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医療経営情報(2016年9月15日号)

2016/9/23

◆ 15年度概算医療費 40兆円を突破 3.8%の高い伸び 
13年連続で最高更新、高額薬剤など医療費の膨張続く

――厚生労働省
厚生労働省は9月13日、2015年度医療費動向の調査結果(医療費の動向―速報値)を公表した。医療費の膨張に歯止めが利かないように医療保険や公費、患者の窓口負担分を集計した概算医療費は前年度比約1.5兆円増(伸び率3.8%増)の41兆4627億円となり、速報値としては初めて40兆円を突破した。
その理由として同省保険局調査課は、高齢化の進展や医療技術の高度化、高額薬剤の使用増加(ソバルディやハーボニーなどのC型肝炎治療薬)を受けた影響とみていて、13年連続で過去最高を更新した。院外の調剤が9.4%増と異例に高い伸びを示したのも薬剤料が押し上げたためだ。
調剤医療費をみると、薬剤料の増加の大半を占める内服薬は14年度より約5300億円増加し、うち約3000億円はC型肝炎薬が属する「抗ウイルス薬」。このほかに院内で処方された同薬も加えて厚労省は、医療費の伸びに1%くらいの影響があったと推計した。

国民1人当たりの医療費は1万3000円増の32万7000円で、これも過去最高を更新。年齢区分別では75歳以上の後期高齢者が94万8000円と、75歳未満の22万円の4.3倍に達した。医療費の伸び率は全都道府県でプラスとなっており、千葉が5.0%増で最も高かった。

41.5兆円は、医科入院に16.4兆円(1.9%増)、医科入院外に14.2兆円(3.3%増)に使われた。ほか、歯科2.8兆円(1.4%増)、調剤7.9兆円(9.4%増)だった。全体の約37%を占める75歳以上医療費は15.2兆円、4.6%増と全体の伸び率を上回った。1人あたり医療費にして94.8万円(1.9%増)で、75歳未満の22.0万円(3.9%増)の4.3倍に上る。

調剤レセプトから集計した15年度の後発医薬品(GE)割合は、数量ベースでみると60.1%、3.7ポイント増だった2016年3月時点では63.1%に上り、都道府県別で最も高いのは沖縄県75.2%。次いで鹿児島県72.0%、岩手県69.1%。逆に最も低いのは徳島県53.3%で、次いで山梨県55.3%、高知県57.3%と続き、東京は59.1%と高知に次ぐ低さだった。しかし抗がん剤などの高額薬は増え続けており、今後も医療費は膨らむことに変わりはない状況。専門家などの多くは皆保険制度の維持には薬価制度の見直しが欠かせない段階にきている、とみている。価格が安い後発医薬品―ジェネリックの使用割合は、昨年度、数量ベースで60.1%と、前年度より3.7ポイント増えた。

◆ 公取委「混合介護」に取り組みやすく 規制緩和を提言
株式会社も特養ホーム運営を、同居家族の洗濯も可能に

――公正取引委員会
公正取引委員会は9月5日、介護分野の規制改革に関する報告書をまとめ、介護保険対象サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する「混合介護」をより弾力的に運用できるようにすることを提言した。
注目される提言は、株式会社も特別養護老人ホームを運営できるようにすべきと「規制緩和」を強く進めた。保険内と保険外のサービスを柔軟に組み合わせ、公定価格より高い料金を設定できるようにする「混合介護の弾力化」も認めるよう求めた。訪問介護の現場などで認められていなかった同居家族の食事の支度や洗濯などを、追加料金を徴収した上で一体的に提供することを可能にしようという内容だ。効率的なサービス提供が可能になり、事業者の採算性の向上も期待できるとして、政府の規制改革推進会議などに検討を求めていく考えだ。

公取委が介護分野に関する規制緩和の報告書をまとめたのは2002年以来。前回は、介護だけでなく医療・労働も含めた提言だったが、今回は介護分野に絞ってまとめた。今回の報告書の中で、介護分野に競争政策の考え方を広く取り入れていくことの重要性を強調する。公平で自由な競争が活発になれば、多様な事業者が参入してきて創意工夫を発揮する環境がつくられ、必要なサービスの供給量が徐々に増えていくとともに、その質の向上にもつながっていくと主張した。市場原理をうまく機能させていくことにより、利便性を高めつつ事業の効率化を図れると呼びかけている。
公取委は、競争政策の観点から介護分野について検討を行うには次の4項目に注目した。
① 様な事業者の新規参入が可能となる
② 環境,②事業者が公平な条件の下で競争できる環境
③ 業者の創意工夫が発揮され得る環境
④ ④利用者の選択が適切に行われ得る環境が整っている
といった点を最重視して検討を行った。

そこで公取委が具体策として打ち出したのが規制緩和。特養の待機者が多い現状に触れ、「開設主体の規制を撤廃し、医療法人や株式会社などが社会福祉法人と対等の立場で参入できるようにすることが望ましい」と意見した。
特養の運営は現在、地方公共団体や社会福祉法人などにしか許されていない。重度の要介護者や低所得者を受け入れる公的な性格が強いため、事業の安定性・継続性を担保する必要がある。倒産による撤退のリスクがつきまとう株式会社などでは、入所者を保護できなくなる懸念が拭えないからだ。
しかし公取委はこれに反論。撤退時のルールを事前に決めておくことなどで対応できるとして、「株式会社であることをもって参入を排除する合理性は乏しい」と断じた。補助金や税制による優遇も改め、それぞれが平等に競い合える土壌をつくることも要請した。

保険内・外のサービスを組み合わせる「混合介護」にも言及した。現行の制度では、原則としてそれぞれを明確に分けて提供しなければいけないとされているが、これを一体的に行えるようにしてはどうかと提唱する。サービスの価格も自由化し、介護報酬を上回る値段をつけることを容認すべきとした。具体的な例として、訪問介護の際に帰宅が遅くなる家族の食事もあわせて用意した場合に、通常より高い独自の利用料を取る形などをあげている。

◆ 医療事故報告受付39件、センター調査依頼1件
医療安全調査機構 11カ月の累計報告数は356件

――日本医療安全調査機構
日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は9月9日、2016年8月における「医療事故調査制度の現況報告」を公表した。患者の予期せぬ死亡が対象の医療事故調査制度の8月1カ月間の実績をまとめたもので、第三者機関である医療事故調査・支援センターに調査依頼が1件あり、2015年10月の制度開始以来、累計10件に上ったことが分かった。
10件の依頼元は、遺族7件、医療機関3件。調査の進捗状況も公表され、「院内調査結果報告書」の検証中が8件、「院内調査結果報告書」の検証準備作業中が1件、医療機関における院内調査の終了待ちが1件だった。

医療事故報告の「受け付け件数」は39件(前月比7件増・累計356件)。内訳は、病院(20床以上)からの報告が39件、診療所(20床未満)からの報告が0件だった。診療科別では外科8件、内科、消化器科各6件、心臓血管外科3件、循環器内科、産婦人科、脳神経外科、小児科各2件、整形外科1件、その他7件。
地域別では、関東信越12件、東海北陸8件、東北5件、近畿、中国四国、九州各4件、北海道2件の順だった。

また、「相談件数」は154件(累計1,674件)。内容による集計では182件(複数計上)で、「医療事故報告の判断」関連が57件、「手続き」関連が42件、「院内調査」関連が39件、「センター調査」関連が8件、「再発防止」関連が1件、その他が35件だった。
「医療事故報告の判断」に関する相談のうち、遺族等からの相談は36件あり、遺族等からの求めに応じてセンターが医療機関へ伝達したのは1件だった。「院内調査結果報告」は27件(累計139件)。「センター調査の依頼」は1件(累計10件)で、遺族からの申請だった。

◆ 7割の人は「飲酒抑制できない精神疾患」と認識
内閣府がアルコール依存症に関し初の意識調査

――内閣府
内閣府は9月8日、「アルコール依存症に対する意識に関する世論調査」の結果を発表した。内閣府が依存症に関する意識調査を実施したのは今回初めて。調査は7月18日から8月7日まで。調査対象は18歳以上の3000人で、1816人から回答を得た。アルコール依存症や依存症患者のイメージに関する質問(以下、複数回答)には、43.7%が「本人の意志が弱いだけであり、性格的な問題である」と答えた。
また、アルコール依存症の知識を聞く質問は、68.5%が「飲酒をコントロールすることができない精神疾患である」と正しく回答。15.9%が「一度依存症になると治らない」と答え、9.8%が「お酒に強い人ほどなりやすい」と答えた。アルコール依存症とうつ病などの精神疾患の併発が社会問題化している実態を反映したとみられる。内閣府の担当者は「一定の正しい認識を持っていたことが調査から分かった」と述べた。
依存症の相談場所に関する質問は、7割以上が病院や診療所、精神福祉保健センターなどの「医療機関」「公的機関」と答えた一方、3割超が具体的な相談先を知らなかった。 このほか、40.1%が「誰もが依存症になる可能性がある」と回答。39.8%が「依存症はゆっくり進行するため、自分では気づかない」などの正しい認識を示した。
依存症が疑われる場合に「相談する」は88.1%。相談先(複数回答)は、病院や診療所などの「医療機関」が76.2%だった。

アルコール問題では2014年に厚生労働省が「患者数の推計が109万人となり、初めて100万人を超えた」「過去10年間で女性患者が2倍近い14万人に急増した」という調査結果を報じた。2013年3月、国内で30年ぶりとなるアルコール依存症治療薬「レグテクト」が認可され、5月から発売が始まったことと患者数増が関係していると役所関係筋は指摘する。14年に入ると、5月に日本精神神経学会が「アルコール依存症」の名称を「アルコール使用障害」に変更することを発表。6月には多量飲酒や飲酒運転の予防対策を国や自治体の責務とする「アルコール健康障害対策基本法」が施行されるなど矢継ぎ早の公的機関の動きが続いた。一つには患者増による医療費圧迫が国側にあったことも指摘される。禁煙と並び個人の「嗜好」の問題が今や国家的なプロジェクトとなっていて、特に受動喫煙防止を重視する厚労省は4年先の東京五輪に向かって、外国人ビジネスマンや観光客増への対応が迫られ、館(室)内禁煙などこれまで以上の「強権発動」が予想されるという動きもある。

個人の飲酒の対応策では、独立行政法人・国立医療機構久里浜アルコール症センター(神奈川県横須賀市)や各自治体が紹介しているチェックリストで、自分でも評価できる。家族らは、「本人が食事を満足に摂らなくなる」「飲酒で健康に影響が出ている」「お金を酒につぎ込んでしまう」といった状況に気付いたときは、保健所や専門病院に相談することを勧めている。飲酒によるケンカやトラブルがあった場合も、保健所や相談窓口に情報を寄せることで、専門家が把握する機会につながりやすい。

*飲酒問題のチェック表(久里浜アルコール症センターのホームページより)
※該当する項目が二つ以上あれば、アルコール依存症が疑われるので、保健所や専門機関に相談を勧めている。
〈1〉飲酒量を減らさなくてはいけないと感じたことがある
〈2〉他人に飲酒を非難され、気に障ったことがある
〈3〉自分の飲酒について「悪い」「申し訳ない」と感じたことがある
〈4〉神経を落ち着かせたり、二日酔いをなおしたりするために「迎え酒」をしたことがある
男性版では次のような質問もある。「食事は1日3回、ほぼ規則的にとっている」「酒を飲まないと寝付けないことが多い」「酒をやめる必要性を感じたことがある」「酒を飲まなければいい人だとよく言われる」「飲まないほうがよい生活を送れそうだと思う」「朝酒や昼酒の経験が何度かある」――10問のうち4つ以上当てはまればアルコール依存症の疑いありだという。

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