件を整えればリハビリテーションを提供できるようにした。その後、2014年度改定では「介護保険リハビリテーション移行支援料」を創設したほか、介護保険の通所リハビリテーションを提供していない医療機関の疾患別リハビリテーション料を減算するなど、介護保険の移行を促してきている。

そうした取り組みは、多少なりとも功を奏している。介護保険の通所リハビリテーションを提供できる医療機関は、2013年10月から2017年10月までの間に24.3%増加。介護保険の通所リハビリテーション事業所も増えており、「維持期・生活期リハは介護保険の対象」という認識がある程度定着してきたともいえる状況となった。当初、医療保険の維持期・生活期リハビリテーションは2014年3月末で廃止される予定だったのが、診療報酬改定のたびに経過措置が延長されてきたが、「2025年問題」を目前に控えていることもあり、ようやく断行に踏み切ったというわけだ。一方で、前述したとおり2018年5月時点で3万人以上の要介護者が医療保険の維持期・生活期リハビリテーションを受けている現実もある。厚労省は周知を徹底してスムーズな移行を促す意向だが、混乱を起こさず進められるかどうか、そのガバナンス能力が問われる機会となりそうだ。

◆ 診療報酬の被災地特例、岩手・宮城は2021年3月で終了   福島は半年ごとに進捗を確認しながら当面継続の方針

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会総会
 厚生労働省は、3月6日の中央社会保険医療協議会総会で、東日本大震災に伴う診療報酬の被災地特例措置の適用について、岩手県と宮城県は最長で2021年3月31日までに終了する方針を明らかにした。しかし、福島県については、帰還困難地域の患者が特例措置の対象となっている医療機関に現在も入院していることから、終了時期を定めず当面継続させていくとしている。2011年3月11日に東日本大震災が発生してから8年、未だ復興は道半ばであることが浮き彫りになった形だ。

被災地特例措置は、震災の影響で診療報酬の算定要件や医療法上の基準を満たせなくなった場合に適用される。とりわけ、保険医療機関の建物が全半壊してしまったケースが多い。引き続き保険診療ができるようにするほか、他院からの受け入れなどで許可病床数を超えて患者を入院させた「定数超過入院」の場合も、入院基本料や特定入院料の減額措置の対象としない。また、看護師および准看護師、看護補助者の数が減少して看護配置に変動が生じた場合も変更の届出の必要はなく、震災前の入院基本料を算定できる(これは月平均夜勤時間数についても同様)。

 東日本大震災の場合、震災が起こった翌年の2012年7月1日時点で、134の保険医療機関が特例措置を利用していた。今年1月時点でも、4つの医療機関が特例措置を利用している。内訳は岩手県が1(歯科)、宮城県が2、福島県が1。

 このうち、岩手県の歯科医院は、震災による津波で医院が全壊し流出。昨年12月に移転先の土地造成工事が終了しており、今年5~6月には着工、12月には特例措置利用が終了する予定となっている。

しかし、宮城県と福島県の状況は深刻だ。宮城県は2つとも石巻市の医療機関で、1つは石巻市内に2院しかない精神病院の1院。「石巻圏域の精神科病床が減少した影響により、入院先がなく新たな入院患者を受け入れなくてはならない状況が続いている」ことから、特例措置の利用継続が必要としている。

 宮城県のもう1院は、慢性期急性憎悪の患者を受け入れてきた医療機関。「今なお石巻市には仮設住宅58戸150人の被災者」がおり、被災による親族の減少によって在宅でのケアが困難とした。現在、同院は「在宅療養支援診療所として在宅医療に取り組み、平成29年3月より在宅看取り等も」取り組んでおり、仮設住宅に住む被災者にとってなくてはならない存在となっていることが窺える。

 福島県の医療機関は、福島第一原子力発電所事故の影響を大きく受けている相双地区にある。帰還困難地域の患者が今も入院しているほか、同地区の精神科医療機関が正常化していなかったり、介護施設や福祉施設、それらのスタッフの体制も不十分だったりで、本来の規模を超えた受け入れ状態が続き、「特例措置の利用終了の目途を立てることができない状況」としている。

 4院という少ない数ではあるものの、東日本大震災の爪痕の深さを改めて感じさせずにはおれない状況。2018年の西日本豪雨に伴う被災地特例は9月末まで延長しているものの、2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震に伴う被災地特例を今年3月末で終了させることを決定したことからも、その深刻さが伝わってくる。

◆ 診療用放射線の安全管理責任者、条件付きで診療放射線技師もOK   パブコメの意見を受け 医師が適切に指示できる体制整備が必要

――厚生労働省
医療放射線の適正管理に関する検討会
 厚生労働省は、3月6日の「医療放射線の適正管理に関する検討会」で、レントゲンやCTといった診療用放射線の利用にかかわる安全管理責任者について、診療放射線技師もその対象とする方針を明らかにした。

 これまで、診療用放射線に関する安全管理のための責任者は、医師・歯科医師の有資格者のみに限られていた。医師・歯科医師のみに限定していたのは、適切な線量を設定する「最適化」と、放射線診療の実施の是非を判断する「正当化」の双方について十分な知識を有する必要があるのが理由だった。

しかし、厚労省が今年1月9日から2月7日までパブリックコメントを募集した、診療用放射線の安全管理の規定に関する「医療法施行規則の一部を改正する省令案(規則第1条の11関係)」について寄せられた57件の意見のうち、32件が「診療放射線技師についても診療用放射線の利用に係る安全な管理のための責任者となれるように対応するべきではないか」という意見だった。これを受け、診療放射線技師も「最適化」「正当化」について十分な知識を有し、役割を果たせるという「基本的考え方」を示すに至った次第だ。

 ただし、あくまでも安全管理責任者は原則として「常勤の医師又は歯科医師」としたうえで、以下の条件をつけた。

医療施設の放射線診療について常勤の医師又は歯科医師が正当化を、常勤の診療放射線技師が最適化を担保し、当該医師又は歯科医師が当該診療放射線技師に対して適切な指示等を行う体制を確保している場合に限り、当該医療施設について診療放射線技師を責任者とする

 診療放射線技師のみで診療を実施する医療機関は存在しないため、事実上「常勤の診療放射線技師」であれば安全管理責任者になれると緩和した格好となる。「医療放射線の適正管理に関する検討会」では、責任者の条件として「修業年限を規定することは非常に難しい」との意見も出ており、診療放射線技師の有資格者であれば安全管理責任者を任せることが可能になると考えてよさそうだ。

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