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医療経営情報(2016年11月10日号)

2016/11/18

◆薬剤料の伸びが医療費増加の大きな要因と明らかに
診療報酬改定の影響は少なく、診療所の保険収入も減少傾

――日本医師会総合政策研究機構
11月8日、日本医師会総合政策研究機構は「最近の医療費の動向とその配分」と題した調査結果を発表。概算医療費として初めて40兆円を超えた2015年度の医療費は、高額薬剤の影響が大きいとした。また、医科技術料は縮小傾向にあるのに対して、薬剤料は拡大傾向にあることも明らかにし、大胆な引き下げが行われない限り、今後も薬価は上昇するであろうことを指摘している。

医療費が増え続けているのは、高齢化や診療報酬改定が要因だとされる。しかし、同調査によれば、高齢化による影響は1%程度、診療報酬改定による影響は0.1%程度に収まっている。
一方、薬剤料は年々伸び続けており、医療費の伸びの半分を占めており、処方せん1枚あたりの調剤技術料の伸びは、医科1件あたりの入院外医療費の伸びよりも高い。外来医療費の構成で見ると、薬剤料の割合は2001年度が29.0%だったのに対し、2015年度には36.2%にまで拡大。逆に、医科技術料は2001 年度が50.6%、2015 年度は44.2%と縮小傾向にある。
さらに、医療機関への配分という視点で見ると、診療所はこの10年間で23.9%から20.8%に減少し、薬局は14.2%から19.0%に増加。医薬分業拡大が進むに従って薬局のチェーン化が急速に進んでいることもあり、医療費が診療所から薬局へとシフトしていることがわかる。
実際、薬局の1施設あたりの保険収入は、2005年度の9,926万円に対して2015年度が1億4,051万円と、4,000万円以上も増加。診療所の1施設あたり保険収入が9,337万円から1億188万円と851万円の増加に留まっているのと比べると、薬局の医療費が伸び率の高さが顕著だ。

現在、がん治療薬オプジーボの薬価引き下げが課題となっているが、この調査結果では今後も高額な新薬の販売が行われる可能性は高いと言及。オプジーボのような特例での大胆な引き下げを行わない限り、薬価は上昇傾向を続けると警告している。膨らみ続ける医療費の抑制は社会全体の課題となっているが、薬剤料が伸び続けている現状が明らかになったことで、今後の政策に影響が出るかどうか注目される。

◆オプジーボの薬価問題で首相と日医会長が会談
50%の大幅引き下げで最終調整か

――厚生労働省
11月9日、日本医師会の横倉義武会長は、首相官邸で安倍晋三首相と会談。がん治療薬「オプジーボ」(小野薬品工業)の価格問題について話し合いを行い、引き下げの方向で認識が一致した。現在、厚生労働省では2017年4月に50%程度まで引き下げる方針で調整を行っているが、これは従来の2倍にあたる異例の引き下げ幅のため、首相自ら調整役を買って出た可能性があり、医療費抑制への強い意思を示したものと言えそうだ。

「オプジーボ」は、免疫反応を活用してがん細胞に働きかける新薬。2014年に皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)で最初の承認を受けたが、昨年末に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する効能追加承認を受けたことで、対象患者数が数百人から数万人に急増した。今年8月には腎臓がんの一部でも使用承認が出ており、さらに頭頸部がんなどでも承認申請を出しているため、今後さらに使用領域が広がっていくと見られる。

しかし、患者1人あたりの薬価が年間で約3,500万円とされており、仮に患者数が5万人であれば年間で1兆7500億円にものぼる。明らかに医療費を圧迫するため、緊急措置での薬価引き下げが検討されてきた。次回の薬価改定は2018年4月だが、それを待たずに2017年4月からの適用が決定。現在は、引き下げ幅をどうするかの議論が進められている。
当初、引き下げ幅は25%として調整が進められていたが、そこまで引き下げても、海外のオプジーボ薬価と比較すると高額であることが判明。そこで厚生労働省は、緊急措置での薬価引き下げで適用される市場拡大再算定制度に照らし合わせ、50%まで引き下げる方針を固めた。
50%引き下げの根拠は、予想を大きく上回って販売された薬が対象となる同制度の特例によるもの。この特例では、当初予想された売上規模の2倍以上で、かつ売上が150億円を超えた場合、通常の引き下げに加え、最大25%まで引き下げることが可能となっている。今回のオプジーボも、当初25%引き下げとしていたため、さらに25%引き下げようということになる。
かなりの高額であることを加味しても、強引さが否めない手法のため、製造元の小野薬品工業のみならず、製薬会社からの反発も当然予想される。しかし、緊急薬価引き下げは2017年4月に決定しているため、年末までの調整が必要と時間がなく、まずは外堀を埋めるために首相と日本医師会会長との会談がセッティングされたものと見られる。

◆看護師養成所の留学生、医療機関でのアルバイトが可能に
外国人患者への対応幅を広げるリソースとしても期待される

10月26日、自由民主党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」で、「人生100年時代の社会保障へ」と題した提言が発表された。この中で、定期的に健康診断を受けた人に「健康ゴールド免許」を付与し、医療費自己負担額を軽減するなど、自助を促すインセンティブの強化を提案。同時に、湿布薬やうがい薬などを全額自己負担にするなど、公的保険の範囲を見直すことも促した。

同委員会は、自由民主党の若手議員を中心に構成されており、事務局長を小泉進次郎衆院議員が務める。小泉議員は、同委員会を設置したきっかけとして。2015年度の補正予算で高齢者に対する3万円の臨時給付金を決めたことを挙げ、社会保障のあるべき姿に危機感を抱いたと説明。年々増加を続ける社会保障費を抑制することで、一時的には痛みを伴うことになる可能性を踏まえつつ、将来の安心を確かなものとするために社会保障改革が必要だと強調している。

今回の提言も、その考えに則ったもの。「健康ゴールド免許」に該当する人を増やすことで、医療機関にかかる患者数を減らし、結果的に医療費の削減につなげたい考えだ。提言の中では、「現行制度では、健康管理をしっかりやってきた方も、そうではなく生活習慣病になってしまった方も、同じ自己負担で治療が受けられる」ようでは自助を促すことが困難だと指摘。健康診断を徹底し、早い段階から保健指導を受けることが重要だとした。

現在、医療費の自己負担割合は、6歳までは2割、6歳から70歳までは3割、70歳以上は2割、75歳以上は1割となっている。ただし、70歳以上でも「現役並み所得者」は3割となっている。財務省は、10月4日の財政制度等審議会で高齢者の公平負担を求めており、今後は一律3割を視野に入れていると見られる。その中で「健康ゴールド免許」を導入することは、制度の混乱を招く可能性もある。どの程度、健康診断を受けたことで「ゴールド免許」と認めるのか、その基準も明らかにされていない。
しかし、40兆円を超えている医療費を抑制するためには、抜本的な改革が求められており、こうした提言が医療費のあり方を問う一石になることは間違いないだろう。こうした提言を受け、関係省庁がどのような動きを見せていくのか、今後も目が離せない。

◆医療機関と読影医師をクラウドでつなぐ「遠隔読影」
健診業務のコスト削減と効率化をサポート

――キヤノンマーケティングジャパン株式会社
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)は、11月1日に医療機関と健診画像を読影する医師をクラウドでつなぐ遠隔読影サービスの提供を開始した。健診需要が高まっているのに対し、読影医師は不足しているのが現状だけに、医療機関にとっては業務の効率化とコスト削減を実現してくれるサービスと言えそうだ。
 
このサービスは、キヤノンMJが2014年にリリースした医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」をプラットフォームにしている。健診を行う医療機関で撮影した検査画像をウェブ画面からクラウドにアップすれば、読影医師がすぐにチェックできる仕組みだ。ダブルチェックを行うことも想定し、2次読影医師に1次読影の結果を通知できる「ダブル読影機能」も実装している。
また、健診は検査画像が数百枚単位になることも少なくないため、読影を依頼する医師ごとに画像を振り分ける作業も、医療機関にとっては大きな負担だった。その点、同サービスでは、複数画像を1つにまとめるロット単位機能で、ウェブ画面で簡単に振り分けられるようにしている。
読影レポートのフォーマットにも配慮。読影医師にとっては、健診機関ごとに異なるフォーマットに合わせて記入するのが煩雑な作業だったが、同サービスでは、専用レポートシステムで入力すると健診機関のフォーマットに合わせて返却する機能も搭載。読影業務のスピードアップへの貢献も期待される。
さらに、クラウドシステムでの運用のため、システム運用管理が不要な点も魅力。迅速に導入可能なうえ、初期コストを抑えることも可能だ。

アベノミクスで「健康寿命の延伸」が掲げられていることもあり、今後も健診をはじめとした予防医療はますますニーズが拡大していくことが想定される。新たなヒューマンリソースを確保しようとすれば、中長期的にはリスクに変わる可能性もあるため、こうしたクラウドサービスと外部読影医師などのアウトソーサーを上手に組み合わせて活用するのが、今後の医療機関運営には必要となってくるのではないだろうか。

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