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医療経営情報(2017年6月15日号)

2017/6/26

◆遠隔診療を次期診療報酬改定で評価 未来投資戦略2017 AIを活用した医療についても次期以降での評価を目指す

6月9日、政府は臨時閣議で「未来投資戦略2017」を決定。成長戦略のひとつとして「健康寿命の延伸」を強く打ち出し、世界に先駆けて「生涯現役社会」を実現させたいとした。医療関係では「遠隔診療」を次期診療報酬改定で評価すると明記している。AIを活用した医療については、環境整備を行ったうえで次期以降の診療報酬改定での評価を目指すとしている。

インターネットなどを利用し、ビデオチャットなどを用いて診察を行う遠隔診療については、「対面診療と適切に組み合わせることで効果的・効率的な医療の提供に資するもの」と限定。糖尿病などの生活習慣病を例に挙げ、オンライン診察と組み合わせて効果的な指導・管理を促したいとしている。

また、「新しい健康・医療・介護システム」を確立させたあとの想定シーンとして、「週に1回から月に1回へと通院負担が軽減」「データ・AIを活用したかかりつけ医による診療を無理なく受ける」といった状況を描写。医療現場も、同システムが確立することにより、初診時や救急時でも患者情報を確認できるとして、「個人に最適な治療がいつでもどこでも可能に」なるとした。

従来、遠隔診療は原則的に禁止とされており、離島やへき地の患者など、やむを得ない場合にのみ適用されてきたが、2015年8月に厚生労働省の通達によって事実上解禁された。しかし、現在の診療報酬制度は遠隔診療の利用を考慮したものとなっていなかったため、それから2年近く経っても普及への動きは鈍い。

とはいえ、医療費は40兆円を超過している状況。社会保障費全体の伸びを抑制するためにも、外来診療の頻度を落として「効率的な医療」を実現させるのが喫緊の課題となっており、オンライン診察に活路を見出そうとしているのは明白。インターネットが社会のインフラとして定着しつつある現在、オンライン診察へと移行するのは比較的容易になってきており、クラウド環境を活用した医療相談サービスを提供する民間企業も次々に登場している。

実際、昨年11月には経済産業省が産業構造審議会新産業構造部会において、遠隔診療の診療報酬を対面診療と同等に引き上げるべきだと提言。「未来投資戦略2017」では生活習慣病のみに言及されているが、禁煙外来や引きこもりなども遠隔診療に適用するべきとの考えを示している。そうした経緯を踏まえれば、今後、診療報酬改定の議論が展開される中で、どこまで遠隔診療が評価されることになるか、目が離せない状況が続くと言えよう。

◆日本専門医機構、新専門医制度の整備指針を修正
「専門医取得は義務付けない」「市中病院を重要な研修拠点に」

――一般社団法人日本専門医機構
6月15日、一般社団法人日本専門医機構は「専門医制度新整備指針(第二版)」を発表。専門医取得を義務付けないこと、そして「市中病院」を重要な研修拠点とし、「大学病院に研修先が偏らないようにする」と明記した。

専門医は、特定の診療科や疾患領域について、高い専門知識や技術を習得していると認定される資格のこと。しかし、日本には統一基準がなく、各学会が独自に立ち上げ、認定を行っている状況が続いている。2002年の規制緩和により、専門医をメディアなどで広告することが可能になってから、さらに専門医は乱立状態となり、その質のばらつきが問題視されていた(メディアへの広告可能な資格名は、2011年8月以来、医師、歯科医師、薬剤師、看護師を合わせて64団体の88資格が広告可能となっている)。

そうした状況を踏まえ、厚生労働省は2011年から専門医制度の見直しを始めており、2014年5月に、学会に対して中立的な立場となる第三者機関として日本専門医機構を設立。新専門医制度の構築を進めてきた。現在、19領域を持つ「基本領域専門医」と29領域を持つ「サブスペシャリティ領域専門医」の2つに大別し、資格取得を希望する場合は、医学部卒業後の2年間の医師臨床研修に加え、3年以上の研修を受ける設計にしている。

しかし、医師臨床研修に加えて3年以上の研修を受けるとなると、医師として診療活動を開始できる年齢が最短で20代後半になってしまう。

しかし、当初は研修の実施機関を「大学病院などの基幹病院が中心」としていたため、当該病院が集中する都市部に研修生が集まることが懸念された。研修時に都市部にいれば、医師としての勤務もそのまま都市部で続ける可能性が高いため、「地域医療を崩壊させる恐れがある」との指摘が多数寄せられ、本来は今年度から新専門医制度をスタートさせる予定だったのを1年延期。現在、来年4月のスタートを目指している。

地域医療崩壊への懸念については、今年2月に全国医系市長会が塩崎恭久厚生労働相や菅義偉官房長官らに対して制度見直しを求める要望書を提出。それを受けて塩崎厚労相は「必要に応じて抜本的対応を求める」と表明しており、今回の整備指針修正案にもその意向が反映された形だ。

また、「連携病院で採用した専攻医については、専攻医の希望があった場合、できうる限り長期間連携病院における研修期間を設定するなど、柔軟なプログラムを作成しなければならない」と明記しているのも見逃せない。出産や育児で研修を中断せざるを得ない女性医師に配慮しているのは明らかで、さまざまな事情で長期間の連続研修を受けられない医師も、キャリアアップが目指せる制度となることが見込まれる。

◆ニコチン依存症管理料、施設基準の届出「7月最初の開庁日まで」
昨年4月~今年3月に新規届出の医療機関も再度届出の必要あり

――厚生労働省
6月14日、厚生労働省保険局医療課は「疑義解釈資料の送付について(その12)」と題した事務連絡を実施。ニコチン依存症管理料(区分番号B001-3-2)について、今年7月1日以降も算定する場合は、「7月最初の開庁日」までに届出を行う必要があるとした。今年は7月1日が土曜日のため、7月3日(月)が届出の最終日となる。

対象となるのは、昨年3月31日時点でニコチン依存症管理料を算定していた医療機関および、昨年4月1日から今年3月31日までの間に新規届出を行った医療機関。後者も、ニコチン依存症管理料の算定を開始した月から今年3月31日までの実績を記載して再度届出を行う必要がある。 なお、再度の届出に必要なのは様式8「ニコチン依存症管理料の施設基準に係る届出書添付書類」のみだが、施設基準についての地方厚生局長への報告は別途行わなければならない。

こうした事務連絡を実施した背景にあるのは、2016年度の診療報酬改定にある。昨年4月1日から今年3月31日までのニコチン依存症管理料算定患者の「指導に関する平均継続回数が『2回以上』という基準を満たさない場合」、70%に減額するとの規定が設けられた。そして、ニコチン依存症管理料の算定を満額にするためには、地方厚生局に過去1年間の実績を届け出ることが必要となった。

これは、ニコチン依存症治療が「12週にわたり計5回の禁煙指導」を標準としているのに対し、5回未満で終了した患者の禁煙成功率が低いデータが出ていることが原因となっている。そのため、平均継続回数が2回以上であることを新たに基準に加えたが、その算定開始が今年の7月1日からとなっているため、今回の事務連絡となった次第だ。昨年新たに禁煙外来を設置した医療機関はもちろん、それまで禁煙治療の実績を積んできた医療機関も届出を忘れないよう注意する必要があるだろう。

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