ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2015年8月28日号)
◆厚労省 総合事業で26問の介護保険最新情報
「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」
――厚生労働省
厚生労働省は8月20日(19日付け)、介護保険最新情報vol.494(8月19日版)を各都道府県介護保険担当課(室)、各市町村介護保険担当課(室)等へ発出し、「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」についてのQ&Aを示した。
2014年の介護保険法等改正で2018年度までに、要支援者に対する訪問介護、通所介護がともに市町村の行う新たな総合事業に移管する。Q&Aは、ガイドラインに対する、(1)配食サービス(市町村に対してどの事業に位置づけるか適切な判断を求めている)、(2)ボランティア(5項目を共通基準としているが、自治体がさらに基準を設定可能と回答している)、(3)通所介護と通所型サービスA(緩和した基準によるサービス)に関する算定要件(例えば【中重度ケア体制加算】、【個別機能訓練加算(I)・(II)】、【認知症加算】など、各例ごとに説明)―などの質問・回答を掲載している。
今版には「サービスの利用の流れ」や「総合事業の制度的な枠組み」などについて寄せられた26問に対する回答が示されている。質問数が26問と多く目を通すだけでも相当な時間を要する。それだけQ&Aが多いということは、介護予防・日常生活支援総合事業が運営上、現場にとって不明な点が多いという側面を表しているといえよう。
今版では「みなし指定」に関するQ&Aが要点の一つ。これに関連して今年3月の東京都福祉保健局は「介護予防・日常生活支援総合事業のみなし指定について【事務連絡】」の説明を通知している。参考までに紹介する。
<通知>
『平成26年6月に公布された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第83号。)による介護保険法の改正により、介護予防サービスのうち介護予防訪問介護及び介護予防通所介護を介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)に移行し、平成29年度までに全ての区市町村で実施することとされています。
その際、介護予防訪問介護及び介護予防通所介護の指定を受けている事業者(以下「介護予防サービス事業者」という。)は、総合事業の指定を受けたものとみなす経過措置(いわゆる「みなし指定」)が設けられています。ただし、総合事業に係るみなし指定を希望しない場合は、みなし指定の別段(不要)の申出を提出することとなっております』と通知されている(以下略)。
事業開始に当たって「平成29年度までに全ての区市町村で実施する」とあれば各自治体に温度差が生まれるのは当然で、それが尾を引いているとの見方もある。
VOL.494版で「総合事業の制度的枠組み」の問3のQ&Aが「それぞれのサービスは可能か」という疑問である。
問3 通所型サービス(みなし)サービスコード表の1回当たりの基本報酬が設定されているものと通所型サービス(独自)サービスコード表の1回当たりの基本報酬が設定されているものを用いて、1 人の被保険者が従前の介護予防通所介護相当のサービスと通所型サービスAそれぞれの通所型サー ビスを利用することは可能か。また、その場合の加算はそれぞれの事業所で算定可能か。
(答) ケアマネジメントにおいて、生活機能の維持・向上等のため必要と認められるのであれば、1人の被保険者が従前の介護予防通所介護相当のサービスと通所型サービスAのそれぞれのサービスを利用することも可能であり、それぞれの事業所で加算の要件を満たす場合は、算定することもできる。
この回答はわかりやすい。
◆高齢者の夫婦のみ世帯、1人世帯ともに貯蓄額は2極化
政府税調 高齢者世帯2千万に 「夫婦のみ世帯」は3割
8月20日、政府の税制調査会が開催され「経済社会の構造変化~高齢者~」を議題として高齢者の生活実像を様々な資料から浮き彫りにした。
この日、財務省は関連資料を提出し、高齢者に関する経済社会の構造変化を説明。高齢者世帯は世帯数が2,000万世帯を超え増大する中、「1人世帯」や「夫婦のみ世帯」の世帯類型の割合が増加し、それぞれ3割を占めている。また、高齢者人口(男女別)に占める「1人世帯」は、特に女性の1人世帯の割合が21.9%と大きく、5人に1人の状況。
一方、男性は13.9%だった。配偶者の有無などをみると、男女とも死別が大半を占めるものの、未婚や離別が近年、増加傾向。女性は死別の割合が多い。
年間収入に関し、「高齢者夫婦のみ世帯(平均71.0歳)」では1994年と比べて、収入別で世帯数が最も多い(最頻値)のは300万~400万円で変化がないものの、300万~500万円の世帯割合が増えて、600万円以上の世帯割合が減少。年間収入600万円未満では「公的年金・恩給」を主な収入とする世帯がほとんどを占める一方、600万円以上では「勤め先収入」、「家賃・地代、利子・配当金」の割合が大きくなっている。なお、公的年金・恩給の受給額は約8割の世帯で360万円未満、企業年金・個人年金は約8割の世帯で180万円未満だった。
また、貯蓄額では、「高齢者夫婦のみ世帯」は「全年齢の夫婦のみ世帯」に比べて、貯蓄高が多い世帯が多く、最も世帯数が多いのは3,000万円以上で、2番目は450万円以下と2極化している。
他方、「高齢者1人世帯」では、1994年と比べて収入別で世帯数が最も多い(最頻値)のは100万~200万円で変化していないものの、200万~300万円の世帯割合が増えて、100万未満と500万円以上の世帯割合が減少。他方、貯蓄額は1,500万円以上の世帯が最も多く、2番目は300万円以下。高齢者世帯でも、世帯構成をはじめ所得や貯蓄と、多様な世帯がある状況が示されている。
◆人材確保へICT活用の労働環境改善を紹介 介護人材戦略会議
民間企業・団体が先駆的・実践的な取り組みをプレゼン
――厚生労働省
厚生労働省は8月20日、「介護人材確保地域戦略会議」を開催し、民間企業・団体が先駆的・実践的な取り組みを紹介するプレゼンテーションなどを行った。2025年に向けて介護人材を量・質の両面から確保するため、情報を共有するもの。
厚生労働省は2025年の介護人材の需給推計で、必要とされる約253万人の需要に対して、労働者の供給は215万人にとどまり、37.7万人の不足(需給ギャップ)が生じる見通しを提示。都道府県別の充足率(需要に対する供給の割合)は宮城県で69.0%、群馬県で73.5%、埼玉県で77.4%、栃木県で78.1%にとどまる見込みを説明した。
このため、国は2025年に向けた総合的な確保方策として、参入促進、労働環境・処遇の改善、資質の向上のため、「福祉人材センターの機能強化」、「介護福祉士の資格取得方法見直し・配置割合に対する報酬上の評価」などに取り組む。2015年度は、地域医療介護総合確保基金に大幅増となる90億円を予算計上し、キャリアアップ研修の支援や潜在介護福祉士の再就業促進、子育て支援のための介護施設内保育施設の運営支援などを進めると述べている。
また、株式会社やさしい手の香取幹社長は「ICTを活用した労働環境改善の取り組み」を紹介し、従業員自身が顧客のニーズに十分応えることができると自信を持つことが最も重要と指摘。このため、介護をサービス業として積極的に位置づけ、ICTを活用して目標、予算、業績、方針を管理。顧客ロイヤリティ(満足度)向上をねらい、在宅生活の継続を実現するため、ウェブシステムを用いて介護過程に関するPDCAサイクルの回転数を上げていると説明した。
さらに、労働環境を改善するICT活用の重要性も強調し、人材マネジメントの情報システムを用いることで、出産休業後のサービス提供責任者の復帰率が97%まで向上したことを説明。介護人材との信頼関係確保のためには、労働法制の遵守のほか、従事員の子育てや介護への支援が重要と説き、認定・認可保育など自己負担費用の半額を会社が負担しているほか、子どもが6歳の4月を迎えるまでの時短勤務制度の保障などをしていることを紹介した。
株式会社 やさしい手―在宅介護を柱とした総合介護事業を行う
社名・・・・・・株式会社 やさしい手
代表者名・・・・代表取締役会長 香取 眞恵子
・・・・・・・・表取締役社長 香取 幹
設立年月日・・・平成5年10月1日
資本金・・・・・50,000千円
年商・・・・・・平成26年6月期 約120億円
本社所在地・・・東京都目黒区大橋2-24-3 中村ビル4階
◆75%の事業所がヘルパー不足、採用率も下がる
介護労働安定センター 2014年度介護労働実態調査
――介護労働安定センター
介護労働安定センターは8月17日、2014年度介護労働実態調査結果を公表した。訪問介護員と施設などの介護職員全体の離職率は16・5%で前年度調査とほぼ同じだったが、採用率は減少傾向が止まらず20・6%に。人手不足感が高まり、特にヘルパーは75%の事業所が足りないと答え深刻な状況であることが分かった。
調査の概要と調査対象
「事業所における介護労働実態調査」は全国の介護保険サービスを実施する事業所から無作為抽出した17,065事業所を対象にアンケート調査を実施した。有効回答は7,808事業所であった。(有効回収率は45.8%)。
なお並行調査の「介護労働者の就業実態と就業意識調査」は上記の事業所の中で、1事業所あたり介護にかかわる労働者3人を上限に選出した51,195人に対し、調査票を配布してアンケート調査を実施した。有効回答のあったのは18,881人であった。(有効回収率36.9%) 。調査対象期日:原則として平成25年10月1日現在。.調査実施期間:平成25年10月1日~10月31日。
「平成25年度 介護労働実態調査結果」概要
【調査結果のポイント】()内は前年度数値。
1、離職率・採用率
[平成25年10月1日から平成26年9月30日]まで1年間の離職率の状況は、16.5%(16.6%)であった。また、採用率の状況は全体では20.6%(21.7%)であった。
2、従業員の過不足
(1)介護サービスに従事する従業員の過不足状況を見ると、不足感(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)は59.3%(56.5%)であった。「適当」が40.2%(43.0%)であった。
(2)不足している理由については、「採用が困難である」が72.2%(68.3%)、「事業拡大をしたいが人材が確保できない」が19.8%(19.3%)であった。
(3)採用が困難である原因は、「賃金が低い」が61.3%(55.4%)、「仕事がきつい(身体的・精神的)」が49.3%(48.6%)であった。
3、介護サービスを運営する上での問題点
全体では「良質な人材の確保が難しい」が53.9%(54.0%)、「今の介護報酬では人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」が49.8%(46.9%)であった。
4、賃金
労働者の所定内賃金[月給の者]は215,077円(212,972円)であった。
(注)労働者:事業所管理者(施設長)を除く
■介護労働者の就業実態と就業意識調査■
5、仕事を選んだ理由
「働きがいのある仕事だと思ったから」が52.6%(54.0%)であった。
6、労働条件等の不満
「人手が足りない」が48.3%(45.0%)、「仕事内容のわりに賃金が低い」が42.3%(43.6%)、「有給休暇が取りにくい」が34.9%(34.5%)であった。
7、家族の介護(平成26年度新規設問)
(1)「現在、介護をしている」が11.1%、「ここ数年のうち、可能性がある」が31.1%、「当面ない」が55.5%であった。
(2)仕事と介護の両立については「両立できる」が34.2%、「両立できない」が63.3%であった。
(3)「両立できる」と回答した方は、「両立できない」と回答した方に比べて「休んだ時に自分の仕事を代わりに担当できる人がいる」などすべての項目で回答割合が高かった。