ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2015年8月6日号)
◆新医学部を千葉県成田市に開学 東京圏会議・成田市分科会
[国家戦略特区]最短で2017年4月、設置の方針決める
政府は7月31日、東京圏国家戦略特別区域会議の「成田市分科会」を開催し、「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針案」を、内閣府・文部科学省・厚生労働省の連名で提示し、早ければ2017年4月にも成田市(千葉県)に新たな医学部を設置する方針を決めた。
国家戦略特区は、内閣が掲げる成長戦略で、その区域計画の作成、認定区域計画・実施に関する連絡調整や協議のため、東京圏や関西圏、沖縄県などに関する区域会議が組織されている。
2014年12月9日の東京圏会議では、東京圏の一部に指定されている千葉県成田市に関する協議のために、成田市分科会の設置が決められた。同分科会は、国際的な医療人材の育成などを目的とする、医学部・附属病院の新設について、同年12月の初会合以来、第4回会合となる今回に至るまで検討を続けてきた。 医学部設置は文科省の告示で認可しないこととなっているが、国家戦略特区の特例で、医療や農産物の輸出などの分野で成田市に1校のみ認めるとした。
同市の小泉一成市長にとって医科系大学の設置は公約でもあっただけに、同日コメントとして、「非常に喜ばしいことで、国家戦略特区として国の成長に寄与するとともに、成田市のまちづくりにつなげていきたい」と全面的な歓迎の意向を示した。
成田市は2013年に国家戦略特区の事業として、国際空港を擁することを生かした「国際医療学園都市構想」を国際医療福祉大(本校・栃木県大田原市)とともに提案。医学部や付属病院、医療産業の集積地区の整備などを盛り込んだ案を提案していた。
大学の医学部の新設は1979年に沖縄県の琉球大学に設置されて以降、例がない。来年16年度には、東日本大震災の被災地の医師不足解消などを目的に仙台市に特例的に認められた東北薬科大が設置される計画で、すでに具体的な準備が進んでいる。
一方、日本医師会などの医療関係団体は2015年5月13日、地域医療再生の障害となることや、医師不足対策にならないことなどを理由に、「国家戦略特区での医学部新設に反対する緊急声明」を公表している。
今回の方針案では、医学部新設に必要な条件整備にあたる「留意点」として、次の事項などに取り組み、既存の医学部とは「次元の異なる、きわだった特徴」を有することを打ち出している。
●国際医療拠点としてふさわしい、留学生・外国人教員の割合を増やす。
●大多数の科目で、英語による授業を実施。
●すべての学生による、十分な期間の海外臨床実習の実施。
さらに、教員・医師の引き抜きなどにより、地域医療に支障をおよぼさない方策を講じることとされ、とくに、(2016年に開学が予定されている)の仙台市・東北薬科大医学部新設への配慮が明示された。
なお、方針案は、新設の「最短スケジュール」として、既存大学に医学部を設置し、2017年4月に開学する例を示した。
◆特定行為研修の指定機関に14機関を認める 厚労省
「特定行為に係る看護師の研修制度」、10月1日施行
――厚生労働省
「特定行為に係る看護師の研修制度」は、省令に定められた特定行為を、医師の包括的指示の下で手順書によって実施する看護師を養成するもので、この10月1日に施行される。
厚生労働省は7月30日、非公開で同日開催した医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師特定行為・研修部会」の審議結果を公表した。2015年10月1日施行予定の看護師の特定行為研修の指定機関として14機関の指定を認めた。
特定行為研修を実施できるのは、次の要件を満たす学校や病院のうち、厚労相が指定した施設に限定されるとしている(指定研修機関)。
●研修の内容が省令の基準に適合している
●特定行為研修の専任の責任者を配置している
●医師、歯科医師、薬剤師、知識・経験のある看護師といった適当な指導者による研修を行う
●講義・演習を行うのに適当な施設・設備を利用できる
●実習を行うのに適当な施設を実習施設として利用できる
●実習を実施する際には、利用者・患者への説明が適切になされる
●特定行為研修管理委員会を設置している
特定行為研修は、団塊世代が後期高齢者になるピークの2025年に向けて、在宅医療などの推進をはかるため、医師らの判断を待たず手順書(プロトコル)により一定の診療補助(特定行為:脱水の程度判断と輸液による補正等)を行う看護師を計画的に養成するもの。特定行為を行う看護師は特定行為研修が義務付けられている。
指定機関に認められたのは、次の14機関。
●学校法人東日本学園 北海道医療大学大学院看護福祉学研究科(北海道)
●学校法人岩手医科大学 岩手医科大学附属病院(岩手)
●学校法人自治医科大学 自治医科大学(栃木)
●医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院(埼玉)
●一般社団法人日本慢性期医療協会(東京)
●学校法人青葉学園 東京医療保健大学大学院看護学研究科(東京)
●学校法人国際医療福祉大学 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科(東京)
●公益社団法人地域医療振興協会 JADECOM-NDC 研修センター(東京)
●公益社団法人日本看護協会(東京)
●学校法人愛知医科大学 愛知医科大学大学院看護学研究科(愛知)
●学校法人藤田学園 藤田保健衛生大学大学院保健学研究科(愛知)
●医療法人社団洛和会 洛和会音羽病院(京都)
●公立大学法人奈良県立医科大学(奈良)
●公立大学法人大分県立看護科学大学 大分県立看護科学大学大学院看護学研究科(大分)
▽「指導者育成事業実施団体」には全日病――厚労省
「2015年度看護師の特定行為に係る指導者育成事業」の実施団体に医療機関の全日本病院協会が選ばれ医政局の看護課から発表されている。「指導者のための研修を担う」全日病は選定結果を受け入れすでに準備に入った。
厚労省の委託事業である同事業の実施団体公募には医療界から3団体が申請、評価委員会による評価を経て、15年度の実施団体として全日病が選定された。
「特定行為に係る看護師の研修制度」は、省令に定められた特定行為を、医師の包括的指示の下で手順書によって実施する看護師を養成するもので、この10月1日に施行される。
当該看護師の養成は厚生労働大臣が指定する研修機関が担うが、研修機関には教育機関だけでなく病院等もなることができる。その上、eラーニング等の通信メディアを利用して研修機関外で講義や演習を受けたり、講義、演習、実習を協力医療機関で行なうことによって勤務を続けたまま受講できるようにするなど、研修の実施には、一定の柔軟な体制が認められている。ただし、指定研修機関の指定基準には「適切な指導体制を確保していること」という条件がある。
したがって、36項目からなる特定行為や手順書など当制度のコアとなる部分を含めた理解と実践経験をもつ、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等、指導者の確保が焦眉の課題となっている。
そのため、厚労省は研修実施の留意事項に「指導者は特定行為研修に必要な指導方法等に関する講習会を受講していることが望ましい」旨を盛り込むとともに15年度予算に事業費を計上し、「特定行為研修における指導者(主に指定研修機関や実習施設における指導医)向けの研修」として、全国を7ブロック程度に分けて各ブロックで年1回程のワークショップの開催を委託することにした。そして、指定研修施設の申請を受け付けるのに先立って研修指導者を育成する研修の実施団体を公募。全日病が申請した結果、今回の選定が決まったもの。
◆病床機能分化へ医療従事者の需給や慢性期見直し 推進会議
「地域医療構想の推進に向けた取り組み」について報告
――国土交通省
政府は8月3日、「社会保障制度改革推進会議」(議長:清家篤・慶応大学義塾長)を開催し、「地域医療構想の推進に向けた取り組み」に関する報告が行われ地域医療構想の推進に向けた取り組みや、6月末に閣議決定された「骨太の方針」などを巡り、次のような議題で議論した。
1.地域医療構想の推進に向けた取組について(報告事項)
(1)医療介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会の一次報告
(2)地域医療構想の実現に向けた今後の対応について
2.その他報告事項
(1)経済財政運営と改革の基本方針2015等について
(2)介護保険の第6期計画・平成37年度等における第一号保険料及びサービス見込み量について
この日は、これまでレセプトの分析を通じて2025年に必要な病床数の推計が出たことを踏まえ、認知症の高齢者を念頭に介護や精神病院のレセプトを分析して、必要な体制整備に向けて役立てる意向が示された。また、病床の機能分化については、公立病院や大学病院が率先して取り組むように求める声が上がった。
病床数の推計結果について―。
医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会の松田晋哉会長代理は2025年の医療機能別必要病床数の推計結果(6月15日公表)に関して、病床機能分化・連携を進めて目指すべき必要病床数は115万~119万床(高度急性期13.0万床、急性期40.1万床、回復期37.5万床、慢性期24.2万~28.5万床)で、介護施設や在宅医療で対応する患者数は29.7万人~33.7万人と報告した。
今後の課題として、「被用者保険の患者住所地情報の付与(レセプトの患者住所地郵便番号記載)」、「一般病床以外のレセプトでの傷病名の分析方法検討」、「精神科レセプトや介護レセプトの分析」などが必要と述べた。
厚生労働省の今後の対応について―。
厚生労働省は「地域医療構想」の実現に向けた今後の対応として、
(1)回復期の充実(急性期からの病床転換)、(2)医療従事者の需給見通し・養成数の検討、(3)慢性期の医療ニーズに対応する医療・介護サービスの確保――などが必要と説明した。
(1)では、急性期中心の病棟から、不足する回復期(リハビリや在宅復帰に向けた)病棟への自主的転換を進めるため、「地域医療介護総合確保基金」で補助をして転換を誘導。また、適切な診療報酬を設定するとしている。
(2)では、病床推計などをふまえ、回復期のリハビリ関係職の確保など機能分化・連携に対応して、医療従事者の需給を見直す。医師の養成数も医学部入学定員などを2015年夏以降に検討会を設置し検討開始する予定。
(3)は、基金を活用して在宅医療・介護施設などを着実に整備するほか、2018年度からの第7次医療計画、第7期介護保険事業計画に必要なサービス見込み量を記載して計画的に整備する。また、「療養病床の在り方等に関する検討会」で、慢性期の医療・介護ニーズに対応するサービスのあり方を議論し、年内を目途に見直しの選択肢を整理する。
◆平均寿命は過去最高、男性80.50歳、女性86.83歳
厚労省、2014年簡易生命表の概況を公表
――国土交通省
厚生労働省は7月30日、2014年(平成26)の「簡易生命表の概況」をまとめ公表した。2014年の死亡状況が今後変化しないと仮定した場合に、年齢別に1年以内の死亡率や平均余命など確立的な期待値などを、死亡率や平均余命などの指標によって表したもの。
概況で特記されるのは次の3点。
・男性の平均寿命は80.50 年となり、過去最高(平成25 年の80.21 年)を更新
・女性の平均寿命は86.83 年となり、過去最高(平成25 年の86.61 年)を更新
・国別に平均寿命をみると、厚生労働省が調査した中では、日本は男性、女性とも世界のトップクラス
この概況を詳細にみると、平均寿命は男性80.50歳、女性は86.83歳で、いずれも過去最高を更新。前年比で男性は0.29年、女性は0.22年延び、平均寿命の男女差は6.33年で前年より0.07年縮小した。
厚労省は平均寿命が延びたのは、性・年齢別にみた死亡状況の改善のためと説明しており、男性は悪性新生物(がんや肉腫など悪性腫瘍)や肺炎、女性は心疾患や脳血管疾患の死亡状況の改善が大きく影響している。
死因別の死亡確率(ゼロ歳時の将来死亡確率)では、悪性新生物が男女とも1位で、男性29.42%、女性20.27%。2位は心疾患で男性14.42%、女性17.78%。3位は男性が肺炎で11.37%、女性は脳血管疾患と肺炎が9.75%の同率で続いた。年次推移をみると、悪性新生物の死亡確率が上がる傾向で、脳血管疾患や肺炎は低下の傾向となっている。
「悪性新生物、心疾患、脳血管疾患」を合計した死亡確率(いずれかで亡くなる確率)は男性52.20%、女性47.80%。他方、「悪性新生物、心疾患、脳血管疾患」を死因として死亡することがなくなったと仮定した場合の平均余命の延びは、男性7.28年、女性6.02年と計算されている。
なお、0歳の平均余命である「平均寿命」は、すべての年齢の死亡状況を集約したものとなっており、保健福祉水準を総合的に示す指標である。日本の生命表として、厚労省では、「完全生命表」と「簡易生命表」の2種類を作成・公表しており、「完全生命表」は、国勢調査による人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による死亡数、出生数を基に5年に1度作成するもので、「簡易生命表」は、人口推計などによる人口と人口動態統計月報年計(概数)による死亡数、出生数を基に毎年作成している。