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介護経営情報(2016年6月17日号)

2016/6/20

◆介護給付費8兆9,005億円、前年比4.6%増 厚労省事業状況報告
要介護・要支援認定者、2014年度に初めて600万人を超える

――厚生労働省
厚生労働省は6月13日、2014年度の「介護保険事業状況報告(年報)」を公表した。公費負担増が続いている現状は明白で、調査結果の特色は次の3点。
介護護保険サービスを利用するのに必要な「要介護・要支援認定」を受けた人が①2014年度に初めて600万人を超え606万人。介護保険制度が始まった2000年度の約2.4倍となった。
この結果、②税金と保険料で賄う介護給付費が8兆9,005億円と前年度に比べ4.6%増えて過去最高になった。給付費の内訳では、「居宅サービス」(自宅介護)が4兆5,765億円を占めた。1人当たりの給付費は平均27万円。③65歳以上に占める認定者の割合は0.1ポイント増の17.9%で、過去最高を更新した。
この調査は被保険者・サービス利用者・保険給付などの状況を、保険者(市町村等)からの報告数値を全国集計したもの。2015年3月末時点の第1号被保険者数は3,302万人で、前年度比3.1%増の100万人増加。このうち、要介護・要支援認定者数は606万人で、前年度比3.8%増の22万人増加。他方、要介護度別の構成比を見ると、要支援1が14.4%、要支援2が13.8%、要介護1が19.3%、要介護2が17.5%、要介護3が13.0%、要介護4が12.0%、要介護5が9.9%で、構成比は前年度とほぼ変わらなかった。

また、居宅(介護予防)サービスで、受給者数は累計4,492万人で、要介護度別では要介護1が全体の22.4%を占め最多で、軽度(要支援1~要介護2)の受給者で
72.1%を占めた。1カ月あたり平均で総数は374万人で、前年度に比べ4.7%増。  地域密着型(介護予防)サービスで、受給者数は累計で462万人、要介護度別では、要介護3が24.6%と最多で、重度(要介護3~要介護5)の受給者で56.1%を占める。1カ月あたり平均で総数は38.5万人となり、前年度に比べ9.0%増加。
施設介護サービスで、受給者数は1,078万人で、要介護度別では、要介護4が30.9%と最も多く、重度(要介護3~要介護5)の受給者が82.4%を占めている。1カ月あたり平均では、介護老人福祉施設49万人(前年比1.6%増)、介護老人保健施設35万人(0.7%増)、介護療養型医療施設7万人(6.9%減)だった。
 
保険給付を見ると、介護費用は9兆5,783億円で、前年度比4.4%増加(4,049億円増)。給付費は8兆9,005億円で前年比4.6%増(3,885億円増)。サービス別の1人あたり給付費(1カ月平均)は介護療養型医療施設35.2万円が最も多く、介護老人保健施設(老健施設)26.6万円、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護25.1万円、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)25.0万円の順だった。
認定者を都道府県別にみると、和歌山が22.1%と最も高い。長崎(22.0%)や島根(20.9%)が続いた。高齢化の進んだ地域で高い傾向にあった。最も低かったのは埼玉で14.1%だった。

◆“医療情報交換の標準化を効率的に進める”
日医・横倉会長「IT化宣言2016」公表

――日本医師会
日本医師会の横倉義武会長は、6月8日の定例記者会見で、今後の日本医師会の医療分野のIT(情報技術)化における取り組み(ネットワークづくり)の指針となる「日医IT化宣言2016」を公表した。
 
日医では、2001年11月に、当時の坪井執行部が「日医IT化宣言」を公表、医療現場のIT化を進めるための土台となるネットワークづくりである「ORCAプロジェクト」を推進してきた。「日医IT化宣言2016」(*)は、この2001版のリニューアルだが、5か条から構成されている。
「日医標準レセプトソフト」(通称ORCA*)は、現在では1万5千を超える医療機関で運用されているが、更なる発展のため、新たに設立した「日本医師会ORCA管理機構(株)」への業務委託が開始されている。
また、日医は、今後のITを使った地域医療連携では必須となる、医師の国家資格を電子の世界で証明する医師資格証の普及と、日本医師会電子認証センターの運営にも力を入れており、新年度に入ってから、発行申請数は急増している。
横倉会長は、「日本医師会主導で進める医療のIT化を、更に新しいステージに進めるために、会内委員会である平成26・27年度医療IT委員会(川出靖彦委員長:岐阜県医師会副会長)に『地域医療連携推進のための新たな日医IT化宣言と医療・介護における多職種連携のあり方』について諮問した」と経緯を説明。5月19日に手交された同委員会答申で提言された「日医IT化宣言2016(案)」を元に常任理事会で協議し、一部文言の変更を行った上で、5つの項目からなる宣言を了承したことを明らかにした(宣言内容は下掲参照)。

一方で時代は進化し続け、新たな産業革命に匹敵するとさえいわれる「宣言2001」からのIT化のスピードは目覚ましく、病院施設でも患者、家族にも広く深く伝播している。そのため「宣言2016」では、・日本医師会は地域医療連携・多職種連携をITで支えます、・日本医師会は、電子化された医療情報を電子認証技術で守ります、と宣言し、個人(患者)とITを強く結びつける文言を入れた。
中でも注目されるのは、日医が地域医療連携・多職種連携を推進する中で、個人のプライバシーが侵害される恐れがあるため公開型SNSや個人保有のスマートフォンなどの利用を避けるようBYOD(私物の情報機器の業務使用)の禁止を求めている点だ。「宣言2016」では、非公開型、医療・介護連携専用のプライベートSNSを使うことを推奨している。日医は医療・介護連携の現場には私物のデバイス(スマートフォンなどの情報端末が代表例)を持ち込まない、または持ち込ませないよう施設経営者、従業員等の病医院全体の意思統一を求めている。

●日医IT化宣言2016
・日本医師会は、安全なネットワークを構築するとともに、個人のプライバシーを守ります。
・日本医師会は、医療の質の向上と安全の確保をITで支えます。
・日本医師会は、国民皆保険をITで支えます。
・日本医師会は、地域医療連携・多職種連携をITで支えます。
・日本医師会は、電子化された医療情報を電子認証技術で守ります。

最後に横倉会長は、「新たな宣言は、従来のORCAプロジェクトの推進のみの内容にとどまらず、医療分野のIT政策全体を包括する内容になっている」として、同宣言を指針に、従来以上に力を入れて、医療分野のIT化に取り組んでいく決意を表明した。

*ORCA=各医療現場に標準化されたオンライン診療レセプトシステムを導入し、互換性のある医療情報をやりとりできるようにする計画(ORCA、Online Receipt Computer Advantage)。この計画のために日医が開発したプログラムやデータベースはすべて無償で公開している。

◆厚労省、介護職員の処遇調査を今年度も実施へ
介護従事者処遇状況等調査 次期改定にも生かす

――厚生労働省
厚生労働省は6月9日、第20回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会を開催した。「介護事業経営調査委員会」は下部組織。この日、厚労省は「介護従事者処遇状況等調査の実施案」を提示し、専門家で構成する同委員会から賛同を得て今年度も調査を行うことに決めた。

2015年度から再編・上乗せされた介護職員の「処遇改善加算」によって、実際の賃金はどれくらい上がっているのか。調査はその詳しい状況を改めて把握するためとしている。今月15日に予定されている「介護給付費分科会」で承認を取り付け、本格的な準備に着手する予定。
調査の目的には2018年度の次の介護報酬改定を見据えた動きで、具体的な議論のための基礎資料として活用する考えも含まれる。調査時期は2016年10月、公表時期は2017年3月予定。対象は特養や老健、訪問介護、通所介護、グループホーム、居宅介護支援などの施設・事業所に在籍する介護従事者などが対象。およそ1万ヵ所に調査票を送るという。取っている「処遇改善加算」の種類やその使途、賃上げの額、給与の水準などを尋ね、加算を算定していないところにはその理由も聞く。

調査項目は、①施設・事業所票―給与等の状況、介護従事者等の処遇状況、利用者数 等、②従事者票―性別、年齢、勤続年数、勤務形態、労働時間、資格の取得状況、兼務 の状況、基本給額、一時金の額 等。「介護職員処遇改善加算の届出状況」、「平均給与額等の状況」、「給与引き上げ以外の処遇改善状況」など基本的には前回を踏襲する。 

ただし前回2015年度調査からの変更点として、処遇改善加算の届出を行わない理由のうち、(1)「対象の制約のため困難」、「事務作業が煩雑」と回答した場合、さらに具体的な事情を調査する項目、(2)キャリアパス要件(ⅰ)またはキャリアパス要件(ⅱ)を満たすことが困難と回答している事業所について、さらに具体的な事情を調査する項目―をそれぞれ設けるとしている。その他の項目は形式的な変更を除き前回調査からの変更は行わない。

この日の報告では、今年3月に公表された前回の調査結果について、常勤職員の平均給与を改定の前後で比べると約1万2,000円増えていた。厚労省は今年度の調査で、加算を届け出ない理由や要件を満たせない原因など一部の質問を改善し、実情をより詳しく掴めるようにするとしている。

政府はすでに、「介護離職ゼロ」の実現に向けた施策を盛り込んだ「ニッポン1億総活躍プラン」のなかで、介護職員の賃金を来年度から月1万円程度引き上げると約束している。具体的な手法は未定で、来年度予算の編成過程で協議するという。今年の年末には大枠を固める方針だが「1万円アップ」はハードルが高いと杞憂する声が出ている。最終的な政府の判断は、次の介護報酬改定まで視野に入れたものとなる公算が大きいとみられる。「ニッポン1億総活躍プラン」では、「介護保険制度の下で対応することが基本」との認識を示している。

◆介護保険料の長期滞納、差し押さえ高齢者1万人
2014年度 厚労省全国調査 保険料アップが原因か

――厚生労働省
厚生労働省は、全国1741市区町村を対象に「介護保険料の長期滞納状況」を調査した結果、介護保険料を長期滞納し市町村から資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が、2014年度に初めて1万人を超えたことが分かった。
介護保険は、介護保険料と税金を財源に運営される制度であり、被保険者の公平性を図る観点から、介護保険料の未納、滞納は原則許されない。自治体、国ともに介護保険料の滞納者を減らし、収納率の向上を図ることが急務となっている。
市町村からの何らかの処分を受けたのは517市区町村で計1万118人だった。13年度の7,900人から3割近く増え、調査を始めた2012年度以降で最も多かった。ちなみに2012年度の介護保険の総費用は8.9兆円。
自治体別では、大阪市(404人)、長崎市(347人)、横浜市(293人)、長野県飯田市(278人)、広島市(272人)――の順。
滞納者への対応では預貯金などが差し押さえられたのは、14年度で計6305人だった。「給付の償還払い」は2,586人(13年度2428人)、「給付の償還払い一時差し止め」は87人(同86人)、「自己負担を3割に引き上げ」は1万883人(13年度も1万335人で1万人を超えている)。滞納した期間は自治体によって数か月から数年までまちまちだった。
サービスの利用料を引き上げられ給付を制限された高齢者も、2年連続で1万人を上回っていたが、こちらには、“保険料をちゃんと収めているのに”という「保険料徴収の不公平感」が根強くある。

介護保険に詳しい専門家の分析では高齢化を背景に保険料が上昇し、負担できない高齢者(65歳以上の第一号被保険者)が増えていることが背景にあるとみられるとして、「介護保険料長期滞納は今後も増加傾向が続く」とみている。
例えば2013年度の介護保険料未収額は、2000年度(介護保険制度発足年)の10倍の274億円、さらに2025年度の高齢者の介護保険料は、2014年度の4,972円と比較して64%増の8,165円にも跳ね上がっている。国家の財政ひっ迫の経済状況下では税金補助の伸びは期待できず、といって現役世代や壮年層からの保険料を簡単に上げるわけにもいかず、しわ寄せは直接介護を受ける高齢者に寄ってくる公算が大きいとみられる。

調査では資産の差し押さえは、件数の中に40~64歳の現役世代も含まれている。資産の差し押さえは、長期間にわたり保険料を滞納している人を対象に市町村の判断で行われる。その他の給付の制限は、高齢者が実際に介護保険サービスを使う時に課されるペナルティーで、保険料不払いの期間が1年以上になると、いったん全額を負担した上で後から給付してもらう「償還払い」とされる。さらに、不払いが1年半を経過すると、「償還払い」が止められ、2年以上となれば利用料を3割まで引き上げられる扱いとなる。ただし、自治体との相談など詳しい事情を踏まえてより柔軟な対応がとられることもある。

介護保険料は利用者が原則1割を負担し、残りは税金と40歳以上が支払う保険料で半額ずつ支払う仕組み。40~64歳の保険料は人口構成を踏まえて毎年度見直され、介護保険料の29%(2012~2014年度)となっている。保険者は市町村。加入者(被保険者)は、第一号被保険者(65歳以上の高齢者)2910万人、第二号被保険者(40~64歳)4263万人で合わせて7000万人余り。第一号被保険者が支払う介護保険料(第6期:2015~2017年度)は全国平均5514円で、第5期(2012~2014年度:4972円)に比べ10.9%もアップし、今後も上昇傾向が続くものと見られる。

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