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介護経営情報(2017年3月24日号)

2017/3/29

◆介護職員による高齢者虐待件数が9年連続で過去最多を更新
前年度から100件以上増加 2015年度の調査結果

――厚生労働省
 3月21日、厚生労働省は「平成27年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」を発表。介護職員による「虐待判断件数」が408件だったことがわかった。この前年度の2014年度が300件だったため、100件以上の増加であり、増加率は36.0%となった。同調査を開始した2006年度の翌年から、9年連続で過去最多を更新しており、介護職員による虐待の問題がまったく解決に向かっていないことが浮き彫りとなった。

 同調査では、市町村が相談・通報を受理した件数(相談・通報件数)も発表。1,640件と前年の1,120件からこちらも大幅に増加しており、増加率は46.4%に達している。同時に発表された「養護者」による虐待判断件数および相談・通報件数の増加率はそれぞれ1.5%と3.5%であり、介護職員による虐待が急速に増えていることがわかる。ちなみに、虐待判断件数で見ると、2011年度から151件、155件、221件、300件と増えており、この3年間の伸び率が大きくなっていることは明らかだ。

 どのような虐待が行われているかを見ていくと、「身体的虐待」が61.4%(478人)ともっとも多く、次いで多いのが「心理的虐待」の27.6%(215人)、「介護等放棄」が12.9%(100人)となっている。

5段階で回答を求めた虐待の程度を見ると、もっとも軽い「声明・身体・生活への影響や本人意思の無視等」が47.6%(370人)と全体の半数近くを占めているが、死亡事例が1件あるほか、もっとも重い「生命・身体・生活に関する重大な危険」に該当する虐待を受けた人が25人(3.2%)もいることのほうを深刻にとらえるべきだろう。現在は軽度の虐待に留まっている半数近くの職員も、高齢者を生命の危険にさらす可能性があると言える。

厚生労働省も、この事態を深刻に受け止めており、同調査の結果を公表した2日後の3月23日には同件について「通知」を出した。この通知は「高齢者虐待の実態の把握へのさらなる取組」「関係者等への研修等による対応力の強化」「高齢者権利擁護等推進事業の活動」の3点を軸としており、明らかになっていない虐待が多数あることを懸念していることがわかる。「高齢者権利擁護等推進事業の活動」では、介護職員のストレス対策を拡充させ、介護相談員等の外部の目を活用することを研修項目に明記する方針にしているほか、虐待防止に向けたネットワーク構築のため、アドバイザーの設置を検討していることを明らかにしている。

介護職員に対する虐待は、人材不足や業務の負担が重いことにストレスを感じることが原因と見る調査結果もあり、現場の待遇改善が必要なことは間違いない。しかし、急に大幅な人員増加や給与アップを実現させるのが現実問題として難しいことも確かだ。研修などを通じて意識向上を図ったとしても、極度のストレスを防ぐことは困難であり、どのように虐待を防止するか、各介護事業所の舵取りに委ねられる部分はあまりにも大きい。しかし、実際に虐待が起きれば施設の信頼度が著しく低下し、すぐさま経営が逼迫するのは明らかであるため、難題は承知で防止に力を注ぐ必要があると言えよう。

◆前払金の保全をしていない有料老人ホームは計264件
すべての施設に保全義務を課す法改正の動きが具体化

――厚生労働省
3月21日、厚生労働省は「平成28年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第8回)」の調査結果を発表した。その中で、「前払金」の保全措置が義務付けられているにもかかわらず、保全措置を講じていない有料老人ホームが53件あることがわかった。同省は、老人福祉法第39条に基づき、罰則の適用も視野に入れた厳正な対応を図るとしている(罰則は6月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

施設の利用者が支払う「前払金」は、入居一時金とも言われる。一時金であるため、仮に施設が経営難に陥って倒産してしまった場合は返還されなければならないが、以前は保全が義務化されていなかったため、返還されない例もあった。そこで、法改正を実施し、2006年4月以降に設立された有料老人ホームは、保全義務が課せられるようになった。

この法改正は、一定の成果が出ていると言える。同調査では2006年3月以前に設置された有料老人ホームの前払金保全状況も調べているが、前払金を徴収している590件の施設のうち、実に211件が保全措置を講じていないのである。

もちろん、同省はこうした事態を静観しているわけではない。すべての有料老人ホームに前払金の保全を義務付ける改正法案が2月7日に閣議決定され、現在開会中の通常国会に提出されている。もちろん、経過措置として、法施行から3年後からの適用とする旨が盛り込まれているため、実際には4年近い猶予がある。とはいえ、すでに利用者から前払金を受け取っている施設は、その間に相当額を用意しなければならず、資金繰りが相当苦しくなることが見込まれる。該当している施設は早急に対処する必要があると言えよう。

また、同調査ではいわゆる「未届」の有料老人ホームがどのくらいあるかについても、調査結果を発表。前年度の2015年度が1,650件だったのに比べ、1,207件と大幅に減少したことが明らかとなった。今後、「虐待等をはじめ入居者の処遇に関する不当な行為が行われることを未然に防止するためにも」、早急に届出を行うよう指導していくとしている。
 
しかし、有料老人ホームの待機者が非常に多く、規定どおりの施設を用意することが難しい現状を踏まえれば、未届施設の存在がやむを得ないのも一面の事実としてある。単なる建前ではなく、真に介護施設利用者のことを考慮していかなる施策を打つのか、今後の国の動きに着目していきたい。

◆ベネッセ、介護職員の給与を年間最大で約70万円増額
人手不足を解消するため、地域による変動制を採用

――株式会社ベネッセスタイルケア
3月22日、株式会社ベネッセスタイルケアは、同社が展開する有料老人ホームに勤務する介護職員の大幅な処遇改善を行うと発表した。そのための投資額は約13億円で、これは今年4月から実施される処遇改善加算増額分の約1.7倍にあたる。一人あたりの金額にすると月額最大3万5,500円、賞与は3年以上勤務者を対象に、0.8~1.4カ月分の増額を行うとした。

ベネッセスタイルケアは、株式会社ベネッセホールディングスのグループ会社として、高齢者介護サービス事業や保育事業を手がけている。大都市部の住宅地に拠点を展開してきており、3月22日時点で運営する有料老人ホームは308カ所。しかし、同社によれば「大都市部はとりわけ人財の確保が大きな課題」であり、今回の処遇改善によって人手不足を解消したいとの意欲をにじませている。

その意欲の表れが、「特別勤務地手当増額」制度だ。「世田谷区」「狛江市」「調布市」「名古屋市」「神戸市」の5都市におけるモデル給与を明らかにしているが、介護人材採用の激戦区と言われる世田谷区をもっとも高額に設定。初任者研修修了者は従来23万4,500円だったのを27万円に、介護福祉士資格保有者は25万円を28万5,000円に引き上げる(夜勤が月に4.5回、残業0時間の場合)。

年収は、入社1年目(22歳)の場合、現行の328万円から374万円へと46万円引き上げ、4年目に介護福祉士資格を取得したとして、420万円までアップするとしている。国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、20代後半の平均年収は339万円となっているため、同世代よりも80万円以上高い。ちなみに、全世代の平均年収414万円をも上回っている。4月から介護職員の月給が1万円相当増えることになっているが、ベネッセスタイルケアの増額分は当然のことながらそれよりも多いことがわかる。

政府が進める「働き方改革」に追随する形で、多くの企業が残業時間を減らすなどの対応を相次いで行っているが、ここまで明確かつ大幅な給与引き上げを明言した例は少ないだろう。それだけ介護業界の人手不足が深刻化しているということもある。果たして、今回のベネッセスタイルケアの決断は業界にどのような反響を起こすのだろうか。他の同業大手の反応から目が離せない。

◆民進党、「介護崩壊防止法案」を衆院に提出
介護職員の賃金、さらに1万円引き上げを求める

――民進党
3月22日、民進党は議員立法「介護崩壊防止法案」を衆議院に提出。介護業界の人手不足解消のため、2018年4月からさらに月額平均1万円の賃金アップを求める内容で、介護保険の自己負担割合の引き上げを阻止しようとする内容も含まれている。

同党は、2016年の老人福祉・介護事業所の倒産件数が過去最多を記録したのは、介護報酬の大幅な引き下げが原因とし、職員不足が原因で利用者を受け入れられない特別養護老人ホームが多いことにも触れて、「介護サービスの現場は崩壊の危機に瀕している」としている。そこで、介護サービス基盤の崩壊を防ぐため、今回の議員立法を提出したという。

議員立法では、今年4月から引き上げられる賃金が月額1万円相当では不十分として、さらに月額平均1万円程度引き上げ、来年度の介護報酬改定では、報酬の引き上げを求めている。また、政府は年収340万円以上ある人の介護保険の自己負担額を来年8月から3割に引き上げることを決めているが、同党は「2割負担となる対象者の所得額を『おおむね上位20%の所得額以上の額』に定める旨を規定する」とした。

賃金引き上げは介護職員にとって朗報ではあるが、問題はそのための財源をどう捻出するかだ。同党は所得税や相続税の見直しなどで実施する考えだが、具体策に乏しいのが泣き所と言えよう。しかし、介護職員の賃金が他職種と比べて低いのは事実。厚生労働省の統計によれば、2014年の全産業における平均月給が32万9,600円であるのに対し、福祉施設介護員は21万9,700円。介護職の中で上位資格者であるケアマネジャーも26万2,900円であり、たとえ2万円上乗せされたとしても、全産業の平均月給に届かないのが実情となっている。

現実問題として、現時点で衆議院は与党勢力が絶対安定多数を超えており、民進党の議員立法がそのまま成立する可能性は低い。しかし、介護業界の人手不足を解消するためにも、職員の処遇改善は必要であり、4月に実施される1万円相当の引き上げだけでは足りないのは明らかである。そうした意味で、今回の民進党の提案を与党側がどのように受け止め、賃金引き上げの検討が行われていくのか注視する必要があるだろう。

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