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ウェルフェア・レポート 2014年11月10日号

2015/1/16

予算編成へ「厚労省として財務省に言うべきことは言う」
~参院予算委で塩崎厚労相

参議院予算委員会は11月4日、安倍内閣の基本姿勢に関する集中審議を行った。塩崎恭久厚生労働相は、財務省の財政制度等審議会(財政審)が来年度の介護報酬改定で「基本部分の適正化(適正化に係る部分について少なくとも6%程度の引き下げ)」を求めていることに対し、「介護報酬の改定率の問題については、さまざまな心配をいただいた」としたうえで、「財政審の議論も踏まえながら、年末の予算編成の過程に向けて、厚労省としては言うべきことはきっちりと言っていきたいと思っている」と述べた。島田三郎委員(自民)の質問への答弁。

■「余裕財産」、公益活動等に活用する仕組みについて検討を進める
社会保障関係に絞って質問した島田委員は、特別養護老人ホームの内部留保について「平均3.1億円という話があるが、施設の建て替えに要する費用等も含まれ、決して余裕資金ではない。にもかかわらず、この額が一人歩きし介護報酬改定の議論に影響を与えていることは非常に憂慮すべきもの。社会福祉法人の内部留保について、どのように取り組んでいくのか」とただした。
これに対し、塩崎厚労相は「社会保障審議会の福祉部会で議論していただいているが、社会福祉法人の内部留保について確立した定義がなく、何をさして内部留保と呼ぶのか、はっきりしないということで、『余裕財産』を明確化する仕組みがないということが一つあると思う」と説明。そのうえで、「『余裕財産』が明確化された場合には、活用方法に明確なルールがないわけだから、これをどうするかを考えないといけないと思っており、福祉部会で議論の対象としていただいている。その中で社会福祉法人が自ら説明責任を果たせるように『余裕財産』の具体的な状況、いわゆる『見える化』する仕組みを構築したうえで、それでもまだ残る『余裕財産』については、必要に応じて福祉サービスや地域の公益的な活動に活用する仕組みについて検討を進めていきたいと考えている」と答えた。

■介護報酬改定、地域包括ケアなど大きな政策課題を総合的に勘案していく
島田委員はまた、「財政審の資料では介護報酬を6%引き下げるべきとされている。地域包括ケアシステムの構築を推進するために、必要なサービスの充実を図ったり、職員の処遇を改善させて利用者が質の高い介護サービスを安定的に利用できるようにしたりするには、現実的な数字ではないと考えている。年末の予算編成過程では塩崎大臣と麻生大臣でしっかりと協議していただき、しっかりとした結論を出していただきたい。意気込みを」と質問した。
塩崎厚労相は「介護サービスが安定的に供給されるためには、介護職員の処遇改善を含む人材確保が喫緊の課題であることはみんなが認めるところで、また、サービスの効率化に向けた不断の努力というものも同時に必要があるというふうには思う」と説明。そのうえで、「介護報酬の改定率の問題については、さまざまな心配をいただいた。広くそういう声を私どももしかと受け止めているところだが、地域包括ケアの推進といった大きな政策課題、大きな流れがあるわけで、そういうことを総合的に勘案していかなければならないし、財政審の議論ももちろん踏まえながらだが、年末の予算編成の過程に向けて厚労省としては言うべきことはきっちりと言っていきたいと思っている」と述べた。

消費税率10%、賛成5人、反対3人
~政府の点検初会合で両論

政府は11月4日、消費税率10%への引き上げ判断に関する「今後の経済財政動向等についての点検会合」の初会合を開いた。18日までに計5回開催、13日には国民生活・社会保障をテーマに有識者・専門家の意見を聴取する。
経済財政全般をテーマとした初会合には、▼伊藤隆敏氏(政策研究大学院大学教授)、▼荻上チキ氏(シノドス編集長)、▼加藤淳子氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、▼河野康子氏(全国消費者団体連絡会事務局長)、▼古賀伸明氏(日本労働組合総連合会会長)、▼須田善明氏(宮城県女川町長)、▼浜田宏一氏(内閣官房参与、イェール大学名誉教授)、▼三村明夫氏(日本商工会議所会頭)――が出席した。
甘利明経済財政政策担当相は初会合終了後の会見で、来年10月に予定している消費税率8%から10%への引き上げについて、▼伊藤氏と加藤氏が「予定どおり引き上げるべき」、▼古賀氏・須田氏・三村氏が「予定どおり引き上げを行うべきだが、景気対策、低所得者・地方経済等への配慮や転嫁対策などを行うべき」、▼荻上氏と浜田氏が「引き上げを一定期間延長すべき」、▼河野氏が「そもそも引き上げ自体を行うべきではない」――と、8人のうち5人が賛成(条件付きを含む)、3人が反対の意見を述べたことを報告した。
また、社会保障制度の在り方について、河野氏が「社会保障財源をどこに求め、どう負担するのか、国民の理解、議論の場が不十分だった」、加藤氏が「社会保障制度を維持していくためには、税は払うが、その後の給付をしっかりチェックするという発想に変わっていくことが必要」などと指摘したことも明かした。

来年度の介護報酬改定に向け「施設関係」の論点等を提示
~介護給付費分科会で厚労省

厚生労働省は10月29日と11月6日の両日、社会保障審議会介護給付費分科会を開いた。2015年度の介護報酬改定に向け、29日には「施設関係①」を、6日には「施設関係②」をテーマに議論した。       (次ページへ続く)

■特養の多床室の居住費、一定所得者は全額自己負担の案――29日の分科会
29日には、厚労省が介護福祉施設と特定施設入居者生活介護等についての論点と対応案を提示した。
介護福祉施設では、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の多床室の居住費(室料)について、一定の所得のある入所者を対象に全額負担を求める案を示した。この案の対象者は住民税の課税世帯が対象で「例えば、夫婦2人世帯で、本人の年金収入211万円超」と説明。自己負担となる居住費の基準額は月1万5,000円を軸に検討する。また、多床室の入所者が自己負担している光熱水費についても、「直近(2013年)調査の結果が基準費用額(1万円)を上回っている」として、1,000円程度引き上げる案も示した。
これに対し、「やむを得ない」との意見があった一方、同分科会委員を務める全国老人福祉施設協議会副会長の村上勝彦氏が全国老施協の意見として、特養の多床室料を利用者負担とすることについて、▼多床室料を利用者に転嫁することには反対、▼その理由として、利用者、とりわけ低所得の方々への十分な配慮が図られるべき、▼(自己負担となる)ボーダー層の負担問題もあり、介護保険制度における基本的成り立ちの上で予め保護しておくべき課題――などと表明。特養について「地域包括ケアシステムにおいて、特養ホームが地域の拠点として、より機能を発揮していくためにも、特養での介護の質を高めていかねばならない」と指摘、「(来年度の)介護報酬改定で、少なくとも現行水準以上の評価が必要」などと訴えた。

「施設関係①」の上記以外の論点と対応案(抜粋、厚労省の資料を基に作成)

介護福祉施設(9つの論点)

論点1:看取り介護加算の見直し

対応=新たな要件として、①入所者の日々の変化を記録により、多職種で共有することによって連携を図り、看取り期早期からの入所者及びその家族等の意向を尊重しながら、看取り介護を実施する。②当該記録等により、入所者及びその家族等への説明を適宜行うことを追加し、死亡日以前4日以上30日以下における手厚い看取り介護の実施に対し、単位数を引き上げる。 等

特定施設入居者生活介護等(7つの論点)

論点2:認知症専門ケア加算の創設

対応=現状においても、特定施設には認知症の入居者が一定程度生活していることから、介護老人福祉施設や認知症高齢者グループホームと同様に、認知症高齢者に対する体制を整備している施設に対する評価を行うこととしてはどうか。


■医療ニーズ充実の施設を「療養機能強化型」として重点評価――6日の分科会
6日には、厚労省が介護老人保健施設(老健)と介護療養型医療施設(介護療養病床)、施設系サービスの口腔・栄養についての論点と対応案を提示した。
このうち、介護療養型医療施設について、「地域包括ケアシステムの構築に向けて、今後、医療ニーズの高い中重度要介護者への対応の更なる強化という視点からの機能の評価が必要」「現在の介護療養病床が担っている機能については今後とも確保していくことが必要」との観点から、医療ニーズや看取りへの対応等が充実している施設を「療養機能強化型施設」(仮称)として重点的に評価することを提案。その要件として、入院患者のうち、①重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者が一定割合以上。②一定の医療処置を受けている人数が一定割合以上。③ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上――のほか、④生活機能を維持改善するリハビリテーションを行っている。⑤地域に貢献する活動を行っている――の5つを示した。

■「現行法制度を前提とした提案」「介護療養病床の機能は必要」――厚労省
この案に対し、高齢化の進行とともに重度の慢性疾患を抱える高齢者が増えていること等を挙げ、「介護療養型医療施設はどうしても必要で、きちんと医療を提供しているところを評価することには賛成」(日本慢性期医療協会会長・武久洋三委員)、「高齢化で重医療・重介護の人が増えるため、(療養病床の)廃止はますます困難になると思う。そういう方向に沿った案で良いのではないか」(日本医師会常任理事・鈴木邦彦委員)との賛成の一方、「約3年後(2018年3月末)に廃止の方針が変わっていない中、介護療養型医療施設の機能を重点的に評価するのは反対」(健康保険組合連合会理事・本多伸行委員)などの意見も出た。こうした指摘に対し、厚労省は「現行の法制度を前提に報酬を設定することを提案している」と理解を求めたうえで、「今回、重点的に評価することを提案した前提は、実態として一定の役割を担っている介護療養病床の機能は必要ということ。(老健等へ)転換していただく趣旨で、現在の機能を見つめた時に、現在、担っている一定の機能については必要であるとの認識をこれまでに確認している」などと説明した。これを受け、鈴木委員は「今後の方向性について早く示す必要がある」と指摘した。

■「経口移行加算」や「老健の在宅復帰支援の強化」等も提案
施設系サービスの口腔・栄養については、論点1「経口維持加算等の見直し」、論点2「経口移行加算の見直し」などを提示。これに関しては、「嚥下障害はST(言語聴覚士)がしっかり訓練すれば、必ず良くなる。今回の提案は非常に良い制度で、STが積極的に関与した際にはもっと評価を」との声が挙がった。老健については、在宅復帰支援機能を高めるために、リハビリテーション専門職を多く配置するほか、退所後の生活を支援するための要件を満たす場合に、新たに評価する案を示した。この案に対しては、賛成・評価の声が相次ぐ中、「在宅復帰しても状態を維持して生活できるよう支援する必要がある」との指摘もあった。

介護人材の「量的」確保に向けた論点を提示
~福祉人材確保専門委の初会合で厚労省

厚生労働省社会保障審議会福祉部会に設置された「福祉人材確保専門委員会」が10月27日に初会合を開催。厚労省が具体的な方策として、介護人材の「量的」確保に向けた論点を示した。
「量的」確保に向けた論点としては、①参入促進、②労働環境・処遇の改善、③役割分担と連携(初会合では「地域の連携」)――を提示。このうち、「参入促進」では「介護に関心のない層」に対し、▼小中学生が高齢者と接することのできるような体験型学習を地域の教育機関との連携により進める、▼介護事業者自らが積極的に地域開放を進め、小中学生の受入れを進める――などのほか、「潜在介護福祉士」に対し、▼離職期間中のブランクによる不安感を払拭するため、再研修や職場体験の実施を進める――などの論点を示した。また、「労働環境・処遇の改善」では「経営者・マネジメント層」に対し、▼介護施設・事業所におけるキャリアパスの構築と、その運用のためのノウハウの定着推進を図る、▼経営者(施設長・管理者)に対し、他産業や他の事業者の労働環境等の改善における先駆的な取組や具体的手法の理解を進める、▼より効果的な取組を進める事業者が、求職者から見えやすくなるよう、人材確保に積極的に取り組む事業者の「見える化」を進め、情報公開を進める――との論点を挙げた。

政策提言「医療保険制度改革への展望」を発表  ~経済3団体

日本経済団体連合会・日本商工会議所・経済同友会の経済3団体は10月23日、「医療保険制度改革への展望」と題した政策提言を発表した。高齢者医療費の負担構造の見直しや医療給付の重点化・効率化施策の推進を求めている。 政策提言では、「年1兆円規模で増え続ける医療費は、企業や従業員の負担を際限なく高め、経済成長の基盤となるべき企業活力を大きく損ねる」とともに、「社会保険料の増加によって賃上げが可処分所得の増加につながらず、結果として、安倍政権の狙いである『経済の好循環』が頓挫しかねない」と指摘。そのうえで、政府が2015年の通常国会に提出する予定の医療保険制度改革で、①高齢者医療費の負担構造の見直し、②医療給付の重点化・効率化施策の推進――を要望している。①については、▼財源を現役世代の負担に過度に依存する現行制度を見直し、高齢者医療費への税投入を拡大することを求める、▼前期高齢者医療への税投入拡充等による被用者保険全体としての負担軽減策がない中で、現役世代間の負担調整に過ぎない後期高齢者支援金の全面総報酬割を導入することは再考すべき――などと説明している。また、②については、「医療給付の重点化・効率化なしには、医療保険制度を維持することは困難である。医療給付の重点化・効率化に向けて、実効性のある施策を早急に制度化することを求める」としている。

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