ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年3月11日号)
◆「総合確保方針」で連携担う人材の在り方など論点提示
厚労省 医療介護総合確保促進会議を開催、意見は多岐
――厚生労働省
厚生労働省は3月9日、医療介護総合確保促進会議(座長=田中滋・慶応大名誉教授)を開催、喫緊のテーマとなっている「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(総合確保方針)の見直しに向けた論点のたたき台を示した。
これに対して促進会議の構成員からは医療と介護の連携の核となる人材を担う職種、教育体制などについて多くの意見が挙がった。
出席した構成員の意見に共通する要素を分析すると、医療介護連携を推進していくには(1)実現に向け、医療計画と介護保険事業(支援)計画の同時改定が行われる平成30年度を見据えて、(2)総合確保方針を改定するには、どのようなことを論点に議論することが必要か。(3)例えば、総合確保方針改定に向けて検討すべき論点と総合確保方針改定にあたっての論点の整理が急がれる、というもの。
総合確保方針とは、いわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年を見据え、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最期を迎えることができる環境を整備していくことを目標とする。
そのためには利用者(患者や家族)の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し、自立と尊厳を支えるケアを実現していくことが喫緊の課題となっている。
そこで厚労省からは行政の役割、サービス提供者、利用者毎の役割等が示された。
【国の役割】
①医療計画基本方針及び介護保険事業基本指針の策定
②基金を通じた都道府県、市町村への財政支援
③診療報酬、介護報酬を通じた医療・介護の連携推進
④情報分析を行うための基盤整備、先進事例の収集・分析・周知 等
【都道府県の役割】
①地域医療構想に基づく医療機能の分化
②連携の推進
③地域包括ケアシステムの構築に向けた人材確保、市町村の支援、等
【市町村の役割】
①地域包括ケアシステムの推進 / 地域支援事業の実施、等
②地方自治体の人材育成が重要。国は研修を充実すること等により継続的に支援
【サービス提供者等の役割】
①サービス提供者等の間で、利用者に関する情報や地域における様々な社会資源に関する情報を共有していく仕組みの構築、活用
②人材の確保・定着のための取組
【サービス利用者の役割】
①効率的かつ効果的なサービス利用
②高齢者が、地域の構成員として積極的に社会参加していくことも重要。
これに対して会議における構成員からの意見が多く出た。主なものをここに取りまとめた。
退院時に備えた切れ目のない医療・介護提供に関する視点
在宅生活者が入院した際、入院時には多職種連携が出来ているが、自宅等に戻った際には医療・介護サービスを提供する主体や考え方等が違う者が集まってその1人の者を支えなければならないため、退院時に適切に次のステージへ移行させることが重要。
多職種協働・医療・介護の連携の核となる人材に関する視点
退院した者が在宅で生活する際には、在宅での生活を支えるために多職種の協働が必要であり、顔を会わせて話す場所が非常に重要。そのため、多職種協働を支え、サービスを統合するためのコーディネートを担う者を明確化することが重要。○切れ目のない医療・介護の連携のためには、医療と介護の連携の核となるコーディネーターが必要であり、その役割を誰が担うのかを考えることが必要、などと多岐にわたった。
◆市区町村を対象に「保健医療2035推進シティ」制度を創設
厚労省内部会議 2035年を視野に入れた医療や介護の改革
――厚生労働省
厚生労働省は2025年より先を見据えた厚労省内部の検討会議を始めた。3月6日、厚労省は2035年を視野に入れた医療や介護の改革を具体的に話し合うため、局長以上の幹部でつくる内部会議を新たに立ち上げたことを明らかにした。9月をメドに工程表をまとめ、その後の取り組みに反映させていく考えだ。
この内部会議は、20年後の医療・介護を議論してきた若手の専門家を中心とした検討会が、今年6月に提言をまとめたことを受けて設置された。提言は、サービスの質の向上と費用の抑制を同時に達成するためのものを中心に、およそ120項目の施策を展開するよう要請。介護に関しては、地域包括ケアでより総合的な役割を担う資格を創設することや、要介護者の状態の改善を報酬で評価すること、ケアプランの作成で自己負担を徴収することなどが盛り込まれている。
塩崎厚労相は6日の会合で、「検討会が提言した施策はこれからすべて俎上に載せる。ひとつずつ真摯に吟味して欲しい」と指示した。「検討を深めずに先送りすることのないように、できる限り実行できるように取り組んで欲しい」と呼びかけた。会合では、かかりつけ医の普及や介護・重症化予防の推進などについて集中的に議論するため、専門の検討チームをつくることも確認した。
厚労省は3月7日付で、「保健医療2035推進シティ」の制度創設と、その実施要綱を定めたことを伝える通知を、都道府県知事・保健所設置市長・特別区長にあてて発出した。
実施要綱によると、この推進シティの対象となるのは「市区町村」。2015年6月に公表された「保健医療2035提言書」に共感することなど、実施要綱が定める要件に沿って厚労省に届け出る。「保健医療2035提言書」は、20年先を見すえて、「人々が世界最高水準の健康、医療を享受できる持続可能な保健医療システムの構築」などを目標として策定されたもの。
要件の詳細は、次の通り。
「保健医療2035提言書」の方向性にもとづく具体的な取り組み(市町村における事業構想などを想定。一例として、たばこ対策や地域の中小企業の健康経営を含むヘルスリテラシー向上などがある)を推進していると認められること。
まちづくり施策と保健医療施策との横断的な取り組みが具体的に進められていると認められること(保健福祉担当部局のみならず、関係する他部局との連携体制の構築や予算措置などが講じられていること)。
なお、推進シティであることを理由として、国などからの「財政措置はない」が、市区町村は「シンボルマーク」を使用できる。推進シティを標榜できる期間は、3年間とされている。厚労省への届け出にあたって市区町村には、これらの取り組みを示す資料の添付が求められている。
◆最先端の医療技術を希望する患者へ、4月から患者申出療養
取り扱い留意事項などを全国へ周知 厚労省
――厚生労働省
厚生労働省は3月4日、「患者申出療養の実施上の留意事項及び申出等の取扱い」に関する通知を発出・公表した。患者申出療養は患者から同意書をとって先端医療をするもので4月1日から始まる。
困難な病気と闘う患者からの申出を受け付けて国内未承認医薬品等の使用や国内承認済みの医薬品等の適応外使用などを迅速に保険外併用療養として使用できる仕組みで、患者の治療の選択肢を拡大する。先端医療は現在、保険外併用療養の評価療養で実施されている
健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律に規定する患者申出療養は、安倍首相が創設を決めた新たな保険外併用療養制度。患者が最先端の医療技術などを希望した場合に、安全性・有効性等を確認したうえで、保険外の診療と保険診療との併用を認めるもので、患者の身近な医療機関で迅速に受けられるようにする制度。
これまで日本医師会、日本病院会等の団体は、「国民の幸福の原点は健康であり、病に苦しむ人がいれば、何としても助けたいというのが医療人の願いである。私たちの願いは必要とする医療が過不足なく受けられる社会づくりに尽きる」と強調して「制度容認」に前進した経緯がある
ただし「日医としても、困難な病気と闘う患者の命を救うために、新しい医療を迅速に保険診療として使えるようにすべきという方向性に異論はないが、医療に関する規制は、国民の生命と健康を守るためにあることを忘れてはならない」と行き過ぎた規制緩和の流れに釘を刺した。というのも混合医療との境界が曖昧になった「なし崩し」に神経質になっているからだ
厚労省は、患者申出療養の基本的な考え方に関し、日本では国民皆保険の理念の下、必要・適切な医療は保険収載しているが、保険収載されていないものの、将来的な保険収載を目指す先進的な医療等については、保険外併用療養費制度として、安全性・有効性等を確認するなどして、自己負担10割ではなく一定のルールにより保険診療との併用を認めていると説明した。
その上で国は、患者申出療養の安全性・有効性等を確認し、さらに保険収載に向けた実施計画の作成や実施状況などの報告を臨床研究中核病院に求めることも確認する。ただし保険外併用療養費制度の中に位置づけるものであるため、いわゆる「混合診療」を無制限に解禁するものではなく、国民皆保険の堅持を前提とするものであるとしている。
また同意書を求める際、リスクを患者に一方的に押し付けることのないよう、患者にていねいな説明が行われるよう注視していく必要性も強調している。
患者申出療養の申出対象となる医療技術は(1)未承認等の医薬品・医療機器・再生医療等製品の使用や医薬品等の適応外使用を伴わない医療技術、(2)未承認等の医薬品等の使用・医薬品等の適応外使用を伴う医療技術――としている。留意事項として、実施は(a)臨床研究中核病院、(b)実施にあたり必要な緊急時の対応が可能な体制、医療安全管理委員会の設置など医療安全対策に必要な体制、倫理審査委員会による審査体制、医療機器の保守管理体制のすべてを持つ保険医療機関――のいずれかで行うことが必要としている。
◆第6回「ビジネスパーソン1000人調査」【仕事と介護編】発表
日本能率協会グループ 広報委員会 両立に悩む姿浮き彫り
――日本能率協会グループ(東京都)
日本能率協会グループ(東京都)は3月7日、全国のビジネスパーソン1000人に対して、仕事と介護についての意識調査を行った結果を発表した。この調査は働く人びとに焦点を当て、その時々の旬の話題をデータで紹介するシリーズ。同グループは企業の人材育成やものづくり革新、調査・システム開発などの経営支援サービスを提供するビジネスマネジメント・コンサルタントの老舗。
調査結果で最も目についた点は、「(介護で)就業時間に制約が出ること」が最大の懸念という結果だった。同社はこの調査結果の傾向について、「仕事と介護の両立には、職場の理解や柔軟な働き方を支援する制度の整備が求められる」とコメントした。
《主な調査結果は次の通り》
1介護離職に対しては、「したくない/しない」が約半数。「分からない」が3割強。介護をしながらの仕事には「就業時間の制約」が最大の懸念。仕事と介護の両立の鍵は「時間」の確保。
2「経済面」「時間」「体力」が介護への3大不安に。介護経験者は「自由時間の制約」、未経験者は「経済的に苦しくなること」と、介護経験の有無で意識差も見られる
3介護経験のない人のうち、約6割は「家族の介護が必要になったとき、どうするか分からない」と回答。介護施設・サービスを主な担い手と想定する人は1割程度に留まる
4仕事と介護の両立のため職場に求めることは、「職場の理解」と「柔軟な勤務形態」。介護経験者が望む両立支援制度は「フレックスタイム制度」「介護休暇制度」が上位に
調査結果に対して同社のコメントは「介護制度の勉強をしよう」と勧めている。コメントの要旨は次の通り。
「政府は介護離職ゼロを掲げ対策に乗り出していますが、現実には年間約 10 万人が介護離職をしています。介護のために職場を去ることは、本人のキャリアにとってはもちろん経営にとっても大きな損失と言えます。 仕事と介護を両立するポイントを探るべく、今回は、ビジネスパーソン一人ひとりの立場から、仕事と介護についての意識を聞きました」。
「結果から、介護に直面しないと実感がわきにくいこと、「経済面」「時間」「体力」に不安を感じること、仕事 との両立では「時間」の確保が課題になっていること、職場には両立支援制度とともに、介護する社員への理 解を望んでいることが分かりました。また、介護経験者が望む両立支援制度は「フレックスタイム」「介護休暇」 が上位にあげられ、働く時間に柔軟な対応を望んでいることが伺えます。
「少子高齢化が進む中、仕事と介護の両立が当たり前と言える職場や社会を実現するには、支援制度の整備とともに、介護についての理解を高めることが重要です。職場においては、介護についての知識を学ぶ機会を提供したり、仕事と介護を両立している社員の話を紹介するといった取組みが有効かもしれません。また、 ビジネスパーソン一人ひとりの立場では、いざというときに困らないように、日ごろから家族と介護について話し合う、職場の介護支援制度を知っておくなど、事前に備えておくことが重要となります」。
・調査期間: 2015年12月28日~2016年1月6日 10日間
・調査対象:(株)日本能率協会総合研究所「JMARリサーチモニター」のうち全国の20歳~69歳までの正規・非正規雇用の就業者(企業や団体で働く正社員、役員、経営者、契約・嘱託社員、派遣社員。ただしパート・アルバイト、医師・弁護士などの専門職業、自由業を除く)
・調査方法:インターネット調査
・回答数 :1,000人(内訳:男性556人、女性444人)