ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2016年4月7日号)
◆医師需給は2033年ごろに均衡の見通し 医師需給分科会
「医師需給推計」と「医師偏在の課題と対策」について方針
――厚生労働省
厚生労働省は3月31日、医療従事者の需給に関する検討会の「医師需給分科会」を開催し、「医師需給推計」と「医師偏在の課題と対策」についての方針を示し議論した。分科会は2017年に医学部定員の増員措置の一部が終了することや、2025年に策定される地域医療構想に向けた医師の需給見通し・確保策などを検討する。
この日示された医療従事者の需給に関し、2040年までの医師の需給推計を示された中で、遅くとも2033年頃までには医師の供給が需要を上回って「医師不足」の状態が解消される見通しが明らかとなった。
医師の供給推計について、地域における医療機能の確保と再編(選択と集中を含む)を推進する取組が必要ではないか、医師の養成課程における地域医療への参画を強化するべきではないか――がこれまでの共通認識となっている。
そのため①人口規模の小さい地域では患者数が確保できず、十分な医業収入が得られない、②人口規模の小さい地域では、施設規模に応じた医師数が確保できないため、少人数のスタッフに業務が集中する、医療機関間の医師の派遣機能の強化を検討するべきではないか、などが指摘されている。
「医師の需給推計」に関しては(1)医師の供給推計、(2)医師の需要推計、(3)医師の需給推計――の3点を議論した。
(1)については、厚労省は今後の医学部定員を2016年度の9,262人として推計すると提案。また、女性医師・高齢医師・研修医に関し、労働時間と経験・技術で増減する「仕事量」を定義する。具体的には、30~50代の男性医師の仕事量を1とした場合、女性医師0.8、高齢医師0.8、1年目研修医0.3、2年目研修医0.5とし、供給推計に反映すると示した。
(2)については、「臨床に従事する医師」に関し、提案した推計方法をもとに、医師需要推計を提示。「入院医療(一般病床および療養病床、精神病床)」の医師の需要推計は2025年17万5,700人~19万7,000人、2040年17万9,200人~20万800人。
また「入院外の医療(外来医療・訪問して行う診療)」は2025年9万4,300人~9万4,700人、2040年9万100人~9万800人と推計した。「介護老人保健施設」は2025年3,800人、2040年4,200人。このほか、「臨床以外に従事する医師」も医療需要推計を算出し、2040年に1万3,100人以上と推計している。
(3)については、医師供給・需給推計をもとに2040年までの医師需給推計を示し、上位推計(医師需要推計が最大となる推計)では2033年ごろ、中位推計では2024年ごろに医師需給が均衡し、その後は人口の減少により医師需要が減少するとした。
医師需給には、これまでに①医学部卒業後の勤務地として、出身地を選択する傾向がある(医学部所在地と医学生出身地とのバランスに地域差がある)②勤務地により経験できる症例数や質が異なり、キャリアアップや専門医の維持等に影響(地方等を避ける)③症例数や先端医療に触れる機会に施設や地域で違いがある――といった課題が浮上している。
「医師偏在の課題と対策」に関しては、前回会議で「医療サービス」の課題が示され、今回はそれらの論点が検討・整理された。示された論点は、「地域性に配慮した専門医養成課程の要件等の見直し」など23項目に上っている。
例えば「医学部入学時に入学希望者の出身地を考慮する取組(地域枠)等の強化が必要ではないか」、「地域性に配慮した専門医養成課程の要件等の見直しが必要ではないか」「地域や施設特性に配慮した医療技術の研鑽に資する取組が必要ではないか」――この3点が共通項として認識されている。
青森県を例にとり、医師不足の都道府県における医師の県内定着に向けては、医学部医学科入学定員における地域枠の運用について、卒業後、原則として大学の設置されている県内で一定期間勤務することを担保するような措置を講じることができないか、などが議論されている。
◆厚労省 2016年度診療報酬改定の「疑義解釈」Q&Aを発出
看護必要度(C項目)やかかりつけ薬剤師指導料の解釈
――厚生労働省
厚生労働省は3月31日付で、2016年度診療報酬改定に関する「疑義解釈資料の送付(その1)」について事務連絡を行った。
疑義公開は同省のホームページ上で4月1日。発出された診療報酬改定のQ&Aの項目は次の通り。
(1)一般病棟用の重症度、医療・看護必要度
(2)病棟群届出
(3)総合入院体制加算――など
(4)検査・画像情報提供加算
(5)投薬
(6)調剤報酬――など
(7)看護職員夜間配置加算
(8)栄養サポートチーム加算
(9)認知症ケア加算
(10)認知症地域包括診療料――など
ここでは、新設された(1)看護必要度のC項目(手術等)、(4)検査など(5)投薬などのQ&Aを中心に紹介する。
(1)では、新設された一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のC項目の共通事項で、「同一疾患に起因した一連の再手術の場合は、初回の手術のみ評価の対象」とあるが、厚労省は予定手術として2期的に手術を行う場合、各手術が評価対象になると説明。新設されるC項目の具体的な術式名が8項目と決まった。また、同一疾患に起因した一連の再治療が1回の入院中に行われる場合は初回の治療のみ評価対象と述べている。なお、予定して2期的に治療を行う場合、各治療が評価の対象となると示している。
さらに、C項目の開腹手術に関して、腹壁を切開しない方法で腹腔・骨盤腔や後腹膜腔の臓器に達する手術は対象とならないと明示。Q&Aでは、このほか、C項目の各手術等に関しても、対象を詳細に説明している。
(4)では、診療情報提供書・検査結果などは原則として同じ日に提供する必要があるほか、CD-ROMでの提供では算定できない(電子的診療情報評価料も同様)と説明。基準を満たす電子署名には、一般社団法人医療情報システム開発センター(MEDIS)発行のHPKI署名用電子証明書と、日本医師会の発行する医師資格証が該当すると述べている。
(5)では、湿布薬の1処方につき70枚の制限に関して、「70枚」の判断は湿布薬の種類ごとに70枚ではなく、処方された湿布薬全体の合計枚数が70枚と説明している。
【基準調剤加算1】では、「近隣の複数薬局で連携体制を構築して基準調剤加算1を算定している場合において、連携体制にある薬局のうちある特定の薬局が主として夜間休日等の対応を行うことは認められるか」という質問に対し、「当該加算の趣旨としては、自局のみで24時間体制を構築することが難しい場合において、近隣の複数薬局の連携を行うことを評価するものであり、当該例は適切でない」と回答がされている。
ただし、これに対して薬局関係者の間から「連携する保険薬局の要件である<近隣>の定義はあるか」との疑念が「曖昧」のまま残っている。
疑義が予想された新設項目の【かかりつけ薬剤師指導料】と【かかりつけ薬剤師包括管理料】では、「かかりつけ薬剤師」という名称が本来の解釈から違ってきているのではないかと言われている。そのため、薬局現場と患者の間で正しく定着するまでに紆余曲折あるのではと危惧されている。
かかりつけ薬剤師への同意については、患者が最初に来局した際に「後発医薬品の使用意向などを確認するアンケートの中でかかりつけ薬剤師についての意向を確認した場合、アンケートの署名では同意を取得したことにはならない」と回答がされた。
また、患者の希望でかかりつけ薬剤師を変更する場合、変更後のかかりつけ薬剤師は、変更前の算定状況を患者に確認して、算定可能時期(変更前のかかりつけ薬剤師が算定していた翌月以降)に留意して、対応するよう求めている。
◆平成26年度「後発医薬品品質確保対策事業」検査結果報告書
厚労省 390品目22有効成分が適合し不適合品目はなし
――厚生労働省
厚生労働省が平成20年度から実施している「後発医薬品品質確保対策事業」の検査結果報告書がまとまり、3月31日に公表された。後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品の特許終了後に、先発医薬品と品質・有効性・安全性が同等であるものとして厚生労働大臣が承認を行っているもので、後発医薬品の品質を確認することが目的。
厚労省は、安心して後発医薬品を使用できるよう、平成19年に「後発医薬品の安全使用促進アクションプログラム」を、さらに平成25年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定した。
これらに基づく取り組みの1つとして、平成20年度から「後発医薬品品質確保対策事業」を実施していて、このほど平成26年度の結果(概要)がまとまり公表された。
検査方法(検査品及び標準品の入手)は、平成26年3月31日時点で薬価収載されている品目について、経過措置品目や製造中止等の理由により検体が入手困難な品目を除いた全品目を対象として検査を実施した。
平成26年度は398品目22有効成分について、溶出試験、力価試験及び純度試験に係る検査を実施した。その結果、390品目22有効成分が適合し、不適合品目はなかった。なお、8品目3有効成分については試験結果に疑義が生じた等により、判定不能等とした。
後発医薬品について現時点では、品質や情報提供、安定供給の面に対する医療関係者等の信頼は未だ十分に高いとはいえない状況にある。厚労省は、平成19年10月に策定した「アクションプログラム」で平成24年度までの5年間で①安定供給等、②品質確保、③後発医薬品メーカーによる情報提供、④使用促進に係る環境整備及び⑤医療保険制度上の事項に関し、国及び関係者が行うべき取組を明らかにした。
アクションプログラムの事業で、品質確保の観点から国が行うべき取り組みの一つとして、従来から都道府県等の協力のもと実施している医薬品等一斉監視指導において、検査品目を順次拡充している。
厚労省では、平成25年4月からロードマップによって現在の使用促進策に係る課題を明らかにするとともに、新たな目標を設定して、今後、行政、医療機関、医薬品業界など国全体で取組む施策を明らかにした。この事業を含め、関係者の取り組みにより後発医薬品の品質に対する信頼は以前と比較すれば格段に上がっているが、ロードマップにおいて、さらに信頼性の確保を確実にするため、この事業を継続して行うことを正式に表明している。
【概要】平成26年度検査ポイントは次の通り。
事業内容:都道府県等の協力のもと、市場流通している後発医薬品を入手し、品質検査を実施。
目 的:後発医薬品の品質を確認すること。
検査品目:398品目22有効成分(参照品目としての先発医薬品43品目21有効成分を含む。)
検査内容:溶出試験(345品目18有効成分。一定時間に溶け出す有効成分の量を測定)
力価試験(30品目3有効成分。製剤中の有効成分の量を測定)
純度試験(23品目1有効成分。製剤中の不純物の含有量を測定)
検査結果:適合=390品目22有効成分、不適合=なし、判定不能等=8品目3有効成分
実施期間:平成26年7月~平成27年3月
協力機関:国立医薬品食品衛生研究所、国立感染症研究所、36都道府県、関係業界団体
〈参考〉平成25年度の同事業の結果
検査品目:441品目22有効成分(溶出試験364品目16有効成分、溶出試験以外の試験77品目6有効成分。ただし、参照品目として先発医薬品51品目22有効成分を含む)
検査結果:適合=441品目22成分、不適合=なし
◆「公立病院改革ガイドライン」の取組み事例集を公表 総務省
「日本海総合病院」「富山市民病院」など経営効率化を紹介
――総務省
総務省は3月31日、2007年12月に策定された「公立病院改革ガイドライン」(旧ガイドライン)に基づく取り組みにより、成果を挙げている公立病院の事例を取りまとめて公表した。
総務省の新公立病院改革ガイドラインとは、各自治体が公立病院改革プランを策定するための基礎となる新たな公立病院改革ガイドラインである。新しいガイドラインは、公立病院改革プランの従来の柱である「経営効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」の3点に加えて、「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を柱として挙げ、地域医療構想と整合性を取りながら改革を進めることを求めている。現在、公立病院の経営環境、財政事情は厳しく「淘汰」のための新ガイドライン作成ではないかとの声もあるほどで、財政支援の絞り込みは必至の情勢にある。
新改革プランの策定時期や新改革プランは、都道府県が策定する地域医療構想の策定状況を踏まえつつ、できる限り早期に策定することとし、2015年度又は2016年度中に策定するものとするとされて進んできたが、タイムオーバーの気配が漂う。
公立病院は2012年度の経常収支が黒字を計上した公立病院は5割超もあった。さらに2012年度までに策定された再編・ネットワーク化に係る計画(前ガイドライン)に基づき、病院の統合・再編に取り組んでいる事例は62ケース、153の病院もあった。
新改革プランは、「地域医療構想」と整合的であることが求められている(旧ガイドラインも原点は同じ)――すなわち地域の病院を指向する役割にどれくらいフィットできるか、である。その視点で有識者は事例集を「精査」しているようだ。
この新版・好事例集は2015年3月に策定された「新公立病院改革ガイドライン」の推進に役立てることが目的で、前ガイドラインに掲げた(1)経営の効率化、(2)再編・ネットワーク化、(3)経営形態の見直しの、3つの視点に沿った取り組みで顕著な成果を上げている事例について、有識者からのコメントも交えて掲載している。
(2)の事例では、2病院を統合して地方独立行政法人に再編し、両病院の機能分化と業務連携を進めて患者数37.3%増、手術件数79.7%増などを達成したほか、医師確保と診療体制の充実を実現したとして、「日本海総合病院」(山形県酒田市)が紹介された。同病院は、法人全体で経常収支比率100%以上を継続的に達成している。
これに対し有識者は、「病院再編のモデルケースである。2病院による機能分化が選択されたことで、高度急性期病院の診療機能や研修機能を向上させ、弾力的でスピード感ある意思決定を実現している」との高い評価を下している。
(3)の事例として、自律的経営を可能とする地方公営企業法を全部適用して、紹介数・逆紹介数の増加と救急入院率の向上を図り、2014年度まで5期連続の黒字を維持したとして「富山市民病院」(富山県富山市)を紹介。収入の確保策や費用の削減策を詳しく取り上げた。
有識者は、「地方公営企業法の全部適用を行い、積極的な経営改革を進めている。病院事業管理者が職員採用や配置について自ら判断できる利点を生かし、病院経営環境の変化に対して柔軟な対応ができるようになった」と評価し、さらに「今後、富山医療圏における病床数は大幅な削減が見込まれており、急性期医療を担う体制をどのように維持・構築していくかが検討課題」とコメントしている。
公立病院改革ガイドライン
総務省が2015年12月に策定した指針。公立病院がある全自治体に対し、3年程度で経営効率化=経常収支の黒字化、5年程度で再編・ネットワーク化と経営形態の見直しを、それぞれ求めた。具体策として改革プランを作ることも義務化した。経営効率化では、05~07年度の3年間連続で病床利用率が70%未満の病院に対し、病床数の削減を促している。また財政措置として、08年度限定で公立病院特例債の発行を打ち出すとともに、病床を減らした場合でも地方交付税の額を5年間減らさない方針を示した。一方で、交付税額を病床利用率に応じて決めることを「検討する」としている。
公立病院改革は、これまでの「経営効率化」、「再編・ネットワーク化」、「経営形態の見直し」に、「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を加えた4つの視点に立った改革を進めることが不可避とされ、政府・総務省は不退転の瀬戸際にある。