ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報 2015年7月16日号
◆“健康経営はコストと捉えずに経営戦略の一環”
日本健康会議発足 2020年までの目標を発表
健康寿命の延伸・医療費適正化の実現を目指す新たな団体「日本健康会議」が7月10日、正式に発足した。社会保障費が膨らみ続けるなかで、最大の懸案である医療費の抑制に向けて、経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織の代表らが集合した。厚労省や経済産業省の協力のもとで、実行委員には、日本経済団体連合会や健康保険組合連合会、全国知事会、日本医師会などの代表者が揃い発足式に登壇した。
発足式では、日本商工会議所・三村明夫会頭が主催者を代表して、「さまざまな工夫で医療費の削減を実現している自治体などの事例を広く周知し、健康寿命の延伸と医療費の適正化を同時に実現するため、実効的な活動を展開していきたい」とあいさつした。
健康会議発足の趣旨について同会頭は「日本では、今後は高齢者の労働参加率の向上が喫緊課題、そのためには健康維持が欠かせない。それには企業は、従業員の健康管理を経営的な視点で考えなければいけない。目的は、医療費削減のみならず、生産性向上や従業員の能力発揮につながるものだ。従いコスト側面だけでなく経営戦略の一環として捉えてもらいたい」と発想の転換を強調した。
発足式に出席した塩崎厚生労働大臣は、「予防・健康作りは、国民運動で意識を一にして取り組むことが重要だ。各界のリーダーが手を携えたことは画期的であり、厚生労働省としても強力に支援したい」と述べた。この会議では、糖尿病の重症化予防など先進的な取り組みを行う市町村を、2020年までに今の10倍以上の800以上に増やすことを目指すなどとする8つの宣言をまとめ、今後作業部会を設置し、具体的な推進策を検討することになった」と意気込みを見せた。
具体的な活動指針は「健康なまち・職場づくり宣言2020」として達成にむけた数値目標を含む次の8項目を発表した。
宣言1:予防・健康づくりについて、一般住民を対象としたインセンティブを推進する自治体を800市町村以上とする。
宣言2:かかりつけ医等と連携して生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体を800市町村、広域連合を24団体以上とする。その際、糖尿病対策推進協議会等の活用を図る。
宣言3:予防・健康づくりに向けて47都道府県の保険者協議会すべてが、地域と職域が連携した予防に関する活動を実施する。
宣言4:健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする。
宣言5:協会けんぽ等保険者のサポートを得て健康宣言等に取り組む企業を1万社以上とする。
宣言6:加入者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供する保険者を原則100%とする。その際、情報通信技術(ICT)等の活用を図る。
宣言7:予防・健康づくりの企画・実施を提供する事業者の質・量の向上のため、認証・評価の仕組みの構築も視野に、保険者からの推薦等一定の基準を満たすヘルスケア事業者を100社以上とする。
宣言8:品質確保・安定供給を国に求めつつ、すべての保険者が後発医薬品の利用勧奨など、使用割合を高める取り組みを行う。
これら8つの宣言をKPI(主要業績目標)とし、目標を達成するために次のワーキンググループ(WG)を設置し、厚労省・経産省とも協力して具体的な推進方法を検討していくとしている。
1.ヘルスケアポイント等情報提供WG
2.重症化予防(国保・後期広域)WG
3.健康経営500社WG
4.中小1万社健康宣言WG
5.保険者データ管理・セキュリティWG
6.保険者向け委託事業者導入ガイドラインWG
7.保険者からのヘルスケア事業者情報の収集・分析WG
8.保険者における後発医薬品推進WG
9.ソーシャルキャピタル・生涯就労支援システムWG
◆9月上旬告示にむけ難病基本方針案を提示
難病対策委員会、9項目の骨子案を了解
――厚生労働省
厚生労働省は7月10日、厚生科学審議会・疾病対策部会・難病対策委員会を開催し、同委員会は難病対策を進める基本方針を承認した。難病治療法の研究などにつなげるため、全国の難病患者のデータベースを蓄積・整備する。データベースには難病の医療費助成を申請した患者の年齢や病状などの情報を登録する。医療費助成は現在、計306疾患の約150万人が対象になっている。
この日、厚労省は今後の難病対策の方向性を定め、かつ、6月16日の前回会合で骨子案が示された「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」案を示した。基本方針に関し、一定の整理がついたことで難病対策委員会はこれを了承した。
この基本方針は、厚生労働大臣が定めることが、難病の患者に対する医療等に関する法律で規定されている。そのため同委員会では、2015年2月から5月にかけて4回にわたり、関係団体や専門家から難病対策に関する見解ヒアリングをしており、その内容は「主な意見」として、まとめられている。
次の工程として8月下旬以降に委員会としての取りまとめと、パブコメ疾病対策部会への報告が予定されている。了解をうけ8月中または9月上旬までに告示の見込み。
しかし検討には一定程度の時間がかかる。そのため、モデルケースには、難病患者への医療提供体制について疾患や領域ごとの特性に応じた具体像が盛り込まれる。これは8~9月の告示の後に、通知などの形で示されることになる。
厚労省は、このようなモデルケースをいくつか作成して都道府県に通知などで示す考えだが、その中には、難病に対する総合的な医療を提供する「難病医療の拠点病院」または「連携病院」構想も組み込まれるとみられる。
基本方針は次の9本の柱で構成されている(カッコ内は今後の方向性とされた主な事項)。
(1)医療などの推進の基本的な方向(少なくとも5年ごとに再検討する)。
(2)医療費助成制度(医学の進歩に応じて診断基準や重症度分類を随時見直す)。
(3)医療提供体制の確保(国は、医療機関や診療科間との連携について具体例を示す)。
(4)人材の養成(国・都道府県は、指定医の研修テキストの充実などをはかる)。
(5)調査・研究(患者の実態やニーズを把握するための調査・研究を実施)。
(6)医薬品、医療機器、再生医療等製品の研究開発の推進(国は、実用的な研究事業を実施する)。
(7)療養生活の環境整備(先駆的な難病相談支援センターを調査する)。
(8)福祉サービス・就労支援・関連施策との連携(障害福祉サービスの対象について適宜検討する)。
(9)その他の重要事項(国民の理解が深まるよう啓発活動に努める)。
◆日病協 2016年度診療報酬改定に向けて10項目を要望
四病協 非常勤従事者の勤務時間数合算による常勤換算を
――日本病院団体協議会(日病協:楠岡英雄議長)
日本病院団体協議会(日病協:楠岡英雄議長)は7月3日、2016年度の診療報酬改定に関する10項目の要望を公表した。
日病協は、医療関係の12団体(国立大学附属病院長会議、国立病院機構、全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本社 会医療法人協議会、日本私立医科大学協会、日本精神科病院協会、日本病院会、日本慢性期医療協会、労働者健康福祉機構)で構成される。診療報酬に関する要望を中心に活動しているほか、2015年2月27日には、四病院団体協議会とともに、医療機関における消費税に関し、診療報酬の補填率を把握するための調査結果を公表している。
日病協の要望は、「病院医療に対して、安全および医療の質の向上に寄与するとともに、超高齢社会における国民の納得を得られる診療報酬制度の構築を目標」としており、具体的には次の10項目を挙げた。
(1)入院基本料の病棟群単位での選択性導入/(2)看護職の夜勤72時間ルールの見直し/(3)入院基本料等における重症度、医療・看護必要度の見直し/(4)医療を推進するためのコスト分析およびその反映/(5)地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の評価/(6)入院中の他医療機関受診時における制度の見直し/(7)医師事務作業補助体制加算の見直し/(8)維持期リハビリテーションの継続/(9)処置および手術の休日加算1、時間外加算1および深夜加算1の施設基準の要件緩和/(10)調剤薬局の役割の明確化、院内調剤と院外調剤の不均衡是正。
このうち、(1)では、「2014年10月に施行された病床機能報告制度に合わせ、単独もしくは複数の病棟で病棟群を設定し、入院基本料算定をできるようにすること」などが、また、(10)では、「病院薬剤師と調剤薬局薬剤師の技術料(調剤料など)の点数設定に大きな格差があるため、調剤薬局の役割の明確化」などが要望として公表された。
●四病協 多様な働き方を希望する労働者の増加への対応
四病院団体協議会(四病協:日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は7月3日、医療機関における「専従の常勤従事者の解釈に関する要望」を公表した。
現状の施設基準が規定する専従の常勤従事者の解釈は、「医療機関の定める所定労働時間をすべて勤務する者」のみであり、非常勤従事者の常勤換算は認められていない。四病協の要望は、その緩和を求めている。
四病協は、全国組織の病院団体の連合体。共同で各種の事業や要望活動を展開しており、2015年4月2日には、「疾患別リハビリテーションにおける専従の常勤従事者に関する要望」を公表している。
四病協は今回の要望について、4月2日の要望と同様、多様な働き方を希望する労働者や、増加傾向にある短時間雇用者の活用にあるとして、「複数の常勤従事者の勤務時間割合や、非常勤従事者の勤務時間の合算による、常勤換算を認めること」を要望している。
◆厚労省 療養病床の在り方めぐり検討会初会合
介護療養病床や療養病床改革の選択肢整理へ
――厚生労働省
厚生労働省は7月10日、「療養病床の在り方等に関する検討会」の初会合を開催した。これは病床数削減の方向性が示されている療養病床のあり方をめぐり、制度改正に向けた選択肢を整理する目的で発足した。
2025年にも到来する超高齢化社会に備え、医療・介護一体となった医療提供体制構築に向けて、慢性期医療の在り方、医療提供体制の在り方を議論する。
これまで団塊世代すべての人が75歳以上の後期高齢者になる、2025年の医療提供体制のあるべき姿を見据えた地域医療構想ガイドラインでは(2015年3月策定)、慢性期の病床機能や在宅医療などの医療需要を一体として推計し、療養病床の入院受療率の地域差解消を目指すことが決まっている。このため在宅医療などで対応する患者に関して、医療・介護サービス提供体制の対応方針を早期に示すことが求められている。
検討会は今後の進め方として(1)介護療養病床を含む療養病床の今後のあり
方、(2)慢性期の医療・介護ニーズに対応するためのそれ以外の医療・介護サービス提供体制のあり方―を議論し、具体的改革の選択肢を整理する。2017年度末には介護療養病床の廃止も予定されていることも踏まえ、検討会では、療養病床の人員体制や施設基準などを検討し、今年中にも取りまとめる。
この日、療養病床のあり方について厚労省は論点を提示した。▽病気と共存しながらQOLの維持・向上が図られるよう、在宅復帰や在宅生活の継続を支援する、▽継続的な医学管理を行い、人生の最終段階においても穏やかな看取りを支える—などを例示。さらに人員体制、施設・設備の在り方、制度上の位置付け(医療法、介護保険法、報酬制度など)、医療計画や介護保険事業計画などでの位置付けや施設整備に対する財政支援の在り方などについて検討する方針を示した。
介護療養病床をめぐってはこれまでの経緯を振り返ると2001年の医療法改正で「療養病床」が創設された。それまでの療養型病床群と老人病院(特例許可老人病院)を再編し、「療養病床」に一本化している。2006年に介護療養型老人保健施設への転換の方向性が示されたが、転換が進まず、期限が延長された経緯がある。
2006年、医療保険制度改革と診療報酬・介護報酬の同時改定により、介護療養病床の2011年度末での廃止が決定。これは、実態調査の結果、医療療養病床と介護療養病床で入院患者の状況に大きな違いが見られなかったことで役割分担が課題となったほか、医療費適正化の議論を受けて、患者の状態に応じた療養病床の再編による、老健施設などへの転換と介護療養病床の廃止が改革の柱として位置づけられたことによる。しかし、廃止・転換期限は、老健施設などへの転換が進まず、2017年度末まで延長されている。
高齢化が進展する中で、看取りが必要な患者など医療ニーズの高い入所者が増加する中で、どの施設が受け皿となるかも課題となっている。