ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2016年3月17日号)
◆実質金利の低下活用し公共投資促進を―経済財政諮問会議
アベノミクスの成果を活用し介護職員の待遇改善を
――経済財政諮問会議
内閣府は3月11日、「経済財政諮問会議」を開催し、医療・介護分野を含む「『成長と分配の好循環』の拡大に向けた分配面の強化」などを議論した。会議の構成員である伊藤元重・東京大学教授や高橋進・日本総研理事長ら民間議員4人が成長と分配の好循環に向けた政策を提案、その中で実質金利の低下による公的投資の費用対効果改善を踏まえて、公共投資を促進すべきと力説した。
伊藤元重議員らは、アベノミクスの成果の活用などを図りつつ、1億総活躍社会の構築に向け、希望に応じた就労や結婚・出産・子育てを可能にする環境整備・働き方改革、起業・投資・イノベーションの促進などのサプライサイド(供給・生産面)を強化すべきと提案。その結果、所得増加を通して、成長と分配の好循環を目指すべきと強調した。
具体的な政策提案として、少子化対策について2020年までの早期に、家族手当など家族関係支出の倍増を実現すべきとしたほか、現在小中学校合わせて総額5120億円の給食費の無料化を検討することなどをあげた。特に観光インフラ整備や公的施設のバリアフリー化、上下水道の維持更新などを重点的に促進すべきとした。子育て支援では、こども医療費の負担軽減の検討もあげた。
医療・介護関連では、賃金の引き上げに向けて、健康長寿分野での新社会システム構築(予防強化、データヘルスの優良事例の全国展開など)により、社会保険料負担の抑制を進める必要があると指摘。また、子ども・子育て世帯支援の抜本強化のため、小児・周産期医療の充実、こども医療費の負担軽減に関する国民健康保険の国庫負担金等の減額措置などの検討をすべきと述べた。
さらに、介護職員の賃金水準は全産業平均と比べて数万円程度低いと述べ、恒常的な人手不足は、好循環や1億総活躍社会のボトルネック(障害・制約)となっていると指摘。このため、「経済・財政再生計画」の枠組みの下、歳出効率化や成長の底上げによって、アベノミクスの成果を活用した介護職員の待遇のさらなる改善などに取り組むべきと強調した。これに対し、加藤1億総活躍担当相は「介護の受け皿の整備量を38万人分から50万人以上に上積みしており、これに伴う25万人の介護人材の確保などについて、1億総活躍プランで具体的な方向性を示したい」と述べている。
この日の会議では足元の経済情勢についても議論された。日銀の黒田東彦総裁はマイナス金利について「住宅投資や設備投資には大きなプラスだが、実体経済への波及には若干時間かかる」との考えを示した。
◆日本医師会が診療報酬改定Q&Aを公表
厚労省に確認し疑義解釈(その1)をまとめる
――日本医師会
日本医師会は3月5日、2016年度「診療報酬改定『Q&A』(その1)」を公表した。診療報酬改定の内容は3月4日の告示・通知などで明らかにされたが、医療施設などから疑義解釈をめぐって質疑が出ることが多い。そこで厚生労働省は、診療報酬や介護制度など制度改正年にはタイムリーにQ&A(一問一答)形式で診療報酬改定の解釈を発表することが定例となっている。4日にはすでに地方厚生局(厚労省の出先機関)の担当者を集めて2回に分けて改定説明会を開いたばかり。
一方で日本医師会(日医)や病院団体なども厚労省発表の通知をベースにして医療現場からの視点でQ&A(内容はすべて厚労省に確認済み)を発表する。厚労省に確認を取ることで医療現場ならではの新たな疑義解消に役立つ効果がある。
今回は早い段階で日医が1回目のQ&Aを発表した。Q&Aは、今回の改定の中から、退院支援加算、薬剤総合評価調整管理料、診療等に要する文書の電子化、外来後発医薬品使用体制加算――などの項目に注目し質問・回答をしている。
【認知症地域包括診療加算・認知症地域包括診療料】について
Q.地域包括診療加算・地域包括診療料を届出している医療機関は、認知症地域包括診療加算・認知症地域包括診療料の届出は不要か?
A.そのとおり。
【地域包括診療加算・地域包括診療料】について
Q.地域包括診療加算・地域包括診療料の研修要件について、平成27年3月31日までに届出を行った場合には、次回の届出は平成29年3月31日(2年間の有効期間)までに行えばよいか?――届け出スケジュールの確認
A.平成26年度中に研修実績を添えて届け出た場合は、平成27年4月1日から起算して2年ごとに4月1日までに研修実績を提出する必要がある。当初の届出時には研修実績を提出せず、追って平成26年度中に研修実績を提出した場合についても同様である。
なお、平成27年4月以降に初回の届出を行った場合は、当該届出に係る診療報酬を算定する月の1日から起算して2年ごとに研修実績を提出する必要がある。
【小児かかりつけ診療料】について(小児の主治医機能を評価―新設)
Q.内科・小児科や外科・小児科を標榜し、医師1人の場合でも算定できるか?
A.算定できる。ただし、小児科外来診療料を算定している保険医療機関であって、当該医師は、専ら小児科又は小児外科を担当する常勤の医師であること。
Q.小児科を含めて複数の診療科を標榜する医療機関で、小児科以外の診療科のみを受診した場合も小児かかりつけ診療料で算定するのか?
A.そのとおり。
Q.小児かかりつけ診療料は小児科外来診療料と同様に、届出した医療機関では対象患者すべてに算定しなければならないのか?
A.小児科外来診療料とは異なり、医療機関が説明を行い、同意を得た患者のみ算定となる。
Q.再診が電話等により行われた場合、小児かかりつけ診療料は算定できないと記載されているが、その場合、何を算定するのか?
A.再診料や乳幼児加算の点数を算定する。
Q.専門の診療が必要となり、小児かかりつけ診療料の算定患者を診療情報提供書に添えて他の医療機関に紹介した場合には、診療情報提供料の算定は可能か?
A.小児科外来診療料とは異なり、別途算定できる。
Q.指導・相談等を行う旨を、患者に書面を交付して説明し・同意を得る要件となっているが、説明書や同意書の様式は示されているか?
A.厚生労働省から例が示されているので参考にされたい。
Q.発達段階に応じた助言・指導や保護者からの健康相談(ともに診療を伴わない)に応じた場合、小児かかりつけ診療料の初診時、再診時のいずれかの算定は可能か?
A.助言・指導や健康相談のみが行われる場合については算定できない。
【退院支援加算1】について
従来の退院調整加算が退院支援加算に改変されているが、【退院支援加算1】の算定で、「各病棟に専任で配置された退院支援職員」の要件に関し、「Q.退院支援部門の看護師や社会福祉士が兼務することは可能か?」との質問に対して、「A.退院支援部門に専従の職員は兼務できないが、専任の職員は兼務することはできる」と回答している。
【薬剤総合評価調整管理料】について
「6種類以上内服薬が処方されていた患者の内服薬が2種類以上減少して算定した後、病状の急変などで増薬している」という前提で、「Q.内服薬が2種類以上減少した場合、算定可能か?」と質問している。これに対し、「A.同一医療機関が1年以内に再び算定する際は、前回算定した減少後の種類数から、さらに2種類以上減少しているときに限られている」と説明している。また、「1カ月目で2種類、さらに2カ月目で2種類減らした場合に各月で管理料を算定可能」と述べている。
【診療等に要する文書の電子化】について
今回改定で、署名または記名・押印を要する文書に電子的な署名を含むとされたが、日医認証局の医師資格証が要件を満たすことを説明している。
【外来後発医薬品使用体制加算】について
Q.薬剤師がいない診療所でも外来後発医薬品使用体制加算算定は可能か?
A.薬剤部門に薬剤師の配置は必須ではなく、医師等が配置(兼務も可)されている場合も体制が整備されていれば算定できる。
Q.規格単位数量の割合を算出する際に除外する医薬品は何か?
A.経腸成分栄養剤、特殊ミルク製剤、生薬(薬効分類番号510)、漢方製剤(薬効分類番号520)、その他の生薬及び漢方処方に基づく医薬品(薬効分類番号590)であり、詳細は参考資料を別途参照されたい。
【残薬確認】について
Q.処方せんの様式が変更され、保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応を記載する欄が設けられたが、処方医が必要と判断した場合は、「保険医療機関へ疑義照会した上で調剤」と「保険医療機関へ情報提供」のどちらかを指示するのか?
A.そのとおり。薬局で残薬確認の必要があると処方医が判断した場合、処方せんを使って薬局に指示することができるようになった。
Q.処方せんの様式が見直され、残薬に係る医師のチェック欄が設けられたが、薬局が処方医の了解なく投与日数を変更することが可能となったものではないと理解してよいか。
A.そのとおり。
◆内閣府 健康・医療WG、改革ホットラインの4提案さらに精査
地方自治体の「地方版規制改革会議」設置、9自治体のみ
――内閣府
内閣府は3月9日、「規制改革会議」を開催し、国民や企業からの規制改革に関する提案を広く受け付ける「規制改革ホットライン」などを議題とした。
まず会議では自治体が独自に定める条例を見直す「地方版規制改革会議」の設置に関するアンケート調査の結果を公表した。「ぜひ設置を検討したい」と答えたのは徳島県や長野県、前橋市など9自治体のみで、「検討の予定はない」の266自治体を大きく下回った。
理容室やクリーニング店の床面積の基準などは自治体が独自に条例で定めている。規制の中身が異なるため地域間で不公平が生じるとの指摘がある。政府は、自治体に主体的に規制改革に取り組んでもらおうと、昨年末、全国の自治体に地方版会議の設置を文書で呼びかけていた。
9日の会議では、全国で中身にばらつきがある条例の一覧をまとめて公表することや、国として規制のガイドライン(指針)をつくり、自治体に条例改正を促す方針も確認した。企業活動の妨げになっている制度を改め、地方の活性化につなげる仕組みを、今後詰めていく。
内閣府は規制改革ホットラインの運用状況に関して、2015年12月16日から2016年2月15日までに、所管省庁から回答を得た提案事項253件について、規制改革会議ホットライン対策チームで内容を審査したと報告した。その結果31件についてさらに精査・検討が必要と示した。
このうち、健康・医療WG関連では、(1)厚生労働大臣と経済産業大臣の定めるGILSP 遺伝子組換え微生物の産業利用2種省令関係各省での共通適用、(2)社会福祉法人の財産への担保設定に係る所轄庁の承認手続きの簡素化、(3)医療用医薬品の情報を医療関係者以外に提供する際の製品名の表示・広告の許可、(4)放射線障害防止法における健康診断記録の保存年限設定への要望――の4件があがっている。
(1)は厚生労働大臣と経済産業大臣が定めているGILSP遺伝子組換え微生物を、財務省、農林水産省、環境省関連の産業使用(カルタヘナ法第2種使用)の案件に関しても適用できるよう要望している。
(2)は社会福祉法人の利便性向上のため、財産への担保設定に関する所轄庁の承認手続きを届出などで済むよう簡素化を求めている。
(3)は国民対象の医薬品情報提供に際し、一般名と製品名を用いて表示・広告ができるよう要望している。
(4)では、放射線障害防止法に記載のない健康診断記録などの保存年限を30年とするよう求めている。
<内閣府「規制改革ホットライン」提案受付の実施について>
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/hotline/syutyu/kokuchi.html
※規制改革ホットラインでは、集中受付期間に限らず、年間を通じて随時提案を受け付けている(外交、税制、政治関連の意見は除く)
◆尿腎機能や眼底検査の健診論点を提示 特定健診検討会
2018年の第3期実施計画に向け健診項目を見直しへ
――特定健診検討会
厚生労働省は3月11日、「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」(第4回)を開催した。2018年の第3期実施計画開始にあたって、項目や実施方法などの技術的事項について検討会で議論している。前回の2月は、「特定健診の検査項目」について議論され、(1)脂質、(2)肝機能、(3)代謝系――の各論点について、研究報告が行われた。
同検討会は特定健康診査・特定保健指導の健診項目の見直しを行うことを主眼としている。この日、同制度の目的である「虚血性心疾患や脳血管疾患の予防」の観点から、尿蛋白検査や血清クレアチニンを含む尿・腎機能検査、血液一般、心電図、眼底検査をどう位置付けるかなどが話し合われた。特に「尿腎機能・詳細な健診」の論点を議論した。特定健診等は5年ごとに実施計画を策定しており、2018年(第3期実施計画)開始へ向けて検討がされている。
しかし2008年から40~74歳の医療保険加入者を対象に導入された特定健診・保健指導の受診率が依然伸び悩んでいるという課題に直面している。最新の2014年度の厚労省の集計でも、国が掲げる目標である特定健診受診率70%、保健指導受診率45%を達成した都道府県はゼロだった(2016年1月8日時点)。
この日の検討会で、厚労省は(1)尿腎機能、(2)血液一般、(3)12誘導心電図、(4)眼底検査―の4健診項目に関する論点を提示した。
(1)の主な論点は次の通り。
○尿腎機能検査は虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、腎機能障害の重症化の進展を早期にチェックするためのものかどうか
○尿蛋白は濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価の可能性が指摘されていることから、健診項目としてどのように考えるか
○血清クレアチニンは年齢や体格の影響があるため、eGFR(推算糸球体濾過量)を用いることがあるが、対象集団によっては過大評価する可能性が指摘されており健診項目として活用するため、どのような点に留意すべきか
(2)では、血液一般検査は必ずしも特定健康診査の検査目的である最終エンドポイントとしての虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子(糖尿病、高血圧症、脂質異常症)の評価や、生活習慣病の重症化進展の早期の評価を目的とするものではないと考えられるため、健診項目として見直すことを提案している。
このほか、(3)は検査で評価可能な疾患(左室肥大、心房細動等)を踏まえて、実施する対象集団をより明確に規定することを提案。また、(4)は評価可能な疾患(糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症等)の特性を踏まえて、実施する対象集団をより明確に規定するとしている。