ホーム > 新着情報 > 介護経営情報 2015年6月19日号
◆介護・福祉サービス・医療の総合的な相談窓口設置を
近未来政策を示す「保健医療2035」 厚労省策定懇
――厚生労働省
団塊ジュニアの世代が65歳に到達し始める2035年を見据え、目指すべき保健医療ビジョンを描いた「保健医療2035」の提言書が、厚生労働省の有識者「策定懇談会」の座長・渋谷東京大学大学院教授から塩崎大臣に手渡された。いまから20年後の2035年を見すえた保健医療政策のビジョンとその道筋を示す提言書~近未来政策~である。
提言書は、2月の活動開始から計8回の議論を重ね、①保健医療の価値を高める「リーン・ヘルスケア」、②主体的選択を社会で支える「ライフ・デザイン」、③日本が世界の保健医療を牽引する「グローバル・ヘルス・リーダー」の3つの展望のもとに、とりまとめられたもの。団塊世代(昭和22~24年生まれ)の子供―ジュニア世代(現在40代前半)の将来を見据えた長期ビジョン策定だ。
6月11日、渋谷座長から直接提言書を受け取った塩崎大臣は、「高齢大国の日本が、どういう風に保健医療政策でこの難問を乗り越えていくのかを世界が注目しています。『保健医療2035』を厚労省としても真摯に受け止めて、それをできるものから着実に進めていきたい」と答えた。裏返せば現在の「社会保障体制」では将来が危ういという警告書でもある。塩崎恭久厚生労働大臣としての新たな任務構想を「言葉」にしたものだ。
この懇談会は、急激な少子高齢化や医療技術の進歩など医療を取り巻く環境が大きく変化するなか、国民の健康増進、保健医療システムの持続可能性の確保、保健医療分野における国際的な貢献、地域づくりなどの分野における戦略的な取り組みなどを検討することを目的に、2015年2月にスタートした。
保健医療2035(ニーマルサンゴー)とは何か―。20年先へ向けて、「人々が世界最高水準の健康、医療を享受でき、安心、満足、納得を得ることができる持続可能な保健医療システムを構築し、我が国及び、世界の繁栄に貢献する」(提言書文言)ことを目標としている。その上で「公平・公正」、「自律にもとづく連帯」、「日本と世界の繁栄と共生」を、基本理念に掲げている。
柱となる前掲の「3つのビジョン」を説明すると――。
(1)リーン・ヘルスケア~保健医療の価値を高める~(保健医療システムへの投入資源に対し、人々が得られる価値を最大化する)。
(2)ライフ・デザイン~主体的選択を社会で支える~(人々が自ら健康の維持・増進に主体的に関与し、また、健康の社会的決定要因を考慮した取り組みを進める)。
(3)グローバル・ヘルス・リーダー~日本が世界の保健医療を牽引する~(国境のない新興・再興感染症の封じ込めや災害時の支援などに貢献する機能を強化する)。
また、具体的な「アクションの例」としては、次の事項などが列挙されている。
「ゲートオープナー」としての、かかりつけ医の育成・全地域への配置/患者の価値を考慮して医療技術を評価、診療報酬点数に反映/「健康への投資」による生活の質と生産性の向上/「たばこフリー社会」の実現/健康危機管理・疾病対策センターの創設。
提言書には介護に関する改革案もある。今後、地域医療にシフトしていくことを踏まえ、医療や看護だけでなく、介護やリハビリの専門職との連携・調整を行う専門人材の育成や、医療・看護・介護・リハビリの対応が総合的にできる資格の創設が提案されている。
健康なライフスタイルを「日常」に定着させよう―合言葉に
提言書の中では、医療・介護に関する地域のニーズはそれぞれ異なるため、介護・福祉サービスや医療の総合的な相談窓口「地域総合ケアステーション」を設置すべきとしている。このような窓口の設置により、健康なライフスタイルを「日常」として定着させることを合言葉に、という狙いもある。
言葉の説明/「リーン・ヘルスケア」―アメリカの車両生産現場で、トヨタ自動車「カンバン方式」(ムダ排除)から応用されたコスト削減と意識の持ち方(リーンは『身を引き締める』の意)をベースにして医療現場等に当てはめた。あらゆる業種・職種に応用される。
・作りすぎのムダ(医療機関・医療職など)/・手持ちのムダ(高額医療機器など)/・運搬のムダ(医療品・患者搬送など)/・加工そのもののムダ(手術の可否)/・在庫のムダ(医療材料在庫)/・不良をつくるムダ(医療過誤)/人間動作のムダ(職務分担の不明確さなど)
◆<病院ベッド>最大20万床削減目標 政府の25年推計
医療費抑制への施策 首都圏、大阪除く41道府県で削減
――医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会
政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(会長=永井良三・自治医科大学長)は6月15日、将来の需要推計に基づく2025年の必要病床数が、現状から最大20万床減少する推計をまとめた。具体的には現在134万7,000床ある全国の病院のベッド数を、10年後には115万床程度にしたいというもの。同調査会は「これは入院ではなく、自宅や介護施設で療養できる人がいるため」としているが、一方で医療介護のバランスとなる「受け皿整備」が同時に課題となることも必至だろう。
この推計は、専門調査会の下に設置された「医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ(主査=松田晋哉・産業医科大医学部教授)が、厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」がまとめた推計方法を基に算出した。
国民が医療機関で病気やけがの治療を受けるのにかかった費用の総額を示す「国民医療費」は、平成24年度で39兆2,000億円余りに上っており、政府は医療費の抑制に向けた施策の検討を進めている。
政府は、団塊の世代が75歳以上となる2025年の病院ベッド数を、13年の134万7,000床より最大約20万床削減できるという推計を発表した。入院治療の必要性が低い人は在宅や介護施設へ移ることを前提にしているが、受け入れ態勢の整備が課題だ。
推計では13年度1年分の診療報酬明細書(レセプト)などを基に試算した。対策をせずに高齢化が進んだ場合、25年の必要ベッド数は約152万床に膨らむ。しかし、在宅や介護施設への移行を進めれば、必要病床数は115万~119万床程度になり、13年より約20万~16万床削減できるとしている。内訳は、緊急で高度な手術が必要な高度急性期が13万床▽一般的な救急治療をする急性期が40.1万床▽リハビリをする回復期が37.5万床▽長期療養をする慢性期が24.2万~28.5万床。
都道府県別(地域別)では北海道で1万5,000床程度、福岡県で1万4,000床程度を削減、鹿児島県の35%減を含み41道府県で削減が可能とする一方、東京都、大阪府、千葉、埼玉、神奈川3県などでは増加数が多く病床が1割前後不足する。
各都道府県は今後、地域事情を加味しながら25年の必要ベッド数を絞り込み、医療提供体制とあわせた「地域医療構想」を16年秋までに策定する予定。
しかしベッド数の削減には民間病院中心に地元の抵抗が予想されるだけでなく地域住民の反対もある。そのため受け皿未整備のままでは「患者の追い出し」とられかねないためにも、在宅医療や介護サービスの充実が必要となる。政府は今後、地方自治体などと連携し、削減の具体的な目標を作成して達成を目指すとともに、在宅で充実した医療や介護を受けられる体制の在り方について検討を急ぐ。
◆10分で認知症診断「あたまの健康チェック」
「認知症ねっと」で、MCIの段階から早期発見を!
――(株)エス・エム・エス
医療介護情報総合サービス業の(株)エス・エム・エス(SMS、東京都港区)は6月10日、運営する認知症情報ポータルサイト「認知症ねっと」において、MCI(軽度認知障がい)を早期に発見するためのテスト、「あたまの健康チェック」の有料提供を開始したと発表した。
高齢者の約4人に1人が認知症か、認知症の前段階に当たるMCIの症状を抱えているといわれ、高齢者の認知症は深刻な社会問題となっている。認知症は、早期発見で改善する確率が高いため、早めに治療を受けることが大切だ。
MCIと診断された人が治療を受けた結果、後日の検査で14%~44%の人が「認知症ではない」と判定されるまでに回復している。しかし現状ではMCIの段階で受診をする人は少なく、改善が難しい中度認知症まで症状が進んでから医師を訪れる人が大半だ。そこで同社は6月10日、運営する認知症情報ポータルサイト「認知症ねっと」で、MCIの早期発見テストを開発し「あたまの健康チェック」の有料提供を開始した。
「あたまの健康チェック」では自分の症状が「加齢に伴う正常なもの忘れ」なのか、「MCI」によるものなのかを判別するテスト。わずか10分の問診(認知度チェック)で、97%の精度で結果がわかる。(注/「あたまの健康チェック」は、認知機能の一般的な評価を提供することが目的で、認知機能に関わる病状・病気を診断する、または、治療することを目的としたツールではない)。
「あたまの健康チェック」で使われる認知機能チェックテストは、国際的認知症診断ツールをもとに開発されたもので、米国で正確性の検証実験を行った結果、97%の精度で判別されることが確認された。また、日本でも福岡大学の研究グループが同様に検証を実施し、96%の精度を確認している。
「あたまの健康チェック」は、ウェブサイトまたはAmazonから3,500円(税別)を支払って、テストを受ける。料金を支払ったあとに、問診テストを受けるためのフリーダイヤルとシリアル番号がEメールで送られてくるので、記載されたフリーダイヤルに電話をかけて、10分程度の認知度チェックを行う。テスト結果は後日、レポートにした書類が郵送される。
◆5月の熱中症による救急搬送は全国で2,904人 消防庁
救急搬送人員 最多は愛知県、2位東京都、3位埼玉県
――総務省消防庁
総務省消防庁は6月15日、2015年5月の熱中症による救急搬送の状況(確定値)を公表した。消防庁によると、2015年5月(1日~31日)に熱中症で救急搬送された人は、全国で2,904人。消防庁は、気象庁の「5月後半に引き続き、6月も気温は高めに推移し、真夏日が観測される日も見込まれていることから熱中症への更なる警戒が必要」との見解を参考に示している。
搬送者を年齢区分別に見ると、高齢者(65歳以上)が1,354人(全体の46.6%)ともっとも多く、次いで成人(18歳以上65歳未満)が931人(32.1%)、少年(7歳以上18歳未満)が562人(19.4%)、乳幼児(生後28日以上7歳未満)が57人(2.0%)などとなっている。
医療機関での初診時における傷病の程度を見ると、軽症1,937人(66.7%)、中等症863人(29.7%)、重症70人(2.4%)、死亡3人(0.1%)の順。また、都道府県別人口10万人当たりの救急搬送人員は、沖縄県が5.82人でもっとも多く、次いで長野県が5.29人、佐賀県4.71人の順。なお、都道府県別の救急搬送人員総数は、愛知県が200人でもっとも多く、次いで東京都176人、埼玉県170人の順だった。
消防庁は熱中症を予防するには、こまめな水分補給や、エアコン・扇風機を用いた室温調整、適度な休憩をとることなどが大切という。特に小さな子どもは汗腺が未熟で、体温調整がしにくいという特徴があるため、屋内でも熱中症に注意が必要だという。高齢者ものどの渇きなどに気付くのが遅れるので、室内にいても水分摂取には注意するように促している。同庁は、ホームページで熱中症による救急搬送状況の速報値を毎週発表するほか、熱中症予防策について紹介した「熱中症対策リーフレット」やツイッターを通じて注意喚起を行っている。
環境省は夏から秋にかけ10月16日までの間、「環境省熱中症予防情報サイト」にて暑さ指数の情報提供を行う。今年度からはスマートフォンにも対応するなど、機能を拡張。そのほか、熱中症の応急処置や普及啓発資料を掲載している。
暑さ指数(WBGT)とは、人体に与える影響の大きい「湿度」「日差しなどからの輻射熱(黒球温度)」「気温」の3つを取り入れた指標。気温と異なり、人体と外気との熱収支に着目した指標で、労働・運動環境の指針としてISO(国際標準化機構)などで規格化されている。
同省では平成18年度から、都市部を中心とした暑熱環境の悪化などによる熱中症患者を防ぐため、熱中症予防情報(暑さ指数予測情報)を提供するホームページを運営。サイトへのアクセス数は、平成25年度は約1,150万件、平成26年度は約1,400万件と年々増加しているという。今年度から、PC・携帯電話だけでなくスマートフォンにも対応している。
サイトでは、全国841地点の暑さ指数の予測値および実況値、身長の低い児童を想定した暑さ指数参考値、過去5年間の統計値データなどの情報を提供している。また、今年度から統合された「環境省熱中症情報サイト」の普及啓発資料などを掲載しているほか、暑さ指数のランキング表示(全国・地域別・都道府県別・各地点別)が新たな機能に加わった。