ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年7月29日号)
◆「常時介護状態に関する判断基準」で研究報告発表
厚労省 要介護2以上+その状態の継続性の有無
――厚生労働省
厚生労働省は7月19日、「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に関する研究会報告書を発表した。在宅介護が増えている中で、家族の介護への関わり方も変化している。現行の判断基準は介護保険制度の要介護認定との関連性がなく、労働者・事業主双方にとってわかりやすいものが求められている。日常的に介護を受ける家族が要介護認定を受ける前にも介護休業等の利用が必要な状況も想定される。
例えば介護休業等は要介護認定を受けられる年齢である40歳に達しない人を介護する場合にも利用できるものであり、そのためにも介護保険制度における要介護認定を受けていない場合にも対応でき、専門的な知識を持たない一般の人にもある程度わかりやすい項目とする必要がある。
介護休業等の対象となる「要介護状態」については「負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障がいにより、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義されている。
「常時、介護を必要とする状態」とは、次の(1)または(2)のいずれかに該当する場合であることとする。 (1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
研究会の「常時、介護を必要とする状態」とは?
「(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること」について―。
・介護保険制度との整合性、一般の労働者・事業主による判断の容易さという観点から、介護保険制度の要介護状態区分を基準とする。
・現行の判断基準を緩和する方向で見直しを行うという方向性や、要介護者に対し日常生活において一定程度の身体介護を含む介助が必要になっている場合の、当該要介護者を介護している労働者への両立支援制度の必要性を踏まえ、「要介護2以上」と設定する。
「(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつその状態が継続すると認められること」について― 。
・介護を受ける家族が要介護認定を受ける前に介護休業制度等の利用を申し出る場合や、要介護認定を受けられる年齢(40 歳)に達しない場合等(1)以外の場合については(2)の基準を用いて判断する。なお、要介護認定を既に受けているが、要介護1以下の場合についても、(2)の基準に照らし該当すれば、基準に該当すると判断する。例えば、要介護1の 認定を受けているが、認知症であって「外出すると戻れない」ということが「ほとんど毎回ある」場合には「常時介護を必要とする状態」と判断され、さらにこの状態が2週間以上の期間にわたる場合に介護休業の対象となる。
◆複数の民間団体が協力、地域救急救命サービス開始
東京都も承認、「消防署だけでは、もはや対応不能」
――厚生労働省
(株)メディトランセ・菱秀会救急部(医療法人)、在宅健康管理を推進する会(社団)、日本救急救命士協会(社団)等の複数の民間団体が協力して7月19日、「緊急・救命、夜間にも対応」を掲げた地域救急救命サービスの試みをスタートさせると発表した。このほかに「臨床検体」「治験関連」「その他医療全般」も行う。
この事業の核となるのは(株)メディトランセ(東京都新宿区)。検体輸送や医療関連搬送で10年の事績を持つ医療に特化した登録衛生検査所の輸送会社。同社は今年4月に社内に救急部を創設して本格的事業サービスに取り組む形を作った。次に6月、救急搬送サービスが東京都の経営革新計画に承認された。承認内容は「地域高齢者救急搬送サービス」を平成27年7月から平成30年6月までの3年間と決まった。
現状、救急医療は消防機関のみの対応では手が回らず、本来救急搬送が必要な、緊急度の高い患者の元へ駆けつけるのが困難な状況となっている。さらに高齢化に伴い救急搬送の需要が増大しているにもかかわらず、救急医療の病院前救護は現在のところ、消防機関のみが対応している。
厚労省や消防庁でも民間サービスの有効活用を検討しており、医療資源の有効活用が急務とされている。また、在宅医療や老人福祉施設で高齢者の容体が急変するケースも多く、急変時に即時対応できるシステムを作ることが、救命率向上と患者や家族の不安を和らげることにつながるとも考えられる。
現在、消防機関以外の救命士は1万6,000人以上と推計されているが、救急救命士法によってその大半が資格に見合った医療サービスを提供できない労働環境にある。
このような状況を解消するためにも4団体は医療機関との提携や協力関係を構築し、人材の有効活用を図ることで、地域の救急医療の拡充を図っていく方針だ。
今回発表された「民間団体・企業による地域救急救命サービス」の試み(概略)は次のように6つの特徴を持っている。
■見守りサービスや契約先急変時に救急車で救急救命士が駆けつけ救護
在宅医療や訪問看護などの利用者に、バイタル情報(心拍・心電図【商品名「duranta」株式会社イメージワン:東京都新宿区、代表取締役社長:高田康廣】・血圧【オムロン株式会社】)のリアルタイム通信モニタリングを、医師で構成される在宅健康管理を推進する会【みまもりブレイン】が主体となって行い、異常通知があれば直ちに救急救命士が向かう。救急活動状況は、救急に取り付けられたカメラ映像で常に担当医師に送られ、適切な指示を得るとともに、搬送が必要な状態であっても患者の既往歴を把握しているため、医療機関に引き継ぎが的確に行われ、より正確で迅速な治療開始が可能となる。老人福祉施設においても同様に対応される。
■地域病院の転院搬送支援
転院搬送は「救急業務のあり方に関する検討会」報告にあるように、消防機関の業務をより圧迫しており、民間救急(いわゆる介護タクシー)も利用されているものの、事例においては医療スタッフからは不安の声が募っている。急変対応が必要な患者には、当社が地域病院の転院搬送需要を担っていくことを目的としている。
■大規模イベント・施設での救急救命サービス
公共のイベントや施設で当社救急救命士を待機させ、もしもの際には救護・救命(特定行為を含む医療行為)を施し、速やかに搬送する。
■大規模災害時の救急搬送支援
災害時の救援は当社設立の理念であり、積極的に救急救命士を派遣していく。
■医師による活動モニタリングとメディカルコントロール
当社救急救命士にはカメラが装着されており、提携救急医がその活動をライブでモニタリング【株式会社ソリトンシステムズ】を行い、助言や指示を得ることで、適切で迅速な直接メディカルコントロール体制を構築する。またメディカルコントロールや救急救命士の生涯教育などは職能団体である、日本救急救命士協会が担っていく。
同グループは記者会見で「本年3月に災害医療対策委員会より、民間の医療資源を有効活用する必要があると報告されました。これに応えるべく民間サービスとしての地域救急駆けつけ搬送のモデルケースとなるよう、新しい試みの救急医療サービスを展開してまいります」と抱負を述べた。なお記者会見は6月末、外国を意識して日本外国特派員協会で行われた。
◆治験に参加できない患者、拡大治験で救済
未承認医療機器などの提供で通知 厚労省
――東北大学病院
厚生労働省は各都道府県衛生主管部(局)長等に宛てて、「医療機器及び再生医療等製品における人道的見地から実施される治験の実施」に関する通知を発出した。2016年7月21日から始まった。
これは「治験の組入れ基準から外れる、被験者の組入れが終了している等の理由により当該治験に参加できない場合がある」(同通知)患者に対して、「人道的見地から」治験制度の枠組みの中で実施するというもの。通知は、くりかえして「拡大治療」→「人道的見地」を強調しているのが目立つ。
こうした医療上の必要性が高いものの、国内では承認されていない医療機器や再生医療製品について、治験に参加できない患者に対して、拡大治験(人道的見地から実施される治験)として、治験制度の枠組みの中で未承認機器を提供できる方策を実施することを通知で周知している。有効な既存の治療法が存在しない疾患の患者にとって、未承認機器等が最後の望みになることも想定されることなどに対応した。
通知では、(1)制度の対象範囲、(2)臨床試験の位置付け、(3)拡大治験の実施に係る考え方、(4)検討要請と実施の可否決定、(5)治験実施計画書、(6)対象患者、(7)実施施設、(8)治験にかかる費用負担――などを説明している。
この中で制度の全体が分かる「概要」や「対象患者」の項目では次のように説明してある。
(1)制度の対象範囲
・本制度においては、未承認機器等の使用により、患者が享受できると期待されるベネフィットの蓋然性が比較的高いと考えられる、開発の最終段階である国内治験(当該治験の結果をまとめた後、その結果をもって承認申請を予定している治験、以下「主たる治験」という)の実施後あるいは実施中 (組入れ終了後)の治験機器又は治験製品(以下「治験機器等」という)を対象とする。
・拡大治験の実施については、主たる治験の円滑な実施に好ましくない影響を及ぼすことにより、当該医療機器等の開発を大幅に遅延させるおそれがあることから、あくまでも主たる治験に影響を及ぼさないことを前提とする。
・未承認機器等を使用するリスクと期待される有効性のベネフィット(患者にとっての価値)における、ベネフィット・リスクバランスの観点から、原則として、当該医療機器等の主たる治験の実施段階から承認までの期間を待つことが出来ない、生命に重大な影響がある疾患であって、既存の治療法に有効なものが存在しない疾患を適応の対象とした治験機器等を対象とする。
(2)臨床試験の位置づけ
・国内で承認されていない未承認機器等の使用における安全性確保の観点から、機器GCP省令又は再生 GCP省令が適用される治験の枠組みの中で実施する。
・拡大治験は、次に掲げる取扱のうち、治験実施者が効率的な治験が実施できる方を選択する。
・主たる治験とは別に、人道的見地から新たな治験を実施する。
・実施中の主たる治験の計画を変更し、人道的見地から患者を追加する。 (この場合、人道的見地から追加された患者に関連する治験の範囲を拡大治験、それ以外の患者に関連する治験の範囲を主たる治験とする。)
対象患者
・拡大治験の対象は、参加を希望する患者にとっては治療機会の有無を決定する重要なものである一方、主たる治験における組入れ基準を満たさない患者を拡大治験の対象患者に含められるかどうかについては、安全性確保の観点から、合併症、疾患の病期、重篤性等の項目について慎重に検討する必要がある。このため、実施済みあるいは実施中の主たる治験の実施計画書の組入れ基準の各項目に関して、組入れ基準を緩めても医学的に許容可能であると判断される範囲の患者とすべきである。
◆特定保健指導の実施率は着実に伸長 医療費抑制効果
糖尿病など3疾患で1人あたり入院外医療費が抑制
――トレンド総研(東京都渋谷区)
政府は7月21日、「医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ(WG)」を開催し、「医療費適正化基本方針」を議題に検討会を進めた。
医療費適正化計画は国民の高齢期の適切な医療確保を図る観点から、医療費の適正化を総合的・計画的に推進するため、国や都道府県が定めている。医療費の見込み・目標や、健康保持の推進・医療の効率的提供の推進に関する目標(特定健診・特定保健指導実施率、メタボ該当者・予備群減少率、平均在院日数の短縮等)などが記載される。
計画期間は5年で、第3期計画は2018年度~2023年度まで。早期に計画を策定した
都道府県は2017年度から前倒しで実施する。また、入院医療費の算定式は2016年の夏頃、基本方針を改正して反映し、外来医療費も改正時に適正化の取り組み内容を充実する予定となっている。
【外来医療費】 ○都道府県の医療費目標(平成35年度)は、過去のトレンド等を踏まえた平成35年度の医療費から、医療費適正化の取組の効果を反映した医療費目標とする。
効果の反映は2段階で行う。 <第1段階> ○都道府県に、平成35年度に向け、①特定健診・保健指導実施率の全国目標の達成、②後発医薬品の使用割合の全国目標の達成に向けた取組を推進してもらう。 これらの全国目標が達成された場合の医療費の縮減額を反映( ※特定健診実施率目標:70%以上、特定保健指導実施率目標:45%以上 後発医薬品の使用割合の目標:80%以上)
<第2段階> ○その上で、なお残る一人当たり医療費の地域差について、都道府県において、保険者等とも連携しつつ、以下のような取組を推進し、地域差の縮減を目指す。(※国は、日本健康会議の取組等を通じて、都道府県・保険者の取組を支援)。
この日は、医療費適正化に関して参考資料が提出され、(1)特定健診・保健指導の効果検証、(2)特定健診・特定保健指導の実施状況――などが示された。厚生労働省の保険者による健診・保健指導等に関する検討会で報告されたもの。
(1)では、「特定保健指導による3疾患関連の1人あたり入院外医療費・外来受診率の推移」(2008~2013年度)を示し、高血圧症・脂質異常症・糖尿病の3疾患に関して、積極的支援参加者は不参加者に比べて、1人あたり入院外医療費では、男性が5,720円~8,100円低く、女性が1,680円~7,870円抑制されていたと説明。外来受診率は男性1人あたり0.19件~0.4件抑制され、女性1人あたりマイナス0.37件~プラス0.03件の幅の差異があったとしている。
他方、(2)に関し、2014年度の特定健診実施率は48.6%で、特定保健指導の終了率は17.8%。実施率は着実に伸びているが、目標(特定健診70%、特定保健指導45%)とは依然として乖離があるとしている。
特に性・年齢階級別の特定健康診査実施率で中高年層(40~50 歳代)が高いことが分かった。また、性別は、男性が 51.4%、女性が 41.1%で男性の方が高かったことも特徴の一つ。男性は平成 20 年度~23 年度と同様に 60 歳未満で高く、60 歳以上で低くなる傾向が見られた。女性は年齢による実施率に大きな差は見られなかった。
保険者の種類別の実施率は、市町村国保(小)で 32.0%と最も高く、次いで健康保険組合(単一)が 22.5%であった。今後も、全般的に実施率の向上のための取組を推進していく必要がある。保険者種類別・性・年齢階級別の実施率は、市町村国保では、65 歳までの男性の実施率が女性と比較して特に低い。一方、健康保険組合、共済組合では、40~50 歳代の女性の実施率が男性と比較して特に低いなど、保険種類別で違いが出ている。