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医療経営情報(2016年5月26日号)

2016/5/30

◆第7次医療計画へ制度見直し議論スタート 医療計画検討会
「地域医療構想」と「地域包括ケアシステム」のWG設置

――厚生労働省
2018年度から始まる第7次医療計画の在り方について検討する、厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の第1回会合が5月20日に開催され、今年12月の「医療計画作成指針」の作成に向けての議論が始まった。
医療計画は、医療機能の分化・連携の推進を通じて、地域において切れ目のない医療の提供を実現し、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図ることに目的を置いている。

中心議題には、「医療計画制度の現状と課題」、「検討会の進め方」などがテーマにあがっている。初回は厚労省医政局による論点整理が行われ、「地域医療構想」と「地域包括ケアシステム」の2つのサブテーマでワーキンググループ(WG)を設置することが決まった。座長には学習院大学経済学部教授の遠藤久夫氏、座長代理には慶應義塾大学名誉教授の田中滋氏が選出された。

この検討会は、現行の医療計画の課題等について整理を行うことにより、平成30年度からの次期医療計画をより実効性の高いものとするため、計画の作成指針等の見直しについて検討することを目的に開催するものである。
検討事項は、(1)医療計画の作成指針等について、(2)医療計画における地域医療構想の位置付けについて、(3)地域包括ケアシステムの構築を含む医療・介護の連携について、(4)その他医療計画の策定及び施策の実施に必要な事項について。
医療計画は、医療法で都道府県が策定することが定められており、地域の実情に応じた疾病・事業ごとの医療体制や、地域医療構想、病床機能の情報提供の推進などを記載している。
検討会は現行の医療計画制度の課題などの整理を行い、次期第7次医療計画(2018年度~)を実効性の高いものにするための見直しを検討する。

今回、厚労省は現行の2014年の第6次医療計画策定時の課題として、(1)2次医療圏と基準病床数制度、(2)5疾病・5事業と在宅医療、(3)PDCAサイクルを推進するための指標――の3項目を挙げて、論点を例示している。
(1)に関しては、前回2014年の制度見直しで、人口規模が20万人未満の2次医療圏は「流入患者割合が20%未満」と「流出患者割合が20%以上」の場合、医療圏の見直しを検討することとした。今回、厚労省は論点として「各都道府県の現状・対策や、今後の人口構成の変化も踏まえた医療圏の見直しの必要性をどう考えるか」を例示した。

(2)では、前回見直しで対象疾病に新たに精神疾患を追加。また、在宅医療の数値目標・施策などを記載することとした。今回、厚労省は「現在、全都道府県の医療計画で5疾病・5事業と在宅医療の体制構築が記載されている」と説明。これらを踏まえ、論点を次のように例示している。
●高度急性期から在宅医療を含めた慢性期の受け皿や、地域包括ケアシステムの構築に至る医療提供体制の構築において、5事業(救急医療等)に関連して、どのような取り組みが必要か
●少子高齢化による疾病構造の変化などを踏まえ、がん対策推進基本計画や、脳卒中・心筋梗塞などの循環器病対策、障害福祉計画での精神障害者への対策などで、各種疾病対策と医療計画の連携について、どのような取り組みが必要か

◆2015年の出生数は前年比2,117人増、特殊出生率1.46に上昇
厚労省・人口動態統計月報年計(概数)」を公表

――厚生労働省
厚生労働省は5月23日、2015年「人口動態統計月報年計(概数)」を公表した。出生・死亡・婚姻・離婚・死産の5種類の「人口動態事象」を把握し、厚生労働行政施策の基礎資料を得るもの。推計項目は、2015年の(1)出生数、死亡数、婚姻件数、離婚件数、死産数、(2)主な死因(悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管疾患)別死亡数――の2つ。
(1)の出生数は100万5,656人で前年(2014年)の100万3,539人から2,117人の増加。出生率(人口1,000対)は8.0(2014年は8.0、増減なし)。一方、死亡数は129万428人で前年の127万3,004人より1万7,424人増加。死亡率(人口1,000対)は10.3(同10.1、0.2増)だった。なお、死産数は2万2,621胎、死産率(出産1,000対)は22.0で前年より低下している。
また、人口の自然増減数は28万4,772人減、自然増減率(人口1,000対)も2.3ポイント減り、2007年以降人口減少が続いている。婚姻件数は63万5,096組で、婚姻率(人口1,000対)は5.1、離婚件数は22万6,198組で、離婚率(人口1,000対)は1.80だった。
1人の女性が一生の間に生む子どもの数に相当する「合計特殊出生率」は1.46で、前年に比べ0.04ポイント上昇した。

(2)では、第1位は「悪性新生物(がんや肉腫など悪性腫瘍)」37万131人、第2位は「心疾患」19万5,933人、第3位は「肺炎」12万846人、第4位は「脳血管疾患」11万1,875人。2014年に比べ順位は変わらないが、「悪性新生物」、「肺炎」の死亡数が微増し、「心疾患」は微減している。

特殊出生率が1.46に上昇したことを受け塩崎厚労相が5月24日、記者会見に応じた。
(記者)昨日、公表されました去年の出生率が1.46と2年ぶりの上昇ということで、水準としては21年ぶりの高さでした。これについての受け止めをお願いいたします。
(大臣)昨日、合計特殊出生率1.46ということで、前年から0.04増加して21年ぶりの高水準となったわけです。出生数も2,117人増えて、100万5,656人ということで、100万人台を確保しました。
出生率の改善の傾向が見られることは大変好ましいことですが、全体的に日本の人口減少に歯止めがかかるということではないので、引き続き、子育て支援にしっかりと取り組んでいくことが大事だと思います。結婚、子育てに関する希望の実現を阻害する要因を取り除いて、「希望出生率1.8」を実現しようというのが一億総活躍社会づくりの大きな柱でありますので、先般の国民会議で出てまいりました「ニッポン一億総活躍プラン」に基づいて、長時間労働の是正や、介護にしても子育てにしても「働き方改革」が大変大きな影響を持つということはいろいろなアンケートで言われてますので、保育サービスの充実、保育士の処遇改善などとともに「働き方改革」も育児休業取得も含めてしっかりとやっていかなければならないと思いますので、これまで以上の努力をしていこうと思っております。

◆熱中症予防の普及啓発・注意喚起に新リーフレットを作成
厚労省 全国へ通知 「熱中症診療ガイドライン2015」も

――厚生労働省
厚生労働省は5月19日、「今年も早くも熱中症患者が救急車で入院しました」と注意を喚起し、熱中症予防に関する新しいリーフレットなどを作成して全国の関係機関に通知した。
厚労省健康局が今回行ったのは、気温の高い日が続く夏季に向けて、こまめな水分補給、エアコンなどの使用など、熱中症予防の普及啓発・注意喚起の取り組みとしてのリーフレット「熱中症予防のために」および「熱中症診療ガイドライン2015」(2014年度厚労科研研究班作成)などの作成と配布。合わせて関係の医療機関、薬局、介護サービス事業者、障害者福祉サービス、民生委員、保育所、児童相談所などを通じてリーフレットを活用した熱中症予防を広く呼びかけるよう周知依頼を行っている。
厚労省は、こまめな水分・塩分の補給、扇風機やエアコンの利用等の熱中症の予防法について、全国市町村、医療機関、薬局、介護サービス事業者、障害福祉サービス事業者、社会福祉事業を実施する者、老人クラブ、シルバー人材センター、民生委員、保育所、児童相談所、ボランティア、事業場等を通じて、また、保健所・保健センターにおける健診、健康相談等の機会を利用し、それぞれから広く呼びかけるよう通知した。特に、熱中症への注意が必要な高齢者、障害児(者)、小児等に対しては、周囲の人たちが協力して注意深く見守る等、重点的な呼びかけを重ねて強調している。
また、熱中症患者が発生した際には、救急医療機関等で適切に受け入れ、治療されるよう自治体管下の医療機関等への注意喚起及び周知徹底を呼びかけている。

医療・介護等の専門家向けには、「効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金健康安全・危機管理対策総合研究事業、研究代表者:昭和大学三宅康史)を元に、日本救急医学会の協力の下、「熱中症診療ガイドライン2015」が作成されている。このガイドラインについては、厚労省ホームページ熱中症関連情報のページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/)からのダウンロードと活用を呼びかけている。

職場での熱中症予防対策については、都道府県労働局長に宛てて「平成28年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について」(平成28年2月29日付け基安発0229号第1号基準局安全衛生部長通知)にて通知している。

◆在宅での看取り規制の見直し、来年度に措置 規制改革答申
死後24時間後、「看護師の確認で死亡診断書を」

――政府
政府の規制改革会議(議長:岡素之・住友商事相談役)は、5月19日に「規制改革会議」を開き、「規制改革に関する第4次答申」を議論して「規制改革に関する第4次答申-終わりなき挑戦-」を公表、安倍晋三首相に答申した。答申は2015年6月の第3次答申以降の規制改革会議での検討結果を取りまとめたもの。
医療分野では、看護師の確認などを条件に医師が死後24時間経過後も死後診察なしで死亡診断書を交付できるようにしたり、薬剤師不在時でも薬局で登録販売者が第二類、第三類医薬品を販売できるようにしたりすることなどを求めた。答申は80項目で、健康・医療分野としては次の4分野10項目が挙げられている。

医療分野に関し、具体的な規制改革項目として(1)在宅での看取りの規制の見直し、(2)薬局での薬剤師不在時の一般用医薬品の取り扱い見直し、(3)診療報酬審査の効率化と統一性の確保、(4)一般用医薬品・指定医薬部外品の広告基準等の見直し――を挙げている。

(1)では、死亡診断書の交付は受診後24時間経過すると医師の対面での死後診察が必要となり、看取りのため住み慣れた場所を離れ病院・介護施設に入院・入所したり、遺体を長時間保存・長距離搬送するなど、不都合を強いられているとの指摘があると言及。
このため、規制改革会議は在宅での穏やかな看取りが困難な状況に対応するため、受診後24時間を経過していても、所定の5要件すべてを満たす場合、医師が対面での死後診察によらず死亡診断を行い、死亡診断書を交付できるよう、早急に規制を見直すと述べている。2016年度に検討を開始し、2017年度に措置を講じる。
規制改革会議が示した要件は、次の通り。
①医師による直接対面での診療の経過から、早晩死亡することが予測されている
②終末期の際の対応の事前取り決めがあるなど、医師と看護師の十分な連携が取れており、患者や家族の同意がある
③医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難
④法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の3兆候の確認を含め医師とあらかじめ取り決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できる
⑤看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等のICTを活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握することなどにより、死亡の事実の確認や犯罪性の疑いがないと判断できる

(2)では、現在「薬局は薬剤師不在時には薬局全体を閉めなければならない」という規制があるため、薬剤師不在時は登録販売者が勤務していてもOTC薬(一般用医薬品)の第2類・第3類医薬品の販売ができない。薬剤師不在時に登録販売者のみで第2類・第3類薬を販売するためには、同一店舗内を薬局区画と店舗販売業区画とに分け、併設許可を取る必要があり不便との声があった。
これに対しては、患者本位の医薬分業の推進を前提に薬局の調剤応需体制の確保とのバランスなどを考慮し、薬剤師不在時にも登録販売者が第2類・第3類医薬品を販売できるよう規制を見直すとのこと。答申では2016年度に検討して、2017年度上期に措置を講じるとしている。

(3)では、支払基金に関し、電子化がほぼ完了しICTを活用した診療報酬審査の自動化やオンライン化が可能な状況にもかかわらず、紙レセプト時代と同様に47全都道府県に支部を置き、人手による非効率な業務運営が継続しているとの指摘があると言及。支払基金自身の自助努力による効率化には限界があり、過去数度にわたり自己改革の機会が与えられてきたにもかかわらず、抜本的な構造改善に至っていないと評価されていると指摘した。
そこで、現在の支払基金を前提とした組織・体制の見直しではなく、診療報酬の審査のあり方をゼロベースで見直すとした。こちらは2016年夏を目途に方針を整理し、2016年内に結論を得るとしている。

(4)では、「一般用医薬品・指定医薬部外品の広告基準等の見直し、効能効果の表現の見直し」などを打ち出し、インターネットなど広告媒体の多様化が進む中、1980年に策定された広告基準が時代にそぐわなくなっていると指摘した。
さらに、効能・効果の表現には「文言が抽象的で、どのような疾患や症状に効果があるのか分かりにくい場合がある」とし、「消費者に分かりやすい広告が可能となるよう、一承認基準における効能・効果の表現の見直し」を求めた。
インターネット等の広告媒体の多様化が急速に進んでいる時代にあって、セルフメディケーションを推進するための消費者の自己選択に資する広告の重要性が一層増していることを強調。そのうえで、情報が消費者に理解されやすい表現で正確・適切に提供されるように必要な見直しをすると述べた。こちらも2016年度に検討して結論を得るとしている。

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