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医療経営情報(2017年4月13日号)

2017/4/28

◆経済財政諮問会議、外来受診の定額負担拡大を提言 「検査」「注射」「処置」の報酬改定に影響が出る可能性も

――経済財政諮問会議
4月12日、首相官邸で経済財政諮問会議が開かれ、議題のひとつとして社会保障改革が取り上げられた。年間40兆円を突破している医療費については、削減していくために外来受診の定額負担を拡大するべきと提言。拡大分は医療機関の収入とせず、保険給付を減らす方に使うべきだとした。

医療費は、大きく分けると「入院」「入院外(外来)」、「調剤」の3要素で構成されている。いずれも右肩上がりに上昇しているが、入院外の医療費の伸びは入院のそれよりも著しい。その内訳を2011年と2014年の診療点数で見ると、とりわけ伸びているのが「検査」「注射」「処置」の3つとなっている。

つまり、この3つに関して来年度の次期報酬改定でメスが入る可能性が出てきたと言える。中でも「検査」に焦点が当てられている点に注目したい。医療の高度化が進んでいるため、検査機器も進化しているからだ。導入コストがかかることは避けられない状況であるにもかかわらず、診療報酬が下がることになれば、減価償却のスパンが長くなることを意味する。必然的に経営が圧迫されるため、よりタイトな中長期戦略を練る必要がある。

また、同会議では薬剤の適正使用についても言及された。薬剤料は、2014年度で5.4兆円だったが、5年間で約1兆円も増加。投薬日数が長くなっていることもわかっている。また、こちらも医療の高度化の影響を受けており、高額な薬剤が増加。そうした状況を踏まえ、「高額薬剤からの処方が見られるものは是正するべき」との意見も出されており、ジェネリックの処方をより促す方向へ進んでいくことは間違いない。もちろん、がん治療の新薬オプジーボの薬価が問題となり、最終的には半額に引き下げられたように、今後の薬価算定が厳しくなっていくことも予想される。

一方で、抜本的な削減策として、医療費を使わなくて済むよう健康増進への取り組みを強化することも提言された。世耕弘成経済産業相は「会社員の健康増進には、企業の経営者にも関与してもらうことが大切。新たなヘルスケア産業の育成にも取り組みたい」と発言。医療機関としては、現在注目度が高まっている「健康経営」を推進する民間企業といかに連携していくかも検討するべき時期が来ていると言えよう。

◆WHOが「屋内完全禁煙」を厚労省に要請
厚労省案よりも厳しい内容 「重く受け止め」と塩崎厚労相

――日本医師会総合政策研究機構
4月7日、WHO(世界保健機関)の幹部が塩崎恭久厚労相を訪問。パブリックスペースでの屋内完全禁煙を要請するマーガレット・チャン事務局長のレターを手渡した。現在、厚労省が通常国会提出を目指している法改正案では、飲食店や一部公共交通機関などで分煙を許容しているが、より厳しい内容にすることを迫った形だ。

WHOの幹部は、訪問後に同省内で記者会見を開き、日本の受動喫煙対策を「時代遅れ」と批判。現在、WHOの受動喫煙対策評価で日本は最下位のグループにいるが、厚労省案が実現しても「下から2番目のグループになるだけ」と断じた。喫煙室を設置するなどの分煙案に対しては、煙が漏れることを完全に防止できないといった科学的データを示し、完全に受動喫煙を防ぐことはできないと警告。「例外のない完全禁煙」を求めた。

また、「アメリカやオーストラリアなどでは完全禁煙後もレストランの売り上げは下がらなかった」「アイルランドでは喫煙者の7割が完全禁煙を支持している」など各国の事例も紹介。飲食店などの売り上げが減るとしている禁煙反対派を牽制した。

こうした強い要請に対し、塩崎厚労相も敏感に反応。4月11日の定例大臣会見で「大変厳しい要請を国際機関のトップから直接正式に受けたことを重く受け止めている」と述べた。すでに、WHO事務局長のレターを田村憲久自民党政調会長代理に見せて、厚労部会の開催を要請したことを明らかにしている。

しかし、厚労省案の修正を検討するとまでは踏み込まず、自民党の理解を得てから「どのようにするかを考え、今国会提出に向けて大車輪で作業していく」と述べるにとどまった。これは、自民党の一部議員が法改正に反発していることを踏まえてのものと思われる。現実的には、6月18日の通常国会終了まで約2カ月しかないため、WHOの要請どおりに完全禁煙を打ち出せるとは考えにくく、分煙をどの範囲まで認めるかに焦点が移っていくのではないだろうか。いずれにしても、医療機関が敷地内全面禁煙の対象となることは変わらないが、WHOが喫煙の有害性を改めてアピールしたことで、禁煙のニーズが高まる可能性もある。

◆日本医師会「すべての医師が加盟する団体が必要」と提言
診療科の地域偏在解消のため新専門医制度の慎重な制度設計求める

――日本医師会
4月12日、日本医師会は「医師の団体の在り方検討委員会」の報告書を発表。医師の偏在解消のため、行政から独立した形での医師全員が加盟する団体の必要性を提言した。また、来年4月に制度開始を予定している新専門医制度については、慎重な制度設計を行うべきだとして、積極的に日本専門医機構に関与していく方針も示した。

厚生労働省発表の最新調査結果である「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によれば、2014年12月31日現在での全国の届出医師数は31万1205人。それに対して、最大の医師団体である日本医師会の会員数は約16万7000人、日本歯科医師会の会員数は準会員を含めて約6万5000人であり、合計しても約23万人にとどまっている。

つまり、すべての医師に対して必要な情報を通知したり啓蒙したりできるのは、厚生労働省(保健所)しかないという状況だ。確かに、保健所の存在はある程度の抑止力になっているが、診療品質を高めるために機能しているとは言い難い。また、医療の高度化に伴い、診療科目によっては自由診療の割合が極めて高い医療機関も増えており、医師や診療科の偏在化が進む要因のひとつともなっていよう。

そうした状況を踏まえ、「自浄作用を発揮する団体」を作るべきだというのが、今回の日本医師会の提言だ。任意加入での全員加盟にするか、法的根拠に基づく加盟にするかは今後検討すべきだとしているが、イメージしているのは日本の全弁護士が登録する日本弁護士連合会(日弁連)だという。

ただし、弁護士は日弁連のほか各地方の弁護士会に所属しているケースが多く、会費の負担が大きいと問題視されている。登録から数年間は減額措置をとるなどしているが、日弁連は月額合計1万6,800円、東京弁護士会の場合は月額1万8000円と、合計3万4800円かかっており、決して小さい額ではない。そのほか、専門とする学会に入会すればそれぞれ会費がかかることを考えると、団体を作ることで医師に過度な負担をかける可能性も懸念される。

同じことは、新専門医制度に関しても言える。確かに、現在の制度案は医師・診療科双方の偏在化を助長する可能性もある。しかし、学会と専門医制度の乱立が医療の質を高めているとは言い難く、前述したように医師に費用的な負担を強いることにもつながっているため、統一の認定基準が必要なのは間違いない。そうした意味では、原点に立ち戻って医療の質を引き上げるための制度設計を行うことを優先すべきであり、日本医師会にはまずそのために知見を生かすことを期待したい。

◆トヨタ、リハビリ支援ロボットを医療機関向けにレンタル 脳卒中などによる下肢麻痺が対象 今年秋より開始予定

――トヨタ自動車株式会社
4月12日、トヨタ自動車株式会社はリハビリテーション支援ロボット「ウエルウォークWW-1000」のレンタルを今年秋から開始すると発表した。脳卒中などによる下肢麻痺のリハビリをサポートする。医療機器としての承認を取得済みで、医療機関向けに今年秋からレンタルを開始したい意向。療法士の負担軽減も期待できるため、人件費の抑制にも貢献しそうだ。

「ウエルウォークWW-1000」は、患者に合わせてリハビリの難易度を調整できるほか、歩行状態をリアルタイムで確認でき、客観的な定量データも記録できるなど、運動学習理論に基づいたさまざまな機能を備えている。リハビリ初期段階から自然な歩行をアシストできるように設計されているため、付き添う療法士の負担も軽くて済む。また、簡単に装着できるように工夫された仕様となっていて、一括操作できるようタッチパネルを採用しているなど、臨床現場での使いやすさを考慮しているのが特徴的だ。

トヨタは、1980年代から人の活動をサポートし、人と共生する「パートナーロボット」の開発を進めてきた。世界トップレベルの自動車開発技術や、自動車生産用に導入している産業用ロボットの技術を応用していることは言うまでもない。

リハビリテーション支援ロボットは、2007年末から藤田保健衛生大学と共同開発。2011年から医療現場での実証実験を行い、2014年からは全国の医療機関で歩行練習アシストロボットを臨床研究に活用してきた。それらの研究を踏まえ、下肢の機能回復への寄与が期待できると判断して、医療機器の承認を取得したという。

レンタルの窓口となるのは、パラマウントベッド株式会社など4社。営業企画・管理はトヨタと三菱商事との合弁で設立した株式会社グッドライフデザインが担う。初期費用は100万円、月額35万円。本体の重量は約800kg、高さ238cm、幅120cm、奥行き271cm。

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