ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年2月3日号)
◆介護福祉士試験の申込者数、実務者研修の義務化が影響し激減
受験者のレベルアップに繋がった可能性3月の合格率発表に注目
――社会福祉振興・試験センター
1月29日に筆記試験が行われた2016年度の介護福祉士国家試験の受験申込者数が、前年度の半分以下だったことがわかった。同試験を実施している社会福祉振興・試験センターによれば、今回の受験申込者数は7万9113人。2015年度が16万919人だったため、半数以下にまで落ち込んだことになる(2014年度は16万2433人)。
ここまで申込者数が激減したのは、受験資格の変更が大きく影響している。2015年度までは、福祉系高校もしくは介護福祉士養成施設の卒業者以外は、介護職員として3年以上の実務経験があれば受験することができた。しかし、2016年度試験からは、実務経験にくわえて「実務者研修」を修了しなければならなくなったのである。
この「実務者研修」は、「たん吸引」や「経管栄養」といった医療行為を含めた内容で、受講時間は最大で450時間。介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)の資格を持っていれば130時間免除されるが、それでも320時間の研修が必要となっている。仕事に従事しながらそれだけの時間の研修を受けるのは大きな負担がかかることもあり、受験申込者数の激減につながったものと思われる。
しかし、今回から「実務者研修」の受講を義務付けるようになったのは、介護職員の処遇改善と大きな関係がある。介護福祉士は、介護のスペシャリストとして認められる国家資格であり、合格率も6割程度と決して取得が容易ではない。にもかかわらず、しかるべきステータスに応じた待遇が得られていないのが実情であり、手取りで月額20万円程度が平均的な給与額と言われている。今年4月から、介護職員の給与は月額1万円以上引き上げられることが決まっているが、それでもスペシャリストの待遇としては低いと言えるだろう。
そこで、スペシャリストとしての地位を向上させるとともに、介護福祉士の資質底上げを狙って「実務者研修」の受講を義務付けたというわけだ。受験資格変更後、初めての試験ということもあって、研修の受講時間が足りなかった介護職員もいるだろうことを考慮すれば、今回のデータは参考レベルと考えることもできる。また、「実務者研修」を修了した介護職員が受験しているため、今回の受験者のレベルが高いことも想定されるため、3月の合格率発表でどのような数値が出るのか、ぜひ注目したい。
◆月額3万7000円相当の処遇改善を行う新区分、
4月15日までに届け出れば、特例で4月からの算定が可能に
――厚生労働省
1月25日に開催された経済財政諮問会議で、介護ロボットの研究開発に重点的な予算配分を行う意向が示された。創薬、バイオとともに日本が世界に先駆けている分野として、産学官の協力体制を構築しつつ、資金や人材、技術などのリソースを海外からも取り入れるべきだとしている。
介護ロボットは、要介護者の自立支援を促すとともに、介護現場の負担を軽減する効果が期待されている。しかし、1台数百万円から数千万円と非常に高額なため、普及が進んでいないのが現状だ。
そこで、昨年12月に未来投資会議の構造改革徹底推進会合「医療・介護―生活者の暮らしを豊かに」で、「介護ロボット導入効果検証委員会(仮称)」の新設について検討が行われた。実際に介護ロボットを導入することで、利用者と介護現場の双方にとってどの程度の効果があるのかを検証する実証実験を促進することが目的だ。
また、政府はすでに、介護ロボットを導入する事業者に介護報酬を加算する方針も明らかにしているが、そのインセンティブが定まっていないため、実証実験によって得られたデータをもとに基準を設けたい狙いもある。
インセンティブに関しては、塩崎恭久厚労相が昨年11月の未来投資会議で2018年度の介護報酬改定に組み込みたい考えを明らかにしており、実証実験を急ぐ必要がある。今回、経済財政諮問会議で重点的な予算配分を行いたい意向を示したのは、より充実した実証実験を実施することも視野に入れてのものだと言えよう。介護ロボットが普及すれば、慢性的な人手不足に悩む介護業界の救世主となる可能性もあるほか、日本型介護を海外へ輸出する際の目玉ともなりうるだけに、新たなマーケットを求める介護事業者にとっても、今後の動きから目が離せないのではないだろうか。
◆「Pepper」を活用した失語症向けリハビリサービス開始
千葉大教授との共同研究で実現 すでに病院で複数の改善実績も
――株式会社ロボキュア
1月27日、人型ロボット「Pepper」用のアプリ開発などを手がける株式会社ロボキュアは、失語症向けリハビリアプリ「ActVoice for Pepper」およびリハビリ管理のPC用アプリ「リハログ」の提供を開始した。失語症を患う施設利用者がいる介護施設にとっては、興味深いリハビリサービスとなりそうだ。
ロボキュア社は、失語症者や言語聴覚士向けICT機器の研究開発やロボット対話の研究を専門とする千葉大学大学院工学研究科・工学部教授の黒岩眞吾教授と共同研究を実施。「より効果的かつ楽しいリハビリを無人で実現する」ことを目標に、Pepperを活用したリハビリシステムの開発を進めてきた。
今回、提供を開始した「ActVoice for Pepper」を使用すると、絵を見てそれが何であるかを回答する呼称訓練を行うことができる。利用者は、Pepperの胸部タブレットに表示された絵について声で回答していくが、難易度を上げるほど、明確な回答でなければ正解にならない仕組み。症状に応じて難易度を選べるため、利用者はゲーム感覚で呼称訓練に取り組めるほか、介護職員がついている必要もないため、介護現場での負担を軽減することも可能だ。
もちろん、Pepperのみに任せていては、計画的なリハビリができないため、管理用アプリ「リハログ」が効力を発揮する。言語聴覚士が活用することで、リハビリ状況を正確に随時確認でき、必要に応じてリハビリ内容を調整することもできる。
言語聴覚士は、1997年より国家資格となっているが、有資格者数は昨年時点で約2万7000人と十分な人数がいるとは言えない。そのため、要介護者が失語症となっても、マンツーマンでじっくり言語訓練ができないのが現状。その点、「リハログ」を活用すれば、遠隔管理も可能となるため、より多くの失語症者に対応することができる。
気になる効果だが、すでに病院で複数の患者に実証実験を実施し、改善効果は確認済み。今回の提供開始と同時に、千葉県の国保直営総合病院君津中央病院での運用も開始されている。すでにPepperを活用している介護施設にとっては導入しやすいため、ぜひ検討してみてはいかがだろうか。