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介護経営情報(2019年12月5日号)

2020/1/24

◆ 2018年度の介護費、初めて10兆円を突破 前年度比2.2%増                               介護サービス利用者も517万9,200人と過去最高

――厚生労働省
厚生労働省は11月28日、2018年度の「介護給付費等実態統計」を公表。介護給付費と公費、利用者の自己負担分を合わせた介護費の総額は、初めて10兆円を突破する10兆1,536億円だった。2017年度と比べ2.2%増。介護サービス利用者は517万9,200人と、こちらも過去最高をマーク。介護予防サービスの利用者は101万9,100人と17.0%減だった。

要介護認定を受けて介護サービスを利用した人の1人あたり費用額(2019年4月審査文)は、前年同月比400円増の19万4,600円。介護予防サービスの1人あたり費用額は前年同月比500円増の2万8,000円となっている。都道府県別に見た1人あたり費用額で見ると、介護サービスで高額だった3県は沖縄県の21万1,700円、鳥取県の20万9,800円、石川県の20万8,600円。介護予防サービスは佐賀県3万7,200円、長崎県3万4,800円、鹿児島県3万1,300円だった。

介護保険制度は2000年度にスタート。初年度の介護費は4兆3,782億円だったため、18年間で2.3倍増えた計算だ。その背景にあるのは急速に進む高齢化。2000年4月末時点で要支援・要介護認定者数は218万人だったが、2017年4月末には633万人と約2.9倍になっており、介護費が膨らむのは必然といえる。なお、国の推計によれば、介護給付費は今後も増え続け、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が全員75歳以上となる2025年までに約15兆円、高齢者人口が4,000万人とピークを迎える2040年には約25兆円となる見込みだ。

まさに、介護保険制度の持続可能性が危ぶまれる状態であり、今後保険料の引き上げなど現役世代の負担が増していくことが確実視される。財務省の財政制度等審議会や日本経済団体連合会(経団連)が提言しているように、利用者の自己負担割合を現在の原則1割から2割へと引き上げようとしているのはそのためだ。なお、今回の調査で介護予防サービスの利用者が前年度比17%減と大幅に減ったのは、「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」が市町村事業に移管されたから。政府は、介護サービスにかかる費用を抑制するため、介護予防に注力する方針を固めており、数字上は今後さらに減っていく可能性がある。

◆ 3年以内にウェブ入力・電子申請およびデータの電子化を 経済財政諮問会議                   ケアプラン標準仕様の推進に向け、KPIを掲げることも提言

――経済財政諮問会議
12月5日の経済財政諮問会議は、社会保障制度改革をテーマに議論を展開。民間議員(※)は、介護サービスの生産性向上のため、3年以内に「ウェブ入力・電子申請」「データの共有化・文書保管の電子化」を確実に実現するよう提言した。また、厚生労働省が今年度定めたケアプランの標準仕様について、着実に推進するためKPIを掲げることも要望した。

「ウェブ入力・電子申請」「データの共有化・文書保管の電子化」については、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」で具体的な取組内容が検討されてきた。11月27日には中間とりまとめがなされており、類似書類を一本化するなど申請手続きの簡素化を進め、6年に1度の更新申請で済ませられるようにしていく計画だ。介護保険事業は自治体が実施しているため、統一の様式がなく、ローカルルールを生み出す原因となっている。経済財政諮問会議では、そうした実態を踏まえたうえで、保険者インセンティブを活用して自治体の取り組みを推進するべきだとした。

ケアプランの標準仕様も、問題の本質は同じだといえる。しかし、各事業所で採用している介護ソフトなどの業務システムが異なることから、実質的にどの程度推進されているかは不明だ。そのため民間議員は、標準仕様に基づくシステムの導入や、介護ソフトの互換性の確保を着実に進めるべきだとしている。

これらの生産性向上の取り組みの先にあるのは、介護サービスの海外輸出である。高齢化が急速に進んでいるのは日本だけではない。とりわけアジア諸国は高齢化の傾向が顕著であり、「日本の介護」をグローバル成長産業化させたいというのが政府の狙いだ。そこまでの水準に達するため、民間議員が提言したのは、現場と先端技術のマッチングを加速するプラットフォームの形成や介護事業者とIT関連ベンチャーの連携推進。それによってエビデンスを蓄積して横展開させるべきだとしており、そうした取り組みは報酬体系にも反映するべきだとしている。

ITベンチャーとの連携に関しては、来年度の税制改正で、ベンチャーへの投資に優遇措置を設ける方針が固められている。大企業は1億円以上、中小企業は1,000万円以上投資すると、出資額の25%を課税所得から控除するというものだ。裏を返せば、介護事業者からの企業およびベンチャーへの積極的な働きかけを行うことで、大規模なICT化を実現しやすくなるともいえる。社会福祉法人の経営基盤強化に向け、「社会福祉連携推進法人」が創設される動きもあり、そうしたスキームを活用することが経営状況の飛躍的な改善につながる可能性もあるのではないか。

※今回の案をとりまとめた民間議員は、竹森俊平慶應義塾大学経済学部教授、中西宏明日立製作所取締役会長兼執行役、新浪剛史サントリーホールディングス代表取締役社長、柳川範之東京大学大学院経済学研究科教授の4名。

◆ ケアプラン有料化や室料負担などで意見対立                                2021年度の介護保険制度改正に向けた議論

――厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会
 厚生労働省は、12月5日の社会保障審議会介護保険部会で、2021年度の介護保険制度改正に向けたこれまでの議論を取りまとめた。しかし、ケアマネジメント有料化や多床室の室料負担などでは意見が対立。今後の検討課題と位置づけられたが、来年の通常国会での改正法案提出に向け、どのように調整していくかが注目される。

 現在、介護保険部会で展開されている議論は、2021年度からスタートする第8期介護保険事業計画を見据えてのもの。3年を1期とする介護保険事業計画は、前年に通常国会で成立した介護保険改正法をもとに進められるのが通例だ。今回、焦点のひとつとなっているのがケアプランの有料化だ。

ケアプランの作成は、2000年に介護保険制度がスタートしてから一貫して自己負担が求められていない(10割給付)。これは、要介護者が積極的にケアマネジメント(居宅介護支援)のサービスを利用できるようにするためだ。しかし、2010年に有料化の議論が巻き起こってからたびたび検討の俎上にのぼっている。有料化賛成派は「ケアマネジャーの専門性を評価するべき」としており、反対派は「利用者の意向を反映すべきという圧力が高まり、給付費の増加につながる」と主張。議論はいずれも平行線をたどり、介護保険部会の報告書では両論併記をされるのが通例となっている。

今後、要介護人口が加速度的に増えていくことを見越せば、有料化することの弊害が生じることは十分に予測できる。一方で、ケアマネジャーの処遇の低さや業務負担の大きさも問題視されており、10割給付に限界があるのも事実だ。かかりつけ医など地域医療と介護事業所との間でハブとしての役割を果たすなど、地域包括ケアシステムの中で欠かせない存在でもあるだけに、処遇を改善するための手立てを講じる必要があるだろう。そうしたことを踏まえ、介護保険部会の委員でもある日本介護支援専門員協会の濵田副会長は「相応の処遇改善と事務負担の軽減」を要望するとともに、有料化に反対の意向を改めて示している。政府が先送りを決めたとの一部報道があったように、またもや両論併記でお茶を濁すのか、なんらかの明確な方向性を打ち出すのか、今後の行方を見守りたい。

◆ PDCAサイクルに沿った取り組みで「通いの場」を積極的に推進                               インセンティブ交付金を倍増させて自治体の取り組み強化を促す

――厚生労働省
一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会
 厚生労働省は、11月29日の「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」で、これまで8回にわたって行ってきた議論の取りまとめ案を提示。「通いの場」の利用を積極的に推進するため、アウトカム指標とプロセス指標を組み合わせてPDCAサイクルを回していくとした。「保険者機能強化推進交付金(いわゆるインセンティブ交付金)」を強化することで自治体の取り組み強化を促していく。

 アウトカム指標について、厚労省は「事業参加者だけでなく高齢者全体に対する介護予防の成果を判断できるようにするため、個々の事業の状況に加え、高齢者全体の状況を判断する指標を組み合わせて設定する」と説明。プロセス指標は、事業の実施体制や関係団体の参画状況など、具体的な取り組み状況を把握できるように設定するとした。

 これらの評価のあり方については、10月の同検討会で、「幸福感の変化率」を盛り込む考えを示している。 「幸福感」という曖昧な指標をあえて導入するのは、介護予防の目的が「生きがいのある自分らしい人生を送る」ことにあると定義されているからだ。その目的の達成状況を評価するために、「要介護1~5以外の高齢者」を対象としたニーズ調査を実施して数値化する。要介護認定者にならないことを「幸福」の基準と定め、介護予防の取り組みによってそこからいかに向上するかを指標とする考え方であり、要介護2以上の年齢調整後要介護認定率と、そこからの変化率をもとに「健康寿命延伸の実現状況」を指標化する。

2018年度に新設された「保険者機能強化推進交付金」は、自治体の取り組み度合いによって配分されるインセンティブ色の強い交付金だ。今年度は200億円の予算が組まれているが、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)で、「抜本的な強化を図る」と明記されており、来年度は倍増させる意向。

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