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医療経営情報(2016年2月4日号)

2016/2/8

◆災害時に備えクラウド型病院情報システム JCHO運用開始
横浜保土ケ谷中央病院、東京蒲田医療センターなど6病院

――独立行政法人・地域医療機能推進機構
独立行政法人・地域医療機能推進機構(JCHO/尾身 茂理事長)は2月1日、JCHOクラウド・プロジェクトの第一段階として、6病院でクラウド型医療情報基幹システム(電子カルテ・医事会計)を稼働させたと発表した。次に10病院まで増やし、計画は3段階まであり規模拡大を予定している。
JCHO(ジェコー)は昨年7月から10病院を対象としたクラウド型医療情報基幹システムの構築を進めてきた。平成28年1月1日に東京蒲田医療センター(東京都大田区)、2月1日に横浜保土ケ谷中央病院(神奈川県横浜市)、湯河原病院(神奈川県湯河原町)、福井勝山総合病院(福井県勝山市)、福岡ゆたか中央病院(福岡県直方市)、佐賀中部病院(佐賀県佐賀市)の計6病院において予定通り本システムが稼働し運用を開始した。
今後の計画では、本年10月に後続4病院(相模野病院(神奈川県相模原市)、桜ヶ丘病院(静岡県静岡市)、宇和島病院(愛媛県宇和島市)、人吉医療センター(熊本県人吉市))において本システムの稼働を予定していると発表した。このように200-300病床規模の10病院を対象にクラウド型システムを構築するのは全国的にみても初めての試み。

JCHOクラウド・プロジェクトとは、院外のデータセンターに設置されたJCHO専用の共有仮想サーバ上にクラウド型医療情報基幹システム(電子カルテ・医事会計)を配備し、閉域データ通信ネットワークで院内の部門システム及び本システムを操作する端末設備を接続して複数病院の診療業務を遂行するもの。サーバを共有することによるシステムの構築及び運用のコスト削減に加え、今後は診療録・レセプトなどの病院業務データの均質化や活用などを視野に入れて取り組むとしている。

データセンターは東日本・西日本の二か所を採用。両データセンターに同じ構成でシステムを構築し、そのデータの相互バックアップを行う。これにより、地震・津波・洪水などの広域災害発生時における患者情報の消失を防止すると同時に、その場合であっても、診療業務の継続を確実に遂行することが可能となる。例えば、病院が火災等の被害を受けた場合であっても、患者情報の消失リスクは低減するという。

更に計画では、データセンターに構築したIT資源及び各種機器は24時間365日監視し、サーバのCPU・メモリーなどの稼働率、ディスク容量、ネットワーク通信量などがリアルタイムにモニターされる。これにより全体システムの可視化、確実なIT資源キャパシティー管理、不具合・故障等の事前予知などが可能になるとともに、従来は各病院個別の負担であったシステムの運用管理が集中・一元化されることとなり、業務効率の向上も見込める。

JCHOでは第一グループ10病院のクラウド化に引き続き、今後200–300病床規模の30数病院を段階的にクラウド化する計画。一方、健康診断システムなどの病院内部門システムのクラウド化も将来構想に掲げており、院内に多数林立する部門システムの集約化を進め、病院基幹システムである医事会計・電子カルテのクラウド化との相乗効果による全体システムの簡素化を目指すとともに、過去画像データの共有ストレージでの保管、直近以外の過去診療データの外部長期保存などのような病院共通の課題解決にも取り組んでいく

JCHOの沿革は、年金・健康保険福祉施設整理機構法の改正により、全国の社会保険病院等(社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院)の運営を行ってきた(独)年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)が改組(平成26年)され、新たにJCHOによる直接運営する病院グループとなったもの。
JCHOは、5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)、リハビリテーション、その他地域において必要とされる医療及び介護を提供する機能の確保を図ることを目的としている。施設数は、病院57、介護老人保健施設26、看護専門学校7。

◆個別改定項目  7対1患者問題で診療・支払の意見平行
中医協総会 20%台前半と25%以上で対立、物別れ

2016年度診療報酬改定に向けた論議のなかで、個別改定項目で最大の焦点となっているのが7対1入院基本料の算定要件(または7対1患者割合の基準)。個別改定項目(新旧の改定案を整理した、短冊と呼ばれる符号と同義。たたき台ともいう)を審議している中央社会保険医療協議会(中医協)総会が昨年12月2日から16日にかけて5回開催され、2016年は1月13日より再開された。この間、事務局となる厚生労働省提案の課題と論点はひととおり示されてきた。
しかし「7対1入院基本料」問題は、1月27日の同総会でも短冊の項目が膨大な量のため詰めることはできなかった。さらに中医協構成委員(診療側・支払側)間の意見の対立もあって1月29日まで引っ張り、結論は平行線のままさらに伸びた。

現時点で診療側・支払側の“つばせり合い”がエスカレートしている理由の一つとして将来の看護需要予測に決定的な影響を与える(7対1入院基本料を算定している)病院の動向に直結するからだ。7対1入院基本料の施設基準は、看護職員数が「常時」入院患者7人に1人以上であること、看護職員の最小必要数の7割以上が看護師であること、入院患者の平均在院日数も重要だ、看護必要度基準を満たす患者を1割5分以上入院させる病棟であること、常勤医師数が、入院患者数の1割以上であることなど必須条件が多い。常時詰める看護師の質量が不可欠で、この条件を満たすとなると労働力不足を招くことになり基準ハードルが非常に高い。さらに今回、前回改正(14年)の在宅復帰率の基準(75%のさらなる引き上げ、在宅の定義の見直し)などについても、議論が行われている。

1月29日、議論されたのは前回1月27日の短冊提示の際、議論を持ち越した急性期病棟の「7対1入院基本料」に関する事項。これは短冊では前回、7対1の「重症度、医療・看護必要度」の項目の見直しに伴い、各入院料の施設基準に定められている「該当患者割合」要件(現行1割5分以上)の引き上げを行うとしている。

この該当患者割合要件に関し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「私どもの主張は20%台前半だ。全国の現場で混乱が生じている。何割何分と一律に決めるのではなく、病床規模や、外科系、内科系の規模ごともある」と要望、これまで通りの持論を述べた。

これに対して支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「(以前の議論で用いた)シミュレーションは重症度、医療・看護必要度のM項目(手術等)新設評価で該当患者が32%増加する。短冊でさらにM項目に追加があり上振れするなら、患者割合を25%とおいても、病床数がプラスになることさえあり得る。25%よりさらに上げるべきだ」と強く主張した。ここで幸野委員は、主張の裏付けに「3点セットの厳守」をつけ加えている。3点セットとは看護必要度(従来の「重症度、医療・看護必要度」のこと)、在宅復帰率、平均在院日数を必須条件とする発言をしている。
これに対し、中川委員は「病床数の削減が改革ではない。DPC7対1で病床数、稼働率は減っている。地域医療構想の構想区域ごとに病床数は決めるのであり、診療報酬で誘導することは違うのではないか」と反論。幸野委員は「7割~8割は急性期に該当しない患者がいることを適正化するために主張している」と応酬した。

1月29日の総会」では、個別改定項目の「7対1入院基本料」に関して、「在宅復帰率」「平均在院内日数」などの要件を議論した。短冊では在宅復帰を推進するため、7対1入院基本料等の施設基準の自宅等に退院した患者割合(在宅復帰率)に関する基準(現行75%)を引き上げることが示されている。
在宅復帰率に関して、支払側の幸野委員は「短冊では在宅復帰率の計算式で、自宅や地域、回復期リハ、地域包括ケア病棟に加え、議論もないままに有床診まで分子に含まれている。95%の復帰率がある中、計算式が緩和されている。分母と分子の内容がほぼ同じであるため、高い値が出るのが当然の計算式だ」と批判し、見直しを求めた。これに対して、中川委員(日医)は「在宅復帰率が高いことは悪いことなのか」と疑問を呈し、さらに「病院完結型医療から地域完結型医療に変化しており、むしろ、評価するべきことだ」と反論している。

今回の改定案で、2016年度改定の短冊から総会で議論してきた7対1の「平均在院日数要件」に関する改定の記載がされなかったことにも注目が集まった。
これに対して、幸野委員は「平均在院日数の指標をぜひ入れるべき。今回の短冊では退院支援の項目も充実しており、急性期を脱した患者に1日も早く退院してもらうべき。統計で平均在院日数の長い医療機関は医療密度が低い。在宅復帰率の基準を上げても意味が小さい」と強く訴えた。
在宅復帰率とは前回改定で入院基本料の算定要件に加わった項目で、期間中の入院患者の退院先が自宅等に退院した割合。ただし「自宅等」とは、自宅、他院の回復期リハビリテーション病棟、他院の地域包括ケア病棟、他院の療養病棟(在宅復帰機能強化加算届け出)等を指し、100%自宅に限定したものではない。地域で「受け入れ施設」が揃っていなければむずかしいという医療現場からの声も多く答えの落としどころはみつからない。

7対1急性期病床を巡っては、厚労省が支払・診療側双方の意向を聴取し調整を図り議論が続けられる。総会では「答申書の付帯意見項目案」も示され、厚労省は2月1日までに委員から盛り込みたい事項を募り、次回に文章化した修正案を提示すると述べている。


2月3日、中医協・総会―短冊の修正案を了承し改定議論終了、次回答申へ
厚生労働省は2月3日、中央社会保険医療協議会の「総会」を開催、2016年度診療報酬改定に向けた「短冊」の修正版を提示して議論を行った。その結果、個別改定内容は今回で議論を終え、次回で答申が行われる見通しとなった。

◆インフル感染拡大、5万人に到達、全国で注意報
東京都、1週間のインフルエンザ感染者3倍増に

――国立感染症研究所
今年はインフルエンザ流行が、「流行開始」の指標となる「1.00」へと迫る勢いで全国へ拡散中だ。今年の特徴としてインフル流行開始が昨シーズンより1カ月以上も流行期入りが遅れているにもかかわらず伝染力が強いといえそう。
国立感染症研究所は2月2日、1月18~24日の期間中の感染症発生動向調査を発表した。同調査により、同期間中の全国のインフルエンザ患者報告数が前週の2.6倍以上となる5万人に達したことを明らかにした。
同研究所の報告によると、2015/16年シーズンのインフルエンザ流行は、開始時期が例年より1カ月ほど遅れていた。しかし2015年末から継続的な増加が見られ、年が明けてからは、第1週(1月4~10日)が9,964人、第2週(1月11~17日)が2万369人、今回の第3週(1月18~24日)が5万2,226人と患者数が急増。
厚生労働省は1月15日に全国的な流行期入りを発表していたが、第2週と第3週の患者数比は約2.6倍とインフルエンザの猛威を指し示している。
定点医療機関あたりの1週間における患者報告数は、第2週は4.11だったが、第3週は10.56まで増加した。中でも新潟県(29.28)、沖縄県(18.22)、青森県(16.45)、千葉県(14.13)では極めて高い値となった。
大都市圏で見ると、東京都は第2週が3.79だったのが第3週は11.17まで膨れ上がった。大阪府は同3.11だったのが9.19へ、愛知県は同4.33だったのが11.92へ、福岡県は同4.41だったのが13.68へと、いずれも3倍近く増えていることがわかる。
インフルエンザは、企業や幼稚園、小中学校にとって「集団感染」が懸念事項の1つ。同研究所や厚労省などでは、飛沫(ひまつ)感染対策として、マスクを着用して咳(せき)をするときはティッシュやハンカチで口をおおうといった「咳エチケット」をあげる。また、接触感染対策として、うがい手洗いなどの手指衛生の徹底が重要であることを呼びかけている。

厚労省が1月29日公表した1月18日から24日までの週のインフルエンザ患者報告によると患者報告数が注意報の基準値を上回ったことがわかった。インフルエンザの全国の定点医療機関当たりの患者報告数は全都道府県で前週を上回り、全国の推定患者数も倍増。学級閉鎖などの措置は前週比で約13倍となった。
この週だけで全国の医療機関を受診した推定患者数は前週より約29万人増えて約52万人にのぼった。学級・学年閉鎖、休校となった保育所や小学校などの教育施設数は、前週に比べて約13倍の1268施設となった。
都道府県別では、新潟県が最も多く29.28人。以下は沖縄(18.22人)、青森(16.45人)、千葉(14.13人)、福岡(13.68人)、神奈川(13.06人)、岩手(12.75人)、埼玉(12.7人)、長野(12.67人)、秋田(12.22人)、岐阜(12.21人)、山口(12.04人)、愛知(11.92人)、北海道(11.91人)、茨城(11.9人)、東京(11.17人)、山梨(10.73人)などの順だった。

厚生労働省は、インフルエンザは「38度以上の発熱」「頭痛」「関節痛」「筋肉痛」などの症状が突然現れ、日本では例年12月から3月頃にかけて流行が見られるとしている。一度流行が始まると短期間に多くの人へと感染し、集団感染によって学級閉鎖などへとつながる。
国立感染症研究所によると、全国5,000カ所の定点医療機関から12月21~27日(第52週)の期間中に報告があった感染者数は3,734。第51週は2,270人となっており、64%も1週間あたりの患者が増えた計算になる。第50週(1,690人)からの数値を見ると、1週間ごとの伸び率は34%、64%と推移しており、直近2週間で急伸していることがわかる。
インフルエンザは、せきやくしゃみなどによる飛沫(ひまつ)感染が主な感染経路となり、予防策としてはワクチン接種のほか、マスク着用や手洗い、うがいなどがある。また、感染しても特有の症状が出ないケースや検査タイミングによって正しい結果が出ないケースもあるため、十分に注意が必要となる(国立感染症研究所HP参照)。

◆2016年度都道府県単位の保険料率を提案 協会けんぽ
佐賀県が10.33%で最高、徳島県10.18%、北海道10.15%

――全国健康保険協会
全国健康保険協会(「協会けんぽ」)は1月29日、「運営委員会」を開催し、2016年度都道府県単位平均保険料率と都道府県別激変緩和措置(調整基礎率)のあり方に関すを議論した。医療給付費等に関する都道府県単位保険料率は(1)都道府県支部別・年齢階級別加入者数、(2)都道府県支部別医療給付費、(3)年齢階級別加入者1人あたり医療給付費、(4)都道府県支部別総報酬額――の4項目の基礎データなどを用いて算定している。
これまでの運営委員会で示された2015~2019年度(5年間)の収支見通しでは、平均保険料率10%を維持した場合、準備金残高は1兆円超で推移することが明らかになったことから、運営委員会では、安定的な運営を優先すべきとする意見と、料率を引き下げるべきとする意見に委員の見解が分かれた。
協会けんぽの保険料率は過去3年間続けて引上げをしてきた。しかし事業主、加入者のために「これ以上の引き上げは避けたい」という強い思いから、およそ320万人の人たちの署名を集めることもした。その結果、現在では3年連続で引き上げが続いていた保険料率は据え置きとなっている。とはいえ医療費が保険料を上回っているという状況に変わりはなく、現状のまま保険料率を据え置くのは厳しい状況下に置かれている。対策を模索する協会けんぽでは、現在の医療保険制度を改革しようと、保険制度そのものの見直しを求めてきたが、実効性までには至っていない。

今回、都道府県別の具体的な保険料率が提案され、佐賀県が10.33%で最も高く、次いで徳島県10.18%、北海道10.15%、山口県10.13%の順。一方、最も低いのは新潟県の9.79%で、富山県9.83%、沖縄県9.87%、長野県9.88%が下位を占めている。
適用時期は平成 28年3月分(任意継続被保険者にあっては、同年 4 月分)の保険料額から適用 される。

一方、2016年度の激変緩和率(調整基礎率)は、最高第1号都道府県単位保険料率から、同年度の第1号平均保険料率を控除した率に10分の4.4を乗じて得た率とすると厚労省は1月28日に告示した。

●厚労省告示第13号
健康保険法施行令の一部を改正する政令(平成21年政令第63号)附則第7条第1項第1号ロの規定に基づき、健康保険法施行令の一部を改正する政令附則第7条第1項第1号ロの規定に基づき厚生労働大臣が定める平成22年度以降の調整基礎率を次のように定める。
平成28年1 月28日  厚生労働大臣 塩崎 恭久
健康保険法施行令の一部を改正する政令附則第7条第1項第1号ロの規定に基づき厚生労働大臣が定める平成 22 年度以降調整基礎率。
平成28年度に適用されるべき平成 22 年度以降調整基礎率は、同年度における最高第1号都道府県単位保険料率から同年度における第1号平均保険料率を控除した率に 4.4 を乗じて得た率を10 で除して得た率とする。

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