ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 介護経営情報(2016年4月1日号)
◆2035年を乗り越える介護サービスのビジョン提唱 経産省
団塊世代85歳 原資は「介護サービスの質と生産性向上」
――経済産業省
経済産業省は3月24日、「将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会」の報告書を公表した。研究会は2015年12月からこれまで、団塊世代が85歳を超える2035年に向けた対応策について検討を重ねてきた。
報告書の要旨は「将来にわたって安定した介護サービスを確保していくため、原資は『介護サービスの質と生産性の向上』にあると、経産省ならではの展望、分析を示した。そのためにはロボットなどの先端分野、IC&ICT(情報通信技術)、AI(人工頭脳)などの先端産業をフル稼働して、医療・介護分野に不可欠のヒト(人力)の数とスキルを投入し「負荷の軽減」がどのくらい計算できるかがポイントと指摘した。
報告書では、将来の介護需要に即した介護サービス提供の在り方について、地域特性や将来の高齢者の経済的・社会的環境も踏まえ、団塊の世代が85歳を越える2035年に向けた対応の方向策について提言をしている。
介護サービスの現状の延長線上で顕在化する課題に関して、介護需要の増大に伴う保険料・公費の負担増大や介護人材の需要ギャップの拡大などを挙げ、現状のまま進んだ場合、2035年には68万人の介護職員不足に陥ると指摘している。
そこで、課題克服のために報告書は、(1)将来の高齢者を取り巻く経済的・社会的環境とリスク、(2)地域特性に配慮した介護サービスのあり方、(3)介護サービスの提供の質・生産性向上策およびインパクト――の3つの視座を示し、対応策などを多角的に提案している。
報告書は、▽介護機器・IT等を活用した介護サービスの質・生産性の向上▽地域ごとの介護需要の密度や介護従事者数に即した介護サービス提供体制の構築▽高齢者を支える機能の構築を、官と民がそれぞれの役割を明確にしつつ、官民の協調が必要な領域については協調しながら、総合的に進めていくことが必要と考えられる、とまとめている。
このうち、(1)では、将来の高齢者を取り巻く「要介護度重度化リスク:費用増加」、「長寿命化リスク:生涯支出増加」、「独居リスク:介護の自己負担増」などへの対応策として、高齢者自らがリスクを認識し、金融商品などの活用を含む経済的な備えを構築していくことが不可欠と指摘している。また、高齢者の医療・介護サービスや住まい、資産管理の効率的な選択を支えるコーディネート機能の構築などが必要と述べている。
さらに、「2035年を乗り越えるためのビジョンとロードマップ」として、将来にわたって安定した介護サービスを確保していくため、原資は「介護サービスの質と生産性の向上」と述べ、介護記録などのデータ化・標準化の促進、介護ロボット等の活用による負荷の軽減を図ることなどを提言した。
また、官・民がそれぞれの役割を明確にしつつ、協調が必要な領域では協調しながら、総合的に介護サービスの提供を進めていくことが必要との見解を示している。
◆糖尿病性腎症の重症化の予防で連携協定 糖尿病学会など
厚労省・日医の3者 地域の医師会とかかりつけ医など連携
――厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議
厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議の三者は3月28日、糖尿病性腎症の重症化を予防するプログラムを全国に広げるため「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」を締結したと発表した。透析が必要となる糖尿病患者を減らすために、かかりつけ医と専門医との連携を強化し、自治体とも連携する体制づくりを全国に広める。モデルケースとなるのは、広島県呉市と埼玉県の取り組みだ。折しも4月7日は世界保健デイで、今年のキャンペーンは「糖尿病予防」だ。人工透析に要する医療費は1兆8,400億円もかかっている現状に国レベルで「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定することが急がれている。
日本医師会会長の横倉義武氏(日本糖尿病対策推進会議会長)と、日本糖尿病学会理事長の門脇孝氏、日本糖尿病協会理事長の清野裕氏、塩崎恭久・厚生労働大臣らが連携協定締結に調印した。
重症化のリスクが高い患者を見つけだし生活習慣の改善を指導したり、受診を勧めたりする地方自治体の事業を支援するのが柱。事業を実施する上での手順を示したプログラムを近く作成し、各自治体に配布する。
政府は医療費抑制に向けた国民の健康増進に力を入れており、糖尿病の重症化予防もその一環。厚労省は、医師会の協力を得て、自治体が地区医師会や地域の身近な「かかりつけ医」、糖尿病専門医との協力関係を築きやすい環境を整える。
厚労省の2012年国民健康・栄養調査によると糖尿病が強く疑われる人は950万人に上り、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)は約1,100万人に上る。両方を合わせると約2,050万人に上ると推定されており、その増加ペースは加速している。
糖尿病は、幅広い年齢層で発症し、さまざまな病態を起こす疾病だが、自覚症状が乏しいために放置されていて、あるいは治療を中断する人が多くいる。
糖尿病合併症による腎不全になった場合、透析治療が開始される。週3回程度の透析による定期通院が必要となり、患者の時間的拘束や身体的・社会的制限は大きく、患者と家族のQOL(生活の質)の低下をもたらすことになる。
日本透析医学会の調査によると、2014年12月時点の透析患者数は32万448人。また、透析医療費は年間500~600万円に上り高額だ。
厚労省が発表した2013年度の国民医療費は40兆610億円、そこに占める透析医療費は4.5%に達する。全国健康保険協会が2010年に発表した「人工透析に関する分析」によると透析患者の医療費は平均月額47万9,000円。単純計算では人工透析に要する医療費は1兆8,400億円に上る。
こうした現状に鑑み、糖尿病対策に積極的に取り組む必要があり日本医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会の三者が中心となり、「日本糖尿病対策推進会議」が2005年に設立された。
その後、「日本糖尿病対策推進会議」には活動趣旨に賛同した団体が加入し、日本医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、日本歯科医師会を「幹事団体」と位置づけ、健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、日本腎臓学会、日本眼科医会、日本看護協会、日本病態栄養学会、日本健康運動指導士会、日本糖尿病教育・看護学会、日本栄養士会、日本理学療法士協会などを「構成団体」として、新たな体制で幅広く活動している。
また、各地域においても都道府県などで糖尿病対策推進会議が立ち上がり、地域の実情に応じた取り組みが行われている。
今回の協定締結により日本医師会、日本糖尿病対策推進会議、厚生労働省は、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を定め、これにもとづき三者は次の取組を進める。
連携協定については、○呉市等の糖尿病性腎症重症化予防の取組を全国的に広げていくためには、各自治体、郡市医師会が協働・連携できる体制の整備が必要、○そのためには、埼玉県の例のように、都道府県レベルで、県庁等が県医師会と協力して重症化予防プログラムを作成し、県内の市町村に広げる取組を進めることが効果的、○そのような取組を国レベルでも支援する観点から、国レベルで糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定する旨、三者で連携協定を締結した。
協定の概要は、三者は「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を速やかに定め、策定したプログラムに基づき次の取組を進めていく。
▽日本医師会:プログラムを都道府県医師会や郡市区医師会へ通知。かかりつけ医と専門医等との連携の強化など自治体等との連携体制の構築への協力。
▽日本糖尿病対策推進会議:プログラムを構成団体へ周知。国民や患者への啓発、医療従事者への研修に努める。自治体等による地域医療体制の構築に協力。
▽厚生労働省:プログラムを自治体等に周知。取組を行う自治体に対するインセンティブの導入等。自治体等の取組実績について、分析及び研究の推進。
4月7日世界保健デーのテーマは「糖尿病」
4月7日は「世界保健デー」。日本独自のテーマは「糖尿病」。世界保健デーは、世界保健機関(WHO)の憲章が効力を発した1948年4月7日を記念して設けられた。WHO(世界保健機関)は、設立以来全世界の人々の健康を守るため、広範な活動を行っている。
WHOは1948(昭和23)年4月7日に第一回総会が開催され、設立されたが、そのことを記念し、1950年以来、毎年4月7日が世界保健デーとして定められた。世界保健デーのテーマは毎年変わり、その時点において世界的に重要であり課題性のある健康に関する事項に焦点を当てて、関心を高め対策行動への契機とするために設定される。
日本が独自にスローガンを打ち出したのは2010年から。
次に示した年代の「 」内は、日本での世界保健デー啓発のために厚生労働省が発表した日本語スローガン。公益社団法人日本WHO協会事務局は毎年その年の世界保健デーテーマに関連して、ウェブサイト広報や機関誌特集、セミナー開催等の啓発活動を行っている。
2010年 「進行する都市化と健康を考える」
2011年 「薬剤耐性の脅威 今動かなければ明日は手遅れに」
2012年 「高齢化と健康 健康であってこその人生」
2013年 「血圧管理の重要性:心臓疾患・脳卒中のリスクを減らそう」
2014年 「節足動物が媒介する感染症から身を守ろう」
2015年 「食品安全:あなたの食べものはどれくらい安全ですか?」
2016年 「糖尿病」
2013年度からの「健康日本21(第二次)」での「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」では糖尿病の目標として、①合併症(糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数)の減少、②治療継続者の割合の増加、③血糖コントロール指標におけるコントロール不良者(HbA1cがJDS値8.0%<NGSP値8.4%>以上の者の割合の減少、④糖尿病有病者の増加の抑制、⑤メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少、⑥特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上、が掲げられている。2018年度から、医療計画(6年間)、医療費適正化計画(6年間)、介護保険事業計画(3年間)、障害福祉計画(3年間)が、それぞれ対応する計画を発表している。
◆15年の救急出動、過去最多 高齢搬送者の増加顕著―消防庁
出動件数増の原因 67%が「高齢者の傷病者増加」
――総務省消防庁
総務省消防庁は3月29日、2015年の救急出動に関する調査結果「救急出動件数等(速報)」を公表した。救急車の出動件数は前年比1.1%%増の605万1168件(前年2014年度比6万6,247件増加・同1.1%増)、搬送者数は同5万9,962人の増加(同1.1%増)の546万5879人と、7年連続増加でいずれも過去最多となった。高齢搬送者の増加などが要因とみられる。なお今回の発表は速報としてとりまとめたもので、今後精査の結果変更する可能性がある。
事故種別でみると、出動件数は、「急病」が385万112件でもっとも多く、次いで「一般負傷」89万4,005件、「転院搬送」51万165件。また、搬送人員数は「急病」が348万9,720人でもっとも多く、次いで「一般負傷者」81万7,226人、交通事故49万270人だった。
都道府県別で救急車出動件数が増えたのは、3.5%増の宮崎が最大。鳥取の3.4%増、高知2.9%増と続く。一方減ったのは、栃木1.62%減、青森1.59%減、秋田1.56%減の順。救急車の適正利用が進んだことや、人口減少の影響があるとみられる。
出動件数が増加した469消防本部に、要因と思われる事由を質問したところ(複数回答)、「高齢者の傷病者の増加」が314本部(67.0%)ともっとも多く、「急病の傷病者の増加」312本部(66.5%)、「転院搬送の増加」205本部(43.7%)が続いた。
一方、出動件数が減少した279消防本部に、要因と思われる事由を質問したところ(複数回答)、「一般市民への救急自動車の適正利用等広報活動」が123本部(44.1%)でもっとも多く、次いで「転院搬送の減少」78本部(28.0%)、「頻回利用者対策の効果」41本部(14.7%)の順だった。
◆介護福祉士国家試験 EPA介護福祉士候補者合格率 大幅増
外国人介護福祉士候補者82名合格 看護師候補者は低調
――厚生労働省
厚生労働省が3月25日、「第28回介護福祉士国家試験結果」において、経済連携協定(EPA―日本・インドネシア、フィリピン、ベトナムとの協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の合格者は82名(合格率50.9%)だった。EPA介護福祉士候補者の合格率は、全体で50.9%(対前年比+6.1ポイント)と第26回(36.3%)、第27回(44.8%)と比較して大きく上昇している。全受験者でみた合格率は57.9%(前年61.0%)だった。
インドネシア人・フィリピン人看護師・介護福祉士候補者の受入れスキーム(公的体制) は平成20年に始まった。看護師コースの在留期間は最大3年間、介護福祉士・就労コース(※)の在留期間は最大4年間となっている。(※)平成28年度は受け入れ実績がないため、今後も予定していない。
日本・インドネシア経済連携協定(平成20年7月1日発効)及び日本・フィリピン経済連携協定(平成20年12月11日発効)に基づく看護師・介護福祉士候補者等の受入れは、原則として外国人の就労が認められていない分野において、経済活動の連携の強化の観点から、二国間の協定に基づき、公的な枠組みで特例的に行うものである。ただし看護・介護分野の労働力不足への対応ではなく国内労働市場への影響を考慮して受入れ最大人数を設定した背景がある。
候補者の受入れを適正に実施する観点から、日本は公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)を調整のための機関として位置づけており、これ以外の職業紹介事業者や労働者派遣事業者にあっせんを依頼することはできない。
滞在期間1年間延長の条件について
ただし追加的に1年間の滞在を認めることができる。次のいずれにも該当する場合に限り、所要の手続き及び審査を経て、就労研修しながら協定に基づく滞在期間中の最後の国家試験の次年度の国家試験合格を目指すこと等を可能とするため、追加的に1年間の滞在を認めることができる。
EPAに基づくインドネシア人及びフィリピン人看護師・介護福祉士候補者の滞在期間の延長について (平成25年閣議決定)。
(ア)追加的な滞在期間における就労・研修は、協定に基づく受入れ機関との雇用契約に基づいて行われること。
(イ)候補者本人から平成28年度の国家試験合格に向けて精励するとの意思が表明 されていること。
(ウ)受入れ機関により、平成28年度の国家試験合格を目指すため、候補者の特性に 応じた研修改善計画が組織的に作成されていること。
(エ)受入れ機関により、平成28年度の国家試験合格に向けた受入れ体制を確保する とともに、上記計画に基づき適切な研修を実施するとの意思が表明されていること。
(オ)平成27年度の国家試験の得点が一定の水準以上の者であること。
3月25日には「看護師国家試験における経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者」の合格状況も公表された。受け入れに関しては、合格率・合格者数が低い水準であることや、受け入れ施設数・人数が少数にとどまっているとの課題が指摘されている。今回の試験結果でもその課題は残り、2016年は受験者数152人に対して、合格者は5人で、合格率は3.3%だった。国別では、インドネシア11人、フィリピン22人、ベトナム14人だった。
2016年の「第102回保健師国家試験」、「第99回助産師国家試験」および「第105回看護師国家試験」の合格者も同日発表された。看護師国家試験は、受験者数6万2,154人(うち新卒者5万6,414人)に対し、合格者は5万5,585人(同5万3,547人)で、合格率は89.4%(同94.9%)だった。