ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2017年4月27日号)
◆「女性医師バンク」のホームページがリニューアル 託児所の有無や時短勤務などが選べる検索機能も追加
――日本医師会
日本医師会は、4月21日に「日本医師会女性医師バンク」のホームページをリニューアルしたと発表(https://www.jmawdbk.med.or.jp/)。利便性を考慮したデザインに変更したほか、「託児所あり」「時短勤務可」など検索機能を強化している。この措置によって、求人・求職者の登録数を伸ばすことができるかどうか注目される。
「女性医師バンク」は、日本医師会内に設置されている女性医師支援センターの中核をなしている職業紹介事業。ちょうど10年前の2007年から実施されている。厚生労働省の委託を受け、女性医師がライフステージの変化に応じて働けるような柔軟な勤務形態の促進を目的としている。
しかし、今までの同ホームページは必要な情報を検索しにくいなど操作性に問題があった。さらに、インターネット検索で上位に表示されないため、肝心の女性医師の目に触れる機会が少なかった。2007年1月からの運用状況を見てもそれは明らかで、求職登録者は累計わずか821名。求人施設登録数は累計3,014施設、就業件数は累計539件と成果が出ているとは言い難い結果となっている。
そのため、今回のリニューアルは全面的なものとなった。まずトップページはキャラクターデザインを新しくして、都道府県や希望科目、特徴をチェックボックスで選択すれば条件検索ができる機能を設置。地図から都道府県の求人検索もできるようになっており、全体的なデザインもシンプルでわかりやすくなっている。スマートフォンやタブレットから閲覧されることが多いことを想定し、自動的にレイアウトが変わるレスポンシブ対応としている。
また、特徴の検索機能は大幅に強化された。「当直なし」「残業なし」「託児所あり」「病児・病後児保育あり」「時短勤務可」「再研修可/再教育制度あり」などトップページに18項目を用意。さらに条件を絞り込むと、「一般外来」「病棟管理」「リハビリ」「画像診断(読影)」「産業医」など業務内容も選べるようになっている。
さらに、求職者・求人者ともに「マイページ」を設置。求職者は求人へのエントリーや検討中リストの管理ができるほか、求人側は「スカウト機能」で直接求職者に働きかけることも可能となった。職を求める側が無料で求人媒体を利用できるのは珍しいことではないが、求人側が無料で利用できるのは大きなメリット。少なくとも金銭的な負担は一切かからないため、経営側にとって登録することによるデメリットは限りなくゼロに近い。女性医師のニーズがある医療機関は、“お試し”半分であってもとりあえず求人を出すべきではないか。そして、使い勝手を見極めたうえで本格的な求人媒体として活用するかどうかを検討するべきだろう。
◆「専門医取得は義務化しない」、厚労省検討会で意見一致
新専門医制度の整備指針に反映される見通し
――厚生労働省
4月24日、厚生労働省は「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の第1回会合を開催。来年4月に制度開始を予定している新専門医制度について、「専門医取得は義務付けない」という点で構成員の意見が一致。整備指針にも明記される見通しとなった。従来の予定では4月末までに整備指針を確定させることになっていたが、見直しがなされる方向になったことで、スケジュールがずれ込む可能性も出てきた。
そもそも、新専門医制度は今年度から開始される予定だったが、地域医療を崩壊させる恐れがあるとして1年延期した経緯がある。地域医療への影響を懸念する声は依然として根強く、2月には全国医系市長会が塩崎恭久厚生労働相や菅義偉官房長官らに対して制度見直しを求める要望書を提出。3月には塩崎厚労相が「必要に応じて抜本的対応を求める」と表明していた。
全国医系市長会から要望書が提出された事実は、新専門医制度の整備指針を取りまとめている一般社団法人日本専門医機構も重く受け止めており、この日の検討会でも「全国市長会ご要望への対応状況について」と題した資料を提出。「中小規模病院が危機に陥る懸念」と「医師の診療活動開始年齢の遅延と医療コスト増大」の2項目で重複して「専門医取得は義務づけていない」と強調した。
一方で、「原則としていずれかの専門領域を選択しその基本領域学会の専門研修を受けることを基本とする」としており、義務付けはしないものの3年間程度の専門研修を受けることを推奨。事実上のスタンスは従来と変えることなく、「義務づけない」と強調することで批判の矛先をかわそうという狙いが透けて見える。
実際、昨年の臨床研修修了者のアンケート調査では男女ともに9割以上が専門医資格の取得を希望しており、義務付けるか否かにほとんど意味がないのが現状だ。ただし、どの診療領域の専門医資格を取得しようと考えているかのアンケートには、34.2%が内科領域を希望。2番目に多い診療領域は外科領域の10.7%、少ないところではリハビリテーション領域が0.4%、臨床検査領域は0.0%と1人も希望しておらず、すでに偏りが生じている。つまり、このまま新専門医制度を開始しても、医師の偏在化が解消されるとは思えない状況なのである。いったいどのように落とし所を見つけていくのか、同検討会の議論の推移から目が離せない状況が続く。
◆日医会長、診療報酬の抑制を提言した財政審に反発
「恣意的な参考資料」はミスリードを引き起こすと懸念示す
――日本医師会
4月26日、日本医師会の横倉義武会長は定例記者会見で、財政制度等審議会が示した方向性に対して同会の見解を表明。財政審は「診療報酬を不必要に引き上げることにはならない」としたが、横倉会長は、その根拠として示した参考資料について「恣意的であると言わざるを得ない」と反発。社会保障費をできるだけ抑制したい財務省を牽制した格好だ。
横倉会長が指摘した参考資料とは、4月20日に開催された財政制度分科会で提示された中にある「診療報酬本体と賃金・物価の動向」と題したグラフのことだ。1995年度を100として指数化しており、診療報酬本体が賃金や物価の水準に比べて高水準となっていることを示している。
しかし、指数はどの年度を起点として見るかで大きく解釈が異なってくる。1995年度を100とした場合、2015年度の診療報酬本体は110、消費者物価指数は103、賃金指数は101となるが、横倉会長はアベノミクスが始まった2012年度を起点としたグラフを提示。その場合、診療報酬本体はほぼ横ばいとなる101であるのに対し、賃金指数は102、消費者物価指数は104となり、診療報酬本体の水準は賃金や物価よりも低いこととなる。
財政審は「賃金や物価水準がデフレで上昇していない中で、診療報酬本体は上昇を続けている」としており、現象の分析としては間違ってはいない。ただし、20年間というスパンで分析した論理を、現在の医療機関の経営にあてはまるのは無理があるのも確かであり、短いスパンの物価や賃金と比較した日医の分析のほうが現実的だと言えよう。その意味では、横倉会長が反発したように、財政審の資料はミスリードを引き起こす可能性がある。
とはいえ、人口減少と超高齢化が加速度的に進行している現在、社会保障費の抑制は財務省にとって超がつくほどの重要課題だ。今後、厚生労働省を含めた綱引きが繰り広げられることは確実で、今回の横倉会長の牽制は、その前哨戦を仕掛けたものと受け止めるべきだろう。これを財務省がいかに受け止め、厚労省と調整をしていくのか注目していきたい。