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医療経営情報(2016年2月11日号)

2016/2/15

◆中医協、個別改定案を了承し10日に答申  附帯意見案18項目
「看護職員夜勤時間」、7対1は月16時間未満の者、除くなど

――厚生労働省
「地域包括ケアシステムの構築をバックアップする改定」と総評される2016年度診療報酬改定案が2月10日、これまで長時間審議していた中央社会保険医療協議会から厚労相に答申され16年度改定は事実上終了した。中でも患者に「かかりつけ」(かかりつけ医やかかりつけ薬剤師)の表現が随所にみられるほど、患者への服薬指導などという「対人業務」を評価するのが基本的考え方の根底となる。

厚生労働省は2月3日、中央社会保険医療協議会(中医協)/総会を開催し、2016年度診療報酬改定の答申書の附帯意見案を示し、了承された。中医協は今回の議論をもって診療報酬改定に伴うすべての議論を終了した。改定案は次回(2月10日)、中医協総会で厚労相に答申される見通し。
答申書の「答申附帯意見案」は調査・検証、など引き続き検討などをする目的の内容で記載項目は18項目に及んでいる。

これまでの経緯で最も議論が紛糾したのは、支払側は、2016年度改定の重要課題となる、医療機能の分化強化、地域包括ケアシステムの推進の観点から、7対1入院基本料の算定要件について「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度に改称)「平均在院日数」「在宅復帰率」の3点(「3点セット」)全ての見直しと入院・外来医療の包括化、分割調剤の実施などを要求した点。

診療側は初・再診料の引き上げや、在宅医療におけるかかりつけ医の評価、「同一建物の居住者、同一日の訪問診療」の減算の緩和などを求めた。7対1入院基本料については、「重症度、医療・看護必要度」の見直しは求めたものの、同基本料算定の削減の手段としないよう求めた点。

この日の総会では、前回まで議論や意見が「積み残し」となっていた項目も含め、今回提示された主な修正点は次の通り。

【7対1入院基本料】に関して、「重症度、医療・看護必要度」の見直しで、該当患者割合(現行15%)の水準の議論で前回、委員からの激変緩和特例措置の病棟群単位による届出でも、まだ配慮されない医療機関もあるとの意見を踏まえ、200床未満の医療機関の経過措置(例外)を追記し、次のように示した。

▽2016年3月31日に当該入院料の届出を行っている病床数200床未満の保険医療機関が有する病棟であって、当該入院料の病棟群単位の届出を行わないものは、7対1入院基本料の施設基準について、一定の期日までに限り、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者の割合について、○割○分を○割○分と読み替えたものを満たす必要がある。

これに対し支払い側委員からの意見として「経過措置がさらに追加され、骨抜きになっていることが懸念される」とルールの厳格化の強い要望があり、厚労省は「該当患者割合の水準は診療側・支払側の意見を踏まえたい」として答申で示すこととしている。
次に【総合入院体制加算】の実績要件等の見直しに関して、【総合入院体制加算2】で、「救命救急入院料の注2の加算の算定件数が年間一定件数以上であること」も追加した。厚労省は、この要件まで拾わないと実績が拾えないためと説明している。

「短冊」の「看護職員の月平均夜勤時間数」、「かかりつけ薬剤師・薬局の評価」、「ニコチン依存症管理料の対象患者の拡大」などの修正も了承された。
「看護職員の月平均夜勤時間数」に関して、委員からこれまで労働条件の悪化などの懸念の声があげられていた点に関し、厚労省は今回、空欄となっていた施設基準の時間を、次のように明示した。

▽7対1入院基本料・10対1入院基本料の病棟の実人員数および延べ夜勤時間数には、月当たりの夜勤時間数が16時間未満の者は含まない
▽7対1入院基本料・10対1入院基本料以外の病棟の実人員数およびび延べ夜勤時間数には、月当たりの夜勤時間数が8時間未満の者は含まない

厚労省は「看護職員の72時間の関係については、多様な働き方の形態を取り入れることが趣旨で、労働環境が厳しくなることがあってはならないと思っており検証も行う」と説明。これまで懸念を示してきた、支払側委員らは「明言をもらったので、不安定な事象が起きたら即見直すという、十分な検証をすることで了承する」と述べている。

「かかりつけ薬剤師・薬局の評価」に関して、【基準調剤加算】の施設基準で、「敷地内は禁煙であること」、「同一施設内での酒類、たばこの販売禁止」を新たに要件とすることを記載していたが、厚労省は薬局に様々な業態・形態があるためそこまでは義務付けられないとして、削除している。
【ニコチン依存症管理料】の対象患者の拡大に関して、前回、若年者を対象にする議論がされたことを踏まえ、空欄となっていた「1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じて得た数が200以上」の算定要件を「35歳以上」と記載して、35歳未満の要件とはしないとした。業務停止中に出荷する医薬品の薬価を下げる仕組みを検討することは、付帯意見に入らなかった。
2月10日に予定されている厚労省が示す答申書の案には、具体的な報酬額などが初めて盛り込まれる。

◆診療報酬改定の「答申附帯意見案」を了承 中医協
調査・検証 引き続き検討項目は18項目記載

2月3日の中央社会保険医療協議会総会では、厚労省から提出された2016年度診療報酬改定の「答申附帯意見案」を議論し、総会は、これを了承した。

附帯意見は調査・検証、引き続き検討などをする18項目を記載。記載項目は主に次の通り。
●急性期、回復期、慢性期等の入院医療の機能分化・連携の推進等について、次に掲げる事項等の影響を検討すること
・一般病棟入院基本料・特定集中治療室管理料における「重症度、医療・看護必要度」等の施設基準の見直しの影響(一般病棟入院基本料の施設基準の見直しが平均在院日数に与える影響)
・地域包括ケア病棟入院料の包括範囲の見直しの影響
・療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響
・夜間の看護要員配置における要件等の見直しの影響
●かかりつけ医・かかりつけ歯科医に関する評価等の影響を調査・検証し、外来医療・   歯科医療の適切な評価のあり方を検討すること
●紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入の影響を調査・検証し、外来医療の機能 分化・連携の推進について引き続き検討すること。
●質が高く効率的な在宅医療の推進に関し、重症度や居住形態に応じた評価の影響を調査・検証し、在宅専門医療機関を含めた医療機関の特性に応じた評価のあり方、患者の特性に応じた訪問看護のあり方等を検討すること
●精神医療について、デイケア・訪問看護や福祉サービス等の利用による地域移行・地域生活支援の推進、入院患者の状態に応じた評価の在り方、適切な向精神薬の使用の 推進の在り方について引き続き検討すること
●湿布薬の処方に係る新たなルールの導入の影響も含め、残薬、重複・多剤投薬の実態 を調査・検証し、かかりつけ医とかかりつけ薬剤師・薬局が連携して薬剤の適正使用を推進する方策について引き続き検討すること。あわせて、過去の取組の状況も踏まえつつ、医薬品の適正な給付の在り方について引き続き検討すること。
●患者本位の医薬分業の実現のための取組の観点から、かかりつけ薬剤師・薬局の評価 や、いわゆる門前薬局の評価の見直し等、薬局に係る対物業務から対人業務への転換を促すための措置の影響を調査・検証し、調剤報酬の在り方について引き続き検討すること。
●後発医薬品に係る数量シェア 80%目標を達成するため、医療機関や薬局における使用状況を調査・検証し、薬価の在り方や診療報酬における更なる使用促進について検討すること。
●回復期リハビリテーション病棟でのアウトカム評価導入、維持期リハビリテーションの介護保険への移行状況、廃用症候群リハビリテーションの実施状況等を調 査・検証し、それらのあり方を検討
●医薬品・医療機器の評価のあり方に費用対効果の観点を試行的に導入することを踏まえ、本格的な導入について検討。あわせて、著しく高額な医療機器を用いる医療技術の評価に際して費用対効果の観点を導入する場合の考え方について検討
●ICTを活用した医療情報の共有の評価のあり方を検討

◆中医協、2016年度診療報酬改定案を厚労相に答申
大病院の外来定額負担「5000円以上」/かかりつけ新設

――厚生労働省
2月10日、厚生労働省で開催された中医協=中央社会保険医療協議会(総会)は、診療報酬の新年度からの改定案(個別の診療行為ごとの価格を定めた、短冊と呼ばれる新・価格表)を了承し、塩崎厚生労働大臣宛てに答申した。
新年度の改定に向けたキーワードは<かかりつけ医><かかりつけ薬局>などの患者に寄り添った“かかりつけ”。
患者の健康を日常的に把握するかかりつけの機能を推進するため、かかりつけ機能を果たす医療機関には診療報酬を加算する一方、かかりつけ機能を十分に果たしていない薬局への診療報酬は減額するなどとする、個別の診療行為価格(改定案)の結果が出た。

答申された2016年度改定の最重要ポイントは、地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化と連携だ。入院医療の目玉は7対1入院基本料の算定要件の厳格化で、病棟の種別ごとに適切な患者像を評価し、適切でない場合は評価を見直す。患者像を表す「重症度、医療・看護必要度(以降、重症度)」に新設の「C項目」などを追加し、対象患者を拡大した上で、算定病棟における該当患者の基準を15%から25%に引き上げる。

公的保険から医療機関に支払われる新年度改定は、診療報酬本体は0.49%、医科では0.56%のプラス改定だが、薬の価格などの「薬価」部分は1.33%引き下げ、全体では0.84%引き下げることが決まっている。全体では2回連続のマイナス改定。厳しい財源の中で行われた改定では、初診料と再診料、一般病床の入院基本料などの基本的な点数は総じて据え置かれた。全体的な底上げは行わず、重点施策分野を手厚く評価したのが特徴とされる。

政府、厚生労働省がこれまで以上に重点項目に上げるのが、できるだけ住み慣れた地域や自宅で医療や介護を受けられる「地域包括ケアシステム」の推進。そのためには、患者の健康を日常的に把握する「かかりつけ医」や「かかりつけ薬局」への新たな診療報酬を設け、手厚く加算するというもの。
例えば小児科の外来で「かかりつけ医」として継続的に患者の診療を行う場合、最大で7120円の「小児かかりつけ診療料」を加算するほか、患者の服薬状況を一元的・継続的に把握し指導を行った際には700円の「かかりつけ薬剤師指導料」を加算するなどと「厚遇」する。

これまで注目されていた、主な改定など新設項目は次の通り。
【7対1入院基本料】に関しては、「重症度、医療・看護必要度」で手術等の医学的状況を評価するC項目(これまでM項目の名称を変更)を新設。開頭や開胸(各7日間)、開腹の各手術(5日間)、骨の観血的手術(5日間)、胸腔鏡・腹腔鏡手術(3日間)、全身麻酔・脊椎麻酔の手術(2日間)、救命等に係る内科的治療(2日間)を評価する。
基準は現行の「A項目2点以上、かつ、B項目3点以上」に加え「A項目3点以上」、「C項目1点以上」の場合も評価する。

「重症度、医療・看護必要度」の見直しに伴う、施設基準の「該当患者割合」要件を現行の15%(1割5分)以上から「25%(2割5分)以上」に引き上げている。さらに、在宅復帰を推進するため、自宅等に退院した患者割合基準の在宅復帰率を現行7割5分から「8割」に引き上げる。このほか、在宅復帰の算定に用いる基準に「有床診療所入院基本料」と「有床診療所療養病床入院基本料」(各在宅復帰機能強化加算算定するものに限定)の算定病棟・病室への退院」が追加されている。

7対1入院基本料の激変緩和措置などに関して、施設基準などが示されている。
「病棟群単位による届出」に関しては、一般病棟入院基本料の届出で、【7対1入院基本料】から【10対1入院基本料】への転換の際の激変緩和のため、2016年4月1日から「2年間」に限り、7対1病棟と10対1病棟を病棟群単位でもつことが可能となる。今回、具体的な期間等が記載された。

「地域包括ケアシステムの推進」などについても新点数や施設基準などが示されている。具体的には、(1)認知症に対する主治医機能の評価、(2)地域包括診療料等の施設基準の緩和、(3)小児かかりつけ医の評価――などを実施する。

◆改訂コアカリをベースに薬剤師国家試験「新・基本方針」
厚労省 試験開始年や新たな合格基準を明確に

――厚生労働省
厚生労働省は2月4日、薬剤師国家試験制度に関する「新たな基本方針」(薬剤師の国家試験のあり方に関する基本方針)を取りまとめ発表した。医道審議会・薬剤師分科会の「薬剤師国家試験制度改善検討部会」で、2015年2月から7回にわたって検討してきたもので、1月15日には基本方針案が提示されていた。部会では、主に禁忌肢や合格基準等について論議が行われた。なお、略称「コアカリ」とは薬学教育モデル「コアカリキュラム」のことを表す。

薬剤師国家試験制度の変遷は、2006年度から新たな薬学教育課程として6年制課程が導入されたことを受けて、2010年1月に医道審議会薬剤師分科会において、薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針(「新薬剤師国家試験について」―「基本方針」)を取りまとめた。 平成 2012年3月以降、基本方針に基づき、6年制課程に対応した薬剤師国家試験が過去4回実施されてきた。
2013年 12 月に薬学教育モデル・コアカリキュラムが改訂され(「改訂モデル・コアカリキュラム」―改定コアカリ)、2015年度入学生から適用されているため、薬剤師国家試験についても、改訂モデル・コアカリキュラムに対応したものとすることが求められた。
このため薬剤師国家試験制度改善検討部会で、これまでの6年制課程に対応した薬剤師国家試験の実施状況や、改訂モデル・コアカリキュラムの内容を踏まえながら、基本方針に挙げられた項目に沿って必要な改善事項について検討していくことになった。
「新たな基本方針」は、第106回国家試験(2020年度実施)から適用される。ただし、「禁忌肢」を含む試験問題は、第104回国家試験(2018年度実施)より導入されるほか、「合格基準」については、第101回国家試験(2015年度実施)より適用するとされている。

禁忌肢は医学や食品業界において使われている用語だが、薬剤師として倫理上選択すべきではない選択肢(答え)のことで、医師国家試験などでは既に導入されているもの。
これは受験者の合否を識別するため、間違って一定数以上、選択した場合に自動的に不合格となる選抜方法の一種だが、「禁忌肢」の導入などには検討部会でも是非を正す意見があるが、新基本方針でも盛り込んだ。
試験問題作成に当たっては誤った知識を持つ受験者を識別する観点から、▽公衆衛生に甚大な被害を及ぼす▽倫理的に誤っている▽患者に対して重大な障害を与える危険性がある▽法律に抵触する――といった内容を想定している。
ただ、解答時の記入ミスなど、偶発的な要因で受験者が不合格になるリスクを最小限に抑えるため、禁忌肢を含む問題の質や出題数も検討する。

「新たな基本方針」による国家試験の見直しは、2013年12月に実施された「薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂」などがベースだ。具体的な事項として、「出題基準」や「試験出題形式および解答形式」があげられているほか、「新たな合格基準」が次のように明確にされた。

▼問題の難易を補正して得た総得点について、平均値と標準偏差を用いた相対基準によって設定した得点以上であること。
▼必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点が、それぞれ配点の30%以上であること。

「新たな基本方針」では、国家試験の「科目、問題区分、出題数」も明示されている。出題数は総計345問。そのうち、「必須問題」は90問、「一般問題」が255問。また、一般問題のうち、「薬学理論問題」が105問、「薬学実践問題」が150問とされている。
なお、薬学実践問題の150問は、「実務」20問および、それぞれの科目(物理・化学・生物/衛生/薬理/薬剤/病態・薬物治療/法規・制度・倫理)と実務とを関連させた「複合問題」130問から構成される。
制度改善検討部会では今後も引き続き「改訂モデル・コアカリキュラム」に対応した薬剤師国家試験のあり方について見直すべき事項を検討し、最終とり まとめを行う予定としている。

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