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介護経営情報 2015年5月22日号

2015/6/3

◆がん死者20%減目標、受診伸び悩みで達成困難
厚労省がん対策推進協議会 喫煙率減少も伸びず
――厚生労働省

厚生労働省のがん対策推進協議会が5月20日開催され、国立がん研究センターの推計によると、75歳未満のがんの死亡率を2005年から2015年までの10年間で20%減少させるとした政府の目標について、「達成は困難」との推計結果の見通しを発表した。国は、がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画で、75歳未満のがん死亡者数(人口10万人当たり)を05年の92・4人から15年に73・9人とする目標を定めた。
喫煙率の減少が目標に届かず、がん検診の受診率も伸び悩んでいることから、現状では17%の減少にとどまるとしている。

がん対策推進協議会の推計結果が報告では、年齢構成の違いなどを調整した人口10万人当たりの死亡者は05年が92・4人で、目標の20%減を達成するには、15年には73・9人になっていなければならなかった。しかし、これまでの実績などから推計したところ現状では76・7人で17%減にとどまっていた。正式なデータは17年にわかるが、20%減は難しいという。
目標値は、喫煙率の減少や検診受診率の上昇を期待して設定された。目標を達成するには、喫煙率を05年の24・2%から半減させ、同じく20~30%台だった胃がんや肺がんなど「5大がん」の検診受診率を50%に引き上げることが必要とされた。胃や大腸、子宮などは13年時点で30~40%台という。
厚労省によると、2013年の最新の統計では、喫煙率は19・3%、検診受診率は最も高い肺がん(男性)で47・5%だが、女性はすべてのがんで30%台に低迷している。同省は6月1日に初の「がんサミット」を開催し、たばこ対策の強化などを呼びかける方針だ。
厚労省は「(目標に達していない)現状はしっかりと受け止める必要がある。今後もがん対策を進め、死亡率を下げていきたい」としている。死亡率の「20%減少」は、07年に政府のがん対策推進基本計画に盛り込まれた。

◆日本救急学会、熱中症の「診療指針」を初めてまとめる
熱中症診療ガイドライン 疫学、診断、治療、予後を解説
――日本救急医学会

日本救急医学会はこのほど、熱中症診療ガイドライン2015を公開、このなかで熱中症の診療指針を初めてまとめた。これは重症度を3つに分け、頭痛や嘔吐などがあれば、医療機関の受診が必要などとしている。
ガイドラインはClinical Question(CQ)形式となっており、疫学、診断、治療、予後――の4分野に分けて、11問の質問を設定。熱中症の疫学や発生条件、診断基準、診断、予防や治療法、重症化の因子などが記載されている。

重症度の分類は、周囲にいる人が早く異常に気付いて治療につなげる目的でつくられた。体温などにかかわらず、めまいや立ちくらみがある状態を「Ⅰ度」、頭痛や嘔吐があれば「Ⅱ度」、意識障害などがあれば「Ⅲ度」とした。
Ⅰ度は体の表面を冷やすことや水分・塩分の補給など現場で応急手当てをし、Ⅱ度以上は医療機関へ連れて行く。医療機関では経口か点滴による水分・塩分の補給や、体を冷やす処置などを受ける。Ⅲ度は入院が必要となる。
この分類は学校や職場、介護の現場、一般の人にも役に立つとアドバイスしているが、大事なのは「Ⅰ度の人でも、誰かがそばで必ず見守り、回復しなければ医療機関を受診してほしい」と日本救急医学会は注意を促している。
さらに年齢的には高齢者は重症例が多いとして暑さやのどの渇きに鈍感になっていると注意する。特に室内で熱中症になるのは、高齢の女性やひとり暮らしの人に多く、高血圧、糖尿病、認知症などの持病があると重症化しやすいという。
熱中症の予防・治療には「塩分と水分の両者を適切に含んだもの(0.1~0.2% の食塩水)」を推奨。具体的には市販の経口補水液を望ましい例として挙げた。
市販品は一般的なスポーツドリンクでも問題はないが、塩分量が少なく糖分が多いとしている。梅昆布茶やみそ汁なども有効という。
専門的には新たな冷却法として注目されている「血管内冷却カテーテルを用いた深部冷却および水冷式体表冷却(ゲルパッド法、ラップ法)」については、「現時点では十分な検討がなされていない」として、弱い推奨にとどめている。
また、適切な冷却目標温度と冷却時間については、「深部体温が38℃台になるまで積極的な冷却処置を行う」よう求めるとともに、「高体温の時間が長くなると予後が不良となるため、できるだけ早期に目標温度に到達することが望ましい」と説明している。

環境省が発行している『熱中症環境保健マニュアル』による熱中症の症状と対処法(主に医療機関向け)は次の通り。

<Ⅰ度―応急措置と見守り>
筋肉のひきつりや痛み、一瞬の意識消失、手足のしびれなどの症状があり、現場の応急処置で回復するものをI度。これらは筋肉に限局した症状と、初期の軽い脱水による所見があり、そのため意識はしっかりしている。(改善しなければ医療機関へ)

<Ⅱ度―医療機関へ>
頭痛や吐き気・おう吐、下痢・腹痛、けん怠感のほか、いま一つ意識がはっきりしない、ボーっとしている、体がふらつくなどの症状がある場合は、現場で応急処置をしつつ医療機関への搬送を必要とするII度以上と判断。これらは脱水と高体温により、中枢神経、消化器などに障害が及んだ所見といえる。

<Ⅲ度―入院>
医療機関での採血検査などによって、1)中枢神経症状、2)肝・腎機能障害、3)DIC(血液凝固異常)が存在する場合に診断され、入院治療を要する病態で、場合によっては集中治療が必要となる。

Ⅰ度、Ⅱ度の症状はともに非特異的であるため、症状にとらわれず暑熱環境に居る、あるいは居たという現病歴から熱中症を疑う必要がある。すぐに、1)冷所での安静、2)体の冷却、3)水分摂取などの応急処置を行い、症状の回復がなければ救急車で医療機関へ搬送する。誰かが付き添い一人にしない。

●2014年の熱中症労働災害発生状況/2015年の予防策 厚労省
厚生労働省は5月14日、2014年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を発表するとともに、死傷災害が多く発生している建設業・製造業などを重点業種として、2015年の「熱中症予防対策の実施」に関する同日付の通知を、都道府県労働局長向けおよび関係団体の責任者に向けて発出した。

背景には、猛暑だった2010年以降も、職場における熱中症による死傷者数が、毎年400~500人台に達しているうえ、2015年夏の気温も平年並み以上が見込まれ、熱中症による労働災害の多発が懸念されていることがある。今回発表された統計は、熱中症対策を進めるための基礎資料となる。

統計の具体的な数値によると、2014年における熱中症による死傷者数は423人(前年比107人減)で、うち死亡者数は12人(同18人減)。死亡者数は過去10年間で2番目に少なかったものの、死傷者数は依然として高止まりしているという。業種別発生状況では、最も多いのは建設業の144人(うち死亡者数6人)、次いで製造業の84人(同1人)であり、2業種合わせて全体の約5割を占める。

厚労省は、2015年における熱中症予防策の重点的な事項として、次の項目などをあげ、同じ内容を通知でも伝えた。

●ストレスを評価する暑さ指数のWBGT値が基準値を超えることが予想される場合、スポットクーラーの使用や作業時間の見直しをするとともに、単独での作業を避ける。
●朝礼の際などの注意喚起により、作業者の自覚症状にかかわらず、水分・塩分を定期的に摂取させる。

◆日本版CCRCの居住者は構想段階から意見表明に参加を
内閣府 住居・介護・医療の総合的な施設サービス
――内閣府

内閣府は5月14日、「日本版CCRC構想有識者会議」を開催し、取りまとめにあたる「日本版CCRC構想の素案」を提示した。日本版CCRC構想は“高齢者への継続したケア”を骨子とするContinuing Care Retirement Communityの頭文字から取っている。
主体は内閣府で「日本版CCRC構想有識者会議」(座長:増田寛也東大大学院客員教授)が主導し主な論点について、今年2月から毎月1回の割合で継続討議して日本版CCRCの導入を目指している。討議された論点は、(1)ソフト面、(2)ハード面、(3)事業運営面、(4)政策支援の各分野にわたる。この日、名称案が出揃った。

日本版CCRC(高齢者への継続したケア)構想は、「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができる地域づくり」を目指す仕組み。健康なうちから入居することや、地域への開放性を備えるなどの点で、従来の高齢者向け施設とは異なる。

今回の素案では、日本版CCRC構想の「具体像」として、次の内容などを打ち出した。
(1)入居者(日本版CCRC構想の基本理念を理解した上で、地方で暮らすことを希望する高齢者が対象)。
(2)対象地域(一定のエリアや地域全体を対象とし、居住者や地元住民が交流し、共働できる多様な空間を形成する)。
(3)サービス提供(移住希望者に対するマッチングを行うほか、一定期間の「お試し居住」などの仕組みを用意する)。
(4)生活・居住環境の確保(高齢者が地域社会に溶け込み、多世代との共働や地域貢献ができる環境を実現する)。

日本版CCRCの名称案として、素案ではプラチナ・コミュニティ(タウン、ビレッジ、キャンパス)/生涯活躍の街/アクティブ・ビレッジ/シニアスシティ/ウェルネスシティ/アライブコミュニティ―などを掲げた。

有識者会議は今後、7~8月に予定される中間報告に向けてさらに検討を加え、2015年以内をめどに「日本版CCRC構想」を取りまとめる。

先行する米国型のモデルであるCCRCとは、「健常・自立」、「介護度低(支援型)」、「介護度高(介護型)」という3つのレベルに合わせ、住居・生活サービス・介護・医療などを総合的に提供していく施設サービスで、米国には約2,000カ所のCCRCがあるという。
日本型の目指す目標は「高齢者が社会の担い手の一員となる新たな住まい・コミュニティ」にある。従来の高齢者住宅とは異なり、高齢者が安心して健康で元気に暮らし続けることができ、社会の担い手の一員となり得る仕組みが整った新たな住まい・コミュニティ。
ただし高齢者だけの閉ざされた場所ではなく、地域に開かれ、多世代が集い、共創する仕組みの構築を目指し各種主体と連携して総合的に企画・コーディネートなどを行うマネジメント機能が必要となる。

日本版CCRCは、健康・医療・介護、街づくり、雇用、生涯学習、移住、社会参加など多様な分野に関連する社会システムであり、1省庁がすべてを事前に想定して制度設計をすることは困難だ。したがって省庁横断型の組み合わせ型政策が必要であり、省庁横断のマネジメント体制の構築や、試行的にモデル事業を開始することで得られる課題・知見を制度の本格導入時に活かす仮説検証型の制度設計が鍵となる。

◆2013年度の後期高齢者医療費14兆1,912億円 厚労省
1人当たり医療費、福岡県が約118万円で最高
――厚生労働省

厚生労働省は5月14日、2013年度の後期高齢者医療事業年報を公表した。この年報は、2013年度における後期高齢者医療制度の事業概況を、旧制度である老人保健制度の推移なども含めて収録したもの。後期高齢者医療広域連合からの事業状況報告などに基づいて編集している。

2013年度における平均被保険者数は、1,526万6千人となっており、前年度に比べて36万1千人、2.4%増加している。75歳以上の人は1,489万4千人、65歳以上75歳未満で障害認定を受けた人は37万2千人だった。

医療費をみると、前年度比3.6%増の14兆1,912億円(総件数4億5,690万件)。このうち診療費は同2.8%増の11兆1,837億円(診療件数2億8,821万件)だった。このほか、調剤医療費は同7.6%増の2兆3,798億円(調剤医療件数1億5,632万件)などとなっている。
1人当たり医療費は同1.1%増の92万9,573円。また、所得区分別では、現役並み所得者は85万4,031円、現役並み所得者以外は93万4,989円だった。都道府県別に1人当たり医療費をみると、最も高いのは福岡県の118万1,686円、最も低いのは新潟県の74万5,307円で、その格差は43万6,380円、1.59倍だった。

この中で入院の状況について注目すると、1人当たり入院医療費は前年度比0.2%減の45万6,062円。これを3要素に分解すると、受診率(被保険者100人当たりの年間レセプト件数)は同1.6%減の83.57件、1件当たり日数は同0.3%減の18.20日、1日当たり医療費は同1.8%増の2万9,990円となっている。とくに1日当たり医療費の前年度比増加率は後期高齢者医療制度創設以来、最低となった。

なお、厚労省の最新の発表(4月24日)によると2015年1月の後期高齢者医療制度加入者は1,567万人だった。厚労省の後期高齢者医療毎月事業月報が公表され後期高齢者医療制度の加入者数は、全国で1,567万580人(前年同月比2.0%増)。65歳以上75歳未満の障害認定者数は36万1,026人(同2.3%減)。100歳以上の被保険者数は5万8,268人、被扶養者の被保険者数は168万3,237人だった。

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