ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2015年7月31日号)
◆ 介護保険、8月から負担増 一定所得者の利用料上げ
厚労省 2015年度の公費削減効果を439億円と見込む
――厚生労働省
介護保険制度の改正に伴い8月から、所得や資産の多い高齢者の自己負担が増える。厚労省は全国の関係機関へ周知徹底を通知した。
一定以上の所得がある高齢者は、これまで介護費用の1割だったサービス利用料が、2割に倍増。特別養護老人ホーム(特養)の部屋代などに対する補助も見直され、資産の多い人は対象外となる。伸び続ける介護費用を抑えるのが狙いで、厚生労働省は2015年度の公費削減効果を439億円と見込む。
利用料引き上げの対象者は、単身で年金収入だけだと年収280万円以上。在宅サービス利用者のうち、15%程度が対象になるという。
例えば、要介護5の人が在宅サービスを受ける場合、従来は月額約2万1000円(全国平均)だったが、8月からは同約4万2000円にアップ。ただ、所得階層に応じた上限額が設けられているため、7割近くの人は同3万7200円となる。
一方、特養の部屋代と食事代は自己負担が原則だが、住民税非課税世帯(単身で年金収入だけだと年収155万円未満)には補助制度があり、入居者の7割に当たる約36万人が負担を軽減されている。例えばユニット型個室なら、1カ月の利用料は原則13万円だが、最高で4万9000円まで減額される。
しかし今回の改正で、年収が低くても預貯金や有価証券などの資産が単身で1000万円、夫婦で2000万円を超えると、補助対象から外れることになる。これに伴い、現在補助を受けている人の約1割が対象から外れる見込みだ。今後は施設に通帳の写しなどを提出し、資産額を証明する必要がある。
●厚労省からの8月負担増の周知文~Q&A(要旨)
介護サービスを利用する場合には、費用の一定割合を利用者の方にご負担いただくことが必要です。この利用者負担について、これまでは所得にかかわらず一律にサービス費の1割としていましたが、団塊の世代の方が皆75 歳以上となる2025 年以降にも持続可能な制度とするため、65 歳以上の方(第1号被保険者)のうち、一定以上の所得がある方にはサービス費の2割をご負担いただくことになります。
Q 2割負担になるのはどういう人ですか?
A 65 歳以上の方で、合計所得金額*1 が160 万円以上の方です(単身で年金収入のみの場合、年収280 万円以上)。*2
ただし、合計所得金額が160 万円以上であっても、実際の収入が280 万円に満たないケースや65 歳以上の方が2人以上いる世帯*3 で収入が低いケースがあることを考慮し、世帯の65 歳以上の方の「年金収入とその他の合計所得金額」*4の合計が単身で280 万円、2人以上の世帯で346 万円未満の場合は1割負担になります。
※1 「合計所得金額」とは、収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額をいいます。
※2 これは、65 歳以上の方のうち所得が上位20%(全国平均)に該当する水準です。実際に影響を受けるのは介護サービスを利用されている方ですが、これは在宅サービス利用者のうち15%程度、特別養護老人ホーム入所者の5%程度と推計されます。
※3 「世帯」とは、住民基本台帳上の世帯を指します。
※4 「その他の合計所得金額」とは、合計所得金額から、年金の雑所得を除いた所得金額をいいます。
Q いつから2割になるのですか?
A 平成27 年8月1日以降にサービスをご利用されたときからです。
Q 1割負担から2割負担になった人は、全員月々の負担が2倍になるのですか?
A 月々の利用者負担には上限があり、上限を超えた分は高額介護サービス費が支給されますので、全ての方の負担が2倍になるわけではありません。月々の負担の上限については、「高額介護サービス費の負担限度額の見直しについて」をご覧下さい。
Q どうやって自分の負担割合を知ることができるのですか?
A 要介護・要支援認定を受けた方は、毎年6 ~ 7 月頃に、利用者負担が1割の方も2割の方も、市区町村から負担割合が記された証(負担割合証)が交付されます。この負担割合証を介護保険被保険者証と一緒に保管し、介護サービスを利用するときは、必ず2枚一緒にサービス事業者や施設にご提出ください。
◆高齢者向けの生活機能集約型コンパクトシティ原案
国交省 2020年度までの社会資本整備重点計画
――国土交通省
国土交通省は7月24日、2020年度までのインフラ整備の指針となる「社会資本整備重点計画」の原案を公表した。今回示された原案には、高齢者らが利用しやすい生活空間や移動手段を確保する方針も盛り込まれた。国民の意見募集や都道府県からの意見聴取を経て成案をまとめ、今秋の閣議決定を目指す。
具体的な例では、1日の平均利用者数が3,000人を超す空港や駅、バスターミナルなどで、段差が全く無い道が必ず設けられるように造る。こうした規模の駅では、ホームドアの設置率(2013年度15.7%)を21.9%まで上げる考えも示した。13年度には1万3978台だった福祉タクシーを20年度には約2万8000台まで増やすことも盛り込まれた。
住宅や公共施設、商業施設を中心部に集める「コンパクトシティー」推進では、100戸以上の公的賃貸住宅のうち、お年寄りや障害者、子育て世帯向けの施設を併設している割合を、現状(2013年度の19%から25%に向上させるとした。
原案の柱は、今後の少子高齢化を見据え、生活機能を集約した街づくりを進めていく方針を打ち出したことだ。今後、9月に開催する審議会で正式に決定し、来年度以降の予算への反映を目指す考えだ。
現行の「社会資本整備重点計画」は、2012年度から2016年度までを対象にしたもの。国交省はこれまで、地方の人口の減少やインフラの老朽化が進んでいることなどを考慮し、計画を前倒しで見直すことにして検討を進めてきた。
維持管理・更新については、国交省が14年度に策定したインフラ長寿命化計画(行動計画)を踏まえて、自治体を含めた各管理者が16年度までに同様の計画を策定。その上で20年度までの間に、個別施設ごとの計画の策定率を100%とする目標を設定する。これによって、点検・診断、修繕・更新、情報の記録・活用というメンテナンスの「PDCAサイクル」を構築する。
各分野の個別施設の長寿命化計画の策定率を100%とする目標時期は次の通り(カッコ内は14年度時点の策定率)。▽道路(橋梁)=20年度▽同(トンネル)=20年度▽河川=国、水資源機構は16年度(88%)、自治体は20年度(83%)▽ダム=国、水資源機構は16年度(21%)、自治体は20年度(28%)▽砂防=国は16年度(28%)、自治体は20年度(30%)▽海岸=20年度(1%)▽下水道=20年度▽港湾=17年度(97%)▽空港(空港土木施設)=20年度(100%)▽鉄道=20年度(99%)▽自動車道=20年度(0%)▽航路標識=20年度(100%)▽公園=国は16年度(94%)、自治体は20年度(77%)▽官庁施設=20年度(42%)。
◆「高齢化に伴う増加額は予算編成過程で継続精査」麻生財務相
政府、2016年度予算の概算要求基準の基本方針固める
7月24日、閣議決定された2016年度の「概算要求にあたっての基本的方針」について麻生太郎副総理大臣兼財務大臣は閣議後に記者会見を行った。概算要求基準は各省庁が予算を要求する際のルールとなるが、予算編成過程で財務省がどこまで厳格に精査できるかに焦点が移るだけに麻生財務相のコメントに注目が集まった。
麻生財務相は、予算編成過程を総括して、「歳出全般にわたり、これまでの歳出改革の取り組みを強化し、目安をふまえたものとしてまいりたい」と述べた。
2016年度予算の概算要求基準の重点項目は次の通り。
●年金や医療など、社会保障に関する経費については、高齢化で増加が避けられないものの、2015年度の当初予算と比べて、6,700億円の増額までに抑える。
●公共事業や防衛など、「裁量的経費」と呼ばれる経費の要求を、2015年度と比べ、10%削ることにしている。
●地方創生や少子化対策など、優先課題のための特別枠を設け、最大でおよそ4兆円まで要求できる仕組みにする
麻生大臣は「8月末の各省からの予算要求に関しては、たとえば裁量的経費は
10%削減(シーリング・限度額)をしてもらい、同時に削減後の額の30%を別途、(骨太方針や成長戦略に充てる「新しい日本のための優先課題推進枠」として)要望できることを定めた。歳出改革の取り組みを強化して、予算の中身を大胆に重点化していきたい」と強調した。
また、年金・医療等に関する費用は、基本的方針で高齢化などにともなう6,700億円程度の増加まで要求を認めた一方で、骨太の方針では年5,000億円増程度に抑制してきた過去の取り組みを基調とするとしている。両者の差額に関して、麻生大臣は、「年金・医療にかかる経費は現時点で6,700億円増と推計している。高齢化にともなう増加額に関しては予算編成過程で、引き続き精査していく(骨太方針の)3年間1兆5,000億円は、単純計算すれば毎年5,000億円だが、初年度は6,700億円として、2018年まで3年間のトータル(総額)で計算して弾力的にやりたい」と述べた。このように2016年度予算は、骨太方針である「基本方針2015」で示された経済・財政再生計画の初年度の予算であり、本格的な歳出改革に取り組むと強調した。
16年度の概算要求基準は15年度とほぼ同様の仕組みで、15年度に引き続き100兆円規模の要求となる可能性が高い。16年度は予算の約3割を占める社会保障関係費は、高齢化に伴う歳出の自然増など約6700億円を前年度当初予算に加えた額を範囲内に要求を認める方針だ。人件費などの義務的経費は前年度当初予算と同額の要求にとどめる。
公共事業など政策に充てる経費は今年度より10%削減するよう各省庁に求める一方、残る9割のうち、最大3割分を上限に経済成長につながる政策について「日本のための優先課題推進枠」を設け、別枠で最大4兆円程度の要求を認めるとした。歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取り組みを強化し、予算の中身を大胆に重点化するとしている。「骨太の方針」で示したロボット・人工知能の開発力強化やサービス産業の生産性向上、女性の活躍促進などに資する歳出を対象とする。
最大の支出項目である年金や医療等などの「社会保障に関する経費」については、前年度(2015年度)当初予算額(30.2兆円)に高齢化増などにともなう厳しい財政事情を踏まえ、今年度の当初予算と比べ増加額の6,700億円を加算した範囲内で要求する。また、義務的経費(前年度12.5兆円、法律で支出が定められている経費等。B型肝炎ウイルス感染者に対する給付金等の支給に係る経費など)に関しては、前年度予算額と同額。
他方、公共事業や防衛など裁量的経費(前年度14.7兆円、政策判断によって柔軟に縮減される経費)に関しては、前年度予算額の10%減の額(要望基礎額)の範囲内に各省が抑制。さらに、予算の重点化を進めるため、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」を中期的に進めることを含む「骨太方針」や「『日本再興戦略』改訂2015(成長戦略)」などの課題にあてる、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設け、各省は要望基礎額の30%の範囲内で要望し、予算編成過程で検討される。なお、年金・医療等の経費と裁量的経費・義務的経費とは性質が異なるため、両者の間で調整は行わない。
このほか、消費税率引き上げとあわせて行う充実などその他社会保障・税一体改革と一体的な経費は、消費税・地方消費税の税収や、社会保障の給付の重点化・制度の効率化の動向などをふまえて予算編成過程で検討する。
同方針は7月23日に総理大臣官邸で開かれた政府・与党政策懇談会で取りまとめ24日に閣議で了解したもの。概算要求の期限は8月末日。
◆「消費税控除対象外“見える化”、難しい」 日病の堺会長
日医は単独 消費税対応は10月上旬を見込む
――四病院団体協議会(四病協)
日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で組織される四病院団体協議会(四病協)は7月22日、総合部会を開き、医療機関における控除対象外消費税の問題について話し合い、MRIや酸素ボンベ、医師事務作業補助体制加算など13項目を対象に「消費税の見える化」に向けた調査を行うことを発表した。日本病院会の堺常雄会長は、会見の中で「代表的な調査項目」として次の5つを紹介した。(1)MRI(本体価格だけでなく、メンテナンス費用なども含む)、(2)医師事務作業補助体制加算、(3)脳血管疾患等リハビリテーション料、(4)酸素ボンベ加算、(5)看護職員夜間配置加算。ただしこの調査で仕入税額相当分がきちんと把握できるのか、また調査結果から保険診療に係る消費税の在り方を議論できるのか、などは明確になっておらず今後の議論の課題とした。記者会見した日本病院会の堺常雄会長は、「“見える化”ができるのかどうか、疑問もある」と述べるなど難局にある状態を否定しなかった。
一方、日本医師会は消費税対応の決定は10月にずれ込みもありうる、とする見解を示し、4病院団体との温度差が明らかとなった。日本医師会の今村聡副会長は6月29日の日医臨時代議員会で、日医としての意見の取りまとめの時期について、最速で「8月中旬」、遅くて「10月上旬」になるとの見解を示していた。
今年4月の代議員会で、今村副会長は「遅くても8月半ばまでは最終的解決方法を提示する」としていたが、調整が遅れていることを伺わせ、議場からは「時間切れになって、また診療報酬での対応になるのでは」と危惧する声も聞かれた)。
今村副会長は「消費税の対応策で医療界が1つにまとまらないといけない」としたが、独自の消費税影響調査を実施している四病院団体協議会は「原則課税」を求める方針で一致していて、非課税のままの対応の選択肢を残している日医との温度差がある。医療界の意見調整が難航すれば、医療の控除対象外消費税問題の抜本的解決策が実現しない可能性もある。
今村副会長は、現時点の検討状況について、選択肢としては、「課税でゼロ税率」「課税で軽減税率」「非課税で全額還付」「非課税で一部還付」の4つに絞り込まれたことも明かした上で、今後病院団体や官僚などと話し合いを進める方針を示した。
しかし代議員の意見の中には、日医が2014年度診療報酬改定で、「引き上げ対応分1.36%を確保した」としているのに懐疑的な見方を示した例もある。その上で、消費税率10%引き上げに向けて、医療界の統一的見解がない点について、「このままで悲惨な結果を迎えるのでは」と問い質す場面もあった。
このように四病協も日本医師会も、「控除対象外消費税」にはスカッとするような良薬のないのが、多くの懸案事項の中でもトップクラスの悩ましい宿題である。