ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年2月5日号)
◆「特定健康診査・特定保健指導のあり方検討会」を開催
2018年第3期実施計画開始の実施方法など詰める作業
――厚生労働省
厚生労働省は2月2日、「特定健康診査・特定保健指導のあり方に関する検討会」を開催した。日本人の生活習慣の変化や高齢者の増加等により、近年、糖尿病等の生活習慣病の有病者・予備群が増加しており、生活習慣病を原因とする死亡は、全体の約3分の1にものぼると推計されている。そのため厚労省では「生活習慣病は、一人一人が、バランスの取れた食生活、適度な運動習慣を身に付けることにより予防可能です」といい、平成20年4月から始まっている、生活習慣病予防のための新しい健診・保健指導~特定健診等の積極的な利用を進めている。
特定健診とは、日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病の予防のために、40歳から74歳までの方を対象に、メタボリックシンドロームに着目した健診を行う。特定保健指導とは、特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる方に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートする。しかし厚労省の悩みの種は総じて受診率の低さである。
特定健診などは5年ごとの実施計画の策定が規定されている。現在、厚労省では専門家による検討会を開いて2年後に迫った2018年の第3期実施計画開始にあたっての項目や実施方法などの技術的事項について検討、議論している。今回は、「特定健診の検査項目」について議論され、(1)脂質、(2)肝機能、(3)代謝系――の各論点について、研究報告が行われた。
(1)では「LDLコレステロールと総コレステロールの測定」などが論点とされており、寺本民生構成員(帝京大学医学部 臨床研究医学講座特任教授)から研究報告が行われた。
寺本構成員は、「LDLコレステロール(直接法)は測定精度について疑義が出されている」、「日本人はHDLコレステロールが高いので、総コレステロールだけでは過剰スクリーニングの危険性がある」と指摘。総コレステロールからHDLコレステロールを減じた「Non―HDLコレステロール」を新たな指標として提案し、LDLコレステロールによる予測能は、Non―HDLコレステロールより「優れるという文献はなかった」と報告した。
(2)については、肝機能検査は「肝機能障害の重症化の進展を早期にチェックするため」であれば、項目の整理を検討するとの論点が示されており、永井良三検討会座長(自治医科大学学長)が、ASTとALTの組み合わせによるメタボリックシンドロームの有病率について、「ASTのみ異常群の有病率が最も低く、正常群よりも低かった」と報告した。
(3)については、尿糖が糖尿病の診断基準に位置づけられておらず、「検診項目とすること」の見直しが論点。永井座長は研究報告のなかで、「いずれかの血液検査で糖尿病の判定がされるのであれば、この検査を実施する意義があるのか疑問である」と意見を述べた。
◆人材確保の再就職支援に返還免除付き貸付や登録事業
厚労省「介護人材確保地域戦略会議」を開催
――厚生労働省
厚生労働省は2月1日、「介護人材確保地域戦略会議」(第3回)を開催した。介護人材確保地域戦略会議は、都道府県における地域医療介護総合確保基金の活用等による取組の強化・充実に向けた情報共有・意見交換や民間セクターの知見やアイデアを活用した効果の高い事業の企画支援のため開催している。
この日、政府が新たに掲げた「介護離職ゼロ」実現に向けて必要となる介護人材確保への取り組みを推進するため、厚労省が施策を説明したほか、都道府県の好事例(鳥取県)が紹介された。
厚労省は「介護人材確保対策」関して、(1)離職した介護人材の呼び戻し対策、(2)若者の新規参入促進策、(3)中高年齢者の新規参入促進策――などの施策を説明。
(1)では、介護職員として再就職する際に必要となる再就職準備金の貸付制度を新たに創設。再就職後2年間介護職の実務に従事することで返還義務を免除する。さらに、離職した介護人材の福祉人材センターへの届出(登録)事業を新たに実施して、再就職を支援するほか、再就職準備金の前提とする。
(2)では、介護職を目指す学生増加と入学後の支援のため、貸付対象者の要件を緩和し、返還免除付き学費貸付(介護福祉士等修学資金貸付制度)のため財源を確保。2015年度補正予算で、介護福祉要請施設に通う学生に対する修学資金貸付事業の1.2万人分の拡充を実施する。
(3)では、福祉人材センターやシルバー人材センター、ボランティアセンターが連携して、将来的に介護分野での就労を視野に入れている方々の掘り起こしのため、(i)介護職に従事する際に必要となる基礎的な知識・技術を学ぶための入門的な研修や職場体験実施、(ii)中高年齢者を労働者として受け入れる際の介護事業者に求められる環境整備―などを実施するとしている。
このほか、鳥取県が介護の仕事に対するイメージアップのための取り組みに、中高生の夏休み介護の仕事体験や介護ロボット体験、高校進路指導担当教諭に対する介護の仕事の説明会などを行っていることを紹介している。
具体的には、中高生夏休み介護の仕事体験事業に力を入れている事例が発表された。これは夏休み中の中高生に介護の職場で仕事体験をしてもらい、介護の仕事や魅力について知ってもらう取り組みで、中高生受入登録50施設、参加申込者 約100名という好評を得た。
このほか地域住民が介護職員初任者研修を受講し、研修を修了した場合に受講料を補助。介護福祉士等の養成事業を図るため、修学資金の貸付を行っており、養成施設入学前の高校生に対し、貸付内定を実施した。地域住民の介護職員初任者研修修了者は45名だった。前回の検討会での事例発表は福島県相双地域における介護人材確保の紹介だった。
◆地域がん診療病院に10医療機関を推薦 厚労省検討会
千葉、長野、福岡県などのそれぞれの保健医療圏に
――厚生労働省
厚生労働省は1月29日、「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開 催し、「新規指定推薦・指定更新推薦の医療機関」を示した。
がん診療連携拠点病院などの指定要件は、「指針」と呼ばれる「がん診療連携拠点病院等の整備について」(2014年1月10日付健発0110第7号 厚労省健康局長通知)に定める要件を充足していることが原則。
この指針では、都道府県拠点病院は都道府県に1カ所、地域拠点病院は2次医療圏に1カ所などと定められ、また、「地域がん診療病院」については、「隣接する2次医療圏のがん診療連携拠点病院との連携を前提にグループとして指定することにより、がん診療連携拠点病院のない2次医療圏に1カ所整備する」などの考え方を示している。
各都道府県で、日本に多いがん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん等)について、住民がその日常の生活圏域の中で全人的な質の高いがん医療を受けることができる体制を確保する観点から、2001年に「地域がん診療拠点病院の整備に関する指針」が策定され、地域がん診療拠点病院の整備が進められてきた。
2001年度より進められている厚生労働省メディカルフロンティア戦略(効果的医療技術の確立推進臨床研究事業)の一環として、がん診療拠点病院の機能強化事業が2003年度から事業化された。2004年度から「第3次対がん10年か年総合戦略」が開始、2007年4月にがん対策基本法が施行され、がん医療の「均てん化」(*)実現に向けて、地域がん診療連携拠点病院の機能の充実強化や診療連携体制の確保などを推進してきた。
地域がん診療病院は、地域の開業医とのがん診療連携協力、がん患者に対する相談支援、緩和ケア及び情報提供など、地域がん診療病院の役割を担い地域住民に質の高い医療を提供することが目的。
*均霑化(きんてんか)=特にがん医療に関して、地域によるがん医療の水準の偏りが生じないようにする取り組みを「がん医療の水準の均てん化」と表現することが多い。
新たに地域がん診療病院に推薦された10医療機関
千葉県 さんむ医療センター(山武長生夷隅保健医療圏)。
長野県 国立病院機構・信州上田医療センター(上小保健医療圏)/長野県立木曽病院 (木曽保健医療圏)。
静岡県 国際医療福祉大学熱海病院(熱海伊東保健医療圏)/富士市立中央病院(富士保健医療圏)。
福岡県 福岡大学筑紫病院(筑紫保健医療圏)/朝倉医師会・朝倉医師会病院(朝倉保健医療圏)。
鹿児島県 義順顕彰会・田上病院(熊毛保健医療圏)。
沖縄県 北部地区医師会・北部地区医師会病院(北部保健医療圏)/沖縄県立八重山病院 (八重山保健医療圏)。
このほか、2015年度における「都道府県・2次医療件別の指定状況」や、要件を充足している「指定更新推薦の医療機関」などが示された。
●地域がん診療連携拠点病院の役割
全国どこでも質の高い医療が受けられるように、都道府県知事が推薦し厚生労働大臣が指定した、がん診療の中心となる施設。
診療
・地域の医療機関や大学病院と連携し、専門的な質の高い医療を提供する。
研修
・地域がん医療水準の向上のため、がん拠点病院内や地域の他の医療機関でがん診療に従事する医師等に対し、最新の医療技術に関する研修を行う。
情報の収集、提供
・相談支援機能を有する部門(相談支援センター)の設置、啓発普及活動
◆RFOが改組、最新のクラウド型病院情報システムで稼働
JCHO運用開始 第一期は東京蒲田医療センターなど6病院
――独立行政法人・地域医療機能推進機構
独立行政法人・地域医療機能推進機構(JCHO/尾身 茂理事長)は2月1日、JCHOクラウド・プロジェクトの第一段階として、6病院でクラウド型医療情報基幹システム(電子カルテ・医事会計)を稼働させたと発表した。次に10病院まで増やし、計画は3段階まであり規模拡大を予定している。
JCHO(ジェコー)は昨年7月から10病院を対象としたクラウド型医療情報基幹システムの構築を進めてきた。平成28年1月1日に東京蒲田医療センター(東京都大田区)、2月1日に横浜保土ケ谷中央病院(神奈川県横浜市)、湯河原病院(神奈川県湯河原町)、福井勝山総合病院(福井県勝山市)、福岡ゆたか中央病院(福岡県直方市)、佐賀中部病院(佐賀県佐賀市)の計6病院において予定通り本システムが稼働し運用を開始した。
今後の計画では、本年10月に後続4病院(相模野病院(神奈川県相模原市)、桜ヶ丘病院(静岡県静岡市)、宇和島病院(愛媛県宇和島市)、人吉医療センター(熊本県人吉市))において本システムの稼働を予定していると発表した。このように200-300病床規模の10病院を対象にクラウド型システムを構築するのは全国的にみても初めての試み。
JCHOクラウド・プロジェクトとは、院外のデータセンターに設置されたJCHO専用の共有仮想サーバ上にクラウド型医療情報基幹システム(電子カルテ・医事会計)を配備し、閉域データ通信ネットワークで院内の部門システム及び本システムを操作する端末設備を接続して複数病院の診療業務を遂行するもの。サーバを共有することによるシステムの構築及び運用のコスト削減に加え、今後は診療録・レセプトなどの病院業務データの均質化や活用などを視野に入れて取り組むとしている。
データセンターは東日本・西日本の二か所を採用。両データセンターに同じ構成でシステムを構築し、そのデータの相互バックアップを行う。これにより、地震・津波・洪水などの広域災害発生時における患者情報の消失を防止すると同時に、その場合であっても、診療業務の継続を確実に遂行することが可能となる。例えば、病院が火災等の被害を受けた場合であっても、患者情報の消失リスクは低減するという。
更に計画では、データセンターに構築したIT資源及び各種機器は24時間365日監視し、サーバのCPU・メモリーなどの稼働率、ディスク容量、ネットワーク通信量などがリアルタイムにモニターされる。これにより全体システムの可視化、確実なIT資源キャパシティー管理、不具合・故障等の事前予知などが可能になるとともに、従来は各病院個別の負担であったシステムの運用管理が集中・一元化されることとなり、業務効率の向上も見込める。
JCHOでは第一グループ10病院のクラウド化に引き続き、今後200–300病床規模の30数病院を段階的にクラウド化する計画。一方、健康診断システムなどの病院内部門システムのクラウド化も将来構想に掲げており、院内に多数林立する部門システムの集約化を進め、病院基幹システムである医事会計・電子カルテのクラウド化との相乗効果による全体システムの簡素化を目指すとともに、過去画像データの共有ストレージでの保管、直近以外の過去診療データの外部長期保存などのような病院共通の課題解決にも取り組んでいく
JCHOの沿革は、年金・健康保険福祉施設整理機構法の改正により、全国の社会保険病院等(社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院)の運営を行ってきた(独)年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)が改組(平成26年)され、新たにJCHOによる直接運営する病院グループとなったもの。
JCHOは、5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)、リハビリテーション、その他地域において必要とされる医療及び介護を提供する機能の確保を図ることを目的としている。施設数は、病院57、介護老人保健施設26、看護専門学校7。