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医療経営情報(2015年10月8日号)

2015/10/9

◆医療事故調査や特定行為研修など10月1日開始
制度変更で厚労省、あらためて全国へ周知

――厚生労働省
厚生労働省は10月1日から実施された主な制度変更をあらためて周知広報している。特に国民生活に影響を与えるとみられる制度変更に関して、医療、年金、疾病対策、雇用・労働―に分類してその要旨を伝えている。

医療関係では、(1)医療事故調査制度、(2)看護師等免許保持者の届出制度、(3)特定行為にかかる看護師の研修制度―の3項目が施行されている。
(1)は、医療事故が発生した医療機関において必要な調査を実施し、調査報告を医療事故調査・支援センターが収集・分析することで再発防止につなげるための制度。
医療機関は、医療事故が発生した場合、まずは遺族に説明を行い、医療事故調査・支援センターに報告。その後、速やかに院内事故調査を行う。医療事故調査を行う際には、医療機関は医療事故調査等支援団体に対し、医療事故調査を行うために必要な支援を求めるものとされ、原則として外部の医療の専門家の支援を受けながら調査を行う(例―日本医師会)。院内事故調査の終了後、調査結果を遺族に説明し、医療事故調査・支援センターに報告する。
(2)は、昨年成立した地域医療介護総合確保推進法で看護師等人材確保促進法が一部改正され、離職した看護師等の届出制度が10月1日に施行された。看護師等は、病院等を離職した場合等に、住所、氏名等を同センターに届け出るよう努めなければならない、情報ナースセンターはその業務の一部を委託することができる、などが改正の柱。離職看護師同意の下、病院は届出の代行が可能―だが、各病院の役割が大きい看護師届出制度でもある。
看護師・准看護師などの免許を持ちながら、離職などで仕事していない人の連絡先などの情報をナースセンターに届け出てもらい、届け出情報をもとに離職した人とつながりを保ち、求職者になる前の段階から、復職への働きかけを行う。離職時等の届け出を義務化して離職者情報の把握を徹底する。届出は書面だけでなく、都道府県ナースセンターの全国機関である中央ナースセンターのホームページからもできる。
(3)は、今後の在宅医療等の推進を図るため、医師等の判断を待たず、手順書(プロトコル)により一定の診療補助一定の診療補助(特定行為:脱水の程度判断と輸液による補正等)を行う看護師を養成して確保する。

疾病対策関係では、「特定配偶者等支援金制度」により、ハンセン病療養所退所者給与金受給者の遺族に対して、生活の安定を図ることを目的に月額12万8千円が支給される。

◆先進医療Bに2つの新規技術を振り分ける案 先進医療会議
「骨髄由来間葉系細胞による顎骨再生療法」を先進医療Bへ

――厚生労働省
厚生労働省は10月1日、「先進医療会議」を開催し、新規技術に対する検討や評価などを実施した。先進医療は、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つで、保険診療との併用が認められる。この日は2つの新技術を先進医療A、Bのどちらかに「振り分ける」検討を行った。
先進医療技術とともに用いる医薬品・医療機器・再生医療等製品が、医薬品医療機器等法上の承認を得ている場合などの「先進医療A」および、同法上の承認がない医薬品・医療機器・再生医療等製品を用いても、一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能とする「先進医療B」に分類されている。

この日は、8月受理分の新規技術で、腫瘍、顎骨骨髄炎、外傷などにより、広範囲な顎骨欠損もしくは歯槽骨欠損(「J109広範囲顎骨支持型装置埋入手術」に準ずる)に対する「骨髄由来間葉系細胞による顎骨再生療法」を、先進医療Bに振り分けることが報告された。
また、9月受理分の新規技術で、「子宮頸がん患者を対象としたda Vinciサージカルシステム(DVSS)によるロボット支援広汎子宮全摘出術の有効性および安全性に関する多施設共同非盲検単群臨床試験」、および、「初発時の初期治療後の再発または増悪膠芽腫に対する用量強化テモゾロミド療法」を、ともに先進医療Bに振り分ける案が示されている。

先進医療の分類は、厚労省の資料には次のように示されている。
まず「第2項先進医療【先進医療A】」と「第3項先進医療【先進医療B】」がある。 先進医療技術とともに用いる医薬品や医療機器等について薬事法上の承認・認証・適用がある場合、または承認等が得られていない検査薬等を使用する先進医療技術であっても、人体への影響が極めて小さいものを「第2項先進医療【先進医療A】」と位置づけている。
先進医療Aに対して、薬事法上の承認等が得られていない医薬品や医療機器を用いても、一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能としたものを「第3項先進医療【先進医療B」と位置づけている。
なお、薬事法上の承認等が得られた医薬品や医療機器を用いる場合でも、安全性や有効性等を検討するために、実施に当たって実施環境や技術の効果等について特に重点的な観察・評価が必要とされるものは、「第3項先進医療【先進医療B】」として分類される。

◆2016年度診療報酬改定に向け中医協・総会審議続く
大病院受診時の定額負担、地域別の設定には異論

――厚生労働省・中央社会保険医療協議会
次期2016年度診療報酬改定に向けて厚生労働省―中央社会保険医療協議会は懸案の課題解決に向かって具体的な詰めの作業に入っている。現在までの中医協での過程は、2016年度診療報酬改定の議論が地域包括ケアシステムの考え方をベースに進められており、2018年度の医療・介護の同時改定の下準備と位置づけられている。

厚生労働省は9月30日、中央社会保険医療協議会の「総会」を開催し、次期2016年度診療報酬改定に向けて「外来医療」をテーマとし、厚労省の提示した論点ついて「紹介状なしの大病院受診時にかかる選定療養」を議論した。厚労省はこの日、「結論を得るのでなく意見を求めたい」と述べ、中医協の構成委員間で議論が交わされた。

外来医療では、今年1月に政府の社会保障制度改革推進本部は、紹介状なしで特定機能病院や500床以上の病院を受診する場合、選定療養として初診・再診時に原則的に定額負担を求めることを決定。これを受けて、2015年通常国会で健康保険法等を改正し、特定機能病院や一定規模以上の保険医療機関に、外来機能分化の観点から、医療機関相互の機能分化・業務連携を推進するための責務を定めた。
法律では定額負担の金額、負担を求めない個別ケースなど責務規定の内容や対象医療機関の範囲は、省令で定めることとされ、制定には中医協への諮問が必要とされている。このため、今回、厚労省は療担規則(保険医療機関及び保険医療養担当規則)を改正して一定規模以上の医療機関での定額徴収を責務とすることを提案した。

厚労省は「紹介状なしの大病院受診時の定額負担導入」についての論点を、次のように示した。
▼定額負担を求める大病院の範囲をどう考えるか
▼定額負担を求めない患者・ケースをどう考えるか
▼定額負担を全国一律の最低金額として設定することを、金額(初・再診)を含めどう考えるか
▼現在の初診料、外来診療料の関係などをどう考えるか

各委員の主な意見は次の通り。
定額負担を求める大病院の範囲に関して、鈴木邦彦委員(日医常任理事)は、
「特定機能病院と500床以上の地域医療支援病院でよい」と述べた。また、定額負担を求めない患者・ケースに関しては、「緊急」か否かの判断について、鈴木委員は「(現行の選定療養と同様に)『軽症か』ではなく、『緊急か』を医療機関が判断するべき」と主張。
万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)も「判断は医療機関に委ねるべきで、現行制度を継続するべき。軽症かどうかは診療してから初めてわかる」とコメント。また、万代委員は「負担を求めない患者に、がん検診だけでなく、他の検診からの受診を加えてほしい」と要望している。

定額負担の金額に関して、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「患者側からすると地域別で違うのは困る。病院と診療所の機能分化の患者へのアピールも含め、大学病院か否かに一本化した方がわかりやすい。患者の立場からは500床以上か否かはわからないので、病院の機能からの議論が必要ではないか」と述べた。

これに対して、中川俊男委員(日本医師会副会長)は「大都市と地方の問題はデリケートで慎重に考えたい。患者に差別感が生じうることが心配だ」と答えた。また、白川委員は「責務にするなら定額負担分を保険者に還元しても良いのではないか」と問題提起。これに対し、中川委員は「定額負担が病院の収入増につながるかはわからない。経過を見て検証してから考えるのが妥当」と応じた。紹介状なしの大病院受診時にかかる選定療養・定額負担に関しては、今後も引き続き中医協総会で検討される。

◆患者申出療養の制度設計案を取りまとめ 中医協・総会
混合診療拡大へ「原則6週間以内に安全性などを審査」

――厚生労働省
厚生労働省は9月30日、中医協の「総会」を開き、「患者申出療養」の制度の運用方法の案を示した。これは患者が、国内で実績のない新しい治療や投薬を希望する場合、原則6週間以内に安全性などを審査するなどとした、患者申出療養の制度設計の素案。
厚労省は、保険が適用される診療と適用されない診療を合わせて行う「混合診療」の範囲を拡大し、患者からの申し出を受けて、新しい治療や投薬を速やかに実施できるようにする「患者申出療養」を、来年4月から導入を予定している。患者申出療養は、安倍首相が創設を決めた新たな保険外併用療養制度。

この「患者申出療養」について、厚労省がまとめた制度設計の案によると、患者が、国内で実績のない新しい治療や投薬を希望する場合、①臨床研究の拠点となる病院などと相談したうえで、②病院が作成した実施計画などと共に、③国に申し出を行うという仕組み。
これを受けて、国は、医師、有識者などおよそ20人の専門家から成る「評価会議」で、申し出から原則6週間以内に、安全性や有効性、実施計画の内容などを審査し、承認した場合は、速やかに治療を実施できるようにする。
一方で、「患者申出療養」は、「混合診療」を無制限に解禁するものではなく、保険外併用療養費制度の中に位置付けるものであるため、保険適用を目指さない医療は対象としないことも明記している。すなわち「国民皆保険の堅持を前提とするもの」と釘を刺している。

制度設計案には、患者申出療養は困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、先進的な医療について、患者の申出を起点とし安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにすると記載。「
また、(1)患者申出療養として初めての医療の実施までの取り扱い、(2)患者申出療養として前例がある医療の実施までの取り扱い、(3)患者申出療養の実施後にかかる運用、(4)今後のスケジュール―の4点が述べられている。

(1)では、「申出」は療養を受けようとする者(患者)が厚生労働大臣に対して行う。また、対象医療は保険収載を前提に一定の安全性・有効性などが確認されたもの。保険収載を目指すことが前提で、目指さないものは対象としない。「国の患者申出療養の審議」に関しては、安全性・有効性等を審査するため、
「患者申出療養評価会議(仮称)」を開催し、審議の結果、実施承認された医療を告示し、臨床研究中核病院を経由して患者に通知する。告示は患者の申出を受理した日から原則6週間以内に適用する。

また、評価会議は定期的に開催し、原則公開で行い必要に応じて持ち回り開催も可能。構成員は約20人で、臨床医、薬学に関する有識者、生物統計の専門家、倫理に関する専門家などのほか、申出のあった医療の属する領域に専門知識を持つ技術専門委員が案件に応じて参加できるとしている。

●有害事象対応、事前同意を得て実施計画記載 中医協・総会
「患者申出療養の制度設計案」に関して、(2)患者申出療養として前例がある医療の実施までの取り扱い、(3)患者申出療養の実施後にかかる運用、(4)今後のスケジュール―についても具体的な内容が示された。

(2)では、患者申出療養評価会議での審議の結果、実施が可能となった医療は前例がある患者申出療養として、実施医療機関を臨床研究中核病院が個別に審査し追加可能。実施医療機関の追加を行う場合も、患者から臨床研究中核病院に対して申出を行う。追加の審査は評価会議の評価の際に定められた「実施可能な医療機関の考え方」を参考として、臨床研究中核病院が原則2週間で審査を実施。審査が2週 間を超える場合、理由を明らかにすることが必要となる。

(3)では、「有害事象等の発生に備えた対応」に関しては、先進医療と同様に、重篤な有害事象等の可能性、健康被害が生じた場合の補償や治療の内容、費用などを、事前に患者・家族に説明し文書により同意を得て実施計画に記載。また、「有害事象等の発生時の対応」も、先進医療と同様に、他の実施医療機関等に対して情報提供するほか、医療との直接の因果関係が否定できない場合、臨床研究中核病院は速やかに国へ報告するとした。
一方、「国における情報公開」では、患者申出療養の実績報告に基づき今後の方針などを評価会議で審議。必要に応じて追加の報告を求め、保険収載に向けた取り組みを促すほか、計画からの遅れが見られても、対応を講じていない場合などは患者申出療養から除外するとしている。
このほか、「費用の取り扱い」は診療報酬の算定方法の例によることとし、保険外併用療養費の一部負担徴収額と特別の料金に相当する自費負担徴収額とを、明確に区分した領収書を交付する。特別の料金は社会的にみて妥当適切な範囲の額とするとした。

委員からエビデンスがあまりない場合に関する臨床研究中核病院の患者対応を尋ねられた厚労省は、「エビデンスがないことを含めて根拠を臨床研究中核病院が相談した患者へ回答することを考えている」と述べている。中医協総会で承認されたことにより、今後は2016年4月の制度施行に向けて、詳細な運用に関する省令・告示・通知などが示されることとなる。

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