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医療経営j情報(2015年12月24日号)

2015/12/28

◆2016年度診療報酬改定率、診療報酬本体はプラス0.49% 厚労省
ネット改定率マイナス0.84% 診療報酬全体は8年ぶりに引下げ

――厚生労働省
政府は来年度予算案の編成で焦点の一つになっている医療機関に支払われる診療報酬の改定で、医師の人件費や技術料などに当たる「本体」部分を0.49%引き上げる一方、薬の価格と医療器具の材料費を合わせた部分は1.33%引き下げる方向で最終調整し、診療報酬全体は、8年ぶりに引き下げられることが決定した(12月18日)。これを受け12月21日、塩崎恭久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣の大臣折衝により、改定率は次のように決まり発表された。

平成28年度の診療報酬改定は、以下のとおりとする。
1.診療報酬本体 +0.49%
各科改定率 医科 +0.56% 歯科 +0.61% 調剤 +0.17%
2.薬価等
①薬価
▲1.22% 上記のほか、・市場拡大再算定による薬価の見直しにより、▲0.19% ・年間販売額が極めて大きい品目に対応する市場拡大再算定の 特例の実施により、▲0.28%
② 材料価格 ▲0.11%
なお、上記のほか、新規収載された後発医薬品の価格の引下げ、長期収載品の特例的引下げの置き換え率の基準の見直し、いわゆる大型門前薬局等に対する評価の適正化、入院医療において食事として提供される経腸栄養用製品に係る入院時食事療養費等の適正化、医薬品の適正使用等の観点等からの1処方当 たりの湿布薬の枚数制限、費用対効果の低下した歯科材料の適正化の措置を講ずる。

厚生労働省は12月21日、2016年度の診療報酬改定率を公表し改定率は、(1)診療報酬本体はプラス0.49%(国費約500億円)、(2)薬価マイナス1.22%(国費約マイナス1,200億円)、(3)材料価格マイナス0.11%(国費約マイナス100億円)に決定した。ネット改定率はマイナス0.84%だった。

(1)診療報酬本体に関して、各科改定率は、医科プラス0.56%、歯科プラス0.61%、調剤プラス0.17%。大臣折衝で、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬局の機能の評価や、質の高い在宅医療の推進など地域包括ケアシステム構築と、医療機能の分化・強化、連携等、効率化・適正化を通じた制度の持続可能性確保の観点から決定された。

(2)の薬価等に関連して、薬価マイナス1.22%に加えて、「医薬品の適正化」として、「市場拡大再算定による薬価の見直し」国費約マイナス200億円(マイナス0.19%)、「年間販売額が極めて大きい品目に対応する市場拡大再算定の特例の実施」国費約マイナス280億円(マイナス0.28%)など、総額国費約マイナス500億円の措置を講ずるとした。

中でも「いわゆる大型門前薬局等に対する評価の適正化」を国費約マイナス40億円として、特定の医療機関からの処方せん割合が高いなど、大型門前薬局調剤報酬適正化を実施。
さらに、入院医療で食事として提供される「経腸栄養用製品に関する入院時食事療養費等の適正化」で国費マイナス40億円、このほか、医薬品の適正使用などのため、1処方あたりの湿布薬の枚数制限、費用対効果の低下した歯科材料の適正化の措置などで、国費マイナス約30億円を盛り込んだ。

◆診療報酬改定 麻生大臣折衝で塩崎厚労相、記者会見
《平成28年度予算編成大臣折衝について》経緯説

塩崎厚生労働大臣は21日、麻生財務大臣と予算折衝での内容を記者団の質問に答えた。塩崎厚労相は記者団に対して厳しい財政事情の中での「台所のやりくり」を丁寧に説明し、なぜ実質2年連続でマイナス改定になったか、などの理由も含めその根拠を説明した。要旨は次の通り。

(大臣)
先ほど、麻生財務大臣と平成28年度の予算編成に関して、診療報酬改定などについて折衝を行ってまいりました。
平成28年度の社会保障関係費の伸びにつきましては、診療報酬改定や社会保障制度改革の着実な実行、協会けんぽの超過準備金分の国庫補助特例減額などの効果を総合的に勘案いたしまして、平成27年度に比べまして実質プラス5,000億円程度になりました。
診療報酬の改定率につきましては、厳しい財政事情でありますが、医療機関の経営状況や医療従事者の方々の賃金動向などを考慮した結果、診療報酬の本体の改定率はプラス0.49パーセント、薬価の改定率はマイナス1.22パーセント、医療材料の改定率はマイナス0.11パーセントとなりました。また、診療報酬、薬価等に関する制度改革につきましては、医薬品価格の適正化、いわゆる大型門前薬局などに対する評価の適正化、経腸栄養用製品に係る給付の適正化などの措置を講ずることといたしました。
社会保障制度改革の推進につきましては、経済・財政再生計画改革工程表に沿って着実に実行することを確認したところでございます。
社会保障の充実につきましては、消費税増収分などを活用いたしまして、社会保障の充実1.53兆円と簡素な給付措置等の財源をあわせて一体的に確保することといたしました。
児童扶養手当につきましては、第2子加算額を月額5,000円から1万円へ、第3子以降の加算額を月額3,000円から6,000円へ、それぞれ倍増することといたしました。また、施行につきましては、平成28年8月分からといたしまして、多子加算の増額分につきましては本体額と同様に収入に応じて加算額を逓減し、低所得者に重点を置いた改正を図ることといたしました。
事業主拠出金の拡充による子育て支援の充実については、事業所内の保育を主軸とした企業主導型の多様な保育サービスなどの新たな事業の創設や、病児保育事業の拡充に取り組むことといたしまして、これらの事業に要する費用に充てるために段階的に拠出金率を引き上げて、平成28年度はプラス0.5パーミル、平成29年度はプラス0.8パーミルとし、上限をプラス1パーミルに法定するなどといたしました。本事業は待機児童解消を達成するためにも重要な施策でございまして、内閣府や財務省と協力しながら事業を進めてまいる所存でございます。
以上の内容で、麻生大臣と大臣折衝を行ってきたところでございます。

《質疑》
(記者)
診療報酬改定の件ですが、本体部分プラス0.49パーセントを確保する一方で、全体の改定率としましてはマイナスになっております。これは前回の消費税分を除くと、実質2回連続引下げということになっていると思うのですが、これに対する大臣の受け止めをお願いしたいというのが一つと、児童扶養手当の件なのですが、最大で倍増というお話だったのですが、第1子と同様に所得制限を設けて傾斜をつけていることの狙いをお聞かせください。

(大臣)
まず、診療報酬でありますが、先ほど申し上げたとおり、医療機関の経営状況や、働いていらっしゃる方々の賃金動向をよく加味しながら全体を考え、厳しい財政事情でありましたけれども、今回のようなことになったということでございます。本体の改定率が一番重要なことではないかという観点から、今回はプラス0.49パーセントという数字であって、2年前の前回の本体改定率はプラス0.1パーセントでございましたから、約5倍、政権交代前の平成20年度の改定では本体がプラス0.38パーセントでございましたので、それをさらに上回ったということで、それなりの大きな成果があったのではないかと考えております。特に、より良い医療を確保するという意味において、成果があったのではないかと思っております。薬価等の引下げ分というのは必ずあるわけでありますけれども、従来からその時々の課題に応じて、診療報酬本体に充当する場合もしない場合もあるということで、この点についていろいろな御意見があるわけですが、今回の改定においても、一方で厳しい財政事情のもとで経済・財政再生計画との調和と2025年を見据えた地域包括ケアシステムといった医療の質の向上などを考えれば、私どもとしては必要な本体改定率を確保できたのではないかと考えております。
多子加算の問題について、減額をするということについてのお話がございました。先ほど申し上げたとおり、低所得の方に配慮するということがメインの政策でありますので、ご案内のように、この年末に子どもの貧困問題などに関して、政策パッケージを作るようにという総理から4月に指示をもらっているわけでございます。ひとり親家庭は生計を立てるということと、子育てをするということの両方があるわけで、特に子どもが二人以上の場合は生活に必要な経費も増加するため、きめ細かな支援が必要だということで、今回いろいろな方々から要望を頂きました。地方公共団体、NPOからも署名も頂いたということで、こうしたことを踏まえて、今回の引上げは、政策パッケージを策定して、就業による自立に向けた支援を基本としながらも、総合的な取組を充実する中で財務大臣と厚労大臣の大臣折衝によって、限られた財源の中で最大限の拡充を図ったということでございます。

(記者)
診療報酬改定でうかがいたいのですけれども、例年ですとネット、全体の部分と、薬価等の材料と薬を合わせた部分が出ているかと思うんですけれども、これは単純に足せばよいということでしょうか。

(大臣)
今回のネット改定率は、マイナス0.84ということになっていますが、この割合にいわゆる市場拡大再算定というものがありまして、今までやってきたものを加味すると、薬価の見直し分にマイナス0.19の市場拡大再算定の通常分が上乗せをされるので、そうしてみると、いわゆるこれまで言っていたネット改定率というのはマイナス1.03パーセントになるということです。

(記者)
薬価等の部分はマイナス1.33でよいのですか。

(大臣)
それは今まで、いわゆる薬価がマイナス1.22であり、それから材料価格の下げ幅がマイナスの0.11で、合計してマイナス1.33と公表されてきているわけでありますが、それに加えて市場拡大再算定、この通常分でマイナス0.19パーセントを加えると、今までのネット改定率が出てくるわけでありますけれども、その数字がマイナスの1.03パーセントとなるという計算であります。したがって、今まで表に明示的に出ていないマイナス0.19パーセントという市場拡大再算定がありますので、それを足していただくと今までのネットになるということであります。

◆「2015年度補正予算案」総額6,874億円の概況 厚労省
1億総活躍社会へ 緊急対策費:6,557億円 

――厚生労働省
「介護離職ゼロ」と「低所得高齢者への臨時給付金」に約5000億円…2015年度補正予算案が決定した。
厚生労働省は12月18日、閣議決定を受けて、2015年度「補正予算案」の概要を発表した。総額は6,874億円。主な内訳は、(1)「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策等」の財源:6,557億円、(2)災害復旧・防災減災事業:293億円、(3)国民生活の安全・安心の確保:164億円。「介護離職ゼロ」緊急対策に1,384億円、低所得の高齢者に3万円を配る臨時福祉給付金(「高齢者等のための多様な就労機会の確保、経済的自立に向けた支援等」)に3,624億円を計上した。
なお政府発表の全体補正予算案は総額3兆3,213億円にのぼり、そのうち1兆1,646億円が一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策にあてられる。

(1)「一億総活躍社会の実現では、(ⅰ)介護離職ゼロに直結する緊急対策:1,384億円、(ⅱ)高齢者等のための多様な就労機会の確保、経済的自立に向けた支援など:3,685億円が計上され、(ⅰ)のうち「都市部を中心とした在宅・施設サービスの整備の加速化・支援の拡充(地域医療介護総合確保基金【介護分】の積み増し)」は921億円となっている。
これは、2020年代初頭までに、介護サービスが利用できずに離職する者をなくすとともに、特別養護老人ホームに入所が必要であるにもかかわらず自宅で待機している高齢者の解消を目指すもの。
ほかに、(ⅰ)と(ⅱ)に含まれる医療・介護関連の項目としては次のものなどがある。

介護離職の観点も含めた介護サービスのあり方の把握方法などの検討:54百万円/離職した介護人材の届け出システムの構築:3.9億円/地域医療介護総合確保基金(介護分)を活用した介護人材対策の加速化(地域医療介護総合確保基金【介護分】の積み増し):119億円/介護ロボット等導入支援特別事業:52億円/介護ロボットやICTの効果的な活用方法の検討など:1.6億円/介護予防・生活支援拠点の整備など:18億円/障害福祉サービス事業所などの基盤整備:60億円。

(3)では、医療・介護関連として次の項目などがある。
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のシステム改修:6.4億円/がん検診受診率向上に向けた取り組みの推進:5億円/新型インフルエンザ対策の推進:31億円/肺炎患者に対する医療費助成:36億円。

◆平成26年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況
(概況)不正請求で求めた返金額は約133億2千万円

――厚生労働省
厚生労働省は平成26年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について概況を発表した。指定取消処分(指定取消相当を含む。)の原因の多くは不正請求がほとんどを占めた。

1 指導・監査等の実施件数

個別指導       4,466件 (対前年度比 66 件増)
新規個別指導    6,518件 (対前年度比348件増)
適時調査       2,347件 (対前年度比161件減)
監査         87 件 (対前年度比  7 件減)

2 取消等の状況
・保険医療機関等41件 (対前年度比18件減)
(内訳)指定取消:17 件(対前年度比3件減)
指定取消相当:24件(対前年度比15 件減)
・保険医等30人(対前年度比4人増)
(内訳)登録取消:29人(対前年度比3人増)
登録取消相当:1人(対前年度比1人増)

特徴等
・保険医療機関等の指定取消処分(指定取消相当を含む。)の原因(不正内容)を見ると、不正請求(架空請求、付増請求、振替請求、二重請求)がそのほとんどを占めている。
・指定 取消処分(指定取消相当を含む。)に係る端緒としては、保険者、医療機関従事者等、 医療費通知に基づく被保険者等からの通報が25件と取消(指定取消相当を含む。)件数 の過半数を占めている。

3 返還金額
保険医療機関等から返還を求めた額は、約133億2千万円(対前年度比約12億8千万円減)
(内訳)
・指導による返還分 :約41億3千万円(対前年度比約 7億2千万円減)
・適時調査による返還分 :約65億2千万円(対前年度比約 3億4千万円増)
・監査による返還分 :約26億7千万円(対前年度比約23億4千万円減)

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