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医療経営情報 2015年5月21日号

2015/6/3

◆特定機能病院を6月から3カ月間めどに集中立入検査
厚労省 第一回TF開催 塩崎厚労相「実態把握が目的」
――厚生労働省

厚生労働省は5月14日、「第一回大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」(TF)を開催した。今回は初会合で、本部長に塩崎厚労相が就き「特定機能病院に対する集中検査」を議論した。東京女子医科大学病院に群馬大学附属病院と連続して2つの特定機能病院が承認取り消しになることを重く見た厚労省が、すべての特定機能病院に対し集中的な立入検査を実施することで一致した。2病院では「医療安全管理体制」が不十分で、患者への説明がきちんとされていないことが明らかになっている。
塩崎厚労相は「6月から3カ月間をめどに集中的な立入検査を行い、秋ごろには結果を公表したい」と説明した。

TFは大学附属病院などで、禁忌薬の投与等による特定機能病院取消事例など医療安全に関する重大事案が相次いで発生したため、大学附属病院や特定機能病院(先進的医療実施病院)に対する「集中立入検査の実施」、「特定機能病院の承認要件や立入検査項目、高難度の新規医療技術導入のプロセスの見直し」などを迅速に行うために設置された。TFは緊急性の高い、特定の課題に取り組むために設置される特別チームのことをいう。

厚労省が示した集中検査で確認すべき事項のたたき台として、医療安全体制に関して、「ルールが定められているのか」、「ルールに基づいて実際に運用されているのか」の観点で、(1)ガバナンス、(2)高難度新規医療技術の導入、(3)インフォームド・コンセント――の3分野を確認すべきと提案した。これは医療法第25条に基づく検査で体制や運用方法などが調べられる。厚労省はその狙いを「あくまで情報収集、実態把握が目的であり、結果にかかわらず指導などは行われない」と強調している。ただし塩崎厚労相は「集中立入検査を行った上で課題を抽出することはもちろん、特定機能病院の承認要件の見直しを行う」ことにも言及している。
(1)では、開設者(法人の長など)と管理者(病院長)の関係に関して、管理者に付与されている権限などを確認。医療安全向上の取り組みに際して、管理者として責務を果たすための権限が規定され、医療安全管理者として責務を果たすための権限が付与されているか確認する。また、管理者の意見が、開設者にどのように伝達されて反映されているか、個別事案について実際に権限が行使され適切な対応がされたのかを確認する。
(2)では、高難度新規医療技術導入のルール(規定)、審査体制の確保、ルールの運用状況、個別事案の審査状況などを確認する。
(3)インフォームド・コンセントに関して、診療科ごとの様式・手順や適切な実施・診療録への記載状況などを確認するほか、個別事案のカルテなどを確認することが提案された。
今後の日程は5月下旬以降に具体的な集中検査項目を取りまとめ、6月から3カ月間ほどの集中検査を実施する。結果については今秋、取りまとめる予定。

◆がん研が2015年がん罹患数予測、前年比10万例増予想
男性は大腸がん、前立腺がん、女性は乳がんが増加
――国立がん研究センター

国立がん研究センター(国がん)がん対策情報センターは5月1日、2015年に新たにがんと診断される患者の数(罹患数)と死亡数の予測を発表した。高齢化やがん登録の精度の向上などを背景に、予測がん罹患数は98万例になり、前年より10万例増加した。がん情報の総合サイト「がん情報サービス」で公開している。
国がん予測の「罹患数」とは、新たにがんと診断されるがんの数のことで、「死亡数」はがんで亡くなる人の数を指す。日本のがん統計は、罹患データは4~5年、死亡データは1~2年遅れて公表されている。諸外国では、これらの遅れを数学的な手法で補正して、現時点でのがん統計を予測する試み(短期予測)が実施されている。

同センターでは、2015年の予測がん罹患数は98万2,100例(男性56万300例、女性42万1,800例)で、2014年の予測値より約10万例増加すると予測した。部位別で見ると、大腸がんと前立腺がんの罹患が増加し、男性では前立腺が最多となっている。

●予測がん罹患数(2015年)
男女計
部位 罹患数
全がん         982,100
大腸          135,800
肺           133,500
胃           133,000
前立腺         98,400
乳房(女性)      89,400
肝臓          47,300
膵臓          38,700
子宮          30,000
悪性リンパ腫      29,700
腎・尿路(膀胱除く)  28,700
胆嚢・胆管       26,700
皮膚          24,400
食道          23,900
膀胱          21,300
口腔・咽頭       19,500
甲状腺         17,900
白血病         13,800
卵巣          10,400
多発性骨髄腫       8,600
脳・中枢神経系      5,100
喉頭           4,700
(再掲)
(結腸)        (91,600)
(直腸)        (44,200)
(子宮体部)      (17,800)
(子宮頸部)      (12,500)
*大腸、肺、胃…など太字は罹患数の多い順

同センターでは、2014年予測値と比べて罹患数が増加した要因として、高齢化とがん登録精度の向上を挙げている。前立腺がんの増加も、PSA(prostate specific antigen: 前立腺特異抗原)検診の普及が寄与していると考えられるとしている。

死亡数は、37万900人(男性21万9,200人、女性15万1,700人)。2014年の予測値より約4,000人の増加で大きな変化はないという。部位別で見ると、死亡数は肺がん(7万7,200人)、大腸がん(5万600人)、胃がん(4万9,400人)、膵臓がん(3万2,800人)、肝臓がん(2万8,900人)の順に多かった。大腸がんが胃がんを抜いて2番目となった。

全体では大腸の順位が上がっているが、男女別での順位変動はなく2014年と同様の傾向にある。

1980年頃からのデータと比較すると、罹患数、死亡数とも胃がんと肝臓がんの順位が下がり、肺がんと大腸がんの順位が上がっている。胃がんは高齢化の影響を除くと罹患数・死亡数は少ない傾向にあるが、高齢化の影響で増加または横ばいとなっているという。前立腺がんとともに、女性の乳がんの罹患率も高い(乳がんのデータは2003年以降)。

なお、予測精度は主要部位の5年間の予測について、実測値と比較することで検証されているが、予測不能な要因などにより誤差が伴う場合もある。また、前立腺がんの罹患は、検診の動向などによって変動がありえるとのこと。

●国がん対策情報センターは【まとめ】として次のように総括している。
(1)2014年予測値と比べて罹患数が増加した要因は、高齢化とがん登録精度の向上が考えられます。
(2)罹患数では大腸、肺、前立腺がんが、死亡数では大腸がんが順位を上げました。
(3)罹患、死亡とも胃がんが順位を下げました。
(4)大腸、肺がんの罹患数の増加は高齢化(高齢化の影響を除くと大腸は横ばい、肺は男性で減少)の影響が高いと考えられます。
(5)前立腺がんの増加は、合わせてPSA検診の普及が寄与していると考えられます。
(6)胃がんは高齢化の影響を除くと罹患数・死亡数は減少傾向ですが、高齢化の影響で増加または横ばい(他の増加が上回るため順位が下がる)です。*PSA検診=前立腺がん検診


◆財政審分科会が社会保障費抑制と患者負担増を提案
財務省 次期改定で「マイナス改定必要」を示す
――財務省

財務省の財政制度等審議会の財政制度分科会で、「今後5年間で2兆円から2.5兆円の社会保障費の伸びを抑制する方針」とする中で、診療報酬改定については「マイナスが必要」と明言しているが、この内容が波紋を呼んでいる。
これは来年度予算に向けた、財務省の社会保障制度の資料を基に議論した際、保険給付の範囲の見直し、患者・利用者負担の更なる増大、診療報酬及び介護報酬の引下げを提案したもので、財政制度分科会の吉川洋分科会長(東京大学大学院経済学研究科教授)は4月28日、「削減額ありきでない」と強調したものの、2016年度診療報酬改定など医療関連予算は、厳しくなることが必至の情勢だ。医療関係者・団体の一部からは「財務省の越権行為ではないか」との声も上がっている。
日本医師会の横倉義武会長は4月30日の会見で、医療の雇用誘発効果を強調した上で、診療報酬改定において、薬価の改定財源を医科本体の財源とするように求めた。受診時定額負担については「(民主党時代に)反対の立場を示し解決済み」との認識を示し、受診時定額負担を蒸し返されたことに戸惑いの表情で対応した。

財務省の財政の健全化に向けた方策を話し合う審議会(財政制度等審議会)の会合が開かれたのは4月28日。ここで今後の社会保障制度改革の方針が提案された。
具体的には、後発医薬品の使用率を2019年度までに80%まで引き上げることを求め、応能負担の原則から外れる、「受診時定額負担の導入」「保険免責制の導入」、「75歳以上の医療費の自己負担の2割化の検討」などの対策を示している。
さらに「(地域医療構想において)県の勧告等に従わない病院の報酬単価の減額」などが、今後の検討課題として、明記されている。分科会後に会見した吉川洋会長は、一定程度のコンセンサスを得たとの認識を示した。分科会は6月ごろまでにまとめて、与党などに示す方針。
財政審に示した資料の総論としては、社会保障関係費について、高齢化に伴う増加分は許容するものの、「その他の要因は抑制する」との方針。過去3年間の社会保障関係費の伸びについては、消費税引き上げ分の財政を生かした部分以外で、「1.5兆円」としていて、「『高齢化による』伸び相当の範囲内」。2020年に向けては、名目3%の経済成長を前提として、伸びを2兆円から2.5兆円の範囲内に抑えて、社会保障制度の持続可能性を担保したい考えとしている。
構成委員からは、慢性期疾患が増加している現状を踏まえて、「医療をスリム化して介護を拡充すべき。戦略的な視点が必要」との声のほか、「年金と比べて、医療や介護は、国民の意識が低い。データを示して、国民の理解を深めてもらう必要がある」との意見が出た。
社会保障費抑制策のうち「保険給付の範囲の見直し」とした項目では、後発医薬品に言及。厚生労働省は、後発医薬品の使用割合について現在、「2017年度までに60%」との目標を掲げているのに対して、80%まで引き上げるように求めている。
達成方法としては、DPC病院における機能評価係数IIの「後発医薬品係数」について、加算の上限基準を80%までを考慮するように変更することや、処方せんで後発医薬品への変更不可とした場合、理由の説明を義務化するアイデアが並ぶ。
構成委員からは「後発医薬品の原則化」を求める声が出たほか、厚労省に対し、後発医薬品に対する不安を解消するように国民に周知するように求める意見もあったという。後発医薬品に対する期待が大きい状況だが、総論としては、社会保障関係費について、高齢化に伴う増加分は許容するものの、「その他の要因は抑制する」との方針。過去3年間の社会保障関係費の伸びについては、消費税引き上げ分の財政を生かした部分以外で、「1.5兆円」としていて、「『高齢化による』伸び相当の範囲内」。2020年に向けては、名目3%の経済成長を前提として、伸びを2兆円から2.5兆円の範囲内に抑えて、社会保障制度の持続可能性を担保したい考え。
構成委員からは、慢性期疾患が増加している現状を踏まえて、「医療をスリム化して介護を拡充すべき。戦略的な視点が必要」との声のほか、「年金と比べて、医療や介護は、国民の意識が低い。データを示して、国民の理解を深めてもらう必要がある」との意見が出たという。

社会保障費抑制策のうち「保険給付の範囲の見直し」とした項目では、後発医薬品に言及。厚生労働省は、後発医薬品の使用割合について現在、「2017年度までに60%」との目標を掲げているのに対して、80%まで引き上げるように求めている。 達成方法としては、DPC病院における機能評価係数IIの「後発医薬品係数」について、加算の上限基準を80%までを考慮するように変更することや、処方せんで後発医薬品への変更不可とした場合、理由の説明を義務化するアイデアが並ぶ。委員からは「後発医薬品の原則化」を求める声が出たほか、厚労省に対し、後発医薬品に対する不安を解消するように国民に周知するように求める意見もあったという。

◆ストレスチェック制度の実施マニュアルを公開 厚労省
平成27年12月1日施行 当面、50人以上の事業場で
――厚生労働省

厚生労働省は5月8日、平成26年6月25日に公布された労働安全衛生法の一部を改正する法律により、新たに設けられた「ストレスチェック制度」の具体的な内容や運用方法を定めた省令(労働安全衛生規則の一部改正)を公布するとともに、告示、指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)を定め公表した。
この日、厚労省では主として実務を担う産業保健スタッフ等向けに、各事業場でストレスチェック制度を適切に導入し運用していくための進め方と留意点を示したマニュアルを公開した。
今後、厚労省は国民、企業、団体等に向け、平成27年12月1日の「ストレスチェック制度」の施行に向けて、周知に取り組んでいくとした。

ストレスチェック制度は、2014年6月25日に公布された改正労働安全衛生法に盛り込まれたもので、事業者が労働者に対して行う心理的な負担の程度を把握するための検査と面接指導の実施等が義務づけられた。50人以上の事業場で、医師、保健師等によるストレスチェックの実施が事業者に義務付けられた。50人未満の事業場は当分の間努力義務となっている。平成27年12月1日から施行。

マニュアルは、ストレスチェック制度の実施が義務付けられている労働者数50人以上の事業場で、産業医・保健師等の事業場内産業保健スタッフが、ストレスチェック制度に関する一連の業務を行う際に参照できるよう構成されている。
また、事業者から委託を受けてストレスチェック制度の業務を実施する外部機関(健康診断機関、メンタルヘルスサービス機関、健康保険組合、病院・診療所等)についても、法令に従うほかマニュアルの必要箇所を参照しストレスチェック制度を適切に実施することが望まれている。

【省令、告示、指針のポイント】
<省令>
○ストレスチェックの実施頻度、検査すべき3つの領域、ストレスチェックの実施者となれる者、結果の記録の作成・保存方法、一定規模の集団ごとの集計・分析、ストレスチェック結果に基づく医師による面接指導の実施方法、労働基準監督署への実施状況に関する定期報告などについて定めてある。
<告示>
○ストレスチェックの実施者となれる者のうち、看護師、精神保健福祉士が修了すべき厚生労働大臣が定める研修の科目、時間を定めている。
<指針>
○衛生委員会の役割、ストレスチェックに用いる調査票、高ストレス者の選定方法、結果の通知方法と通知後の対応、面接指導結果に基づく就業上の措置に関する留意事項、集団ごとの集計・分析結果の活用方法、労働者に対する不利益取扱いの防止、労働者の健康情報の保護などについて定めている。

ストレスチェック制度に関する省令のポイント
1 省令の内容
(1) 産業医の職務
○産業医の職務に、「ストレスチェックの実施」、「ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施」、「面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること」を追加。
(2) 検査の実施などに係る規定の整備
○事業者は、常時使用する労働者に対して、1 職場におけるストレスの原因に関する項目、2 ストレスによる心身の自覚症状に関する項目、3 職場における他の労働者による支援に関する項目について、毎年1回定期的に検査を行わなければならない。
○検査の実施者は、医師または保健師のほか、厚生労働大臣が定める一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士とする。ただし、検査を受ける労働者について、解雇などの直接的な人事権を持つ監督者は、検査の実施の事務に従事してはならない。
○事業者は、労働者の同意を得て、検査の結果を把握した場合、この結果の記録を作成し、5年間保存しなければならない。それ以外の場合は、事業者は、検査を行った実施者による検査結果の記録の作成、検査の実施の事務に従事した者によるこの記録の保存が適切に行われるよう、必要な措置を講じなければならない。
○検査結果は、検査の実施者から、遅滞なく労働者に通知しなければならない。
○検査の実施者が、検査結果を事業者に提供することについて、労働者から同意を取得する場合は、書面または電磁的記録によるものでなければならない。
(3) 検査結果の集団ごとの分析などに係る規定の整備
○事業者は、実施者に、検査の結果を一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めるとともに、この分析結果を勘案し、必要と認められる場合は、その集団の労働者の実情を考慮して、この集団の労働者の心理的な負担を軽減するため、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
(4) 検査結果に基づく面接指導の実施などに係る規定の整備
○検査結果に基づく面接指導の対象となる労働者の要件は、「検査の結果、ストレスの程度が高い者」で、「検査を行った実施者が面接指導の実施が必要と認めた場合」とする。
○労働者が検査結果の通知を受けた後、面接指導の申し出を遅滞なく行うとともに、事業者は、労働者から申し出があった場合は、遅滞なく面接指導を実施しなければならない。また、面接指導の実施者は、面接指導の対象となる要件に該当する労働者に対して、面接指導の申し出を行うよう勧奨することができる。
○医師は、面接指導を行うに当たっては、この労働者の勤務状況や心理的な負担の状況などを確認しなければならない。
○事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、これを5年間保存しなければならない。
○面接指導の結果に基づく医師からの意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行わなければならない。
(5) その他の事項
○常時50人以上の労働者を使用する事業者は、検査、面接指導の実施状況などについて、毎年1回定期的に、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
2  施行日
平成 27 年 12 月1日

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