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医療経営情報 2015年5月28日号

2015/6/6

◆6月から日本医師会が医療機器シーズ支援を開始
AMEDなどへ橋渡し狙う まず簡易フォームの準備
――日本医師会

日本医師会は5月20日、「医師主導による医療機器の開発・事業化支援について」の具体的な構想を公開した。日本医師会の羽鳥裕常任理事が同日の定例記者会見で発表したもの。発表によると「医療機器について現場の医師からシーズ(種)を集め、製品化を後押しする支援業務を開始する」というもので、初期の登録はインターネット経由で、1時間程度で可能な簡易フォームを準備する考えで、設立間もない(独法)日本医療研究開発機構(AMED)などへの橋渡し役を務める狙い。
これは日医会員以外でも利用可能となる。新たな仕組みでは、医師からのアイデアをインターネット経由で登録してもらった上で、(株)日本医療機器開発機構(JOMDO)と協力して、同様の特許取得の有無や、特許侵害等の事務的審査などを精査しながら「日常臨床に携わる多くの医師に対する支援として、全ての医療機器(単体プログラム含む)を支援の対象とする」とした。単体プログラムは平成25年4月の薬事法の一部改正で「医療機器の範囲」に加わった。例えばスマートフォンを医療に利用するためのアプリなども開発の対象となる。

記者会見で羽鳥常任理事は、まず、日本の医療機器市場について、規模はアメリカに次いで世界第2位であるが、市場規模に対して海外からの輸入が半分近くを占めており、また、日本からの医療機器の輸出金額は、輸入金額の半分にも満たず、長く輸入超過(輸出―5300億円程度、輸入―約1兆3000億円=貿易赤字)の状態が続いている現状を説明。
そうしたことを踏まえ、この4月に文科省・厚労省・経産省の3省により「日本医療研究開発機構」(AMED)が設立されたことから、日医として、このAMEDを活用し、新しい医薬品や先進治療等の開発を促進していく考えを表明した。

このうち、医療機器について日医が行う支援の内容は、1.医師のアイデアを募集・登録し、その案件の目利きを行う業務、2.登録された案件をAMEDに橋渡しする業務、3.医師に対する相談業務、4.専門的知識を有する事業者に橋渡しする業務―の4つであるとし、全ての医療機器(単体プログラムも含む)を支援の対象とするとした。
支援の流れについては、「ステップ1」として、市場調査の部分を含めて、医師のアイデアやシーズの目利きを行い、この目利き部分で、開発や事業化の可能性が高いと判断された場合、個別面談により進め方を決定(ここまでは、日医の会員・非会員を問わず無償で実施)、次の「ステップ2」では、医師の希望を踏まえ、具体的にはAMEDへの橋渡しや相談業務、コンサルティング会社の紹介などが行われることになるとした(ステップ2では、日医非会員は、登録料「1万円」を徴収)。
また、支援業務は6月上旬より開始し、当面の間、日医総研が担当すると説明した。
更に、医療機器の開発・事業化が実現可能となる案件の見極めや、開発から事業化に至る相談業務は、専門知識が必要であることから、本支援業務では、「(株)日本医療機器開発機構」と協力して実務を行っていくとし、これにより、試作品の開発から知的戦略の立案、海外での事業化に至るまで、広く支援が行えるとの期待感を示した。
最後に、同常任理事は、「本支援は開発アイデアを持ちつつも日常診療に忙殺されている先生方への支援を行うものであるが、多くの若手医師に対する治療技術のさらなる向上への啓発という意義も大きい」と述べるとともに、この業務を円滑に、継続的に実施していくためには、費用の面も考えていかなければならないことから、日本医学会をはじめとする医療関連団体や厚労省、AMED、医療機器のメーカーや団体との連携を積極的に図っていきたいとした。

◆営利性業務解禁や地域での診療報酬引き下げ提案 諮問会議
薬価改定は毎年、市販類似薬は保険収載から除外
――内閣府

内閣府は5月19日、経済財政諮問会議を開催し、「経済再生と両立する財政健全化計画の策定に向けた論点整理・各論」などを議題とした。改革に関して、民間有識者の伊藤元重議員(東京大学大学院教授)らは2020年度のプライマリーバランス黒字化を目指した「経済再生と両立する財政健全化計画の策定に向けた論点整理」の各論を提示した。
「医療費適正化の改革が進まない地域における診療報酬引き下げの活用」「標準外来医療費の設定」「後発医薬品の利用率目標の引き上げ」「過年度デフレ影響を考慮した診療報酬のマイナス調整」などの項目が並んでいる。
終了後の会見で、経済財政策担当の内閣府特命大臣の甘利明氏は、医療費の地域間格差解消については「やってもらう」と強調した。「適正化進まない地域、報酬下げ」案も浮上している現状化で厳しい財政事情が明らか。

「改革の基本方針」として、(1)社会保障サービスの産業化促進、(2)インセンティブを強化する仕組み作り、(3)地域差の「見える化」と報酬の見直し等による病床適正化、(4)資産・遺産の社会還元の促進と所得や資産に応じた負担、(5)保険収載範囲の見直し、(6)効率化に向けたその他の取り組み――などに関して、具体策をあげた。

(1)では、一般医療法人に特定の営利性業務を本務として解禁する例をあげ、医療機関などが積極的に民間事業者と連携できる環境を整備して、多様な事業者の参画を早急に拡大すると提案。医療関係職種による民間の健康サービスへの関与を拡大するため、薬剤師・看護師などが行うことのできる業務の範囲を拡大する。

(2)では、被保険者に対するヘルスケアポイントの付与と保険料の傾斜設定等による予防・健康づくりの推進をする。
このほか、高度急性期病床や療養病床が過剰である背景に収益の高さがあり、効果的な病床配置の実現や医療療養から施設療養介護・在宅への促進等のため、診療報酬体系を2016年度から大胆に見直すと提案。また、地域医療構想(2025年度の医療需要を念頭に置いた病床の機能分化等)を実質的に前倒しし、診療報酬体系の見直しに加え、基金の配分や国民健康保険の財政支援制度についても、改革を行う自治体への重点的な配分を2015年度から徹底するとした。

(3)さらに、病床再編・地域差解消を促進するよう、医療費適正化の改革が進まない地域では、診療報酬の引き下げも活用するとしている。病床適正化や入院医療費の地域間格差是正を確実に進めるため、都道府県別の医療提供体制の差を徹底したデータ分析により一層「見える化」し、適切な体制転換を促すほか、都道府県は、KPI(病床数、平均在院日数、国保被保険者や後期高齢者の受療率や調剤費等)を定め、国が2018年度の中間評価段階での都道府県の取組状況を評価して、評価結果を補助金・交付金配分に反映すると述べている。
(4)では、高額療養費制度や後期高齢者の医療の患者窓口負担に関して、所得や資産等の経済力に基づき負担を求める仕組みに転換。同様に介護保険の自己負担上限や2割負担対象者の範囲も見直す。また、マイナンバーを活用し、金融資産等の保有状況も考慮して負担能力を判定。さらに、高所得者の基礎年金国庫負担相当分の年金給付の支給停止も提案。

(5)では、後発医薬品に関して、現在の傾向と目標(2017年度末に数量シェア60%)から、普及が進んでいるアメリカやドイツ並みの80~90%程度に目標値を引き上げる。また、2018年度から保険償還額を後発医薬品価格に基づき設定。さらに、スイッチOTCが認められた医療用医薬品を含む市販類似薬は保険収載から除外する。

(6)では、薬価改定頻度の見直しを含めた診療報酬の適正化を掲げ、 医薬品の取引慣行の改善を進めつつ、市場実勢をふまえた適切な薬価改定を毎年実行するとしている。また、薬価改定による既存医薬品の価格下落は確実に国民へ還元し、報酬本体水準一般について、過年度のデフレ分についての段階的なマイナス調整を次回以降の診療報酬改定に反映するなど国民負担増を抑制。

さらに、医薬分業と調剤医療費の増大との関係を技術料の推移や調剤薬局の利益率等を含めて分析し、効率的な仕組みに改革することで1.7 兆円におよぶ調剤医療費(技術料)を合理化して抑制しながら、効果的な投薬・残薬管理の実現に向けた方策を検討・導入するとしている。

◆後発薬促進で医療費1.3兆円削減―塩崎厚労相が新目標提示
普及率を2020年度末までに80%以上へと引き上げ
――経済財政諮問会議

経済財政諮問会議は5月19日に続き26日にも開催されるなど同会議は財政健全化計画の6月末策定を控えていて大詰めの協議に入っている。26日は政府が掲げる2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス-PB)黒字化目標達成に向け、社会保障など各分野で詰めの議論が行われている。
26日は塩崎恭久厚生労働相が財政再建に向け、後発医薬品(ジェネリック)の普及率を2020年度末までに80%以上へと引き上げる目標を示した。これにより、1.3兆円の医療費が削減できるとしている。
後発医薬品の普及率は、13年9月時点で46.9%。後発薬の価格は一般的に先発薬の5~6割とされるが、20年度末までに80%以上を目標とするほか、現行の目標を1年前倒しし、16年度末までに60%以上を目指す方針だ。
厚労省は薬の調剤報酬をめぐっては、「かかりつけ薬局」の役割を積極的に果たしている場合に調剤報酬を加算する。一方で、特定の病院の処方箋を集中的に受け付ける「門前薬局」には、こうした機能が弱いとして報酬を減額。患者の薬剤管理を効率化することで、薬剤費の削減を狙う。塩崎労働相は、こうした方針を盛り込んだ「患者のための薬局ビジョン」を年内に策定することを表明した。
厚労省案は、後発薬の普及で20年度に1.3兆円の医療費を削減できるとの見方を示したが。糖尿病の重症化予防で約2000億円、高齢者の肺炎予防推進で約1000億円の抑制を目指す。医療費削減に取り組む自治体への支援も打ち出した。
一方、同省案には伊藤元重東大大学院教授ら民間議員が提言した薬価の毎年改定や高所得者の年金減額は盛り込まれなかった。そのため後発薬の普及目標も民間議員から「17年度に80%」と比べると踏み込み不足と指摘されている。

同会議の構成委員で榊原定征経団連会長(東レ社長)を始め、民間議員は会議の中で「提案した改革全てを盛り込むよう検討をお願いしたい」と強く主張しており「手ぬるさ」を否定せず、6月末に策定する財政健全化計画で争点となりそうだ。
ただし後発薬に抵抗感を持つ患者も少なくない。医師側も積極的に勧めないともいわれる。このため、厚労省は後発薬の使用割合が高い健康保険組合に、75歳以上の後期高齢者医療制度への支援金負担を軽くする制度を採り入れるなどして普及を促す。薬剤師が後発薬を調剤するなどした場合に厚くしている診療報酬の加算をさらに拡充することも検討する。同会議の民間議員から、効能が同じ後発薬がある場合、保険では後発薬の金額分しかカバーしない制度を18年度から導入することも提案されている。

●厚労省提案のポイント―カッコ内は医療費の削減効果額
・後発医薬品の普及率を20年度末までに80%以上に(約1兆3000億円)
・かかりつけ薬局の調剤報酬を加算する一方、「門前薬局」は調剤報酬を減額
・医療費適正化に取り組む市町村への補助を前倒しで実施
・高齢者の肺炎予防や、糖尿病やC型肝炎の重症化予防の推進(計約4000億円)

◆職場における熱中症による死傷災害発生状況を公表
厚労省 熱中症による労働災害の発生に注意促す
――厚生労働省

厚生労働省は5月20日、平成26年の「職場での熱中症による死傷災害の発生状況」を取りまとめた結果を発表した。この結果を踏まえ、平成27年の職場における熱中症予防対策は、昨年に続いて死傷災害が多く発生している建設業や製造業などを重点業種とし、重点事項などについて都道府県労働局長あてに通達を出した。

発表資料によると、平成26年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は423人で、うち死亡者は12人。死傷者は平成25年よりも107人少なく、死亡者は18人少なくなっている。しかしながら、近年の熱中症による死傷者は、猛暑だった平成22年の後も、毎年400~500人台で高止まりの状態にあるという。業種別の死傷者では、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しており、全体の約5割がこれらの業種で発生している。

平成26年に熱中症で死亡した12人の状況をみると、気温と暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さ指数であるWBGT値の測定を行っていなかったり、計画的な熱への順化期間が設定されていなかったなど、基本的な対策が取られていなかったことが分かった。また、この死亡した12人のなかには、定期的な水分・塩分の摂取や、健康診断などを行っていなかった人もいたことが明らかになった。
これを受け、死亡者の発生が特に多かった建設業や製造業においては、簡易屋根の設置やスポットクーラーの使用とともに、作業時間の見直しを行い、単独での作業を避けることなどが通達された。また、作業時間については、7、8月の14時から17時の炎天下などでWBGT値が基準値を大幅に超える場合には、原則作業を行わないことも含めて見直しを図ることが重点事項とされている。
今年の夏は、気温が平年並みか平年より高くなることが見込まれており、熱中症による労働災害が多く発生することが懸念されている。

平成27年の職場での熱中症予防対策の重点的な実施についての概要(厚労省)
1 建設業や、建設現場に付随して行う警備業では、特に次の4項目を重点事項とすること。
(1) WBGT 基準値を超えることが予想される場合には、簡易な屋根の設置、スポットクーラーの使用、作業時間の見直しを行うとともに、単独での作業を避けること。作業時間については、特に、7、8月の 14 時から 17 時の炎天下などで WBGT 値が基準値を大幅に超える場合には、原則作業を行わないことも含めて見直しを図ること。
(2) 作業者が睡眠不足、体調不良、前日に飲酒、朝食を食べていない、発熱・下痢による脱水症状などがみられる場合は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、朝礼の際にその状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換などを行うこと。
(3) 管理・監督者による頻繁な巡視や、朝礼などの際の注意喚起などにより、自覚症状の有無に関わらず、作業者に水分・塩分を定期的に摂取させること。
(4) 高温多湿な作業場所で初めて作業する場合には、順化期間を設けるなどの配慮をすること。

2 製造業では特に次の2項目を重点事項とすること。
(1) WBGT 値の計測などを行い、必要に応じて作業計画の見直しなどを行うこと。
(2) 管理・監督者による頻繁な巡視や、朝礼などの際の注意喚起などにより、自覚症状の有無に関わらず、作業者に水分・塩分を定期的に摂取させること。

●発表データについて
*1 これまでは死亡災害のみを集計していたが、今回から死傷災害全体を集計している。
*2 熱中症とは
高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして、発症する障害の総称。 めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐(おうと)・倦怠(けんたい)感・虚脱感、意識障害・痙攣(けいれん)・手足の運動障害、高体温などの症状が現れる。

*3 WBGT値とは、
気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数。

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